第47回 いじわるなハローはRock The Casbah?
(前回のあらすじ)
Perfume「いじわるなハロー」と、The Clash「Rock The Casbah」の相似性を聞き取った筆者でしたが、Google検索の結果は0件。
はたしてその直感を証明するために、楽曲のアナリーゼ(解析)の助力を仰ぐために、さる人物のもとを訪れました。
◆さる人物とは…
私の音楽業界における先輩であり、Perfume初の武道館公演(2008)を共に見届けた同志であり、ミュージシャンであり、レーベル・オーナーであり、某ダブ・バンドのマネージャーでもあるお方です(このバンドのビデオ、監督はPerfume作品でお馴染みの関さんです!)。
先輩はこの2曲を「確かに瞬間的には似てるね」と認めつつ、さっそくギターを取り出してコードを調べてくれました(どのコードも、瞬く間に当てており、これがプロか…!と思いました)。
◆「いじわるなハロー」サビのコード進行
G♯M7 B♭ Cm Gm7 G♯M7 B♭ Cm
いじわるなハロー (ハロー) ハロー (ハロー) キミのメロディー
※サビの残りは繰り返しのため割愛します
◆「Rock The Casbah」サビのコード進行
Dm Am G Em F Em Am
The shareef don't like it Rockin' the Casbah Rock the Casbah
◆え?全然違うじゃん?
と思われるかもしれませんが、それはキー(調性)が異なるからです。よってPerfume曲のキーを、The Clashに寄せてもらいました。
FM7 G Am Em7 FM7 G Am
いじわるなハロー (ハロー) ハロー (ハロー) キミのメロディー
そしてThe Clashも再掲します。
Dm Am G Em F Em Am
The shareef don't like it Rockin' the Casbah Rock the Casbah
The Clash - Rock the Casbah - YouTube
いかがでしょうか。「G」「Am」のコードが一致し、それ以外のコードも「E」「F」のルート(そのコードの基本となる音階)で共通しています。
◆先輩の分析
・この2曲は確かに似ている部分がある。曲の進行として経過する音も、同じものを使っている
・譜割(リズムとメロディーの組み合わせ)も似ている……というか「Rock The Casbah」が有名すぎるため、Perfumeを聴いても無意識にそちらに寄せて(つまり似ていると)感じてしまうことが大きいだろう
・ヤスタカが「Rock The Casbah」を参照して「いじわるなハロー」を作ったかは何とも言えない。有名な曲だから知らないことはないと思うが、「Rock The Casbah」も特別にヒネったコード進行でもないし、作ったら自然と似てしまった、というところではないか
そしてここからが先輩の分析の本分です。
・「Rock The Casbah」は、白人のバンドだったThe Clashが黒人音楽に憧れ、その魅力を採り入れた〈自分たち流のダンス・ミュージック〉を作ろうと試行錯誤した末に、ようやく辿りついた到達点であり、歴史に残る楽曲
・そのThe Clashの軌跡と、「いじわるなハロー」……というかPerfume&中田ヤスタカの姿勢に重なるものがある。日本人である自分たちならではの、エレクトロニックなポップ・ミュージックを追求せんと、挑戦を重ねていまの音楽性を築き上げてきたのが、他でもないPerfumeとヤスタカだから
・こうして音楽と音楽の、時代や国境を越えた繋がりや繰り返しを想像して、好き勝手に楽しむことが、音楽を聴く行為の醍醐味や喜びのひとつなのではないか
以上、先輩の話を丸々掲載したのみで終わる今回のエントリーですが、Perfume曲の分析(というほど知識もないので突っ込めないけど)は、今後も機会があれば挑戦したいところです。
皆さんはこの2曲、似ていると感じましたか?
◆2014年11月12日(水)
この日、Perfumeはロンドンのハマースミス地区にあるEventim Apolloでライヴを行います。この会場は3,487席を有する、英国を代表するホール。ここは以前Hammersmith Odeonと呼ばれており……
かつて、The Clashも立ったステージです。
歴史と伝統が積み重ねられた舞台で、Perfume史に残る、最高のライヴを見せてほしいです! 私は行けませんが…