第40回 Perfume FES!! 石川公演に寄せて ~宇多丸さんとPerfume その2~
2014年4月7日、石川・本多の森ホールでのPerfume&ライムスターの〈感慨深いにもほどがある〉共演(出典:BUBKA2014年2月号「マブ論」)にむけて、宇多丸さんエントリ第2弾です。
◆「アイドル」の意味を回復する3人
前回のエントリはアイドルソング時評「マブ論」の総括に終始しましたが、宇多丸さんのPerfume批評はまだまだあります。
やはり特記すべきは〈「アイドル」の意味を回復する3人〉とぶち上げた、「QUICK JAPAN Vol.74」Perfume特集号(2007年10月発行)。ここで宇多丸さんは「Perfumeという〈奇跡〉」の題で寄稿しています。
ずっとアイドルソングと、そのシーンを応援し続けてきた宇多丸さんならではの、愛と思い入れと分析が融合した素晴らしいPerfume評です。このまとめも作ったのですが、「マブ論」の論旨との重複も多いため割愛します(でもこの特集号自体も含め、必読です!)。
◆ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル
毎週土曜日の夜、TBSラジオでオンエアされている宇多丸さんのレギュラー番組『ウィークエンド・シャッフル』。こちらで何度かPerfumeをゲストに招いており、初のゲスト出演は2007年9月1日です(放送後記はこちら)。
2008年1月19日には2度目のゲスト出演。Perfumeは「Baby cruising Love/マカロニ」がオリコン3位を記録、この前日には「ミュージックステーション」に出演しています。しかし宇多丸さん、
「もう(番組には)来てもらえない、会うこともないだろうと思った」
「(最近周りのラッパーに〈Perfumeいいね〉と言われて)ああ、もう俺の手を離れて行ったな」
「LIQUIDROOMライヴのMCで、客席にいる掟さんはいじってもなぜ俺はいじらないのか、もういじられる対象ですらないのか」とすでに卑屈さが出ています。
この回は〈Perfumeが過去のメディア出演で、宇多丸さんに言及した内容〉を、はたして3人が覚えているか問う「クイズ!宇多丸なんて」が敢行されました(放送後記はこちら)。
◆とても大事な キミの想いは/無駄にならない 世界は廻る
3度目の出演は
宇多丸さんが3人を前にして『GAME』のチャート1位を知った瞬間の、リアルな反応が真空パックされていました(放送後記はこちら)。
「ホンットーに良かったね!!」
「サングラスで目が見えないと思うけど……泣いてますよ」
「『GAME』が良すぎて死ぬよ!!」
「俺たち……もう別れよう。これ以上好きになりたくない」など名言(?)連発。さておき番組の軸は、宇多丸さんによるPerfumeインタヴューで、「シークレットシークレット」のミュージックビデオでのチョイ役出演や、歌詞の深読みについて話しています。幸福感溢れる放送ですね(宇多丸さんが若干キモチ悪いですが)。
また2008年11月8日には、(40秒ほどでしたが)Perfume初の武道館公演の話も。
・終演後に初めて中田ヤスタカと遭遇
・武道館公演は集大成というより、新たな模索の第一歩に見えた
・号泣!みたいな感じじゃなく、良い意味での通過点だろう
2009年3月28日には4度目のゲスト出演。ここで宇多丸さんは「よっ! 中堅!!」と微妙な距離感でPerfumeを称えつつ、Perfumeのお悩み相談を展開(放送後記はこちら)。
「武道館ライヴの楽屋で、ぎくしゃくした挨拶をして以来ですね」
「絡みづらいでしょ?」
「もう嫌われても良いと思ってる」
「おじさんに悩みを打ちあけて、泣いてごらん、かしゆか!」など、暴走するハゲ、もとい宇多丸さん。
宇多丸「3人ともこんなに知り合いなのに、連絡先も知らないし……」
3人「じゃーアドレス交換しましょうよ!」
宇多丸「イヤだって!! そこは距離を置きましょう」
3人「(不満げに)宇多丸さんいっつもそう、一線引いてファンでいたいって……」
宇多丸「でも、親御さんの連絡先は知っておきたいね」
宇多丸さん、ホント素直じゃないなぁ。
◆The Choice Is Yours
そして……2009年6月20日。この日はPerfumeの出演はありません。が、宇多丸さんが「フライデー」のPerfumeメンバー熱愛記事について語っています。
・動揺しました。ていうか「クソッッ!!」て思った
・えっ?ちょっと待って!? (年上のミュージシャンが恋人)ってことは……俺も、ナシじゃなかった?(ナシナシナシ!と自分つっこみ)
・Perfumeは疑似恋愛に特化したファンが少ない印象。しかし今回〈自分は疑似恋愛層じゃないつもりだったのに、思った以上にショックを受けている〉という人が多いのでは(※宇多丸さんと私も含む)
・リスナーからのメール読み(誰がアイドルを幸せにできるのか問題)
・Perfumeファンがこの件をどう捉えるか、想像だけど、これまでとは違う新しい受け止め方がなされるように思う(過去にはアイドルの熱愛発覚→速攻で切り捨てやアンチ化が多かった)
・みんながなぜPerfumeを好きになったか思い出してほしい。『⊿』は最高にカッコいい。あれがリリースされれば、スキャンダルなどどうでも良くなる
〈ファンの疑似恋愛〉問題は、単行本「マブ論 CLASSICS」にも書かれています。疑似恋愛が時としてファンとアイドルの関係を歪める(&それを利用するアイドルも少なくない)事例を見てきた宇多丸さん。Perfumeファンを公言する著名人で、フライデー問題に向き合ってコメントした人も少数でしょう。(フライデーの件はあまり触れられていませんが)放送後記はこちら。
そこから間が空いて、2011年12月10日にひさびさPerfumeがゲストで登場(2年9か月ぶり5度目)。バッグについて語る特集です。
「どうせBUBKA野郎だよ!」と相変わらず卑屈な宇多丸さん。なお、特集自体にあまり内容がなかったので、書くことがありません(放送後記はこちら)。
◆IDOL DANCE!!!
2013年1月19日には振付師の竹中夏海さんによるアイドル・ダンス特集で、Perfumeの振付とMIKIKO様(By 竹中さん)について語られています。
竹中「Perfumeのダンスは拍の取り方などが超高度。彼女たちの登場以降、アイドル・ダンスのクオリティが大きく変わった」「Perfumeの凄さは、難しい振付を簡単そうにやれるところ」
竹中「『不自然なガール』のミュージック・ビデオにバックダンサーが付いているが、Perfume(ストリート・ダンスが出発点)とバックダンサー(コンテンポラリー)でダンスのジャンルが異なる。それを両方振付られるMIKIKO様の引き出しの多さ」
宇多丸「『不自然なガール/ナチュラルに恋して』、どちらのビデオも素晴らしいし、2曲の詞がリンクしているのもおもしろい。最高の一枚。これが他のシングルと同じ値段なのはおかしい」
そして2014年1月25日。Perfume FES!!の情報解禁を受けて。
・(前回の対バンを知って)まぁね、ここに僕が呼ばれるのもおかしいですよね、と思ってた
・過去のいきさつ(俺たち別れよう発言)やPerfume出演回の振り返り
・今回の対バンでライムスターもラインナップされた。セッションで何をやるか考えどころ。Perfumeにもラップする曲(「575」)があるし、Perfumeとライムスター曲のマッシュアップもできる。ファンク調の「ナチュラルに恋して」でのラップもできそう。考えどころ
・月曜日開催で、会場も石川県の金沢だが、この番組を聞いてるPerfume好きは会社を休むべき!!
◆(有)申し訳ないと -ALTERNATIVE J-POP DJ MIX SHOW-
宇多丸さんもDJとして参加する、日本語曲オンリーのクラブイベント「(有)申し訳ないと」。2005年頃、ここでもPerfumeはフックアップされています。
Perfumeメンバーは当時18歳未満だったため、普通オールナイトのイベントには出演できません。しかし抜け道的な〈早朝アイドル枠〉として明け方にライヴ出演したり、メンバーがケーキやラーメンを手売り(あ~ちゃん曰くぼったくり)したりと、非常に地道な出演を重ねていたようです。
このころ、同じく申し訳DJ'sの一員である掟ポルシェさんが、新宿LOFTのイベント「RHYTHM OF FEAR」にPerfumeをブッキングしたりと、周囲のミュージシャンが割と直接的にPerfumeの活動を支援していたようです(イコールそれくらい危ない状況だったとも言える)
【近影】容疑者Perfumeの恩人の皆さん
(有)申し訳ないとFINAL TOUR
2013年末をもって「(有)申し訳ないと」は終了しています。そのファイナルツアー、12月1日(日)の心斎橋DROPにて、宇多丸さんはこんなプレイをしていたそうです。※このパーティーに参加されたずるりさん( @pinkertonJPN )の目撃情報です。ありがとうございます!
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・あの日は片瀬那奈やTomato n' Pineなど、宇多丸さん的申し訳ベスト選曲でやっていたようでして、 1曲ごとに一言MCを挟んでいました
・最後の1曲になったとき、「今まで申し訳やっていて、1番はコレ!!」とMCして掛けたのが、Perfumeの「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」だったんです
・具体的に何の1番なのかは、宇多丸さん本人しか分かりませんが、〈最後の希望〉と称していた彼女たちが売れたことが嬉しかったんだと思います。 申し訳ないとと宇多丸さんも、その歴史の一つになっていると思います
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なお、宇多丸さんは年末の「ウィークエンド・シャッフル」で〈申し訳ないとスペシャル〉 を開催した時も、「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」を掛けていました。
さらにいうとムック「アイドル・ソング・クロニクル 2002~2012」内、〈私が選ぶ10曲〉に参加した宇多丸さん、ここでもやはり「パーフェクトスター~」を挙げていますね。
◆たぶんね キミは本当は(そう)全てパーフェクトなスター
前回のエントリにも書いた通り、Perfumeに並々ならぬ思い入れを持つ(そしていまやそれが卑屈さとなって表れる)宇多丸さん。「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」は、そんな宇多丸さんにとって特別な意味を持つ曲のようです。もしかしたら〈Perfumeを象徴する一曲〉と捉えているのかもしれません。
宇多丸さんがかつてラジオで言っていた、〈Perfumeの歌詞には、その都度彼女たちを巡る状況が表れている〉という考察に則れば、この曲ほど当時の彼女たち(の崖っぷちぶり)を言い当てたものはないでしょうし、宇多丸さんの想いに寄り添う詞もなかったのだと思います。
いまとなってはラジオやライヴで、宇多丸さんがPerfumeに言及することはほとんどありません(映画「モテキ」にPerfumeが出演していますが、その評論でも何も言及せず)。それでもPerfumeの新曲が出るたびに、「マブ論」では熱のこもった文章で、その作品の魅力を真摯に綴る。それが宇多丸さんです(※しつこいですが本業はラッパーです)。
長々と書いてきましたが、さあ、4月7日のライムスターとPerfumeの共演では何が起きるのでしょう。
宇多丸さんの卑屈さが(案の定)炸裂するのか?
もしくは宇多丸さんが照れて、ものすごい事務的に進めるのか?
キング・オブ・ステージことライムスターは、何を仕込んでくるのか?
そして両者のコラボレーションは?
楽しみです!!