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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第72回 Perfume 6th Tour『COSMIC EXPLORER』仙台公演

2016年5月3日(火)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ

 

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ライヴの内容はレポートしづらいのですが、「MCならまあ書いていい」とのことでしたので。

◇仙台とPerfume(談:3人)

Perfumeメンバーはよく仙台を訪れているそうです。一昨日リハーサルをして、本番前日はオフだったと。メンバーは何をしていたのでしょうか。

かしゆか「仙台に友達がいて、友達に会いに時々来る。広島よりよく帰ってるかも。昨日はその友達とランチしたあと、アップルストアiPhoneケース(※充電もできる奴らしいです)を買いました」

あ~ちゃん「私もプライヴェートで仙台には来ていて。駅前の街並みの変化とか……西口に新しいパルコを作っていて、そこにTOHOシネマズ入るんじゃね。そうなるとまた仙台に来てしまう。

昨日は高校の時以来、一人で映画を観に行った。高校時代に観たのは『踊る大捜査』のユースケ・サンタマリアさんが主役ので、朝8時40分の回から観た。昨日行ったのはチネ・ラヴィータって映画館で(地元の観客どよめく)」

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あ「観たのは、『誰もいない』……は柳楽優弥くんか(※正しくは『誰も知らない』)。『僕』……」

か「僕だけがいない街。マンガが原作のね」

あ「藤……」

か「藤原竜也さん(主演)。全部私が言ってる(笑)」

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あ「有村架純ちゃんを見たくて、上映の1時間前に予約して。そのときはガラガラだったけど、この後に続々と来るんじゃろうって思って。時間になって会場入ったらもう暗くなってて、〈すみませんすみません〉って感じで入っていったら、誰ひとりおらん。貸し切り状態

しかも映画がまさかのミステリーよく人が刺されたりして、途中何度も出ようと思ったけど、がんばって最後まで観た。あれね、めっちゃおもしろいよ!絶対に観た方がいい。でもゴールデンウィークなのに、あんなに人いなくて」

のっち「それはね、みんな……(目を見開きながら小声で)ちはやふる』観てたんだよ!」

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↑確かにチネ・ラヴィータでやってました

 

の「じゃ、そろそろ……」

あ「あんた何やっとったん

の「いま良い流れで曲に入れたのに! 2行で言えます。牛タン食べて、寝た

か「でも、いちばん仙台らしいかも!」

の「牛タンは、お土産屋さんなんだけど、10分くらい待てば焼いてくれるお店があって、それを部屋に持ち帰って」

あ「あんたそれ東京と何も変わっとらん」

 

おっと、このペースでだらだら書くとまた長くなるので簡潔に。

その後のチーム分け、最初にあ~ちゃんが〈チネ〉を指定。〈ラ〉〈ヴィータと続ける予定だったと思われますが、あまりしっくりこなかったのか(お客さんのざわめきもあり)〈ちは〉〈や〉〈ふる〉に変更されました。

 

◇『COSMIC EXPLORER』週間1位(談:あ~ちゃん)

やっとみんなに直接報告できた!と喜ぶ3人

・チャート発表の日はスタジオでリハーサルしていたら、スタッフの方が「『COSMIC EXPLORER』、週間1位でした!」と報告して下さって、〈1位おめでとう!〉という大きなケーキも用意してくれて、スタジオにユニバーサル・ミュージックの偉い人が次から次に来られた

・しかもBEE-HIVEの古くて小さいスタジオに

・そのとき、スタッフの方がiPhoneのスピーカーから『COSMIC EXPLORER』を流してくれていたが、大人数が喋っていると完全にかき消される。ときどき静かになると、小さな音で〈シャンシャンシャン……〉って聞こえて、あっ流してくれてたんだ、と

 

◇その他

ある展開があって、笑顔のあ~ちゃんが両手を大きく広げて「奇跡が! 奇跡が起きています! ああーーーーー!! あああーーーーー!」とシャウト。何かの宗教かと思いました。

 

◇私見

音響・照明・舞台はやっぱり凄かったし、3人も初日の緊張に負けじと奮闘していましたが、ライヴの構成や流れが何だかちぐはぐなように感じました。

僕が期待していたような内容とはかなり異なっていたこともあって(まあそれは当たり前としても)、ちょっとがっかりしたのが本音です。でも、きっとPerfumeチームはここから改善してくるだろうとも思いながら。

 

5月4日(水)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ

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↑会場の裏手は、小鳥たちのさえずりに包まれる高原

この日もライヴの内容は触れずにMCだけ。

◇プロモーター(談:あ~ちゃん、かしゆか

あ「仙台のプロモーターで、インディーズ時代から担当して下さった方が外れてしまった。新しい担当のIさんは、普段は何もしゃべらない。クール。でも(自分たちが喋っていると)笑ってくれて、優しい。

仙台に、のっちとかしゆかを連れて行きたいお茶屋さんがあって。あと、美味しいお餅屋さんもある。なんか、養老乃瀧、みたいな名前の(注:延命餅)。そんな話を、昨日の車の中でギャーギャー言っていた(※補足すると、ライヴ初日の帰り、22時ころのお話)。

今日会場に入ったら、私が言っていたお茶屋さんのお茶と、お餅が届いとった。昨日の夜言ったばかりなのに。以前の担当さんに、ずっとお世話になったことへの想いは凄くある。でも、それだけじゃないなって思った」

か「会場のケータリングも、仙台は美味しいものがたくさんあるけど、それが毎日変わるの

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↑イメージ画像。名店「司」にて

あ「ケータリング部屋も、〈2年ぶりのライヴ、おめでとうございます!〉ってメッセージとか、紙で作ったお花とか、手作りの飾り付け……幼稚園児が〈ゥワァァァッ!!!〉ってなる奴もあって、しかもそれも毎日変わるの。

その歓迎してくれる気持ちが本当に嬉しくて、しかもプロモーターの人は誰もそのことを言わんのよ……だから、今日は熱い良い時間にしたい! 会場の皆さんもきっと私たちに想いを持って、時間を費やして下さっているはずだし。皆で最高の時間にしましょう!」

◇ライヴの長さ(談:あ~ちゃん)

・でもライヴは3時間も4時間もやれない。皆さんが立ってライヴを観て下さっているのは、誠実さ! 〈誠〉!!

◇チーム分け(談:あ~ちゃん)

・今日はこれしかないでしょう。〈養〉!〈老〉!!〈乃瀧〉!!!

・「延命餅」でも良かったんだけど、それは〈養老乃瀧〉の引き出しに入っとる

◇グッズ小芝居(談:3人)

の「皆さん、グッズ買ってくれてありがとう!」

か「今回は宇宙っぽい名前をたくさん付けました。アースグレイ、コスモピンク、スペースブルー……あとブラックホールとか」

の「今回も可愛いグッズがたくさん、おしゃれ靴下とか」

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(ステージに不在だったあ~ちゃんが帰ってくる)

の「あっ、おしゃれ靴下のプロデューサー!」

あ「(ゆったり歩きながら手を振って)どうも……おしゃ下の……プロデューサーです(以下大意。ちゃあぽんがいつも地方に行くと派手な靴下をお土産にくれる。それを気に入って履いていたが、2人の靴下はシンプル。でも自分のタンスの靴下ゾーンはカラフル。シンプルだけどカラフルな靴下が欲しい……)今回、それを…………実現しました

か「パシャー! パシャー!(エアカメラ)」

の「こっちも目線下さーい!(エアカメラ)」

あ「(アルカイックスマイルで悠然と手を振る)」

 

◇引っ込んでいくマイクスタンドあれを見て(談:のっち)

の「収納の儀も済んだところで」

◇若さ(談:3人)

あ「行ける?」

か「(精いっぱいの若くてカワイイ声で)行ける!」(客大喝采)

あ「行ける?」

の「(少し喉を鳴らしてから精いっぱいの若さで)行ける!」(あ~ちゃん大爆笑)

あ「なんか〈んんっ〉って言っとった! それも込みで、あんたおもしろいねえ!大好きよ!」

◇起こせミラクル?(談:あ~ちゃん)

仙台、ミラクル起きるねぇ! ♪起こるミラクル~、起こせ想い~(いきなり「Sweet Refrain」アカペラ歌唱)

 

あといろいろあったんですが、ライヴの内容に関わるものはバッサリ割愛するとして、差し支えないところで「これもあったよー」など、コメントでご教示ください。

 

◇私見

 

初日のライヴにはちょっとがっかりしましたが(ちなみにアリーナの結構良い席)、この日はスタンドの最上段。つまりいちばん後ろの席でしたが……このライヴはとても楽しかった! 3人のダンスのグルーヴ感も良好でした。

音響は、場所が違うので単純に比較できませんが、初日は腕の体毛がチリチリ震えるようなド迫力の鳴りをクリアに堪能できて、2日目はちょっと遅延はありながらも、あまり気にならなかったです。

 

何より、今回のステージセットは大規模な仕掛けがあり、それはスタンド席がいちばん見やすいのですが、それをごく自然に成功させていることにつくづく感服しました。

 

ただ観ている分には、わぁー凄いなーで済ませられますが、もしあれが急に動かなくなったら?スピードやタイミングがずれてしまったら? 決して簡単なものではなく、毎回確実に成功するものでもありません。

その精度と正確性をどこまで高められるか?しかも効率的に。それがメンバーとスタッフの皆さまの命題であり、それを実現するための膨大な労力と工夫(K.U.F.U)がライヴの成功を支えていることを、まざまざと目のあたりにしたライヴでした。

 

まあね、「この曲なんでまだやるの?」とか、「なんでこの構成なの?」という思いはそれでもありますけど、構成については2日目、メンバーの説明で腑に落ちました。ライヴ全体の流れ的にどうなんだろう……とは思いつつ、でもある意味凄くライヴらしいとも言えるし……という歯切れの悪さでもってレポート終了です! 次回は僕の生まれ故郷、静岡です。

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↑仙台駅の「北辰鮨」。これは1階のお店ですが、3階の立ち食いも極めて美味しいです

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↑ありがとう、仙台ワシントンホテル

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第71回 『COSMIC EXPLORER』

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前置きは不要ですね。『COSMIC EXPLORER』は、Perfume中田ヤスタカ新たな挑戦と工夫、独創性と意外性が存分に発揮された、2016年を代表するアルバムです。

 

どんなアイドルグループもDJ/トラックメイカーも、いまだかつてこのような作品は作っていないでしょう。その理由のひとつに、中田ヤスタカが特に『JPN』以降注力している、アルバムを1枚通して(つまりじっくり時間をかけて)聴くことに意味を持たせるサウンド・デザインが、『COSMIC EXPLORER』においては徹底的に突き詰められていることが挙げられます。

 

 

いきなりですが、あなたは普段音楽を、いつ・どこで・どうやって聴いていますか?

おそらくは移動中などの隙間時間に、iTunesのようなアプリに曲をインポートしたり、YouTube音楽配信サービスで好きな曲を選んだりして、スマートフォンのようなデジタル・デバイスで聴いている方が多いでしょう。

えっ? CDを買って、家でじっくり聴いているって? うん、僕もそうですけど、それかなりのマイノリティーですよ!

 

でもそんなご時世だからこそ、ヤスタカは〈時間の芸術〉である音楽を、時間を掛けてじっくり聴く楽しさを提案しています。いまの時代ならではの批評性ですね。

 

◇2016 : A SPACE ODYSSEY(2016年宇宙の旅)

アルバムの序盤は、聴き手を作品の世界に導入する序曲「Navigate」から5曲目の「STORY」まで、初めて音源化される曲で固めてきました。

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壮大なスケール感とマニアックに入り組んだアレンジを両立させたエレクトロ「COSMIC EXPLORER」、HardwellやCalvin Harris、Aviciiあたりが速攻で思い浮かぶプログレッシヴ・ハウス「Miracle Worker」、ディスコ・ブギーなイントロのエレクトロ・ハウス「Next Stage with YOU」、ヘヴィーでブリーピーなエレクトロ組曲「STORY」と畳み掛けます。

ここには現行ダンス・ミュージックのトレンドもあれば、他に誰もやっていなさそうな路線もある。重要なのは、ヤスタカとPerfumeというフィルターを通して、よくある〈流行ってるらしいから(or 誰もやってないから)やってみました〉的な出オチに陥らない、独自性と高い完成度を……といっても、そこはいつも大抵クリアしていますね。それも実に凄いことですが。

◇Next Stage

アルバムの序盤は『LEVEL3』以降の、それこそPerfume〈Next Stage〉を提示する役割も果たしています。中盤以降はほとんど既発曲ですが、ヤスタカは単なるシングル曲の寄せ集めに陥らないよう、シングル曲をアルバムの一部として新たに機能させるための〈Album-mix〉を、多く混ぜる戦略を取りました。

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FLASH(Album-mix)」では、初出ヴァージョンでのよくあるビッグルーム・ハウスに和風のメロディーを載せたという印象が一転。プログレッシヴ・ハウスからユーロ・ダンス、テクノ・ポップにテック・ハウスなどを行き来し、ビートを抜き差ししながら次々とサウンドを変貌させていきます(最初のサビがまさかのビートレスで、これが物凄く利いています! あえて音を抑えることも、一種の演奏なんです)。

へー、こう展開するんだ!じゃあ次はどうなるんだろう?……うわ!こう来るか!!というワクワクがずっと続く、これこそ〈時間の芸術〉たる音楽の醍醐味です。

 

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不遇の名曲「Sweet Refrain」のAlbum-mixでは、ブロステップ色が後退し、エレクトロ・ハウス寄りに。原曲はポップな甘いメロディーとゴリゴリのウォブル・ベース(強烈に歪んだ、不規則なリズムのシンセ・ベース)のマリアージュがちょっと歪ながら、それゆえクセになる魅力があった(そして他に誰もやってなかった)ので、そのまま入れても面白かったかもしれませんが、ヤスタカのバランス感覚による変更なのでしょう。ちなみに2番でヤスタカがノリノリで弾いているギターは……まあご愛敬ということで。

 

アルバム中では最後となる新曲「Baby Face」は、一転して音数をそぎ落としたアレンジで、3人の歌と〈Wow...〉というコーラスを立てています。こういう曲をここに挟んでくる緩急の付け方も流石です。お姉さん目線の詞もいままでなかったタイプですね。間奏のシンセが、Yellow Magic Orchestra「1000 Knives」ほとんどそのままなのは……まあご愛敬ということで。なおこちらのBabyfaceも最高なのですが、たぶん一切関係ないですね。

◇銀河を超えて 星屑たちの川上り

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王道のPerfume節と言えるエレクトロ・ハウス「TOKIMEKI LIGHTS(Album-mix)」を挟んで、ついに出ました! YouTube16億回再生された、世界的超絶ヒット・ナンバー!! 急逝した俳優のポール・ウォーカーに捧げ……

 

えっ? この曲、Wiz Khalifaの「See You Again」のリメイクでしょ? ピアノのリフもコード進行も〈Wow...〉のコーラスも、激似ですよ?

 

お時間のある方は、下の曲に合わせて「STAR TRAIN」を歌ってみて下さい。〈手探りで夢を見る/何もない ただ信じて/空までが遠いほど/片道切符を求めて〉

 

……という意地悪はさておき、でもこれは決してパクリじゃないですよ。パクるなら普通、もっとバレないようにやります。ですのでこれは「See You Again」に対する、日本からのアンサー・ソングなのだと思います。なぜよりによってヤスタカがアンサーしたのかはよくわかりませんが。

◇輝く星空のような

続いて「Relax In The City」「Pick Me Up」が、それぞれシングル盤と変わらないヴァージョンで登場。

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「Relax In The City」はPerfume史において、傑出した完成度を誇る楽曲でしょう(宇多丸さんも「マブ論」で、「2015年の彼女たちのリリースではこれがベスト!」と太鼓判)。私見ですが、この曲はシングルの時点で、これ以上変えようがないくらい完成していたと推察しています。

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Perfume初の歌い上げ系ビッグルーム・ハウス「Pick Me Up」もシングル版のままですが、アルバムを通して聴くと、いかにもEDMです!なビルドアップ(この曲の10秒~15秒みたいな、強引にアゲていくブレイク部分)を含むのはこの曲だけですね。これこそAlbum-mixで聴いてみたかったけれど、手を入れなかったのには、何か意図があるのでしょうか……

 

「Cling Cling(Album-mix)」

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変わりすぎだろ、シングルと……!! 原曲のエキゾ感をそぎ落とし、テクノやブロステップ、ハウス、エレクトロなどを盛り込んだ、ダンス・ミュージック幕の内なアレンジ。FLASH(Album-mix)」ともやや被るので、思いっきりミニマルとかにしてもおもしろかったような。ハウスやテクノの前時代の、シンセサイザー・ミュージックを思わせる音色も気になりました。メロディーに対するコードの当て方も相当ひねっていて、CAPSULE「Transparent」を彷彿とさせます。この曲はアルバム中で唯一、初期のようなチューン・ヴォイスを使っていますね(※他にもあったらすみません)

 

◇Hey Baby(I wanna hold your hand)

アルバムの最後を飾るのは「Hold Your Hand」

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「Relax In The City」と双璧を成す、傑出した楽曲だと思います。そして〈宇宙探索〉という壮大なテーマで始まるアルバムが、〈キミと手を繋ぎたいんだ〉という、恐ろしくスケールの小さい、プライヴェートなコミュニケーションの歌で終わること。この流れはいろいろな解釈できますね。

僕がいちばん感じたのは、〈宇宙探索〉と〈キミと手を繋ぎたい〉を並列に、しかも短い時間で豊かに表現できるのって、やっぱり音楽ならではだよなーと。音楽を聴くのって、やっぱり音楽でしか味わえない体験だし、何よりめちゃくちゃおもしろいな!ってことでした。

そう思わせてくれる音楽は少ないです(Perfumeファンだからそう思うのかもしれないけれど)。そして今回も、期待を上回る素晴らしい作品が届いたことを、心から嬉しく思っています。

 

そして最後になってしまいましたが、3人のヴォーカルはその肉体性や存在感を、より豊かに感じられました。歌声のアンサンブルとハーモニーが醸す美しさこそ、やっぱりPerfume最大の魅力かもしれませんね。

 

 

ちなみに「Hold Your Hand」で締める意味は、〈人間の心は宇宙よりも……〉とかの解釈もできそうですけど、まあそれは誰かに任せますんでよろしく!

第70回 How Perfume Works

◇〈Perfumeはなぜ続くのか?〉

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言われてみれば、いままであまり表立っては語られなかったテーマかもしれません。

Perfumeはなぜ続くのか。

 

 

それはもちろん、所属事務所に十分な利益をもたらしているから……という考えは(事実であっても)よろしくない見方ですので、当ブログとしてこの問いに(※問われていなくても)答えるとすれば一言、

 

 

Perfumeは独自の価値を創出し続けているから〉です。

この〈価値〉は、音楽的・文化的な価値に加えて、ビジネス面での成功も含みます。

 

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◇Hard Times

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日本レコード協会ホームページより。2014年までのデータで、「有料音楽配信」の売上は入っていません

週刊文春の平成28年3月31日号、近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」では、音楽業界にとっての2016年という時代を、以下のように表現されています。

 

〈音楽商売が、あらゆる意味でかつてほどにはもう“美味しくない”ものだ、ぐらいのことを、子供たちがとっくに見透かすようになってしまった時代〉

この書き方に異論もあるでしょうけど、完全に否定はできません……

そんな時代に、Perfumeが収めている成功とその実績は群を抜いています。

 

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ではその成功の秘訣は何か?

 

 

 

それは、ずっとこのブログで書き続けている(つもりの)、Perfume〈新しくて面白いことに挑戦し続ける姿勢〉が、独自の価値に繋がっていると見ています。

 

 

……と言っても、「別に新しいことなんかやらなくてもいいよ。Perfumeがあの3人であるだけで最高じゃん!」って方もいらっしゃるでしょう。

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それではここで、アルファベット社(※Google持ち株会社。現時点での時価総額は世界一)の会長であるエリック・シュミット氏と、同社のラリー・ペイジCEO(※Google共同創業者)のアドヴァイザーであるジョナサン・ローゼンバーグ氏が上梓した「How Google Works」から引用してみましょう。

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◇How Google Works

エリックとジョナサンは、「情報」「インターネットへの接続」「コンピューティング能力」の3つが安価になり、誰でも簡単に手に入れられるようになった結果、あらゆる産業を巡る環境が激変したことを踏まえて、〈いまや企業の成功に最も重要な要素は、プロダクトの優位性になった〉と書いています。プロダクトは競合他社と大差ないものにして、プロモーションや売り方で勝負するやり方はもう正しくないのだ、ってことですね。

消費者にとって、かつてないほど情報が溢れ、魅力的な選択肢がたくさんある時代を迎えた以上、あらゆる企業はプロダクト開発プロセスのスピードと、プロダクトの質を高めることを最優先すべきである、と。

 

そして劇的に優れたプロダクト作りに必要なのは、優れてクリエイティヴなスタッフが自由に創意工夫と試行錯誤を重ねられる環境であり、プロダクトの優位性を左右するのは、技術的アイデア(革新的な技術の活用方法やデザイン)である、と定義しています。これらによって生まれるのが、いわゆるイノヴェーションですね。

 

◇How Perfume Works

上記の図式をPerfumeに当てはめてみます。

クリエイター陣の創意工夫と試行錯誤に裏打ちされたプロダクト(=作品とライヴ・パフォーマンス)の優位性があり、技術的アイデアを活かした、フレッシュなライヴ演出やプロモーション手法があります。

それらの要素は激変する音楽業界においても、Perfume独自の新しさや面白さとして、広く支持されていると思います。

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その意味で、Perfume音楽産業においてイノヴェーションを起こす(そして維持する)ことに成功した、日本では数少ないグループかもしれません。だからこそ、国境を越えて支持されているわけで……。

 

 

作品とライヴの新しさ・おもしろさ以外では、3人の可愛らしさや衣装・髪型といったヴィジュアルの見せ方、そしてメンバーのキャラクターも、プロダクトの優位性のひとつですね。

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……ん? そういえば冒頭の画像……

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夢を未来に変え続ける3人に迫る超大特集……

 

 

◇I Dreamed A ...

音楽メディアがPerfumeを採り上げる際に、すぐメンバーの人柄や関係性、物語性を〈信頼〉〈絆〉〈希望〉〈未来〉〈夢〉といった美辞麗句で褒めちぎる傾向は、「GAME」~「⊿」期にはそこまで目立たなかったように思うのですが、昨今では

Perfumeメンバーの謙虚な人柄

・3人のお互いへの思いやり、支え合い

・夢を諦めず、一生懸命努力する真摯な姿勢

・メンバー同士の仲の良さと、3人であることの強み

・広島での下積み時代から、世界へと羽ばたいていく物語性

あたりがやたらとフォーカスされるようになっています。

 

でもこの論調には、大きな不備が2つあるように思います。って変な日本語ですね。

 

 

【1】Perfumeメンバーの〈関係性〉〈物語性〉に特化した紹介では、映画で例えるならば俳優そのものと、映画のストーリーばかり話していて、肝心の映画の出来栄えに何も言及していないのと等しいです。

 

映画には、俳優(のパフォーマンス)を魅力的に見せるための演出やカメラワーク、脚色、編集、セット、照明、美術、衣装、メイク、特殊効果など、ありとあらゆる要素があります。そして何より、その映画が〈いまこの時代に作られて、観られる意味〉が、作品のテーマやメッセージに込められています(※込められていないものもあります)

それらにほとんど触れず、俳優の人柄やその関係性、映画のストーリー進行を追うだけのテキストが、芯を食ったものと言えるでしょうか。

 

映画と同様にポップ・ミュージック、とりわけヒット・ソングは、時代を映す鏡です。大衆の欲望を具現化し、満たすものです。Perfume(その関係性、物語性込みで)押しも押されもしない位置にいますが、中田ヤスタカはその評価に甘んじることなく、Perfumeの作品リリースでは一貫して〈じゃあ、こういう音楽はどうかな?〉という提案型のアプローチを試みてきました。そこから生じる意外性や新しさが、Perfumeプロダクトとしての優位性でもあったはずです。

 

ヤスタカのそういう姿勢にも関わらず、〈いま、この音楽の何がおもしろいのか?〉をとことん考え抜いて読者に伝えることはせず、関係性やら夢やら未来しか語らないのは、音楽ジャーナリズムとは言えません(偉そう)。

 

 

【2】音楽メディアがPerfumeを評するにあたり、〈夢を未来に変え続ける3人〉のようなポエミーな文章に留まってしまうのは、はっきり言って2007~2008年当時のPerfumeの取り上げ方から、ちっとも前に進んでいないと思います。Perfume自体はずっと前進しているのにも関わらず。

 

 

Perfumeは音楽産業にイノヴェーションを起こすことに成功しました。でもそれは、優れた音楽が軸にあり、そしてメンバー3人だけじゃないチーム編成だからこそ可能だったわけで、それを安易に〈3人の関係性と物語性〉で括ってしまうような論調には違和感を禁じ得ません。

 

◇STORY

それでも、〈夢を未来に変え続ける3人〉というポエ……もといリードが〈ファンが読みたいPerfumeの物語〉であることも、紛れのない事実でしょう。いまの時代には、Perfume〈関係性〉から紡がれる〈物語性〉こそが渇望され、価値のあるものと見なされていると思います。

 

 

 

だからこういうブログも始めたんですけどね。

 

第69回 Perfume 1st US Tourの会場あれこれ

 ついに詳細が発表されました、Perfume初のアメリカツアー!といっても初めて名前を聞く会場ばかりですが、はたしてどういうところなのでしょうか?

Venue 1 : The Wiltern(Los Angeles, CA)

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http://www.wiltern.com/

初のアメリカツアー、8月26日(金)のオープニングを飾るはLA。Perfumeアメリカ進出のきっかけがこの街(映画「カーズ2」のワールドプレミア)だったことを考えれば、Perfumeの物語性〉が好きな方々にも納得のセレクトでしょう。

コリアンタウンに位置するこの会場、1931年に開業し、85年に改修再オープンを果たしました。キャパシティは公演によって(スタンディングか座席指定かで)変動するようですが、3000~3500というところみたいで、いまなお〈LAで最大のシアター〉だそうです。過去の出演者も枚挙に暇がなく、Rolling StonesやDavid BowieElton Johnといった大物からAdele、Kendrick Lamar、Sigur Ros、そして我らがOK Goも出てます。

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現在(2016年3月5日)決まっているラインナップですと、日本人だとガゼットV系)やBABYMETALもワンマンライヴを実施。他にもGalantis(EDM)、Umphrey's McGee(ジャム・バンド)、FloetryR&B)、Third Eye Blind(ロック)、Kirk Franklin(ゴスペル)、Dream Theaterプログレ)など。ジャンルは多岐に渡っていますが、実力派といえるアクト揃いですね。

 

Venue 2 : The Warfield(San Francisco, CA)

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http://www.thewarfieldtheatre.com/

2本目の8月28日(日)も続けてカリフォルニア州と来ました。1922年に設立され、2008年に改修再オープンした2250人収容の会場。当初はヴォードヴィル(歌や踊り、劇や曲芸など)や映画向けの劇場だったようで、そんななかLouis Armstrongチャップリンなんかもステージに立っていたらしいですが(さらっと書いてみたけど震える)、79年に伝説的プロモーターのBill GrahamBob Dylanを、しかも2週間ブッキングしたことを機にコンサートホールに転じたようです。由緒も伝説も保つ、アメリカらしいホールですね。

出演者はそのディランに始まり、地元が誇るGrateful Dead、Prince、最近だとThe Killers(ロック)やAdele、Skrillex(EDM)なんかも挙げられています。

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現時点でのラインナップはSlayer、Tinashe(R&B)、At The Drive-In(ロック)のほか、B.A.P.やAOMG(これはレーベルのショーケース)といったK-Pop勢の名前も。と思ったら初音ミク&Anamanaguchi(Ultra KoreaでPerfumeと同じステージに立ち、その場でファンを公言したNYのオタクバンド)なんてのもありますね。カオス。そしてそれがおもしろい。

 

Venue 3 : The Vic Theatre(Chicago, IL)

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http://jamusa.com/the-vic/

8月31日(水)、3本目はイリノイ州のシカゴです。1912年にヴィクトリア・シアターとしてオープン。ここまで実に長い歴史のある会場ばかりです。日本にはそんな会場ほとんどないというのに……メインフロアはスタンディングのみで1400人収容、さらに椅子席が1000ある模様

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↑すみません、以前の画像は違う会場のものだったようで、こちらは正しいです。

過去の出演者は、こちらもDavid BowiePaul SimonPearl Jam(ロック)、King Crimsonプログレ)、Trent Reznor(ロック)、Phishジャム・バンド)、Emeli Sande(ポップス)などなど。

他のラインナップは、こちらもK-Pop勢のDynamic Duoがいますね。Adam Lambert(ポップス)、Pusha T(ヒップホップ)、St Germain(ハウス~テクノ)などなど、おもしろそうなアクトが目白押しです。Wilco(ロック)のJeff Tweedyも出ているな?と思ったら、彼らはシカゴのバンドでしたね。

 

Venue 4&5 : HAMMERSTEIN BALLROOM(New York, NY)

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http://www.mcstudios.com/

Perfume World Tour 3rdでもライヴを行った会場に凱旋。しかも今回は9月3日(土)、4日(日)の2DAYSです。1906年にオープンし、当初はオペラ劇場だったとか。マンハッタンを代表する多目的ホールのひとつで、収容人数は3500です。

過去にはGuns n' Roses、Beck、Swedish House Mafia(EDM)やJustin Timberlake(ポップス~R&B)、Ed SheeranにBABYMETALなどなど。直近だとFutureとTy Dolla $ignという注目ラッパーのツーマンがソールドアウトさせたみたいです。

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3月時点での他のラインナップはMetric(ロック)、St. Germain、Santigold(R&B~ベース)、Macklemore & Ryan Lewis(ヒップホップ)、Walk The Moon(ロック)、そしてここにも初音ミク!!

 

と、ここまで見てきました。どれも伝統あるホールばかりですね。それにしても新しい会場は取れなかっ……いやいや邪推は止めましょうか。

 

これまでのPerfumeの海外ツアーは〈お披露目公演〉的な位置づけ&セットリストでしたが、あくまでも今回は「COSMIC EXPLORER」リリース・ツアーの一環という位置づけです。Perfumeが、地域に根差した(=地元住民に長く親しまれている)これらの会場でどのようなライヴをやるのか、どう受け止められるのか。またもや新しい挑戦が始まります。

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なお個人的には「もし、せっかくアメリカまで行くのなら、Perfume以外のライヴも観たいな……」が本音ですので、そのテーマは引き続き調べて参ります。

第68回 「STAR TRAIN」は、新たなスタートラインか?

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Perfumeの2015年を、簡単ですが振り返ってみましょう。

3月 映像作品「Perfume WORLD TOUR 3rd」リリース、「SXSW」出演

4月 シングル「Relax In The City / Pick Me Up」リリース

5月~8月 各地のフェス/イベント出演

9月 「Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP」開催

10月 シングル「STAR TRAIN」リリース、映画「WE ARE Perfume –WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」公開

 

こうして見ると、結成15周年&メジャー・デビュー10周年に相応しく、周到に計画・準備のなされた、充実したアニバーサリー・イヤーでしたね。

 

その記念的な1年の締め括りにリリースされたシングルが「STAR TRAIN」です。映画「WE ARE Perfume –WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」のために作られたこの曲。SNSでの評判を見ると「泣ける!」「この曲はPerfumeそのもの!」「ヤスタカから3人へのメッセージ!」などなど、極めて好評のようです。

 

でも、これは全部、歌詞への称賛であり、サウンド面などにはあまり言及されません。なぜでしょうか?

 

◇Thinkin bout...

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映画だけでなく、「LIVE 3:5:6:9」でもフィナーレを飾るという、象徴的な使われ方だった「STAR TRAIN」。近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」924回(週刊文春2015年11月19日号)で、この曲が採り上げられていたので、主な内容を引用させていただきます。

 

PerfumeがTVに出演して「今回は泣ける曲です」と言っていたけど、大丈夫なのか? これまでに聴いてきたPerfumeの曲は、どれひとつとして〈泣ける曲〉〈泣かせる曲〉などなかった

・J-Popの世界は、作品の良し悪しではなく、演者への感情移入や応援が優先されるという意味での〈アーティスト至上主義の世界と言える

・そんななかでも、Perfumeはあくまでもサウンドのおもしろさや新しさでのアピールに徹してきたはずだ。言い換えれば、決して情に訴えるようなことはしなかったのに、今回は様子が違う……

 

悲しいことに予感が的中してしまった。まったくビートっ気のない曲調、ベタでひねりのない歌詞。どこにも刺激が感じられない

・あれほど近未来的なテクノ(筆者注:厳密にはテクノではないと思います……)をやっていた人たちとは思えぬほど、普通に普通のJ-Popの音

・キツい言い方になるが、これは退行ではないか?

・これを機に、Perfume無難な路線に進んでしまうのだろうか。聞けば聞くほど不安が募る

 

 

近田さんは、ずっとPerfumeを(それなりの距離を取りながら)応援して、その楽曲の魅力を高く評価してこられた方です。

それは近田さんがPerfumeのライヴでお馴染みの「ジェニーはご機嫌ななめ」の作曲者である、という背景とも違う、ミュージシャンとしてのフラットかつフェアな評価でした。直近では「Relax In The City」なんかも、近田さんは惜しみなく評価して下さっています。こちらはブログにも書いています。

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また先日出版された「Fan Service[TV Bros.]~」では、2007年の近田さんとPerfumeの対談も掲載されており、こちらも必読です!

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そんな近田さんが「STAR TRAIN」を、違和感や戸惑い、不満を隠すことなく、正面から批評(※単なる批判ではありません)しました。

この記事を読んだ私は〈そんなことない、「STAR TRAIN」は泣けるよ!〉〈近田さんはPerfumeの関係性をわかっていない!!〉といったことを……

 

 

まあ1ミリも思いませんでしたね。この記事には一理ありますし、むしろ私の感じたところを、踏み込んで表現して下さったようにも感じました。

◇Music is everything?

ここで私の「STAR TRAIN」の感想を、サウンド面から書かせていただくならば、これはPerfume流のスタジアム・ロック(アリーナ・ロックとも言う)だと思います。なおこの見方、ネット上では他にどなたも書いていません。一応英語も含めてググって確かめました。

 

では、そのスタジアム・ロックって何?ですが、大雑把ながら

1:大会場に似合う、壮大な曲調・サウンドで

2:群衆がシンガロングして盛り上がれる曲

でしょうか。それこそColdplayFoo Fighters、Imagine Dragons、U2なんかをイメージしていただければと思います。One DirectionやTaylor Swiftもある意味ではそうかもしれません。イメージ的に1曲挙げるとすれば、これですかね。

 

そして2010年代のスタジアム・ロック(的にウケているもの)といえば、間違いなくEDMです(とりわけビッグルーム・ハウス。サウンド面での差異はさておき)。これはアトランタのダンス・フェス、TomorrowWorldでも体感しました。ド派手なサウンドに合わせて、群衆がシンガロングしまくり。たとえその曲がインストであっても、観客は大声でウォウウォウと歌うことで、会場の一体感を高めていきます。

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「STAR TRAIN」の〈ウォーーオーー、ウォウォゥオオーーー〉(他に書き方ないのか)というシンガロング・パートは、まさにそれですし、途中でいかにもなビルドアップ(1分15秒あたりとかの、アゲていくブレイク)が入るのも、ビッグルーム・ハウス的です。

 

Perfume版のスタジアム・ロック(としてビッグルーム・ハウスを拝借する)というアイデア、いままでになかったしおもしろいですよね。しかも、これみよがしにドラマティックな展開にもできるところ、それは避けて、基本的に4つのコードが循環するだけの、抑制の利いた構造もユニークです。

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しかし、それで新鮮なおもしろい曲になるかは、また別のお話なわけで……。

 

 

ヤスタカは「STAR TRAIN」の構造をシンプルにする代わり、アレンジで抑揚を付けています。これを単調と取るかダイナミックと取るかは人それぞれですが、確かに近田さんの指摘する通り、ミディアムのビートは良くも悪くも平凡な印象です。それに乗るピアノもギターも普通のアコースティックな音色で、ちょっぴり保守的な印象は拭えません。

 

もちろん「STAR TRAIN」に新味がないわけではなくて、3分20秒からのアカペラで声を重ねてアゲていく感じは新鮮です。あとは、うーんと……まあいろいろありますよね……

 

◇ You ready for this?

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 「音楽と人」2015年12月号によると、今回は最初に「TOKIMEKI LIGHTS」ができていたものの、もう1曲(つまり「STAR TRAIN」)を作るためにヤスタカは相当な時間をかけて、レコーディングの予定も延期を重ねたそう。これは〈5分の曲なら5分で作れる〉とうそぶくヤスタカにしてはかなり珍しいことのようです。

 

そしてようやく曲が出来上がり、レコーディングに臨むメンバー3人が詞を読み、〈この曲、私たちのことを書いてくれている……!〉と泣いた。というのが、言ってしまえばこの曲の最大のポイントなわけで、そこに乗れるかどうかが、この曲の評価を大きく分ける気がします。

 

〈そこに乗れるかどうか〉、つまりPerfumeのストーリーや、3人の関係性にどれくらい感情移入できるか、心酔しているか、です。「STAR TRAIN」は、Perfumeの〈ストーリーと関係性〉を描くためにあるような曲です。〈肩を組んで笑ってきた/僕らはきっと負けない〉とか〈歯車のように噛み合う力は/一人じゃきっと伝わらない〉とかね。

 

Perfumeの楽曲には、ヤスタカがその時々のPerfumeを巡る状況や、3人へのメッセージを、詞に書き込んだと思しきものが散見されます。解釈は人それぞれですが、love the world「マカロニ」(たぶん)「JPNスペシャル」、言わずもがなの「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」……

 

 

そしてDream Fighter

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この曲、リリース当時は初の日本武道館公演に挑むPerfumeを象徴する楽曲という印象でしたが、いまやこの曲は普遍的な応援ソング(a.k.a 頑張れソング)として、多くのファン、そして何よりPerfumeメンバーから親しまれています。

 

今回の「STAR TRAIN」の受け入れられ方は、「Dream Fighter」と非常に近いものがあります。それ自体はまあそうだろうな、という感じですが……さあ、ここからが本題ですよ(※前置きが長い)。

 

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前回のエントリーで、Perfumeには〈多面的な魅力〉があり、ファンがそれぞれ自分の好きな要素を見い出すと書きました。いま、その需要がPerfumeのストーリー性〉と〈3人の関係性を含むキャラクター性〉に偏ってきているのではないでしょうか。あと、〈最新テクノロジーの活用〉もあるんですが、それはまた稿を改めて……

 

◇SERVICE

以前、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さんは「昨今の日本人が、やたらと感動しよう、感動しよう、でなきゃツッコミを入れよう、入れよう、としている」と、ブログで書かれていました。その通りだと思います(もしあとひとつ付け加えるなら、褒められたがっている、特に海外から、とも感じます)。

その風潮の背景には様々な社会的要因がありそうですが、それはさておき、感動できて、泣けて、ツッコミを入れられる(そして海外でも認められる)ことにコンテンツの価値があるとするのなら、Perfumeってそういう意味では完璧かもしれません。

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でも、Perfumeの……というより音楽の魅力は、〈感動できること〉だけではないわけで。

 

 

 

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今回の「STAR TRAIN」、やたらと〈感動〉ばかりに焦点が当たっていますが、では実際にヤスタカはどういうつもりで書いたのか?

 

もちろん、Perfume3人のことを想って書いているとは思いますが、むしろヤスタカが時々やる、「お前らこういうの好きなんだろ?」的なサーヴィス精神の表れといいますか……

ここで、CMなどのタイアップが付いた、近年の楽曲の傾向を考えてみましょう。

 

Natural Beauty Basic」のCMソングナチュラルに恋して

「氷結」のCMソング「GLITTER」

氷結やさしい果実の3%」のCMソング「微かなカオリ」

「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)」の主題歌未来のミュージアム

VIERA」(ディスプレイ)のCMソング「DISPLAY」

メルセデス・ベンツ Aクラス」のコンセプト〈Next Stage with YOU〉をそのまんま拝借した「Next Stage with YOU」

 

これらに見られる、これでもか!!というくらいクライアントやその商品に寄せていく意匠が、間違いなく今回の「STAR TRAIN」にも透けて見えると思います。

むしろその意味で、Perfumeらしい曲でもありつつ、ものすごーーくヤスタカらしい曲とも言えるのではないでしょうか。

 

なお「STAR TRAIN」はWiz KhalifaとCharlie Puthの異常ヒット曲「See You Again」に似ている……というかそっくり……いや激似という話はまあ置いておきましょう。

www.youtube.com

 

◇Next Stage with YOU

いろいろ書いてきましたが、Perfume常に過渡期にあり(ますよね?)、「STAR TRAIN」が〈感動〉面での支持を集めても、結局はPerfumeの過程の、ひとつに過ぎないはずです。

 

この先に控えているニュー・アルバムとツアーで、また新しくておもしろい何かを見せてくれることを、心から楽しみにしています。

あ、「NHK紅白歌合戦」のPerfume尋常じゃなくチャレンジングで素晴らしかったです!!!

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第67回 Perfumeにまったく興味ない人の映画「WE ARE Perfume」感想

皆さん、映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENTはご覧になりましたか?

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きっとこのブログを見て下さるような(奇特な)方は、すでに鑑賞済でしょう。ぴあの満足度調査でも高得点をマークして1位、SNSをちょっと見ても絶賛の嵐です。宇多丸さんにも(当然ながら)好評でした。私も、クレバーなドキュメンタリー作品であり、誠実なアイドル映画であり、素晴らしい音楽映画だと思っています。

cinema.pia.co.jp

 

でも……これって、すでにPerfumeファンだったり、少なくとも興味がある人が観に行っているからだろうなぁ……Perfumeに関心を持っていない人、肯定的に評価していないような人が、あの映画を観たらどう思うんだろう?

 

決して、Perfumeファンじゃないと楽しめない、内向きな作品ではないと思うから、興味がない人にもぜひ見てほしい…………

 

 

 

あ、私が興味ない人を劇場に連行すればいいのか!!

 

 

ということで、確実にPerfumeに興味なさそうな友人を誘いました。

性別:女性

年齢:Perfumeメンバーより下

職業:コンテンツ制作

 

この友人に白羽の矢が立ったのは、この映画は〈ものづくりに携わっている人〉なら楽しんでもらえるんじゃないかな、という見立てによります。

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さっそく連絡したところ、「Pefumeの映画ですか? 友達も観に行ってたし、見てみたいです!」とのことで、ここまでは良かったのですが、映画を観る当日に意外な情報が揃いました。

 

 

・音楽は好き、やっぱりジャニーズは外せない

 

映画館に行くのは数年に1回

 

ドキュメンタリーは好きじゃない

 

・好きなお店は渋谷109

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うん…………どの要素も、今回の映画やPerfumeから、それなりに距離ある!!

(念のため。私もジャニーズのライヴには行ったことがあり、群を抜いて凄いショーだと存じ上げています)

 

しかも、以下は映画鑑賞後に聞いた(鑑賞後だからこそ、打ち明けてくれたと思いますが)、かつてのPerfumeの印象。

 

「TVで観たことはあったけど、あ~ちゃんがあまり好きじゃなかった

 

曲もどれも同じような印象

 

事務所が大きいから、きっとプロデューサーとか誰かの言いなりでやってるんだろうと思ってた」

 

当然ですが、テレビでPerfumeを知って、こういう印象を持った人も、そりゃいますよね。というかそんな低評価に関わらず、よくもまあ映画館まで来たな!!

 

実は、以前も女性にPerfumeの印象を訊いて、ヒヤリとする場面が何度もありました(白人女性に「Plastic」と言われたことすらあります。今思い出しても悔しいよ……)。どのへんで良し悪しを判断しているかは皆目わかりませんが、まあ女性が同性を見る目は厳しいということですかね。

 

◇対決の日が来る

ひとまず喫茶店で女の子と楽しくお喋りしながら(その情報いる?)Perfumeの簡単な来歴と、MIKIKO先生など重要人物を簡単にレクチャーしました。「『ポリリズム』でデビューしたと思ってた!」そうで、実にフレッシュな反応です。

そのとき、女の子から「Perfume歌やダンスを間違えたりしないんですか?」と訊かれて、「まあ、それは映画を観てもらうとして……」とお茶を濁しました。

 

さあ、いよいよ映画の上映が始まります!

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……そして2時間後。場所を近場のレストランに移して、以降はそこでの会話を一問一答形式でお伝えします。

 

◇キミの好きそうな映画 ちょっと眠たい?

―(上映中は)起きてた?

起きてました

 

―映画、少しは楽しめた?

すっごく良かったです!! お話したいことたくさんあります。あ~ちゃん……ですか? もうホント凄い! テレビで見てて、前はあんまり好きじゃなかったけど、一気に好きになりました

 

―印象に残っているシーンは?

たくさんあります! あの曲(「STORY」のこと)、あれ凄いです!あのカメラのスイッチング、どうやってるのか全然わからなかったけど、凄すぎて、いま自分が見ているのがライヴなのかCGなのか、わからなくなるくらい

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あと、ニューヨークでライヴが始まる直前、あ~ちゃんがカメラに向かって(※以下ネタバレになるので省略)。ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、ダメ出し会であ~ちゃんが(※以下ネタバレになるので省略)。ライヴが始まる瞬間の、お客さんがめっちゃ盛り上がってるシーンも最高です。お客さんの層もとっても幅広いですね。あ、ニューヨークの会場で、超胸元開いた黒人さんいましたよね? あの方はゲイですか?

 

―ダンス・ミュージックはゲイ・カルチャーと密接な関係がありますからね。さておき、あの地道な反省会のシーンはどう見た?

「事務所が大きいから、プロデューサーとかがいて、その言う通りにやっているんだろうって思ってたんですけど、あんなに細かいところまで、本人たちが決めているなんて思いませんでした。

マイクだって、ずっとヘッドセットでやれば楽なのに、ハンドマイクもちゃんと使って、しかもどこでどうマイクを受け渡すか、細かく調整していてびっくりしました。LAでしたっけ、あ~ちゃんが延々と修正箇所を言っていくところ、あれ凄いです。あ~ちゃんが本当に凄いです!

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―(やっぱりあ~ちゃん、すげえな……)

「あと、セットリストをあれだけ変えていくなんて! しかもそれがお客さんの声を活かしたり、お客さんの反応を見て入れ替えていく柔軟さがあって、あんなのPerfumeくらい人気がある人で、他にやっている人いないと思います。「(ネタバレ)」をどこに入れるか、ずっと話し合っているところもありましたけど、そういう変更でライヴが全然違うものになると思いますし」

 

―ああいうエレクトロニックなサウンド、普段は聞かないよね?

「全然聞きませんねー。でも、前は曲がどれも同じような印象でしたけど、こんなにいろんな曲があるとは思いませんでした。それはやっぱり振付があるからで、実際に目で見てみて、どの曲も全然違うと感じました。

Perfumeのライヴって、ダンスを見て、視覚で楽しむ感じだと思ってたけど、ああいう振付(たぶん「MY COLOR」とか)で、お客さんもいっしょに作っていくところもあるんですね」

 

のっちが派手にダンスを間違えるシーンはどう見ましたか?

「テレビで見ていると、のっちがいちばんクールでしっかりしてそうな感じだったんですけど……」

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―………。では、お客さんの姿がたくさん映っていたのはどう思った?

普通のドキュメンタリーなら、Perfumeの映像が中心になりますよね。ライヴはもっと日本人ばっかりだと思ってたんですが、現地の人多いですね! まあそういうショットを選んで使っているのかもしれないんですが、それでも現地の人が凄く多いのはわかりました。あと、ライヴを観ながら泣いているお客さんもいて、自分も昔、泣いたライヴのことを思い出しました」

 

Perfumeの魅力を大きく分けて、〈1:メンバー3人のキャラクター〉〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉〈3:スタッフとのチームワーク〉〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉があるとして、印象に残ったのは?

〈3:スタッフとのチームワーク〉ですねMIKIKO先生だけじゃなくて、スタッフの方々はずっと昔からいっしょなんですよね? そういう関係があって、そこで良いものを作ろうとしているのは、自分もものづくりに携わっている身として、凄くうらやましいです。

さっきも言いましたが、ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、あ~ちゃ(以下ネタバレのため省略)あの思いやり! 自分も似たような経験があって、あのシーンはそれを思い出して泣きそうになりましたね。

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Perfumeが海外に来るのをずーっと待っていた人たちにとって、あのライヴの2時間って特別ですよね。そういう時間を作れることって凄い。その分、絶対に失敗できないですけど。昔、自分もライヴの仕事に憧れていたのを思い出しました。やっぱり音楽の仕事もいいなぁ……って

 

―映画の中で〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉は感じた?

「売れていない頃からPerfumeを観ていたら、初めてのアメリカ・ツアーは超感動するんでしょうけど、それはわかりませんでした。でも、Perfumeにはストーリーがあるんだ、というのは映画で伝わりました

 

佐渡監督の編集はどう見た? 僕はライヴも反省会もお客さんもオフショットも、ちょうど良い配分で、考え抜かれたバランスだと思いました。

「そうですね。その映像がみんな、最後のニューヨークへと向かっていく感じがとても印象的でした」

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―女性ファンにはPerfumeみたいになりたい」「むしろPerfumeになりたい」という願望がある(人もいる)らしくて、男性の僕にはよくわからないけど、それはどう思う?

「うーん…………Perfumeには、女性として尊敬できる部分が凄く多かったです。憧れますよ。でも、例えばメンバーの足の細さも、単にガリガリな細さじゃなくて、しっかり筋肉が付いてました。物凄い努力をしていることは一目でわかります。だから、自分がそこまで大した努力もしていないから、安易に〈Perfumeみたいになりたい〉とは言えないですね」

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(想像だにしない回答を食らって絶句)えーっと……

ということらしいんですが、映画を観て、Perfumeの3人を少しは好きになった?

「あれ観たら、好きになりますよ!!ライブも行きたいです」

 

―では映画で、ここはあまり良くなかったな、というところは?

「手持ちカメラでメンバーに密着しているので、手ぶれが大きいところがあって、テレビならまだしも大画面で見ると、ちょっと気持ち悪くなります……」

 

―会長について一言。

「どの業界でも〈会長〉って呼ばれる人は、ああいう感じなんだなって思いました

 

―ちなみに今日は、なぜ映画を観に来てくれたのかな? あっ(髪をかき上げながら笑顔で)やっぱり誘ったのが僕だったから……

〈映画観たらご飯おごるよ〉って言われたからです」

 

―最後に何か一言。

映画、本当に楽しかったです! 今度、六本木のウルフギャング・ステーキに連れて行って下さい!

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↑ ウルフギャング(この店名どうなんだ)名物のプライムステーキ。1名分あたり8000円!!!

 

―申し訳ないけどそれは無理です。

 

 

はい、以上です。私が「○○のシーンはどう思う?」など、話を引き出した部分も少なくありませんし、順番も編集していますが、女の子の感想はほぼそのまま使わせてもらいました(※最後のオチだけは勝手に作りました)

 

P.T.A. MOVIE(〈Perfumeとあなた〉の映画)

映画の感想を聞くうちに、図らずもPerfume論的な話まで行きましたが、そこで思ったのは、劇中でかしゆかも語っているとおり、Perfumeは多面的な要素で構成されているため、観る人は、そこに自分が求めているものを見い出すのだろうな、ということです。

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私はPerfume最大の魅力は〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉だと思っていますが(つまり宇多丸さんやピエール中野さんと同意見)、メンバー3人の関係性に心酔する人もいれば、苦労人的ストーリーに感情移入する人もいます。

映画に付き合ってくれた女の子みたいに、スタッフの皆さんとのチームワークに共感する人も多いでしょうし、とにかくPerfumeの曲が好きなんだ!という人、メンバーが可愛いから大好き!な人、ライヴが最高に良いから!という人もいるはず(そしてこれらの複合も)。

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Perfume観る人の心(や願望)を反映する、映し鏡のような存在になっているのかもしれません。Perfumeファンが100人いれば、100通りの見方があるのでしょう。

 

 

でも、考えてみれば、これって映画の見え方と完全に同じですよ。

 

観る人の年齢、性別、人生経験や性格によって、同じ映画を観ていても、感じる内容は結構違います。例えば映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観て(このブログでよく名前出てくるな……)

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「なんか砂漠を車が走りまくっているだけの映画」「これこそ現代の神話なんだ!」

アクションこそ映画のすべてだと証明している」「大したストーリーもない、単調な映画だったよ」

「これは男のための映画!」「女性讃歌の映画だ!」

「主人公のマックスが最高!」「これフュリオサの映画でしょ?」

イモーータァァーーーン!!!!

※このブログは、〈すべての読者がマッドマックスを観ている〉という前提で制作されています。

 

みんなが同じものを観ているはずなのに、その見え方は全然違う。私は、それが映画の魅力と豊かさだと思ってきました。

 

ですから、ただでさえ多様な楽しみ方のできるPerfumeが、映画になる!というのは、物凄くジャストな題材と言えますし、それは輝くような体験〈brilliant experience〉……この引用元、わかる人いるかな?)となるのです!

 

 

映画「WE ARE Perfume」は、掛け値なしに素晴らしい〈映画〉です。ぜひ見てみてください。

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第66回 NHKのPerfumeドキュメンタリーが描いてきたもの その3

前回の続きです。

 

◇MJ presents Perfume × Technology(放送:2013年10月12日)

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2010年の「ドーム5万人ライブへの挑戦」は、MIKIKO先生や内山監督をはじめ、スタッフの皆さんのドキュメンタリーと言っていい作品でした。そして2013年の「MJ presents Perfume × Technology」はメディア・アーティストでプログラマーPerfumeのライヴ演出に携わる真鍋大度さんを大フィーチャー。言うまでもなく、制作統括は佐渡岳利さんです。

 

……もうNHKチームが、真正面からPerfumeメンバーを採り上げたドキュメンタリーを作ることはないんじゃないか?と当時はちょっと思ったりもしました。その予想は映画「WE ARE Perfume」で覆されるわけですが。

 

この番組では、Perfumeがパフォーマンスにどのようにテクノロジーを採り入れているか、それはなぜか(※ここ重要!)を掘り下げます。ちなみにこのPerfume × Technology」の最新形が、映画「WE ARE Perfume」での「STORY(SXSW-MIX)」ですね(映画での真鍋さんの登場は、まあ多くないですけど……)。

www.daito.ws

番組冒頭は、「Spring of Life」のMVや東京ドームでのPerfumeの掟」、ヒカリエでの「氷結SUMMER NIGHT」、WORLD TOUR 2ndなどの映像を、Perfumeのテクノロジー路線のダイジェストとして少しずつ見せます。2013年6月のカンヌ・ライオンズ(カンヌ国際クリエイティヴィティ・フェスティヴァル)でのステージは、ナレーションで〈最先端メディア・テクノロジーとリンクしたパフォーマンス〉と呼んでいます。

 

そしてここで真鍋さん登場。〈クリエイター集団・Rhizomatiksの一員で、いま世界から熱い注目を浴びる、アートとテクノロジーを結びつけるスペシャリスト〉と紹介されます。最初に、真鍋さんがPerfumeとの出会い〉を語ります。

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・PVをいくつか観て、興味を持ったのがきっかけ

音楽も振付もおもしろいな

・ライヴを観に行って、あまりエンタメのライヴは見たことなかったんですが、こんなに凄い演出をやっているんだ、って

・そこから凄くファンになった

 

真鍋さんが語ってる内容、〈Perfumeとの出会い〉じゃなくて、〈私はいかにしてPerfumeが大好きになったか〉じゃないか……ちょっと似てるけど、全然意味合いが違うよ!!

 

Perfumeメンバーが真鍋さんの人となりを語ります。真鍋さんのエピソードとして、〈沖縄でパソコンで釣り〉話を披露。しかも映像付きで。

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あ~ちゃん「すっげぇ遠くで釣りしてるのを、こっちでこう見てる、パソコン打ちながら……海でもパソコン使うんかい!!」

 

そして(2013年当時の)注目の技術として、プロジェクション・マッピングを紹介。しかも今回、動いているPerfumeの身体へとマッピングする、その動機を真鍋さんが語っています。

「静止している建物とかじゃなく、(動いている)人にプロジェクション・マッピングすることで、より振付がおもしろく見えたり、ダンスがカッコよく見えたりということはあるだろうなと思っていて」

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さりげなく話していますが、これは本当に重要な部分です。「なんかプロジェクション・マッピングって流行ってるらしいからやってみようぜ!」的な、テクノロジーやトレンドが先に立つのではなく、振付やダンスをよりカッコよく見せるための〈アイデアとしてマッピングがある、と。

この時期、スクリーンに普通に映像を投影して、それに合わせて人間が動いたりすること=プロジェクション・マッピングだと言っている人が私の身近(つまり音楽業界)にすら続出してましたけど、それは〈スクリーンの映像に合わせて人が動いてる〉だけです。普通のスクリーンではない、立体物などに映像を投影する技術がプロジェクション・マッピングのはずです。

こういう何も把握していない(理解しようとしない)人に限って「なんか流行ってるらしいから!」とか言い出すし、それはたとえばダブステップ」「EDM」でも、実情を全然把握せずにその名称だけを使いたが……いやいや愚痴はやめましょうか!!!!

 

さておき、動いている対象にマッピングするために使用するのは赤外線カメラと距離計測カメラの2種類。「メンバーの動きをリアルタイムで解析して、映像をトレースさせている」とのこと。

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さらにこれでマッピングするPerfumeの衣装は、コンピューターのリモート制御で羽やスカート部分が稼働するようになっています。衣装担当の三田真一さん大変だったろうな!

かつてファッション誌で、よく三田さんが〈いまイケてるスタイリスト〉として誌面に出ていたので、まさかPerfume関連でお見かけするとは、夢にも思いませんでしたよ……

 

もちろんこのマッピングを行う曲は「Spending all my time」かしゆか曰く「最初の振付は、あまり動きがなくて、それだと身体の動きにセンサーが反応してマッピングしているのがわかりづらくてもったいないので、振付を変更しました」と。これもまた工夫と改善ですね。

この「Spending all my time」、ひとつの衣装に二種類の映像をマッピングしていて、これは当時として世界初の試みだったそうです。

 

ここで「LIVE at NHK(後述します)での「Spending all my time」の映像が入ります。まあ、いつ見ても……めちゃくちゃカッコいいですわ!!!

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ここでは1曲をフルコーラスでじっくり見せてくれるのですが、これだけ長く1曲を採り上げるのはNHKPerfumeドキュメンタリーでは初めてだったりします。これまで映すのは人間がメインで、曲の扱いは短かったですから……

Perfume  History

「Spending all my time」が終わると、Perfumeは2000年に広島で結成されました」と、唐突にPerfume Historyが始まります。まあ、あった方が親切ですよそれは! 彼女たちの活動を振り返るなかで、初めてテクノロジーを本格的に採り入れるきっかけになったのが、2010年の東京ドームであることが示されます。真鍋さんたちがPerfumeのライヴ演出に関わった最初の公演ですね。

 

あ~ちゃんが初の東京ドームについて語ります。

「あんなに大きな会場は初めてだったので、大きな演出が必要でした。サプライズ的な演出がしたい」

真鍋さん「たとえば〈レーザーで風船を割りたい〉と言われて、こういう仕組みにすればできるな、とすぐに思いつきますが、そこであまりテクノロジーの話はせずに、演出の話だけして。僕らは裏で、テクノロジーを使ってどう実現するかを話し合います」

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お二人の話に共通しているのが、〈大切なのは演出〉と捉えていることです。そしてテクノロジーを使えば、それがそのまま演出になるわけではない、と。

おーい! 「なんか流行ってるらしいから」な連中、聞いたかーーーー!?

 

実際、あ~ちゃんは「レーザーでめっちゃ遠くの風船が割れるんです! 仕組みはよくわかんないんですけど」と笑っています。

 

しかし、風船が割れるかどうかは、会場の温度や湿度、そして風船の個体差に左右される要素が大きく、複数の風船を割る場合の調整はとても難しいそうです。

真鍋さんも「風船、割れないなーって」と苦笑。「あれは結構難しいシーンでした。本番当日のリハーサルでもうまく行かなかった。その場の温度や湿度も絡んでくるので、毎回同じ条件とはいかなくて。本番では、びっくりするくらいビシッと決まったんですけど」。

本番は5万人の観客が発する熱と湿度で、リハーサルとはまったく異なる環境です。そこでバシッと成功させるとは……運がいいのか何なのかわかりませんが、普通にやっているだけでは成功しない類のものであることは確実です。

 

ナレーションではPerfumeが思い描く、理想のステージ。それを支えているのが、テクノロジーなのです」テクノロジーは何のためにあるのか?ということですね。

 

Rhizomatiks

シーンは2010年から2013年へ。初台のICCで開催された「Rhizomatiks inspired by Perfume展」です。

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ちなみにここで真鍋さん、MIKIKO先生、関さんおよびICCの畠中さんによるトークショーPerfume inspired by Rhizomatiksが行われ、それは当ブログの第26回よりレポートしています(読み返したらおもしろかったです)

番組ではメンバーがRhizomatiks展に来場し、LED制御の衣装、ホログラフィック映像、3Dスキャンシステムを紹介していきます。

 

ちなみに番組中、ちょいちょいアイキャッチとして、Rhizomatiks展での来場者の3Dスキャンデータを用いた映像が出ます。この番組自体も、Rhizomatiksのコラボ作品のひとつと言えますね。

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その3Dスキャン、何となくのイメージで把握していましたが、定義付けるなら「物体を3次元のデータとして取り込み、解析することでその物体を360°の立体としてヴィジュアル化する技術」だそうです。ただスキャンしてデータを取り込むだけかと思っていました……

 

LEDが仕込まれた「Spring of Life」の衣装が、時系列に沿って3種類展示されています。

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PVのもの(2012年4月)、MTVイベント出演時のもの(同6月)、紅白歌合戦でのもの(同12月)。比べて見ると、PVの時点では有線でのコントロールで、制御装置も大仰でした。

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それが紅白では無線でコントロール、制御装置も相当小型化されて、もはや気付かないレベルまで改善されています。

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この間の8か月、どれだけ工夫に工夫を重ねてきたのかが窺えます。

 

そして紅白歌合戦のシーン。当日はLED衣装を無線で制御することに加えて、ステージ上の映像と音楽をすべてシンクロさせていました。生放送でこれは、リスキーな挑戦です。

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真鍋さん「自分のやっていることを、最終的にはいちばん大きなところでやりたかったので、それは日本で言うと、やっぱり紅白でした。ただ、前のアーティストからの転換の短さが、尋常じゃないので……こんなに短い時間しかないの?ってくらい短くて、それは胃を痛めましたけど、いろんな人の力を借りて実現しました」

 

普通は〈転換が短いし難しいよ→失敗したら誰が責任取るの?→じゃ、やめようかとなりますし、失敗が許されない紅白歌合戦の生放送ということで、確実に誰かが止める(もしくは止まる)と思うのですが、全員でそこに突っ込める勇気が凄いです。

 

そして紅白歌合戦でのRhizomatiks演出は、2013年はダンスするPerfumeにプロジェクション・マッピングした「Magic of Love」、2014年にはドローンとダンスをシンクロさせた「Cling Cling」という、他に誰もやっていない(そしてどれもビシッと成功させた!)挑戦へと継続されていくのですが、それはまた別のお話……

 

 

かしゆかが紅白当日を振り返っていますが、普段のライヴでは舞台袖にいてくれるライゾマチームも(転換の都合で)近くにはおられず、リハ以外ではステージ上でのチェックもできず、誰も成功を保証できない状況。

 

それでも本番では見事に成功!! スタッフ陣の緊張と想いを一身に背負った3人を筆頭に、ここ一番で最高のパフォーマンスを発揮できるのは、ただシンプルに、普段の積み重ねの賜物でしょう。才能とかいう曖昧な概念ではありません。

 

 

続けて、2012年7月の〈氷結SUMMER NIGHT〉。参加人数の少なさ(400名)、他では見られない内容ともに、Perfumeのブレイク以降でもっともプレミアムなイベントだったといえます。私は当然参加できておりません。

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ホログラフィック映像とシンクロさせたPerfumeのパフォーマンスは、番組内で〈リアルとヴァーチャルの融合〉と呼ばれています。

しかしメンバーが口を揃えて言うのは「ステージ上では(ホログラフィック映像は)何も見えないので、完全に感覚で(映像の出現パターンを)覚えてやるしかない」こと。これ、どう考えても難易度が高すぎますが、Perfume以外にできる人いるんでしょうか……?

 

そしてこのホログラフィック映像とのシンクロは、「Spending all my time」のマッピングとは完全に逆の手法です。

ホログラフィック映像とのシンクロは、Perfume(何も見えないけど、そこに映っているはずの)映像に合わせてダンスする。

マッピングは、コンピューターがPerfumeのダンスに合わせて映像を投影する。

人がコンピューターに合わせるのか、コンピューターが人に合わせるのか、まったくもって対照的なアプローチですが、どちらにも共通するのが、真鍋さんの言っていた「より振付がおもしろく見えたり、ダンスがカッコよく見えたりすること」です。とはいえ、この対照的なアプローチに対応するのって、まったく違うトライなので、メンバーもスタッフも骨が折れると思うのですが……

 

のっち「私たちは、何かにはめていく作業も好きです。3人だけでやるのも好きなんですけど、自分の感覚だけじゃない、テクノロジーに寄っていく、はめていくのも楽しいですね」。

のっちにとってテクノロジーとは、Perfumeに変化をもたらすもの、挑戦しがいのあるもののようです。

あ~ちゃん「ホログラフィック映像、テレビで見ると結構透けていて、いかにも映像って感じなんですが、生で観ると本当にいるようなんですよ。本当に、生で観てほしいです

 

……見たくても、見られなかった人もいるんですよ…………

 

 

さて、番組ではPerfume×テクノロジーの最新事例として、「1mm」のビデオが紹介されます。

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特殊加工したアクリル板に、一定の方向からLEDライトを当てることで、発光したり色が付いて見えたりするシステムを開発したそうです。へー、どうやってるんだろう、詳しく知りたいな!

しかし流れる映像は「LIVE at NHK」の「1mm」……急にテクノロジー関係なくなってる!と思いましたけど、まあせっかく素材もあるし使いたかったんだろうな、と斟酌いたしました。

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続いて、ワールドツアーに合わせた「Perfume Global Site Project」を紹介。念のためご説明しますと、Web上でPerfume楽曲データ、ダンスのモーションキャプチャー(動作)データ、3Dスキャンデータをフリー配布し、クリエイターが自由に映像を作り、投稿するプロジェクトです。いわゆるCGM(Consumer Generated Media)ですね。消費者が生成するメディア。真鍋さんの説明では「Webを使って、Perfumeとファンとクリエイター、みんなでひとつのムーヴメントというか、コンテンツを作ること」です。

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そして世界中のファンがこのデータを用いて、自由に映像作品を作り、参加意識を高めただけでなく、その映像がライヴで使われました。これもリアルとヴァーチャルの融合のひとつであり、最終的にはリアルそのものであるライヴの場に落とし込まれるところに、このプロジェクトの意図がありそうです。

 

この「Global Site Project」は、2012年の文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門で大賞を受賞しています。私も観に行きましたが、おもしろかった……というかPerfumeのテクノロジー演出が好きな方には、メディア芸術祭は超お勧めです!

 

Perfume × Technology

最後に改めて、Perfumeとテクノロジーを組み合わせる意味はどこにあるのでしょうか。

 

真鍋さん「いままではWebサイトはWebサイト、iPhoneアプリiPhoneアプリでバラバラだったのが、みんなで参加して、それがひとつのステージ上でのパフォーマンスになったり……〈ヴァーチャルとリアルの融合〉というか、ステージ上のパフォーマーとファンがどんどんひとつになっていくような。そこで、Perfumeだからこそできることが凄くたくさんある気がしますね」

あ~ちゃん「私たちがやってきたダンスと、凄い技術がコラボレーションしたときに、初めて興味を持ってくれる人がいたり、こういうことやってみたいな!って、夢を与えられたらいいなって思います」

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ナレーション「あ~ちゃん、かしゆか、のっち。この3人の想いが、テクノロジーで世界に繋がっていく。それが、Perfumeです」。

 

 

そして舞台は「LIVE at NHK」が収録されたNHKの101スタジオへ。

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あ~ちゃんの「せぇーのっ!」で始まる「MY COLOR」……ってこれも「1mm」に続いてテクノロジー関係ない!!!と思ったけど、歌詞がちょっと〈新しいテクノロジーで人と人が繋がっていく〉みたいな感じだから、いいのかな……まあ…………うん…………

 

もちろん、テクノロジーにまつわる話が中心の番組の最後に、ライヴでの生な姿を見せることの意味もあると思います。これもまたPerfumeなんですよその魅力を伝えるためにテクノロジーがあるんですよ、と。

 

Perfumeが最新テクノロジーを採り入れていることを紹介するテレビ番組はたくさんありましたが、その理由や背景、目的までしっかり伝えようとした唯一の番組が、この「Perfume × Technology」ではないでしょうか。

 

ちなみに、WORLD TOUR 3rdでコンサートを締め括る曲もまた「MY COLOR」ですね。

 

 ◇Perfume LIVE at NHK(放送:2013年10月27日)

これまでのようなドキュメンタリー手法ではありませんが、その流れに位置付けずにはいられない番組であり、いよいよ、これがシリーズの(現時点での)最後です。

 

 

メンバーの人柄とストーリーを広く伝えた「20歳の挑戦」

MIKIKO先生とメンバー、スタッフのクリエイティヴィティを称賛した「ドーム5万人ライブへの挑戦」

ファンの姿を通して〈世界的なPerfume現象〉を視覚化した「今、世界へ」

Perfumeとテクノロジーの関係性を掘り下げたPerfume × Technology」

 

 

それぞれの番組で、まったく異なる切り口からPerfumeの魅力を採り上げてきたNHKが、いよいよその総決算的なライヴ収録に踏み切ったのがこの「Perfume LIVE at NHK」です。

もちろん佐渡さんが制作統括ですので、決して普通にライヴを行うだけの番組にはなりません。

 

 

冒頭はNHKの通路を歩いて会場に向かい、気合入れをするメンバーと、その登場を待ちわびる観客が映ります。そしていよいよ内山監督がステージへと続く扉を開き、3人が歩みを進め……

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と思いきや、ここから「Perfume × Technology」の冒頭とほぼ同じ展開(カンヌ・ライオンズの模様とか)が繰り返されます。ダンスするPerfumeへのプロジェクション・マッピングや、「Perfume Global Site」の説明が入りますが、これはライヴの1曲目「Spending all my time」への前振りなので、しょうがないです。

 

ここでセットリストを書いておきましょうか。

 

Perfume LIVE at NHK SET LIST

1. Spending all my time

2. Spring of Life

3. Magic of Love(Extended Version)

4. Hurly Burly

MC

5. 1mm

MC

6. 未来のミュージアム

7. Handy Man(※メンバーは衣装替えで不在)

8. だいじょばない

9. ポリリズム

P.T.A.のコーナー

10. チョコレイト・ディスコ

11. MY COLOR

 

 

この並び、何かお気付きになりませんか……?

 

 

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ライヴのスタートから8曲目の「だいじょばない」まで、完全に〈その時点での新曲しかやっていません。「LEVEL3」が2013年10月2日リリースと、放映日に近いこともあるのでしょうけど、このセットリストは明らかに、何らかの意図を感じさせます。

 

その意図とは、〈最新のPerfume像を提示する〉ことではないでしょうか。最新のPerfumeが最高のPerfume、なんて言われてもいますが、まさにそれをテレビ放送で証明しよう!という意気込みを感じます。このセットリストはNHKサイドから言い出したのか、Perfume側が提案したのか……

 

 

「エレクトロ・ワールド」も「ワンルーム・ディスコ」も、「Dream Fighter」もいりません……もとい、ありません。そういう意味では、〈ちょっと興味あるけど観てみよう〉とか〈昔の方が好きだったなー〉って人には途中で「何これ、知らない曲ばっかり……」とチャンネルを変えられかねません(特に昨今では、グレーゾーンのユーザーの消費行動が全般的に弱くなっているとも聞きますし)。

 

それでもこんなに思い切った構成に挑戦できるのは、視聴率を(民放ほどは)気にしなくていい公共放送ならでは、ということもあるんでしょうが、それ以上に作り手側の「どう? 新しいPerfume、最高にカッコいいでしょ!!!」という信念が滲んでいる気がします。

 

実際、私も放映以来2年ぶりに見返してみましたが、この時期の3人のパフォーマンスは、超絶カッコいいです。もちろんいま(2015年)も最高にカッコいいんですが、何と言いますか、BLANKEY JET CITYなら「SKUNK」の時期と言いますか(この例え誰かわかるのか)、ある程度のキャリアを重ね、何度かピークを体験してきたものの、ますます心・技・体が充実しまくり、やることなすこと無敵にカッコいい時期のように感じました。

 

あっ、「MANIFESTO」で復活してからのライムスター、で例えても良かったな……。

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こういう長いキャリアを経て、そこからさらに加速していくようなグループは少ないです。ちなみにブランキーもライムスターもPerfumeも3人組ですね。

 

 

話を戻すと、最新のPerfumeを提示してみせるこのセット。上述のとおり「Spending all my time」は、この時点でのPerfume × Rhizomatiksの最高傑作というべき完成度ですし、「Magic of Love」では、キックの4つ打ちからイントロを長く取り、アウトロからはシームレスに「Hurly Burly」に繋げるという、2013年当時「Ultra Korea」や「SONICMANIA」で試みていたダンス・ミュージック路線のアプローチです。

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また、メンバー不在の「Handy Man」インストは民放なら100%カットされるでしょうけど、これもRhizomatiks製の映像とのコラボレーションで作られた、立派なパフォーマンスです。こういうところもきっちり押さえてくれるのがNHKチーム、という感じですね。

 

 

Perfumeのライヴ映像はたくさんリリースされていますが、この「LIVE at NHK」も非常に完成度の高い作品です。最高にカッコいいです。NHKゆえ、P.T.A.のコーナー」「はみがきじょうずかな?」ここぞとばかりに収録されています!!

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◇映画のような完璧なストーリー

この「LIVE at NHK」、そしてNHKPerfumeドキュメンタリーの特徴を改めてまとめると、やはりこのふたつがポイントです。

 

Perfumeの魅力とは何か?〉さまざまな切り口から掘り下げている

・それゆえの批評性がある

 

多面的な要素で構成されているPerfumeの魅力を伝えるには、複数回に渡る、角度を変えてのアプローチこそが有効だったはずです。そして、そのすべてが映画「WE ARE Perfume」ともリンクしているから、映画を観た後なら、NHKドキュメンタリーの見え方も変わります。これは断言できます。

 

いまとなっては、合法的に観られる手段が相当限られてしまい残念ですが、資料としても貴重な、ここでしか観られない映像ばかりです。許諾の取得や契約(や事務所との交渉)は大変でしょうけど、いつかボックスセット、もしくは「NHKオンデマンド」で発表していただけないでしょうか……佐渡監督はじめNHKの皆さま! きちんと受信料を納めている、いちユーザーからの懇願です!!!

 

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佐渡岳利監督が携わった、Perfumeドキュメンタリー番組の集大成が映画「WE ARE Perfumeであり、これは長きに渡ってPerfumeを撮り続けて、その魅力を批評性をもって発信し続けてきた、佐渡監督にしか撮れなかった作品です。音楽ドキュメンタリーとしても、アイドル映画としても、とてもクレバーで誠実な作品です。

 

Perfumeの(最初で最後かもしれない)映画が、あのような素晴らしい作品になったことは、映画が好きで、ドキュメンタリーも好きで、Perfumeファンである私にとって、心から嬉しいことです。

 

 

さて、次回はその映画「WE ARE Perfume」の感想を書きましょうか……

 

私ではなく、まったくPerfumeに興味ない人の、ですけどね!!!