第27回 Perfume inspired by Rhizomatiks その2
第1弾に続く、9月28日に開催された〈ライゾマ展トークショウ〉のレポート第2弾です。メモと記憶を元にしているため、必ずしも正確ではありませんが、ニュアンスには注意しました。差し支えのありそうな部分はご指摘下さい(※関さんの〈某グループ〉を思わせる発言とか)。
エンターテイメントとメディア・アート
真鍋さん「海外のエンターテインメントの方が、メディア・アートへの接近が早かった。Massive AttackやU2がそういうアプローチをしていたのが2006年くらい」
↑ United Visual Artistsが手がけたMassive Attackのライヴ
関さん「僕の好きなRadioheadもやっていて、ああいうやり方に憧れたし、Perfumeにも合うと思っていた。日本でもお堅い企業はやってたけど、そうではなくメディア・アートをポップに落とし込む、みたいな」
真鍋さん「(メディア・アートの手法の導入は)表現をスケールアップさせるというか、良い方法だと思った。Massive Attackの演出を、大きなステージでやってるのはいいなと。でも、マッシヴやU2のやり方はマッチョだったから。もう少し、人とのインタラクション(相互作用)を採り入れたかった」
↑ United Visual ArtistsによるU2のライヴ映像
↑ とてもカッコいい、UVAによるMassive Attack「United Snakes」
MIKIKO先生「エンターテイメントという視点で見ても、アートとして見ても、どちらからも楽しい演出をめざした。わかり易すぎるものじゃなくて、ファンの人を信頼しているから、そこで変に迎合しても良くなかったし、3人がやってカッコいいものにしたかったです。もちろん限界もあったけど、大度さんといっしょにやって広がりが出てきた。これからもバランスを取りながらやっていきたい」
関さん「Perfumeは、〈3〉という数字が良いのでは? 20人とかいるグループもいるでしょう……(会場に微妙な空気が流れる)いや、まだ何も言ってませんよ! あまり数が多すぎても、どうかなって」
MIKIKO先生「3人しかいないから、制限はありますね」
・真鍋さんが初めてPerfumeに会ったのは、2010年の東京ドーム公演の前。メンバーの3Dスキャンを実施した
・ここで真鍋さんの秘蔵映像公開。Perfumeの画像が派手に加工されていくもの(映像を細切れにして、そのブロックが不規則なコースに沿って高速移動する感じ。たぶん〈グリッチ・アート〉と呼ばれる手法)
MIKIKO先生「これをスタッフが観て〈先生、映像がバグってます!〉と言われた」
真鍋さん「当時はこういうアプリばっかり作ってた。放送事故スレスレの」
・でも3人は「これやったらどうなるんだろう?」といつもワクワクしていたそう
アイデアとテクノロジーの順番
ここで事前に集めた質問からひとつピックアップ。
Q「〈こうしたい〉というイメージと、〈これができる〉というテクノロジーがあるとして、どちらのアプローチから進めますか?」
真鍋さん「打ち合わせのログを見ればわかるかな……(※東京ドーム公演の打ち合わせ記録を開く)〈練習 VS テクノロジー〉って書いてありますけど、これはいつものテーマ。何か話が来たとき、そこでテクノロジーの話は出ないので、それが実行されるときに、何ができるかをライゾマチームで考えます」
畠中さん「Perfumeのインタヴューで、いままでの振付に加えて、真鍋さんたちとやることで新しく覚えることが増えた、と見ました」
関さん「できることが増えると、やることも増えてしまうので、3人は大変だと思う。でも、新しいものをやっていくのが大切。音楽の世界はいろんなものが試せるし、それが良い未来を作っていくと思うから」
MIKIKO先生「ライゾマティクスには、+αの部分をやってもらっている。3人が仕上げてきたものに、人の力ではできない部分をテクノロジーで補ってもらう。良い関係ができていると思います」
Perfume Global Siteの革新性
畠中さん「Perfume Global Siteのあり方は、これまでになかったものです。アイドルならではの身体の特徴をなくして、データに変換した。それではPerfumeはどこにアイデンティファイしていくのか、という」
真鍋さん「ファンやクリエイターといっしょに応援していけないかな、と思ってこういうモーション・キャプチャー・データを配布したんです(ここで真鍋さんがPerfumeの曲に乗せて踊っているデータが表示される)」
関さん「(動きだけでも)大度くんってわかるね」
真鍋さん「モーション・キャプチャー・データを元に、みんなで作品を作っていくコンセプトを提案しました。こういうデータは匿名性があるから、配布のライセンスはし易かったけど、もしデータじゃなかったら(肖像権の制約などで)難しかったはず」
MIKIKO先生「振付に著作権はないですからね」
関さん「えっ? あるんじゃないですか?」
(※どうも〈振付に著作権があるか〉はグレーなゾーンらしいですが、MIKIKO先生はこのデータ配布について、権利申立てをしないスタンスだそう)
MIKIKO先生「振付を作った人が(再利用や配布も)OKと言えば、それでいい次元なので。大度さんに〈データ配布して、みんなで作品作ったらおもしろいですよ〉と言われて〈……そうなんだ?〉とOKしました。結果として、どんなキャラが踊っていてもPerfumeらしくなってた」
畠中さん「Perfumeの肖像は使っていないのに、Perfumeらしさが出ていた。そしてこのプロジェクトは、ライヴで完成したんですよね。本人が最後に出てくるのもユニークでした」
〈3人になりたい〉という、ファンの同一化願望をどう見ているかという話題に。
関さん「ダンスを〈これはマネできないでしょ?〉って作ることはありますか?」
MIKIKO先生「それはないです」
関さん「〈MIKIKO、難しくしちゃおっ!〉とか」
MIKIKO先生「それはありませんけど(笑)、結果難しくなっちゃって〈MIKIKO、反省〉ならあります(笑)。マネしやすくもしていないし、変に難しくもしないようにしてない」
・なぜ関さんが妙なことを言いだしたかというと、ちょうど何か(ディスプレイ?)に書かれた〈MIKIKO〉の文字を見ていて、言いたくなっただけらしいです
質疑応答コーナー
Q「お互いに同じアプローチだと思う部分、違う視点だと思う部分は?」
A「ヤスタカ、MIKIKO先生、関さんはリリースに際して打ち合わせしない。出てきたものを、それぞれに捉えて振付して、ディレクションする。今回はこういう曲だからこうしましょう、といった統一したやり方はしない」
Q「ライゾマティクス展、各展示の解説が絶妙ですが、どなたが書かれたのですか?」という私の質問も読んで下さいました。ありがとうございます!
A「司会の畠中さんがまとめた。展示作品に関するインフォを集めて、ライターさんにも書いてもらったものを畠中さんが加筆・再構築した。Perfumeをメディア・アートの切り口から紹介している」
真鍋さん「あの解説、すごく良いのでじっくり読んでほしいです」
Q「関さん・真鍋さんは作業にあたって振付を覚えますか」
関さん「覚えようとはするね」
真鍋さん「〈だいじょばない〉を前からフリースタイルで踊っていて、〈僕のダンスが本物の振付にも影響している〉と思って、MIKIKO先生に訊いたら違いました」
・ライゾマメンバーがPerfumeの振付をして、それを3Dスキャンしたフィギュアが完成するらしいので、乞うご期待!!(真鍋さん曰く「誰が得するんだろう」)
ライゾマメンバー全員分のフィギュア。ICCに展示しております。 Perfume LEVEL3リリース記念ということでup。。。 pic.twitter.com/cvfzSJntqy
— daitomanabe (@daitomanabe) October 2, 2013
ここまでの感想
・写真を貼ったMassive Attackのライヴ、私も2003年のフジロックで観たのですが、あの時点ですでにUnited Visual Artistsと組んでいたのですね。そして、まさかそれがPerfumeにまで繋がっていったとは!!
・リリースにあたって、ヤスタカは誰とも打ち合わせしないだろうなーと予想していましたが、MIKIKO先生と関さんも打ち合わせをしていないのは意外
・メディア・アートの手法を採り入れればいいわけではなく、バランスや、ミュージシャンの特性やカラーとの組み合わせこそが重要だと気付かされました
・関さんおもしろい
(つづきます)