第67回 Perfumeにまったく興味ない人の映画「WE ARE Perfume」感想
皆さん、映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」はご覧になりましたか?
きっとこのブログを見て下さるような(奇特な)方は、すでに鑑賞済でしょう。ぴあの満足度調査でも高得点をマークして1位、SNSをちょっと見ても絶賛の嵐です。宇多丸さんにも(当然ながら)好評でした。私も、クレバーなドキュメンタリー作品であり、誠実なアイドル映画であり、素晴らしい音楽映画だと思っています。
でも……これって、すでにPerfumeファンだったり、少なくとも興味がある人が観に行っているからだろうなぁ……Perfumeに関心を持っていない人、肯定的に評価していないような人が、あの映画を観たらどう思うんだろう?
決して、Perfumeファンじゃないと楽しめない、内向きな作品ではないと思うから、興味がない人にもぜひ見てほしい…………
あ、私が興味ない人を劇場に連行すればいいのか!!
ということで、確実にPerfumeに興味なさそうな友人を誘いました。
性別:女性
年齢:Perfumeメンバーより下
職業:コンテンツ制作
この友人に白羽の矢が立ったのは、この映画は〈ものづくりに携わっている人〉なら楽しんでもらえるんじゃないかな、という見立てによります。
さっそく連絡したところ、「Pefumeの映画ですか? 友達も観に行ってたし、見てみたいです!」とのことで、ここまでは良かったのですが、映画を観る当日に意外な情報が揃いました。
・音楽は好き、やっぱりジャニーズは外せない
・映画館に行くのは数年に1回
・ドキュメンタリーは好きじゃない
・好きなお店は渋谷109
うん…………どの要素も、今回の映画やPerfumeから、それなりに距離ある!!
(念のため。私もジャニーズのライヴには行ったことがあり、群を抜いて凄いショーだと存じ上げています)
しかも、以下は映画鑑賞後に聞いた(鑑賞後だからこそ、打ち明けてくれたと思いますが)、かつてのPerfumeの印象。
「TVで観たことはあったけど、あ~ちゃんがあまり好きじゃなかった」
「曲もどれも同じような印象」
「事務所が大きいから、きっとプロデューサーとか誰かの言いなりでやってるんだろうと思ってた」
当然ですが、テレビでPerfumeを知って、こういう印象を持った人も、そりゃいますよね。というかそんな低評価に関わらず、よくもまあ映画館まで来たな!!
実は、以前も女性にPerfumeの印象を訊いて、ヒヤリとする場面が何度もありました(白人女性に「Plastic」と言われたことすらあります。今思い出しても悔しいよ……)。どのへんで良し悪しを判断しているかは皆目わかりませんが、まあ女性が同性を見る目は厳しいということですかね。
◇対決の日が来る
ひとまず喫茶店で女の子と楽しくお喋りしながら(その情報いる?)Perfumeの簡単な来歴と、MIKIKO先生など重要人物を簡単にレクチャーしました。「『ポリリズム』でデビューしたと思ってた!」そうで、実にフレッシュな反応です。
そのとき、女の子から「Perfumeは歌やダンスを間違えたりしないんですか?」と訊かれて、「まあ、それは映画を観てもらうとして……」とお茶を濁しました。
さあ、いよいよ映画の上映が始まります!
……そして2時間後。場所を近場のレストランに移して、以降はそこでの会話を一問一答形式でお伝えします。
◇キミの好きそうな映画 ちょっと眠たい?
―(上映中は)起きてた?
「起きてました」
―映画、少しは楽しめた?
「すっごく良かったです!! お話したいことたくさんあります。あ~ちゃん……ですか? もうホント凄い! テレビで見てて、前はあんまり好きじゃなかったけど、一気に好きになりました」
―印象に残っているシーンは?
「たくさんあります! あの曲(「STORY」のこと)、あれ凄いです!あのカメラのスイッチング、どうやってるのか全然わからなかったけど、凄すぎて、いま自分が見ているのがライヴなのかCGなのか、わからなくなるくらい。
あと、ニューヨークでライヴが始まる直前、あ~ちゃんがカメラに向かって(※以下ネタバレになるので省略)。ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、ダメ出し会であ~ちゃんが(※以下ネタバレになるので省略)。ライヴが始まる瞬間の、お客さんがめっちゃ盛り上がってるシーンも最高です。お客さんの層もとっても幅広いですね。あ、ニューヨークの会場で、超胸元開いた黒人さんいましたよね? あの方はゲイですか?」
―ダンス・ミュージックはゲイ・カルチャーと密接な関係がありますからね。さておき、あの地道な反省会のシーンはどう見た?
「事務所が大きいから、プロデューサーとかがいて、その言う通りにやっているんだろうって思ってたんですけど、あんなに細かいところまで、本人たちが決めているなんて思いませんでした。
マイクだって、ずっとヘッドセットでやれば楽なのに、ハンドマイクもちゃんと使って、しかもどこでどうマイクを受け渡すか、細かく調整していてびっくりしました。LAでしたっけ、あ~ちゃんが延々と修正箇所を言っていくところ、あれ凄いです。あ~ちゃんが本当に凄いです!」
―(やっぱりあ~ちゃん、すげえな……)
「あと、セットリストをあれだけ変えていくなんて! しかもそれがお客さんの声を活かしたり、お客さんの反応を見て入れ替えていく柔軟さがあって、あんなのPerfumeくらい人気がある人で、他にやっている人いないと思います。「(ネタバレ)」をどこに入れるか、ずっと話し合っているところもありましたけど、そういう変更でライヴが全然違うものになると思いますし」
―ああいうエレクトロニックなサウンド、普段は聞かないよね?
「全然聞きませんねー。でも、前は曲がどれも同じような印象でしたけど、こんなにいろんな曲があるとは思いませんでした。それはやっぱり振付があるからで、実際に目で見てみて、どの曲も全然違うと感じました。
Perfumeのライヴって、ダンスを見て、視覚で楽しむ感じだと思ってたけど、ああいう振付(たぶん「MY COLOR」とか)で、お客さんもいっしょに作っていくところもあるんですね」
―のっちが派手にダンスを間違えるシーンはどう見ましたか?
「テレビで見ていると、のっちがいちばんクールでしっかりしてそうな感じだったんですけど……」
―………。では、お客さんの姿がたくさん映っていたのはどう思った?
「普通のドキュメンタリーなら、Perfumeの映像が中心になりますよね。ライヴはもっと日本人ばっかりだと思ってたんですが、現地の人多いですね! まあそういうショットを選んで使っているのかもしれないんですが、それでも現地の人が凄く多いのはわかりました。あと、ライヴを観ながら泣いているお客さんもいて、自分も昔、泣いたライヴのことを思い出しました」
―Perfumeの魅力を大きく分けて、〈1:メンバー3人のキャラクター〉〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉〈3:スタッフとのチームワーク〉〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉があるとして、印象に残ったのは?
「〈3:スタッフとのチームワーク〉ですね。MIKIKO先生だけじゃなくて、スタッフの方々はずっと昔からいっしょなんですよね? そういう関係があって、そこで良いものを作ろうとしているのは、自分もものづくりに携わっている身として、凄くうらやましいです。
さっきも言いましたが、ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、あ~ちゃ(以下ネタバレのため省略)あの思いやり! 自分も似たような経験があって、あのシーンはそれを思い出して泣きそうになりましたね。
Perfumeが海外に来るのをずーっと待っていた人たちにとって、あのライヴの2時間って特別ですよね。そういう時間を作れることって凄い。その分、絶対に失敗できないですけど。昔、自分もライヴの仕事に憧れていたのを思い出しました。やっぱり音楽の仕事もいいなぁ……って」
―映画の中で〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉は感じた?
「売れていない頃からPerfumeを観ていたら、初めてのアメリカ・ツアーは超感動するんでしょうけど、それはわかりませんでした。でも、Perfumeにはストーリーがあるんだ、というのは映画で伝わりました」
―佐渡監督の編集はどう見た? 僕はライヴも反省会もお客さんもオフショットも、ちょうど良い配分で、考え抜かれたバランスだと思いました。
「そうですね。その映像がみんな、最後のニューヨークへと向かっていく感じがとても印象的でした」
―女性ファンには「Perfumeみたいになりたい」「むしろPerfumeになりたい」という願望がある(人もいる)らしくて、男性の僕にはよくわからないけど、それはどう思う?
「うーん…………Perfumeには、女性として尊敬できる部分が凄く多かったです。憧れますよ。でも、例えばメンバーの足の細さも、単にガリガリな細さじゃなくて、しっかり筋肉が付いてました。物凄い努力をしていることは一目でわかります。だから、自分がそこまで大した努力もしていないから、安易に〈Perfumeみたいになりたい〉とは言えないですね」
―(想像だにしない回答を食らって絶句)えーっと……
TOHO新宿での映画「WE ARE Perfume」トークショー 佐渡監督「Perfumeメンバーは本当に良い。もっと3人を好きになって欲しいと思ってこの映画を作ったので、それが伝わったら良いです。映画で言っていたとおり、大きな目標に向かう3人を、僕たちも全力で応援していきます」
— t_kito (@t_kito) 2015, 11月 7
ということらしいんですが、映画を観て、Perfumeの3人を少しは好きになった?
「あれ観たら、好きになりますよ!!ライブも行きたいです」
―では映画で、ここはあまり良くなかったな、というところは?
「手持ちカメラでメンバーに密着しているので、手ぶれが大きいところがあって、テレビならまだしも大画面で見ると、ちょっと気持ち悪くなります……」
―会長について一言。
「どの業界でも〈会長〉って呼ばれる人は、ああいう感じなんだなって思いました」
―ちなみに今日は、なぜ映画を観に来てくれたのかな? あっ(髪をかき上げながら笑顔で)やっぱり誘ったのが僕だったから……
「〈映画観たらご飯おごるよ〉って言われたからです」
―最後に何か一言。
「映画、本当に楽しかったです! 今度、六本木のウルフギャング・ステーキに連れて行って下さい!」
↑ ウルフギャング(この店名どうなんだ)名物のプライムステーキ。1名分あたり8000円!!!
―申し訳ないけどそれは無理です。
はい、以上です。私が「○○のシーンはどう思う?」など、話を引き出した部分も少なくありませんし、順番も編集していますが、女の子の感想はほぼそのまま使わせてもらいました(※最後のオチだけは勝手に作りました)。
◇P.T.A. MOVIE(〈Perfumeとあなた〉の映画)
映画の感想を聞くうちに、図らずもPerfume論的な話まで行きましたが、そこで思ったのは、劇中でかしゆかも語っているとおり、Perfumeは多面的な要素で構成されているため、観る人は、そこに自分が求めているものを見い出すのだろうな、ということです。
私はPerfume最大の魅力は〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉だと思っていますが(つまり宇多丸さんやピエール中野さんと同意見)、メンバー3人の関係性に心酔する人もいれば、苦労人的ストーリーに感情移入する人もいます。
映画に付き合ってくれた女の子みたいに、スタッフの皆さんとのチームワークに共感する人も多いでしょうし、とにかくPerfumeの曲が好きなんだ!という人、メンバーが可愛いから大好き!な人、ライヴが最高に良いから!という人もいるはず(そしてこれらの複合も)。
Perfumeは観る人の心(や願望)を反映する、映し鏡のような存在になっているのかもしれません。Perfumeファンが100人いれば、100通りの見方があるのでしょう。
でも、考えてみれば、これって映画の見え方と完全に同じですよ。
観る人の年齢、性別、人生経験や性格によって、同じ映画を観ていても、感じる内容は結構違います。例えば映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観て(このブログでよく名前出てくるな……)、
「なんか砂漠を車が走りまくっているだけの映画」「これこそ現代の神話なんだ!」
「アクションこそ映画のすべてだと証明している」「大したストーリーもない、単調な映画だったよ」
「これは男のための映画!」「女性讃歌の映画だ!」
「主人公のマックスが最高!」「これフュリオサの映画でしょ?」
「イモーータァァーーーン!!!!」
※このブログは、〈すべての読者がマッドマックスを観ている〉という前提で制作されています。
みんなが同じものを観ているはずなのに、その見え方は全然違う。私は、それが映画の魅力と豊かさだと思ってきました。
ですから、ただでさえ多様な楽しみ方のできるPerfumeが、映画になる!というのは、物凄くジャストな題材と言えますし、それは輝くような体験(〈brilliant experience〉……この引用元、わかる人いるかな?)となるのです!
映画「WE ARE Perfume」は、掛け値なしに素晴らしい〈映画〉です。ぜひ見てみてください。