R.E.P.

Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第61回 P.T.A.サミット!!その2

 前回の続きです。なおMCのニュアンスには注意していますが、100%記憶が頼りなので、細部は必ずしも正確ではありません。

 

<MCテーマ:記者会見>

www.youtube.com

あ~ちゃん「あれ、考えてみると宣伝の宣伝よ? それをスタッフさんたちが〈やりましょう!〉って言って下さって……どんだけの思い!」「あれ緊張したー。手が震えすぎて、逆にゆっくりに見えるくらい。スタンドマイクで助かった、ハンドマイクだったらえらいことなっとった」

の「マイクがグリーンアロマじゃなくて良かったね。グリーンアロマの記者会見で、サッポロさんがマイク(を覆うよう)にグリーンアロマの缶を付けて下さって」

あ「持ちづらい持ちづらい。マイクの下の方を持つしかなかったんだけど、マイクって下の方を持っちゃ絶対ダメで、でもそこを持つしかなかった」

記者会見の司会をして下さった馬場さん、なんとご友人の結婚式で、余興にPerfumeを踊ったこともあるとか。しかし馬場さん、名前が典子(のりこ)なので「のっち」になるはずが、なぜか「ば~ちゃん」にされてしまう。そのエピソードの後、Perfumeメンバーと写真を撮るときも「私はば~ちゃんだから!このピースサインもば~ちゃんっぽい!」と自虐ネタを連発。メンバー曰く「前からファンだったけど、もっとファンになった」

 

<MCテーマ:Perfume展>

あ~ちゃん「P展、皆さん行ってくれましたか? Perfumeの……展示会?なんかおしゃれなファッションブランドみたいになっちゃったけど、えーと……」

客「展覧会!!」

あ「展覧会?」

「ほぉー」

あ「メンバーの部屋とかもあって、私物持ち込んで飾ってね」

の「あ~ちゃん、かなり遅くまでやってたんでしょ?」

あ「オープンの前の日に、今日のためのリハが終わって、そのまま渋谷のタワレコさんにお邪魔して。遅くまでやってたから、もしかしたらご迷惑をお掛けしたかもしれん。デザイナーさんおったし(注:いっしょに残業させた、という文脈だと思います)。でもいろんなもの持ってきて、飾りつけして、デザイナーさんに見てもらって意見もらったりできたから」

か「……」

あ「のっちの部屋は、セレクトが完全にのっちだったね」

の「あれは、白いラックでおしゃれに見えてるけど、本当はもっと雑然としてた。でもデザイナーさんがそれを直してくれて、おしゃれになっとる!!!!って」

あ「羊のあれも、凄い存在感あったね。ラグマット敷いて」

の「あのマット、あたしのじゃない……

あ「え?デザイナーさんの?」

の「でも、ラックで使ってる白いレースのはあたしの!」

あ「あれあたしのおしゃれなやつだから!って言いたいの?(笑)」

の「うん、褒められたい」

あ「おしゃれな人はそんなことわざわざ言わん! それと、ゆかちゃんの部屋のストイックさね! 観た人にはわかる」

か「わぁー!!」

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<MCテーマ:CM>

あ「あとそう、CM! エーザイさんが素晴らしいCMを作ってくださって。今日の22時台なんだけど……みんなライヴ来てて間に合うの?」

客「録画してきたー!」

あ「そうなん!? みんな準備完璧じゃね! でもああいうのは、生で観んと意味ないけえね

のっち&かしゆか&客「(衝撃が走る)」

そのあと、電気屋さんに走る、ディスカウントストアに走る、漫画喫茶に入る、などの提案がなされます。

あ「でもあたしも予約しとらん……何とかなるだろうと思って」

客「チャレンジャー!」

あ「ほうよ、人生ずっと挑戦してきたよ

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<MCテーマ:P.T.A.検定のスコア>

あ「今日はP.T.A.検定に合格した、博士号の方々がいらっしゃっていますが、Perfume(ぱふゅーむ、スコアが80~100点)の人ー!(客の半数が挙手) Perfum(ぱーふゅん、スコアが70~79点)の人!(残りの客が挙手) じゃあ、Perfu(ぱふゅ、60~69点)の人は?」

客「(誰も挙手しない)」

の「ちなみにPerfumeのメンバーでは……」

あ「私は……68点のPerfu(ぱふゅ)

の「まさかの!あ~ちゃん凄く記憶力良いのに」

すると客席から笑いが起き、すかさずのっちが「あ、いま鼻で笑った!!」

そして悔しさのあまり、床に正拳突きを叩き込むあ~ちゃん。

の「ちょっとー! うちのあ~ちゃんを鼻で笑うのやめてもらえますか!」

いやいや、言い出したのあなたでしょ!

か「あ~ちゃんは思い入れが強すぎて、記憶を探すのがかえって難しいんだと思う」

あ「そんなん知らんわ!って問題ばっかりでねー!」

か「でも3人いっしょに問題解いたんだけど、あ~ちゃんいちばんしゃべっとった

の「あれー、これどうだっけなー、うーん、これはあのときああしたっけー、みたいな」

か「ちなみにP.T.A.検定で1位の人は、若い人なんだけど9分で回答しとった」

あ「知識も、カンも、推理もいるよね。ここでこの人物名が出てくるなら、回答はこれか……!?みたいな」

の「だからあ~ちゃん、本当だったらサミットには参加できないんだよね。でも光るものがあるから、参加できた!みたいな」

あ「いづらい……けど、思いっきりセンターに立っとる。まあ、希少価値があるってことで……上戸彩さんみたいな、オーディションには合格じゃなかったんだけど、全部持って行った!みたいになりたい」「でもP.T.A.検定を受けて、スタッフさんが私たちとの記憶を思い出して、あんなにたくさんの問題作ってくれたんじゃ、と思うとすごく愛情を感じて、だから点数はともかく、問題解き終わったらすごくほっこりした」

か「ちなみに、今日の整理番号は検定の成績順なんです。1番、2番、3番で昼、夜、昼って振り分けてて」

ええっ、私は整理番号40番台ですが、たぶん10問近く間違えてた気がする……

 

<MCテーマ:O-WEST

あ「O-WESTさんで(もう一度)やるのは夢だった。それで今回やりたい!って言って、叶えても らったんですが、でもそれはわがままでもあって。不公平になるかもしれない、見たくても見られない人が出てしまう。ずっと活動してきて、Perfumeを 観たい!って人が増えてくれて、ドームや武道館でライヴできるのも凄く嬉しいけど、こういう場所で、原点回帰して、初心に帰ることを、またできたらいいなと思います」

あ「O-WESTの楽屋、あー全部見たことあるわー!この匂いも覚えとるわー!ってなった。楽屋が3つあって、でも昔はWESTに一番近い楽屋は、イエローキャブのタレントさんたちが押さえとって、うちらは遥か上の、O-Crestよりさらに上の楽屋を使ってました……でも、今日はその楽屋を、3つとも貸し切りました!!!

あ「うちらほど、O-WESTでのライヴを楽しんどる人はおらんじゃろうね。昔はそれこそ、もう今日でダメだったら後がない! 絶対に成功させなきゃ!って追い込まれとった」

か「戦いの場だったね。WEST自体も、ここが勝負どころ!って人が出る会場だから」

あ「今日やったような曲を、こんなに100%で、前のめりで聴いてもらえることも初めてで

なるほど、今日のセットリストは古くからのファンを喜ばせるためだけじゃなくて、2005年頃のライヴをいまのPerfumeが再現することで、原点回帰を図るというか、スタート(メジャーデビュー)の頃に立ち返ろうとしたんですね。2005年と2015年を繋げる試みか……

あ 「だから本当に楽しいし幸せ。O-WESTへの想いも昇華できました。WESTの階段に沿って、スタッフさんが座っているところに、階段を上り下りして、 スタッフさんの顔見ると『あ~、知っとる』『あ~、知っとる』『あ~、知っとる』(注:表現が難しいのですが、馴染みのスタッフといっしょにWESTでで きるのが嬉しい、的な意味と思います)」

あ「楽しすぎて、ステージと観客スペースでスタッフさんと輪を作って談笑しとった。私はステージに寝転んで。O-WESTで寝転んだ人おらんじゃろ」

の「(ステージ前方を指さして)こっちが頭でした。みんなあ~ちゃんを囲むように輪を作って。なんか今日のライヴの成功のために生贄を捧げる、みたいになってた」

 

その3につづきます。

第60回 P.T.A.サミット!!その1

ばんざーーい!!!

 

 

 

BOMBばんざーーーーい!!!!!

 

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とうとう気が触れたか……と思う向きもあるでしょうが、実はPerfumeのファンクラブ会員向けの「P.T.A.検定」、私の受けた回にはBOMBからの出題もありました。

 

Q 22  2008年5月発行の雑誌「BOMB」にて実施した、「Perfume 50 素顔のQ&A」企画。「カラオケの十八番は?」という質問に対し、のっちの十八番ではない歌は?

A 一青窈ハナミズキ

 

Q 23  2008年5月発行の雑誌「BOMB」にて実施した、「Perfume 50 素顔のQ&A」企画。「子供は何人ほしい? 名前は?」という質問に、あ~ちゃんは「3人ほしいです」と答えています。また未来の子供の名前もすでに名付けていましたが、3人の名前は?

A 華(はな)ちゃん 俊(しゅん)くん 雛(ひな)ちゃん

 

しかも2問も!! ちなみに試験は全部で5回ありましたが、私の受けた回以外にBOMB問題は1問たりともありませんでした。明らかにバランスおかしいですよ!

 

そして、試験対策として直前に入手したBOMBのおかげで、私は「P.T.A.検定」をパスし、P.T.A.サミットに参加することができたのです……ありがとう、BOMB!

 

◇2015.9.21 P.T.A.サミット O-WEST(夜の部)SET LIST

1. コンピュータードライビング

2. おいしいレシピ

3. スウィートドーナッツ

4. ファンデーション

5. カウンターアトラクション

6. 彼氏募集中(※ここまで全曲ノンストップ、生歌)

MC

7. リニアモーターガール

8. ポリリズム

P.T.A.のコーナー

9. チョコレイト・ディスコ

10. wonder2

 

会場に入ると、2007年のリキッドルーム公演のように、ステージ全面が薄い白のスクリーンで覆われていて、その向こうにうっすらPerfumeのロゴが白く光っています。映像使うのかな? 客層はやはりずっと昔から応援していたであろう、年齢層高めの男性が多いですが、若い女性客も少なからずいましたね。

 

定刻の20時を少し過ぎたころ、間違いなくもっさんセレクトなBGM(Harem Scaremとかのメタル)がフェードアウトし、場内が暗転! 物凄い歓声が湧き上がる中、いきなり「コンピュータードライビング」のイントロが流れ、ステージを覆う白いスクリーンには、3人のシルエットが大きく映し出されます! イントロの8小節を経ると、そのスクリーンが振り落とされ、白いシンプルな衣装に身を包んだ3人が登場!

 

なおこのとき、私は2階席の最前列で観ていましたが、1階フロアではスタート時の圧縮&「コンピュータードライビング」の横揺れがミックスされて、鳴門の渦潮か、はたまた地獄というくらいの凄まじい圧縮とうねりが発生していて、結構戦慄しました。

3人が歌い出すと、なんと生歌です! あ~ちゃんの「揺れてーー!」で会場が大きくうねるのは、さながら「GAME」ツアー。早くも1曲目の時点で、あ~ちゃんは2階席としょっちゅうアイコンタクト。この繰り返しがこの後、私の精神状態に大変な変化を来たすのですが、まあそれは省略します。

ちなみにステージセットは、ちょっと傾けたキューブみたいな(つまり立体の)LEDパネルが4つ横に並び、バックドロップにはこれまたLEDで飾られた〈Perfume〉の大きなロゴが掛けられていて、ステージに彩りを与えていました。

 

2曲目は……3人が縦のフォーメーションを組んでの「おいしいレシピ」!! これまたイントロで大歓声。みんなおかしいぞ!!(ハイハイ!の合いの手もみんなやってた) メンバー3人もハイテンションで歌い踊る! こんなに元気いっぱいの振り付けを踊る3人を観るのはいつ以来か……ちなみにのっちは、ちょいちょい恥ずかしそうな表情をしていました。

 

もうこの時点で、今日は異常事態らしいことが把握できましたが、そこに3曲目の「スウィートドーナッツ」!! お客さんの名前コールもますますヒートアップしてきて、もう何だかよくわからない興奮と熱気が会場に充満。振付を見ていると、ちょいちょいミスっている感じはあるのですが、生歌+ダンスのフィジカルなパワーを、ヒールが床を叩く音が聞こえるくらいの至近距離で食らうと、もう圧巻です。

あと、少し時間は遡りますが、2曲目の途中でのっちのイヤーモニターが外れて、ダンスに合わせて大きく振り回されています。あれ、大丈夫かな?と思ったのですが、「スウィートドーナッツ」に入る前にスタッフの方に「返し(モニターで聞く自分の歌)を下げて!」といった感じの指示。そして曲に入ると、さりげなくイヤーモニターを再度装着。昔O-WESTに立っていたころは、こんなに自然な振る舞いはできなかったでしょう……大きくなったなぁ(誰だよ)

 

◇スウィートドーナッツ 今では時効?

続いてややテンションを落として「ファンデーション」。メイクアップする可愛らしい振付がむしろ新鮮でした。間奏でステージ上をとことこ歩くかしゆかに、一際大きな歓声が上がります。おおー、アイドルのライヴ観てるな!!!

 

さてそろそろMCかな……と思いきや、3人は止まりません。あ~ちゃんが曲名をコールします。「カウンターアトラクション」!! うわーマジですか!! まさかこれをいまいちど生歌で聴ける日が来るとは……

 

そしてレア曲「カウンターアトラクション」が終わります。もうここまで来たら、何でもアリだな……

すると、♪ワワワワ~の男性コーラスに〈♪一人きりじゃ~〉とコブシを利かせまくるPerfume。これ、まだ封印されてなかったのか……「彼氏募集中」!!!!

私が最後にこの曲を聞いたのは「GAME」ツアーで、そのときは3人の〈理想のタイプ〉をアドリブで言っていました(確かノートにメモしてある)が、この日はオリジナルのままかな? まあオリジナルもよく知らないんですが。

 

怒涛の6曲を、ノンストップの生歌で駆け抜けたPerfume。ようやくMCタイムです。

◇MC あるいは(あ~ちゃんがもたらす予期せぬ長さ)

あ~ちゃん「Perfume Anniversary 10days、PPPPPPPPPP! 初日、P.T.A.サミット!! O-WESTへようこそー!!! えへへ、O-WESTの人みたい!」

「今日は特別な日だから、とびきりのセットリストを用意しました! 最後まで、仲良くして下さい!」

いったんメンバーがステージをはける。給水でしょうか? いや、かしゆかがステージに残り、甲斐甲斐しくマイクスタンドを片付けています。舞台袖に消えたのっちもすぐ戻ってきて、「あの、これからかなり長くしゃべるので、皆さん一歩下がりましょう!」と気遣っています。

 

<MCテーマ:この日のセットリスト>

あ~ちゃん「リハのとき、本当に楽しくてずっと爆笑しとった」「『おいしいレシピ』とか、ずっとジャンプしとる」「『スウィートドーナッツ』、昔はめちゃめちゃ煽ってて。お客さんの声が欲しかったんじゃね。静かに聞いてくれてても、なんか心配で……でも今日は煽り、だいぶ削りました。もう26だし

 

<MCテーマ:Fan Service~bitter>

あ~ちゃん「みんな、全曲わかった? 知らない曲あったでしょ?」

客「全部知ってるよ!」

あ「それはみんな異常じゃろ。だって音源化されていない曲(カウンターアトラクション)もあったよ? それは当時ライヴ観てくれてた人か、Fan Service……bitter?を観た人じゃないと。みんな観てる?……あれもう買えんよね? あの銀色の、冊子になっとるやつ(注:初回限定盤のこと)。あれ、あたし持っとらん

客「ええーーーーーー!?」

のっち「あたしも持ってない

客「ええーーーーーー!?」

かしゆか私も……持ってない

客「ええーーーーーー!?」

あ「あれ、たぶん会社にももうないよね? みんなあげちゃったはず。(突然2階席に向かって)お母さん持っとるー?……ああ、お母さん持っとるって」じゃあ家にあるんじゃないか……

つづきます。

第59回 ダンス・ミュージック・フェスティバルって何だ?

先日、初めてUltra Japanに行ったのですが、あまりにも思うところが多すぎて、「……やっぱりこれは書いておかないと!たとえ今日がPerfumeO-WEST公演当日でも!!」と切実に思ったので緊急エントリーです。

 

◇TomorrowWorld 2014

2014年9月26日~28日、私はアトランタTomorrowWorldにおりました。なぜわざわざアメリカまで来たかというと、この年に始まった、そしてTomorrowWorldのちょうど同日に開催されるUltra Japanに、普通に行ってもなんかおもしろくないなと思ったからです。みんながUltra Japanに行くなら、僕はアメリカに行こうかな、Ultraは去年韓国で観たからな、と。

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ただし、行く前は全くテンションが上がりませんでした。その理由は、うっかりウェスティン(やや高級ホテル)に宿を取ったため、全行程で30万円くらい掛かっただけではありません。

アメリカのダンス系フェスって、どうせいきがった若い白人がウェェーーーーーイ!!!ってやってるだけなんだろうな、「13日の金曜日」なら真っ先に殺されそうな、乱痴気騒ぎが目的の連中ばっかりなんだろうな、会場の雰囲気に馴染めるだろうか……と思っていました。

 

 

しかし私が会場で見たものは。

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世界中からあらゆる人種の老若男女が集まり、それぞれが自由に音楽を楽しんでいました。白人に黒人、アジア系や中東系……そしてステージ前には、100本を超える国旗が振りかざされます。他にこんなたくさんの国旗を持つ人たちが集まるのは、オリンピックかワールドカップぐらいでしょう。

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〈音楽に国境は無い、音楽は言葉の壁を越える〉などとよく言われますが、それがここまで可視化されている状況を、私は初めて目の当たりにしました。

 

特にEDMブームは〈若い〉〈白人男性〉のDJが牽引していますから、白人優位の文化かと思い込んでいたところ、アフリカ系の観客の多さが意外でした。これはダンスミュージックの、人を踊らせるためにあるというシンプルな機能性ゆえでしょう。そして世代も、若者だけでなく30代、40代もたくさん参加。性別だって、男も女もLGBT(性的マイノリティー)の方々も昨今の邦楽ロックフェスみたいな全員同じフリではなく、思い思いの自由なダンスで、みんな凄く楽しそうで。

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その多様性と自由さは、実に美しいものに見えました。

 

◇Sound of TomorrowWorld

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TomorrowWorldの音楽面についても書いておきます。このフェスはステージが8つあり、メイン・ステージをはじめ、大小さまざまなステージに、それぞれカラーが(しかも日替わりで)あります。メインはいわゆる売れ線EDMが中心ですが、トラップに特化した〈IT'A TRAP!〉ステージ、トランス専門のステージ、他にもベース・ミュージックテクノハウスなど、ジャンルやサウンドの傾向でステージ分けがなされています。

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Diploの〈Mad Decent〉、Richie Hawtinの〈Minus〉、Steve Aokiの〈Dim Mak〉といった、人気DJの主宰レーベルを冠したステージがあったり、BBCの著名DJであるPete Tongがキュレートしたステージもありました。2015年はHardwellのレーベル〈Revealed〉のステージや、フューチャー・ハウス・ステージなんかもあるようです!

つまり参加者は、フェスの会場でダンス・ミュージックの幅広さとトレンドをもれなく堪能できるわけです。ちなみに〈Minus〉ステージのRichie Hawtinのプレイでは、普段ミニマル・テクノやクリック・ハウスなど絶対に聞かないであろう、屈強な黒人や白人たちがタガの外れたように踊り狂っていました。

そういった未知の音楽との予期せぬ出会いが生まれる下地としての選択肢の多さ、そしてここでも多様性が魅力なのです。

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◇コミュニケーション

TomorrowWorldの魅力としてもうひとつ、世界中から来た多様な人たちとのコミュニケーションがあります。といいますか、ぼーっとしてると向こうからガンガン話しかけてくる(当然英語で)ので、反強制的コミュニケーションなのですが……これもたくさんエピソードがありますが、ここでは取り急ぎThank you, Everyone!と。

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↑なぜ向こうの男どもは脱ぎたがるのか……

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はたして日本に、TomorrowWorldみたいなフェスができるかはわかりませんが、このブログを読んで下さるような(?)好奇心があり、勤勉な皆様には、一度は海外フェスへの参加をお勧めします。

第58回 Ultra Japan、何かヘンだぞ?

※今回は少し趣を変えています(Perfumeネタは少なめです)が、お目通しいただけましたら幸いです。

※まずないと思いますが、万一関係者の方がご覧になる場合「あー、Ultra行かないからってひがんでるんだなー」と思って下さい。

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Ultra Japan 2015、全券種ソールドアウト! 関係各位、おめでとうございます!

ついに日本でもEDMが大ブレイクですね!

ヨーロッパでのEDM人気から7~8年、アメリカからも4~5年は遅れてしまっ……うんそんなの関係ないですよね!!! しかもBeatportのチャートとか見てると、いま日本で持て囃されてるような王道のビッグルーム・ハウスは曲がり角に入ってる気もしますけど、関係ないですよね!

 

 

あれ……?

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Ultra Japanの3日券って39,000円もするんだ……? 僕が2014年に行ったアトランタのTomorrowWorldは、円換算して3日券で37,000円くらいでした(まあ手数料が恐ろしく高いですが)。

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  ↑TomorrowWorldのチケット購入明細

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 うーーーん、TomorrowWorldはステージが8つあって出演者もわんさかいたけど、Ultra Japanはステージたった3つでこの値段はおかし……いやいやいや! 日本は極東アジア圏なのだから、はるばる欧米からたくさんのDJが来日するんだし、ステージセットとかの輸送費も高くつくだろうし……

 

あれ、極東アジアといえば2013年にUltra Koreaも行ったな……

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   ↑Ultra Koreaのチケット購入明細

当時はいまより円高ウォン安のため、2日券で11,000円(1日あたり5,500円)ってところでしょうか。なお早割ならもっと安く、翌年のUltra Korea 2014は、2日券の早割で6,500円(1日あたり3,250円!でした

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2013年のUltra KoreaはAvicii、Armin Van Buuren、Afrojack、Kaskade……結構豪華です! Ultra Japanと見劣りしません。この年は日本よりPerfumeも参加しており、まあなかなか悔しい結果に終わったのですが、何もかもが懐かしいですね…

◇Ultra Japanのチケットは割高?

さておき、これらの海外EDMフェスと比べて、このUltra Japanのチケット価格設定はどういうことだろう?と思うと、2つの要因が考えられます。
 
<1:DJのギャラ高騰>
日本になかなかEDMブームが来ないうちに、海外のEDMマーケットが異様に巨大化。中規模のものから数十万人規模までEDMフェスも多発&大盛況し、人気DJの取り合いで出演料が高騰。DJ1本のギャラで何百万円、何千万円と、完全にバブル化しています。さらに日本の為替はアベノミクスによる金融緩和を行ったことで一気に円安に振れましたので、海外のDJを招聘する場合はダブルパンチです。
 
とはいえ、Ultra Korea 2015でも1日あたり6,000~8,000円とかなので、Ultra Japanの1日で13,000円は韓国のほぼ2倍……。

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<2:Ultra側が決めている>
開催国の物価や、ポピュラーなフェスティバル~イベントのチケット料金を元に、本国のUltra側が料金を設定している可能性もあります。だからフジロックサマーソニックよりちょっと安い、と。その2つと比べて出演者かなり少ないのに。
 
もっとも最初から高い価格にすることで、〈いまいちばんイケてる、価値の高いフェス〉として、参加することがステータス!な位置づけにするブランディング(むしろマーケティング効果もあるかもしれませんね。
そのうえほとんどの日本人はEDMフェスの経験が乏しいため、これくらいのメンツなら大体いくらくらいだろ、という相場がわからないやいやいや邪推ですね!
 僕はこの出演者数で、1日8500円程度なら行きたいです。

◇個人的にもっとも奇妙な点

Ultra Japanホームページの「ABOUT」をご覧下さい。

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〈主催・企画・制作〉ULTRA JAPAN 2015 実行委員会となっています。これが海外の場合、EDMフェスを主催するプロモーターは、わが社がこれをやっております!と社名をアピールしてきます。Ultra Music FestivalUltra Enterprises(アメリカ)が主催し、Electric Daisy CarnivalInsomniac(アメリカ)、TomorrowlandElectric ZooID&T(オランダ)とか……EDMのビッグフェスを制作していることが、いまどきは何よりのPRになるわけですね。

http://www.id-t.com/

 
はて、それではULTRA JAPAN 2015 実行委員会って誰なの? このラインナップは誰がどう決めているの?という話になってきます。開催の主体や規模がさっぱり見えません。これは何か表沙汰にできない理由でもあるのか?と勘ぐってしまいます。というか実はどういう会社が積極的に関わっているか耳にしていますが、それは書けません。
ですので、〈ULTRA JAPAN 2015の推定経済効果は約95億円みたいなニュースが、2015年の6月(まだ開催してない)時点で発表されていて、なんか妙だな?と思ったのですが、そこも「ああ、あの業種だから……」と合点がいきました。
 

◇まとめ的なもの

以上、いろいろ文句気になる点を書き連ねてきましたが、いいんですよ! チケットがいくらだろうと、開催の主体が謎だろうと。Ultra Japan実現に向けて、日々大変な業務をなさっているスタッフの方々のご苦労は重々お察ししております。海外の超人気フェスのフランチャイズなので、どうしても向こうの意向が強い部分、なかなか日本サイドの思うようにいかない部分も多いと思います。
 
それでもこのイベントが無事に開催されて、お客さんやスタッフの方々に怪我も事故もなく大成功してくれれば、それがいちばんです。
 
そしてその先に、EDM……だけじゃなくてダンス・ミュージックそのもののファン、DJやクリエイター、スタッフ、そして評論(重要)が増えて、クラブ・カルチャーを含む日本の音楽マーケットの裾野が広がり、豊かな音楽文化に繋がってくれることを心から願っています。

EDMブームを仕掛けて〈売れるうちに売っちまえ!〉的な、一部の人たちだけが潤って、あとはEDMが単なる流行モノとしてまあ残念ながら流行モノなんですが……)短時間で安直に消費し尽くされることのないようにとも、心から願っています。

 
まあ9月21日のUltra Japan最終日、僕はPerfumeのO-WEST公演に行ってますけどね!!!

第57回 SONICMANIA2015

行ってきましたSONICMANIA、楽しかったSONICMANIA

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Perfume SET LIST

1. Pick Me Up

2. レーザービーム

3. GLITTER

4. Spring of Life

MC

5. NIGHT FLIGHT

P.T.Aのコーナー(mihimaru GT「気分上々」)

6. Party Maker

7. だいじょばない

8. チョコレイト・ディスコ

 

まあしれっと書いていますけど、私が入場したのは最初のMC時。

のっちProdigyは、あのBPMが腹筋する時にいい」

あ~ちゃん「暑いねー! もう帰ってもいい? いや、もう帰ってもいいくらい、みんな熱いし楽しかったから!」と、遅れてきた(しかも海浜幕張駅から会場まで全力で駆け抜けた)私には底のない脱力感を与えるものでした。「GLITTER」聴きたかったよ……

というわけで後半の4曲しか観られていないのですが、なかなか良かったのではないかと思います。3人のダンスのグルーヴも出ていたし、P.T.Aのコーナーであ~ちゃんが「(ピースサインを目元に当てながら)ヤバぁーい、チョー盛り上がってるぅー!……今日の裏テーマは〈ギャル〉です! ははは!でもいちばんギャルのマネがうまいのは、かしゆか!」

かしゆか「(生意気そうな口調で)パーリーナイ!チョーサイコー!☆

そういうギャルがいるかはさておき、のっち空気になってるじゃねえか!

 

はい、Perfumeの感想は以上です。いや今日書くことたくさんあるので!

 

Madeon

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個人的には、Perfume→Madeonの流れは願ってもないものです。Madeonくん(94年生まれ)はフレンチ・エレクトロシーンの若きエースにして、〈UMF〉などのEDM系フェスにも引っ張りだこのDJ/クリエイターですが、実は熱心な中田ヤスタカファンでもあります。『Japan Only EP』などで聞けるエレクトロ・チューンはまさに中期capsuleと相通じるものだし、DJするときはいつもヤスタカの曲をセットに入れているとか。

つまり、Perfume→Madeonと続けて観ることの、裏テーマは〈ギャル〉……じゃなかった〈中田ヤスタカ〉なわけです。

 

そんなMadeonくん、先日発表した初のフル・アルバム『Adventure』のリード曲である「Pay No Mind feat. Passion Pit」を、中田ヤスタカがリミックスすることになりました。http://www.sonymusic.co.jp/artist/madeon/info/456312

Madeonのコメント「僕は何年も前からCAPSULEと中田さんが手掛けられた作品のファンで、僕の音楽にも大きな影響を与えています。僕の曲「ペイ・ノー・マインド」のリミックスをお願いして、快諾してくれた時には嬉しくて興奮しました。完成したリミックスも素晴らしくて、いつもDJセットでプレイしています。」

このリミックス、Apple Musicなんかで聞けますので、聞ける方はぜひ。

つまり、Madeonは間違いなくPerfumeもチェックしているし、Perfumeが出演する日本のフェスで自分もパフォーマンスできることを、そしてPerfumeのライヴを楽しみにしていたはずです。そんなMadeonくんのタイムスケジュールがこちら。

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……もろに被ってるじゃないか……

ただ、ネット情報ではPerfumeライヴの序盤に、Madeonくんの姿がフロアで目撃されていたので、最初の5分くらいは観られたんじゃないかな、と思います。まあ、Perfume観たければ来日すればいいんですよ、かのSurgeon先生のように!!

 

そうそう、Madeonくんのパフォーマンスですが、機材の一部を観客に見えるように向けて、演奏している様をわかるようにしていました(オレはちゃんと演奏してるよ!的な)。エレクトロ~エレクトロ・ポップを中心に、メリハリのある構成。アゲ一辺倒ではなく、多様なリズムとキャッチーなリフで始終フロアを良い温度で盛り上げていて、うまいなー飽きさせないなーと思いながら観ていました。「Pixel Empire」は、もろに「Merry Christmas, Mr. Lawrence」だなーとか。

特に終盤、「Finale」からの「Pay No Mind(※ヤスタカリミックスではなかったはず)というコンボは超強力! そしてブースを離れ、ステージに置いてあったジャケットを羽織りり、手を合わせてぺこりとお辞儀。あ、終わりかな?と思ったら、もう1曲、キーボードを弾きながら美しいスロウを歌ってくれて(声は加工していた)、エレクトロニック・シンガーソングライターみたいな風情もありました。サウンドも魅力的ですが、全体的にミュージシャンシップの高さが滲み出ていて、そこがMadeonくんらしさなんだな、と気付きました。

さあ、次はPorter Robinsonです!

 

Porter Robinson

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個人的に、フジロックageHaでのDJも観ていて、これが3回目。以前はアゲアゲのエレクトロ・ハウスばかりかけていて、いかにもなEDMの新世代DJ!って感じでしたが、今回は〈Live Set〉とのことで、どうなるんでしょうか。

 

そこへTwitterのこんなリプライをいただきました。Madeonのスケジュール(Perfumeともろ被り)に関する私のツイートへの反応です。

 

そう、Porter RobinsonもMadeonと同類です!!!Perfumeと時間が被っているかどうかの大きな差はあるが)

そもそも、Porter Robinsonの初のフル・アルバム『Worlds』は、売れ線EDMから完全に一線を画したエレクトロ~ドリーム・ポップになっていて、これはPerfumeが「透明人間」で見せたアプローチと同じであり、Mat Zo『Damage Control』なんかもこの路線ですね。これはひとつの(EDMブームへのカウンターも含む)潮流でもあると言えますし、そして、Porter RobinsonとPerfume、Mat Zoは奇しくもAstralwerksでのレーベルメイトでもあっ……いえ、なんでもないです。

 

その作品のなかに、EDMブームに対する批評性を内包し、〈EDM〉と一括りにして消費されることを良しとしない。そしてユーザーへの〈こういうサウンドもおもしろくない?〉という提案と、自分ならではの音楽を追求する姿勢がある。これはヤスタカ、Porter Robinson、そしてMadeonにも共通するマインドであり、そういう意味でもこの3者は非常に近い立ち位置にいるように思います。

 

しかしPorter Robinsonのライヴは、私の予想を遥かに超えるものでした。サウンドは『Worlds』のとおりの、かなりナード(オタク)に寄ったエレクトロ~ドリーム・ポップで、彼の優れたソングライター性がよく出ているのですが、スクリーンに映し出される映像は日本のアニメ、ゲーム、漫画にインスパイアされたものばかりで、アニメやドット絵で描かれた色とりどりのキャラクターや、バグったような日本語がスクリーンを乱舞し、あまつさえFlicker」では「魔法少女まどか☆マギカ」の主題歌(だと思う)を重ねて流すという大暴走!! っていうかこの人、単に日本のアニメ・ゲームのマニアじゃねえか!!

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日本のお客さんは結構ウケてましたし、「Hear The Bells」とか「Lionhearted」とか見事な曲も多いし、ライヴとしての完成度とユニークさはかなりものだと思いますが、このセットで海外のフェスでも戦ってるんだ……と思うと、Madeonのミュージシャンシップとはまた異なる、〈業の深さ〉を感じました。

 

Dillon Francis

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これまでのアクトとはまた異なる文脈で、とても楽しみにしていたのがDillon Francis。先日のTomorrowland2015でもメインステージに登場、超盛り上がったらしいし、特に昨今のEDMフェスでは王道の売れ線EDMではなく、彼のような〈トラップ〉(だけじゃないけど)の方が支持されているらしいし、これこそ2015年のいま、観ておくべきアクトです!!!

 

 

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うっわー客いねええ!!!!!!

 

 

まあ予想はしてましたけど、ただパフォーマンスはすごかった! トラップやエレクトロ、ジャングルにヒップホップ、ダンスホール・レゲエ(なのか?)などのベース・ミュージックを中心に、とにかく底抜けに踊らせる曲を連発。ブーティーでヒップで、はちゃめちゃでエネルギッシュで、もうホントにいまの時代のサウンド、って感じでした。

 

そしてDillon Francis、ステージの去り際に「ニホンダイスキー! カンチョー(ポーズしながら)!!」と。お前、さては適当だな? っていうか誰がこんなの教えたの?

 

 お前かーーー!!!!

第56回 Relax In The City/Pick Me Up/考えるヒット

Perfumeの両A面ニュー・シングル「Relax In The City/Pick Me Up」がリリースされました(結構前に)!

そして週刊文春(2015年5月21日発売号)の近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」でも、「Relax In The City」が採り上げられています!!

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私の文章はともかく近田さんの原稿の書き出しを抜粋させていただきます。

ちなみに、いまさら書く必要もないと思いますが、近田さんは「ジェニーはご機嫌ななめ」の作者です。

 

新譜が出れば聞いてみたくなるのがPerfume

・アーティストとしてのポジションや本人たちのスキル、また三人編成というフォーメーションもあるだろう、色々な意味で自由度が高いというか様々な選択肢があるというか。次はどう出るのか? Perfumeには可能性の幅というものがたっぷり感じられる

メジャーデビューして10年経ってるのに、まだ〈可能性の幅がたっぷりある〉って珍しいですよね……そして近田さんは以下のように続けます。

 

ドメスティックな大衆性を保持しつつも、グローバルなリスナーに向けたチャレンジも決して怠ることがない。そうしたスタンスは最新シングルでも変わることがなかった

Perfumeの、〈グローバルなリスナー(というかトレンド?)を視野に入れた音楽的スタンス。そこにしっかり触れている、近田さんらしい評論です。

 

◆「Relax In The City」(のベース)

さてお待ちかね(※誰も待ってない)私の感想も。この曲、CDリリースで初めてちゃんと聴いたのですが、パッと聞きの印象は

「え? これ〈微かなカオリ〉?」

 

『JPN』の時期に顕著だった、柔らかいサウンド・デザインとポップなメロディー、優しい歌い口。「Relax In The City」ではさらにメンバーのヴォーカルの存在感が前に出た印象で、Perfumeコーラス・グループとしての魅力にフォーカスされています。

 

うん、良い曲ですね…でもちょっと保守的かな、と思う間もなく、何でしょうこのロウな鳴りのベースは。「Sweet Refrain」ではいわゆるウォブル・ベースを導入して、ゴリゴリにディストーションが掛かっていましたが、というかいま思うと「Sweet Refrain」ってとんでもない傑作だった(割に対して語られなかった)気がしますが、それはさておき。

 

近田さんは、このイントロからの流れをどう聴いたのでしょうか。

イントロが始まるとオルゴールの音が聞こえてきて、一瞬ビートのないただの可愛い系なのかとも思えてしまう。それがダンス・ミュージックへの導入だったことが少し経つうちに分かってくる。この展開、気の持たせ方こそがフロア的センスというものだ

・ホットでイケイケなだけのアイドルものとは一線を画す、体感温度めのトラックであり、ミックスバランスの中で殊に耳が行ったのがシンセベースだった

・比較的女性の側に立った質感の曲調には似つかわしくない、ある種豪快、いや荒々しきと言うべきか、とにかくこの楽曲にこのベース(音色、フレーズ)を持ってくるという、そんな事は他のJ-Popアイドルのシングルでは、まずあった試しがない

そうそうそうですよね近田さん!! オルゴールとは微妙に違う気もしますが!!

近田さんの評論は〈温度感〉〈(予定調和ではない)楽曲の展開〉〈ビートの重たさ〉という概念が結構出てきますが、まさにこの曲こそ、そういう切り口がぴったりな気がします。というか、そういうテーマをもって作られる曲が少なすぎ、ということでしょうか……

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◆「Relax In The City」の持つ力

「Relax In The City」のサウンド・プロダクションの特徴は、重みのあるベースを、そうと聞かせず…というか、軽やかで穏やかなウワモノとの、絶妙なアンサンブルになっているところだと思います。この実験精神というかバランス感が、やっぱりヤスタカ素直じゃないなという結論に至る所以でしょう。

そして、そのチャレンジが自己満足ではなく、最終的には3人のヴォーカルを引き立てるためになされている、これはいかにもPerfumeらしいプロデュースワークと言えそうです。

で、私がつべこべ書いているところ、近田さんはサラッとこんな風にこの曲を評価されています。

・例えばこの曲が、全然日本語の通じないどこか外国のクラブでかかったとする。それでもその時きっと客たちは、このシンセベースのカッコよさだけで――曲が何を歌っていようが構わず――盛り上がってしまうと思うのだ

 

言葉や国境や人種や時代を越えて、盛り上がることができるのが音楽の力だとすれば、この近田さんの文章が示すものこそ、まさにそれだと思います。

もっとも、歌詞はそんなに特筆することがない気もしま……

 

◆音楽業界を考えるヒット

「Relax In The City」は世界のどこでも盛り上がるだろう、と綴る近田さんの文章は、Perfumeを離れて音楽業界へと向きます。

・メジャーどころで、近頃彼女たち以外に一切そういった(筆者注:世界でも通用する)印象の音がないことは、未来に向けて、いくらなんでもまずいのでは?

・そのあたり、商業音楽制作のトップに君臨されている皆さん的にはどうなんですかね? もう国内向けだけじゃ、音楽って産業として成り立たなくなっちゃう事はないんでしょうか

いやー、私も一応音楽業界にいる身として、さすがにここまでは書けませんが、

……近田さんの引用なら書ける!!!!

 

今回は近田さんと私の合評(※私からの一方的な)になりましたが、実はテキストそのものは「考えるヒット」の前に書いていたので、こういう形式にさせていただきました。もう近田さんに連載の感想(akaファンレター)送ろうかと思っています。

次回は「Pick Me Up」、そして「透明人間」について書きたいところです。それにしても、気のせいかなー、なんか「Relax In The City」を聴いてると、麦芽アロマホップでできた炭酸飲料を飲みたくなってくるなー

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第55回 PAとは

いつもはPerfumeの楽曲やライヴについて、あーでもないこーでもないと言ってるブログですが、今回はPerfumeのライヴにおいて欠かせない要素のひとつ、PAについて書きましょうか。

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PA=?

いきなりですが、PAの正式名称をご存じでしょうか?

 

 

 

〈拡声装置〉を意味する、Public Adress Systemです。

ライヴ会場に設置された、スピーカーなどの音響機材がPAシステム。

その機材を駆使し、会場で鳴らされる音を作り上げるのがPAエンジニアです。

音楽業界ではこれらをいっしょくたにしてPAと呼ばれますね。

 

ではどこまでがPAシステムか。厳密に言えば、ステージ上で出ている音を増幅するための機材……マイク、アンプ、モニター(ステージに立つ人が自分の出して いる音を聴くための)スピーカー、客席用スピーカー、そしてそれらの音を調整するミキサーが含まれるはずです。

が、ここでは〈ステージで鳴っている音を観客に伝えるシステム〉。という大まかな認識で書いて行きます。恥ずかしながら私はこのへんド素人なので、詳しい方のつっこみを切望しております。

 

ちなみにPAトリビア(懐かしい…)として、以下の2点をお伝えしましょう。

1:日本のコンサートでPAが使用されるきっかけは、The Beatles

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1966630日~7月2日のビートルズ日本武道館公演では、なんと日本にまだPAシステムが存在しません。ヴォーカル・マイクと、アンプ/ドラムスに立てたマイクだけで大観衆と向き合っています(なお、この時のビートルズの機材はUKから持ち込まれたVoxで、当時の日本製スピーカーとは桁違いの出力だったそう)。

モニタースピーカーもないため、そのころのビートルズ「アメリカでは観客の絶叫で自分たちの演奏が聞こえなかった」そう。それと比べると日本の観客は静かだったとか。

さておき、日本で初めての1万人超の大規模公演ビートルズ日本武道館であり、それ以降は大型体育館や球場などでのコンサートが一般化。音響や照明の機材、舞台美術、演出等が進化していき、現在に至るのです。ビートルズが日本の興行史を変えたわけですね。

 

2:日本で初めてPAシステムの会社を作ったのは加藤和彦さん

69~70年ごろ、サディスティック・ミカ・バンドUKレコーディング(すげえな)でロンドンを訪れたトノヴァンさん(加藤さんの愛称)が、「その頃日本には機材とか今でいうローディーとかPAがなかったため、PA機材を大量に購入、日本に持ち込みライヴで使えるPAシステムを構築。しかも初めてモニター系統を(場内に流す音と)別に作ったのもトノヴァンさんたちだそう!

そしてトノヴァンさんが日本で最初のPA会社・ギンガムを設立されました。その当時、まだ22~23歳だったそうで、空恐ろしい話です。

こちらはMusicman-NETの加藤和彦さんインタヴュー(超おもしろい)から引用させていただきました。

 

PA エンジニアの役割

PAシステムの話はこれくらいで(逃げて)、ここからが本題。

PAエンジニアとは、音響機材のセッティングによるPAシステムの構築、そしてステージ上で鳴らされたサウンド(そして歌や演奏の信号)が送られてくるPAミキサーを操作し、音を増幅して、スピーカーから出力する仕事です。

 

え? ステージ上の音をただデカくするだけでしょって? いえいえ、それだったら無能で知られる私にもできてしまいます。

 

 

PAエンジニアの役割は、ステージ上で鳴らされた音を、その会場の隅々まで、バランスの取れた良い音で届けること。そのためのシステム構築とミックスだと思います。

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その音はあくまでナチュラルかつクリアで、しかもミュージシャンの持ち味を最大限に引き出し、最高の状態でお客さんに届けられます。

 

書くのは簡単ですが、これは高い技術と豊かな経験、優れた音楽的センスに裏打ちされた職人技です。音響工学の知識、楽器の特性や、そのミュージシャンの音楽性についても熟知していなければなりません。

PAエンジニアはそれらのスキルを元に音を作り出す、クリエイティヴな仕事と認識しています。

 

バンドなら一人くらいいなくてもライヴはできますが(ホントかよ)PAがいなければ音を増幅できず、規模の大きなライヴは不可能です。

 

Sound Of Music

ステージ上で、ミュージシャンの出す音は毎日違います。

そもそも会場ごとで、空間の広さや構造、残響などの環境がまったく異なります。

しかも、人間は音を吸収するので、無人の会場での音と、大観衆が詰めかけた会場での音はまったく変わってきます

 

これらの状況を踏まえつつ、その日のミュージシャンと観客にとって、どんなサウンドがベストか。どういう音を作れば、演者は最高の気分でパフォーマンスし、お客さんは心から音楽を楽しんでくれるか。

 

それを追求するために、理想的なPAシステムを構築し、ライヴ中にはステージ上で鳴っているありとあらゆる音を、その音量・音質・音域を整え、バランス良くミックスする。状況が変われば即座に対応、常に良い音をキープし、すべての人に届ける。それがPAエンジニアの仕事です。

 

ちなみにPerfumeのライヴでは、進行に伴って音量が段階的に上がっていきます。それによって観客のテンションをコントロールするわけですが、これもPAならではの演出です。

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このように、ライヴに絶対欠かせないPAエンジニアですが、大抵のお客さんは「会場の全員」が「良い音」で聴けるのがあたりまえと思っているはず。

できてあたりまえなこと、しかしその裏でPAエンジニアはこんなお仕事をされている……そう考えると、ライヴでの楽しみ方もちょっぴり変わってくるのではないでしょうか。

 

ただ「透明人間」……じゃないや、Too Many Gain〉な、爆音なら良いってもんじゃありません。

そして最高のサウンドを鳴らそうとして下さる方々の志があるからこそ、ライヴはおもしろいし、かけがえのない体験になるのだと思います。

 

 

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