2016年7月1日、とある記事が写真週刊誌「フライデー」に掲載されました。その詳細は一切省きますが、以前報じられた記事のダメ押しともいえる内容のものです。このブログでは、以前の記事に対する識者の見解(a.k.a 宇多丸さんの魂の叫び)も紹介していますが、はてさて……
しかしこの記事、どう捉えればいいのでしょうか。
信憑性のない三流記事?
今後のPerfumeの行く末を左右する大事件?
フライデー許さん?
高橋許さん?
あ~ちゃんが幸せならそれで良い?
私にはどれもそこまでしっくりきません。そもそもの因縁を辿るため、まずは2009年の話に遡りましょう。
◇Perfume VS フライデー
2009年6月、Perfumeメンバーに関する記事がフライデーに掲載されました。これもまあ詳細はぶっ飛ばします。
いまとなっては笑い話ですが、のっち→かしゆかと2週連続の記事掲載となった当時の衝撃はかなりのもの。このブログでも、識者の分析(a.k.a 宇多丸さんの心の叫び)を紹介しています。
2009年というのは、その前年に『GAME』の大ヒットを経て、かつては夢のまた夢だった日本武道館公演が大成功。Perfumeメンバー、3人をずっと支えてきたスタッフ、そしてファンすべてが、Perfumeの輝かしい未来が、すぐそこまで来ていることを確信して、喜んでいたはずです。苦労も多かったけど、ようやくここまで来られた。そしていよいよこれからだ!と。
フライデーの記事は、そんな期待に冷や水を浴びせました。
◇VOICE
フライデー事件の直後、宇多丸さんのラジオ番組に、Perfumeファンの男性からのメールが届いています。
〈このショックの理由は、自分たちの声援が、アイドルである彼女たちの幸せに繋がるものと思っていたのに、そんなの一切関係なく、彼女たちは自分で幸せを見つけていたことに、落胆したからだと思います〉という、まあ言ってしまえば当然の現実を、多くの男性ファンは目の当たりにしたわけです。
宇多丸さんが心境を語ったように、「自分は疑似恋愛をしているつもりはなかったのに、思った以上にショックを受けた」という人も多かったでしょう。私もそうです。この事件によって、疑似恋愛ファン層が相当数削られたのは、その後の支持層の若年化を考えると、結果的には良かったと言えるのかもしれませんが、それもまた皮肉ではあります。
この記事でショックを受けたのはファンだけではありません。当時の〈MEMBER BLOG〉で、あ~ちゃんの映像は化粧っ気も元気も一切なく、痛々しいものでした。しかしそれは、あくまでカメラを前にしたもの。フライデー事件以降、初めてファンの前に立った日が、『⊿』ツアー初日、2009年8月7日の埼玉・戸田市文化会館でのライヴです。
以下、当時の私の日記から抜粋します。
雨降る戸田駅の周辺には〈チケット譲って下さい〉とボードを持つファンが多数。会場に移動し、1300人規模という当時のPerfumeには小さすぎるホールに入ると、満員の場内にはいままで感じたことのないような張り詰めた空気が。
フライデー事件以降、初めてファンの前に立つ3人が何を話し、何を話さないのか。いつもより静かな客席には、かなりシリアスでナイーヴな受け止め方をする人も多かったように思います。
場内が暗転すると「Take off」のSEから、幕を丸く切り取って3人が登場。新しい、そして大胆かつ大規模な演出に挑戦するPerfumeの姿。「NIGHT FLIGHT」「エレクトロ・ワールド」「Dream Fighter」「love the world」を経て、最初のMCが始まります。
あ~ちゃん「戸田市文化会館、チケットが激戦だったそうで。ここで運を使い果たして大丈夫ですか?」
「私たちは2か月ほど前に、皆さんをお騒がせしてしまって……」
すると観客の一部から、クスクスと笑い声が。今思えば、これくらいの余裕のある受け止め方が、ちょうどいいかもしれませんね。全然気にしてないよ、って。
しかしそこでのっちが、「そこ笑うところ?」とちょっとおかんむり。あれ? 確か君の記事が先陣を切ってお騒がせていたのでは……
あ~ちゃんの話は以下のようなものでした。
「いままでライヴでは、正直な思いを伝えようとやってきたつもりだったけど、もうあの件(フライデー)で、自分たちを信じてもらえないんじゃないかと思った。皆さんを信じ切ることもできていなかった。アルバムのプロモーションをしていても、うまくいかなくて、どうすればいいのかわからなかった。
でも、アルバムが凄い数売れて、本当に嬉しかった。ライヴも、それまでは〈いやだな、やりたくないな〉って思ってたけど、やるからにはしっかり準備して、最高のライヴにしたかった。今日は特別な時間にしたいので、皆さんも心から楽しんで下さい!」
私の記録には〈あの件には触れないと思ったけど、あ~ちゃんは正直な人だ。この話の最後の方では泣きそうだった。話の間、かしゆかは神妙な表情、のっちは苦笑していた〉って書いてあるけど、確か君の記事が先陣(以下略)
フライデーの話が終わって……しかし、あ~ちゃんのMCは終わりません。
「戸田には、びっくりドンキーがたくさんあります。3つもある。でもマネージャーは1軒しかない〈安楽亭〉に反応していた」
グッズ紹介の流れでは、パンフレットやステッカーなどを見せる3人。このツアーでは〈部屋着〉もあったようです(※記憶にない)。かしゆか、部屋着を身体に当てて見せて「ワンピースにもなるよ」。あ~ちゃんは会場内に早くも部屋着を着ている客(ライヴ中なのに!?)をめざとく発見。「普通の部屋着って、コンビニには行きづらいよね? でもこのグッズの部屋着なら……まあ結局行けんのじゃけど。透けるから注意しんさいよ」
他にも延長料金ネタ、「大人が動いてくれて素晴らしいステージができた。お金すごいかかっとる」など、あ~ちゃんのなかなかの放言が記録されています。お客さんの前に立つことで、鬱屈を晴らすことができて、楽しかったんでしょうね! それと蛇足ですが、この時期からブログやってればよかったかな、と少し思わなくもないです。
◇会いたくて 会いたくて
中盤のMCも記述あります。以下、おそらくライヴを〈いやだな、やりたくないな〉って思っていた時期になされたのでは、と思われる会話です。
あ「事務所の偉い人と話してて、その人が〈コンサートに来るって、どういうことだと思う? 音楽が好きなら、CDを聴けばいい。それでもライヴにお客さんが来てくれるのは、そのアーティストの人柄に触れたいから。その人に会いたいからだよ。たとえばサザンオールスターズは何百曲もあるけど、ファンの人は桑田さんやメンバーに会いたいから行くんだ〉って。
確かに自分も、aikoさんのコンサートに行くときは、『明日』とか好きな曲やってほしいなーと思うし、やってくれたら嬉しいんだけど、それよりもaikoさんに会いたいから行ってる。それなら、Perfumeのライヴにこんなにたくさんの人が来てくれるのはどういうことだろう?って、そう考えたら心がぎゅってなって、凄く嬉しくなった。せっかく来てくれた人の為にも、最高のライヴをやりたい」。
そしてそのMCの後、「ワンルーム・ディスコ」を経て、ここでなんと、もう絶対やらないと思った「ジェニーはご機嫌ななめ」が炸裂!!! イントロで起きた爆発的な歓声、忘れがたいです。私も思わず「おおおおおおお!!!!」と叫んでしまいましたよ。のっちが元気いっぱいに歌い始めます。
〈♪君とイチャイチャしてるところを見られちゃったわ
それをペチャクチャ言いふらされて私ピンチ〉
私の記録には〈ははは!全部事実じゃん! めちゃくちゃ盛り上がったな〉って書いてありますね。この「ジェニー」こそ、フライデーの記事への鮮やかなアンサーであり、Perfumeとしてどうあろうとしているかの意思表示とも取れます。その後のPerfumeの快進撃は言うまでもありませんね。
◇Seven Years In ...
戸田市文化会館のライヴから7年後。第二次フライデー事件の翌日、札幌でのライヴが開催されました。ツアー千秋楽を飾る北海きたえーるのチケットは2日ともソールドアウト。この動員はさすがです。
最初のパートを終え、あ~ちゃんが開口一番「みんな、楽しみにしてきたーー?」
はい、いろんな意味で!!
するといきなりあ~ちゃん「皆さんを信じ切ることができなくって……」
えっ? 7年前の戸田市文化会館でも同じようなこと言ってたぞ!?と凄まじいデジャヴに襲われましたが、「皆さんを信じ切ることができなくって、2年前に札幌に来たときは、1日しかやらなかった。でもそのときに、〈次は2日間やります!〉と言いました。そして今回、2DAYSで来ることができました!! 今日は最高の時間にしましょう!!」
おおー、ヒヤッとしたよ。あ~ちゃんがいつものようにはけると、のっちのソロMCに。開口一番「えー、先日ネットで……」
えっえっもうあの件触れるの!?
「電球を6個買うつもりが、60個買いました! のっちです!!」
…………。
しかしその後、のっちは意を決したように喋りだしました。
「今回のツアー、楽しく回ってきて、ここ札幌が最終公演です。でも、愛のない横槍を入れたり、わーわー言う人達がいて、心が揺さぶられないわけではないけれど、私たちの信念や覚悟は揺るぎません。私たちには皆さんの愛があるし、私たちの作品への叱咤激励を、真摯に受け止めて進んでいきます。
そして何より、私たちがいちばん大切にしているライヴで、今日という貴重な時間を、最高のものにしましょう!」
まさかのっちが、これほど大人な対応をするとは……!!
一言でいえば、「記事は否定も肯定もしない。けれど、自分たちの作品とライヴで判断してほしい」ということですね。
んー何ですかね、別に楽しい話ではないけれど、フライデーに好き放題書かれつつもアイドルとしてしっかり機能(?)できているのがなんかおもしろいし、まあ音楽やライヴの良し悪しとは関係ないし、という感じか。
— t_kito (@t_kito) 2016年7月1日
そして宇多丸さんと同様、やけくそ気味な「お幸せに!」に至るという
↑第二次フライデー事件当日の私のツイート
かしゆかがMCに戻ってきます。「でもさっきの電球の話、あるね。ネットでパーッと買い物していると、うっかり業務用とか買いそうになる」
の「余った電球をスタッフの皆さんに配ろうか。あ、ファンクラブ会員にプレゼントしようか! あとで担当に確認する。プレゼントの意味をはき違えている気もするけど」
か「電球は一度のっちの家に行ったもの」
の「場所がなくてキッチンに置いてある」
もう完全に通常モードな二人でした。
あ~ちゃんの様子はいつものように笑顔いっぱいでしたが、これは人によって見え方は異なるでしょうね。
◇Miracle Worker
のっちの演説でフライデー事件ははいおしまい……と思いきや、まさかの展開で、戸田市文化会館で披露した「とある曲」を歌うミラクルが起きたり、それを歌うあ~ちゃんが凄く微妙な表情に見えたり、かと思えば「みんな聴きたい曲ある? 彼氏募集中?」とさらっと強烈な一発を入れてくるなど、偶然も味方して、よくわからないけどかなりおもしろいところにきっちり着地できたと思います。
もし、2009年のフライデー事件がなかったら、こんなに見事な受け身が取れたかわかりません。もちろん年齢を重ねたいまだから、そこまで動じなくてもいいこともあるでしょうけど、あの事件があって、3人やスタッフの皆さんが頭を悩ませ、どう対応すればいいか苦慮したからこそ、そこで深まったものだってあったはずです。それが今回の対応にも生きたのではないでしょうか。
もし、2009年のフライデー事件が、2016年の第二次フライデー事件を越える力になったのだとしたら、こんなに愉快なことはありませんよね!
さあ、この後はいよいよ『COSMIC EXPLORER』ツアーの国内最終公演です!! 目いっぱい楽しみましょう!!!