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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第56回 Relax In The City/Pick Me Up/考えるヒット

Perfumeの両A面ニュー・シングル「Relax In The City/Pick Me Up」がリリースされました(結構前に)!

そして週刊文春(2015年5月21日発売号)の近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」でも、「Relax In The City」が採り上げられています!!

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私の文章はともかく近田さんの原稿の書き出しを抜粋させていただきます。

ちなみに、いまさら書く必要もないと思いますが、近田さんは「ジェニーはご機嫌ななめ」の作者です。

 

新譜が出れば聞いてみたくなるのがPerfume

・アーティストとしてのポジションや本人たちのスキル、また三人編成というフォーメーションもあるだろう、色々な意味で自由度が高いというか様々な選択肢があるというか。次はどう出るのか? Perfumeには可能性の幅というものがたっぷり感じられる

メジャーデビューして10年経ってるのに、まだ〈可能性の幅がたっぷりある〉って珍しいですよね……そして近田さんは以下のように続けます。

 

ドメスティックな大衆性を保持しつつも、グローバルなリスナーに向けたチャレンジも決して怠ることがない。そうしたスタンスは最新シングルでも変わることがなかった

Perfumeの、〈グローバルなリスナー(というかトレンド?)を視野に入れた音楽的スタンス。そこにしっかり触れている、近田さんらしい評論です。

 

◆「Relax In The City」(のベース)

さてお待ちかね(※誰も待ってない)私の感想も。この曲、CDリリースで初めてちゃんと聴いたのですが、パッと聞きの印象は

「え? これ〈微かなカオリ〉?」

 

『JPN』の時期に顕著だった、柔らかいサウンド・デザインとポップなメロディー、優しい歌い口。「Relax In The City」ではさらにメンバーのヴォーカルの存在感が前に出た印象で、Perfumeコーラス・グループとしての魅力にフォーカスされています。

 

うん、良い曲ですね…でもちょっと保守的かな、と思う間もなく、何でしょうこのロウな鳴りのベースは。「Sweet Refrain」ではいわゆるウォブル・ベースを導入して、ゴリゴリにディストーションが掛かっていましたが、というかいま思うと「Sweet Refrain」ってとんでもない傑作だった(割に対して語られなかった)気がしますが、それはさておき。

 

近田さんは、このイントロからの流れをどう聴いたのでしょうか。

イントロが始まるとオルゴールの音が聞こえてきて、一瞬ビートのないただの可愛い系なのかとも思えてしまう。それがダンス・ミュージックへの導入だったことが少し経つうちに分かってくる。この展開、気の持たせ方こそがフロア的センスというものだ

・ホットでイケイケなだけのアイドルものとは一線を画す、体感温度めのトラックであり、ミックスバランスの中で殊に耳が行ったのがシンセベースだった

・比較的女性の側に立った質感の曲調には似つかわしくない、ある種豪快、いや荒々しきと言うべきか、とにかくこの楽曲にこのベース(音色、フレーズ)を持ってくるという、そんな事は他のJ-Popアイドルのシングルでは、まずあった試しがない

そうそうそうですよね近田さん!! オルゴールとは微妙に違う気もしますが!!

近田さんの評論は〈温度感〉〈(予定調和ではない)楽曲の展開〉〈ビートの重たさ〉という概念が結構出てきますが、まさにこの曲こそ、そういう切り口がぴったりな気がします。というか、そういうテーマをもって作られる曲が少なすぎ、ということでしょうか……

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◆「Relax In The City」の持つ力

「Relax In The City」のサウンド・プロダクションの特徴は、重みのあるベースを、そうと聞かせず…というか、軽やかで穏やかなウワモノとの、絶妙なアンサンブルになっているところだと思います。この実験精神というかバランス感が、やっぱりヤスタカ素直じゃないなという結論に至る所以でしょう。

そして、そのチャレンジが自己満足ではなく、最終的には3人のヴォーカルを引き立てるためになされている、これはいかにもPerfumeらしいプロデュースワークと言えそうです。

で、私がつべこべ書いているところ、近田さんはサラッとこんな風にこの曲を評価されています。

・例えばこの曲が、全然日本語の通じないどこか外国のクラブでかかったとする。それでもその時きっと客たちは、このシンセベースのカッコよさだけで――曲が何を歌っていようが構わず――盛り上がってしまうと思うのだ

 

言葉や国境や人種や時代を越えて、盛り上がることができるのが音楽の力だとすれば、この近田さんの文章が示すものこそ、まさにそれだと思います。

もっとも、歌詞はそんなに特筆することがない気もしま……

 

◆音楽業界を考えるヒット

「Relax In The City」は世界のどこでも盛り上がるだろう、と綴る近田さんの文章は、Perfumeを離れて音楽業界へと向きます。

・メジャーどころで、近頃彼女たち以外に一切そういった(筆者注:世界でも通用する)印象の音がないことは、未来に向けて、いくらなんでもまずいのでは?

・そのあたり、商業音楽制作のトップに君臨されている皆さん的にはどうなんですかね? もう国内向けだけじゃ、音楽って産業として成り立たなくなっちゃう事はないんでしょうか

いやー、私も一応音楽業界にいる身として、さすがにここまでは書けませんが、

……近田さんの引用なら書ける!!!!

 

今回は近田さんと私の合評(※私からの一方的な)になりましたが、実はテキストそのものは「考えるヒット」の前に書いていたので、こういう形式にさせていただきました。もう近田さんに連載の感想(akaファンレター)送ろうかと思っています。

次回は「Pick Me Up」、そして「透明人間」について書きたいところです。それにしても、気のせいかなー、なんか「Relax In The City」を聴いてると、麦芽アロマホップでできた炭酸飲料を飲みたくなってくるなー

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