ご無沙汰しております。
このところずっと、Perfumeに関する原稿を書いていました。まだまだ完成は先ですが、少しずつ進んでいるところです。
いま予定している原稿のテーマは、以下のとおりです。
1:Perfumeが発表したほぼすべての楽曲についての評論・ガイド・感想
2:Perfume楽曲のカヴァー、トリビュート、サンプリング例
3:Perfumeを取り巻くアーティストたちの紹介
最初に私がこのような原稿を書きたいと思ったのは、Perfumeの〈音楽性〉について、メディアで語られる機会があまり多くない、または年々減少するように感じられたからです。作品リリースのたびに、文字媒体でのインタヴューやTV・ラジオ出演は多々ありますが、そこでは紙幅や時間の制限もあってか、作品に対するメンバー3人の想いを尋ねることが優先される状態が続いています。
一方、あれほど音楽的な評価が高いグループなのに、全曲解説のような試みはまだどなたも手掛けていないようですし、そういったものが出版される機運の高まりもなかなか感じられません。(Perfume楽曲ベスト50、のような特集が某紙でありましたが、ここではそれ以上の言及はいたしません)
当然ながら、Perfumeの音楽性への評価はすでに確立されていますから、いまさらどうこう語るものではないとも言えますし、そもそも媒体側にはそういった切り口での記事にニーズがない、つまり3人の想いや関係についての記事こそマーケットで求められるものだ、という判断もあるのでしょう。確かにPerfume3人のキャラクターが大きな魅力であることは間違いありません。
でも、これだけ長く活動を続けて、傑出した作品を多々残して、時代の変化と共にアップデートを続けているグループなのに、その足跡を誰も文字媒体でまとめようとしなかったのはむしろ不自然に感じます。
◇the best thing
そんな中、2020年のツアー 「Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」のグッズとして販売された『Perfume LIVE DATA BOOK』は、まさしく待望の1冊でした。
ASMARTの商品紹介ページを引用します。
結成20年、メジャーデビュー15周年の節目を記念して、2008年『Perfume First Tour 「GAME」』から2019年『Reframe 2019』までのライブを1冊にまとめた「LIVE DATA BOOK」が登場! <ライブヒストリー><スペシャルインタビュー><セットリスト>と3つのカテゴリに分類し、Perfumeが最も大事にしてきたライブの歴史を、大ボリュームの152ページで振り返ります。
この文句のとおり、フェス出演なども含むPerfume全ライヴのセットリストという資料性・網羅性の高さは言うまでもなく、Perfumeのライヴ制作を支える各部門へのインタヴューはプロダクション・ノートとして一級品であり、Perfumeに留まらずライブ・エンタテインメントそのものへの理解や関心を深めることができる、決定的な1冊です。
ああ良かった、もうこれさえあればいい。Perfumeのライヴを創る当事者の手による、間違いない1冊でPerfumeの軌跡は見事にまとめられました。もう他の誰かがPerfumeの活動を総括したり記録を残す必要はなくなったな……。
と重々承知のうえで、それ以降も私はPerfumeの楽曲に関する原稿をずっと書いています。
〈原稿を書く〉という視点で改めてPerfumeの曲をじっくり聴き直したところ、いくつもの新しい発見があり、聞き逃していた要素があり、何よりPerfumeの音楽的な創造性に改めて感じ入るものがあり、それらを原稿に落とし込んでいく作業が、想像以上に楽しかったからです。
私は日常的にPerfumeの楽曲を聞くことがさほど多くなく、じっくりPerfumeを聴き込むのは新作リリース時や、ライヴとその前後の期間くらいです。それだけにこの原稿を書く時間を通して、私はPerfumeの楽曲をあまりちゃんと聴けていなかったかも、という事実を痛感しました。いま改めてPerfumeの楽曲を知っていく過程で、気づいたことを原稿にまとめているだけとも言えます。その過程で、これまで私が得てきた音楽的な体験や情報を活かすことができれば、私が原稿を書く意味もあるかもしれない、と思っています。
もちろん、私より音楽に詳しい方は無限にいらっしゃいますが、さすがにPerfumeの楽曲ほぼすべてを評しようという方はあまりいないでしょう。
そもそも全曲解説の企画自体、音楽評論家の中山康樹さんによる『マイルスを聴け!』『エヴァンスを聴け!』『キース・ジャレットを聴け!』などはあるものの、珍しい試みかもしれませんが……
そして私より情熱のあるPerfumeファンの方々も無数にいらっしゃいますが、さすがにPerfumeの楽曲ほぼすべてを評しようという方はそんなにいないでしょう。
そう考えると、私が適任とは思えないものの、まあやってみようかな、できる範囲で。がいまの心境です。
◇進捗状況
さて問題は、その原稿をどこまで書いているのか?ですが、
1:Perfumeが発表したほぼすべての楽曲についての評論・ガイド・感想
ここで『LEVEL3』の“Handy Man”を書いており、ここまでで3万字くらいです。それ以降はほぼ白紙状態です。
まあまあ進んでるんじゃない?と思われるかもしれませんが、そもそも原稿を書き始めたのが10~11月くらいですね、2019年の。最初は「よし、いまから書き始めれば2020年のドームツアーには間に合うだろう」と甘く見ていましたが……さすがに甘すぎでしたね。
かようにものすごく進行が遅いのですが、実は執筆前に〈Perfumeの原稿を書くなら、音楽についてもう一度ちゃんと勉強し直さないと!〉と一念発起し、自宅にあったディスコやハウス、テクノ、ベース・ミュージックに関するディスクガイドやルポルタージュを読んだり、自宅にあったディスコ、ハウス、アシッド・ハウス、テクノ、ダブ・ステップ、EDMなどのCDや、ストリーミング音源を聴き直して、それぞれ特徴をまとめたりといった準備の時間を取りました。そしてこの準備時間はいまも頻繁に取っています。ちなみに私がこのブログを書いて学んだもっとも大きな教訓は〈よく知らないことは書かない方がいい〉です。
この準備の過程で得るものが大きく、刺激的で最高に楽しい時間でした。しまいにはチャーリー・パーカー(即興演奏を主体としたビ・バップのスタイルを編み出してジャズを革新したアルト・サックス奏者)の評伝「バードは生きている―チャーリー・パーカーの栄光と苦難」まで読み始め、これもすごく面白いのですが〈あっ、これを続けていたら永遠に原稿は書き上がらないな〉と気づいて中断したりしていました。
そんなこんなでPerfumeの楽曲に関する原稿を書き進めています。ただ、どうしてもメロディーや歌詞よりアレンジ(サウンド・デザイン)への言及が多くなりがちで、これはPerfumeよりむしろ中田ヤスタカに関する原稿になっているのでは……?という気がしなくもないのですが、やはりPerfume3人のヴォーカルがあってこその楽曲ですし、その前提を忘れなければまあいいか、くらいの認識でおります。
もちろん音楽は各々が聴きたいように聴くものですから、何かを決めつけたり、特定の聞き方を押しつけたり、あたかも自分の解釈が正しいと喧伝することのないよう肝に銘じています。
なお、この原稿をどういう形で発表するのか(もしくは特に発表しないか)は決めていません。テーマ的に大きなマーケットは見込めませんから、商業ベースの書籍として出版されることはまずありえないでしょう(そもそも原稿の質の問題があります)。
そうなると同人誌として自費出版とか、いまならnoteなんかでの発表も考えられそうですが、そのあたりはよくわからないのでとりあえずおいておきます。
私の知識量では、かろうじてPerfumeの音楽面について書けるかなという程度ですし、それゆえ原稿のタイトルも『Kind of Perfume』としました(kind of ~=「いくぶん、ある程度の」)。
そもそもPerfumeの魅力について本当はもっと語りたい、私なら語れる、という方もまだたくさんいらっしゃるはずです。私では到底手が回らないPerfume曲のコード進行や調性に関する音楽理論、ミキシングなどの音響面についてや、Perfumeのダンスについて、振付について、はたまた衣装、ミュージックビデオ、テクノロジー演出、ライヴ映像、ライヴMC、ラジオ番組、物語性、関係性などなど……まだ語られていない部分はたくさんあるはずです。
そういった多様な意見がもっともっと増えて、多くの方々の意見から自分が知らなかったことを学んだり、〈なるほど、私はこう思います〉といった意見の交流が活発化して、自分の考えを表現できる機会が増えたら豊かだな、と思います。
え、こんなエントリ書いている時間があったら原稿書けばいいのにって? それは確かに!!
(追記)
なぜ久々にブログ記事を書いたかといいますと、やはり人間締め切りがないと書かないな、ということに遅れ馳せながら気付きまして、2021年の6月には原稿を完成させます。