第73回 Perfume 6th Tour「COSMIC EXPLORER」静岡公演
あ~ちゃん「話したことは上げていいけど……上げるって、何? 何ッターとか、何スタグラムとか?」とのことでしたので、レポートします。
5月21日(土)静岡・エコパアリーナ
まずは最初のMCから。
あ~ちゃん「静岡でのワンマンライヴは4年ぶりです!」
のっち「BBQ(アミューズ主催フェス)では毎年来ているんですけど」
あ「4年前、茶畑の話したの覚えとる? 4年前にも来ていた人ーー!」
客「(大体10~15%くらいが挙手)」
あ「えー!凄ーい!! 浮気もせずにー!?」
なお、その後かしゆかが呼びかけた「初めてPerfumeのライヴを観る人」は2割くらいでした。これは「4年前も来ていた」組とは重ならないため、観客の7割近くが「前回(JPNツアー)の静岡公演は観ていないが、Perfumeのライヴは観たことがある」人。おそらくその結構な割合が、静岡エリア外の観客だったと思われます。
あ~ちゃん「『COSMIC EXPLORER』聴いてきてくれた人ー?」
客「(大歓声!)」
あ「すごーい!ありがとう!!」
の「カッコいいアルバムだよね!」
あ「あのアルバム、本当に気に入ってて、こんなに気に入ったアルバムは久々」
えーと、ということは『LEVEL3』は……と思いましたが、かしゆかとのっちも「ア、アルバム自体久々だもんね!」と一生懸命サポート。あ~ちゃんやっぱすげえな。
その後あ~ちゃんは早々にステージ裏に姿を消して、のっちのソロMCが始まります。
「ドゥフゥッ! 静岡のみなさーん!
ど、どうした? なおその後、のっちは自分の力こぶを指して「これ何だっけ? こぶし?」とのたまっていました。
かしゆか「私、実は先月も静岡に来ました! ルーシー・リーの展示会があって……」
客「(特に女性が)キャーー!!!」
か「キャー!って人とシーンと静まり返った人で別れとる。その展示会、東京で観に行けなくて、全国巡回の最後が静岡で、それを観るために来ました」
このあと、かしゆかがルーシー・リーさんの作品の魅力を語っていたような気がしますが、すみません……一切覚えておりません……(シーンと静まり返っていただけに)
◇炭火焼き
その後はご当地トーク。静岡で有名なハンバーグレストラン=さわやかには、Perfume3人ともまだ行ったことがないとのこと。
客「えぇーー(明らかな落胆の声)」
の「タイトな予定で静岡に来ているから、行けないかな……みんなに任せた!」
か「みんな今日の夜はさわやかに行こう!」
↑さわやか名物「げんこつハンバーグ」。ミディアムレアな焼き加減が絶妙です。なお、さわやかのホームページアドレスが http://www.genkotsu-hb.com/ 、げんこつハンバーグドットコムなのがじわじわ来ます
◇恒例のチーム分け
◇中盤のある曲にて
大掛かりな機構を使う曲の途中、先頭を歩くのっちが途中でかなり慌てて前に進んでいくシーンがあって、さりげなくやっているように見えるけど、やっぱりタイミングをきっちり合わせるのは難しいんだな……と思いました。
◇P.T.Aのコーナー
◇POWPOWPOWPOW!!!!
何か(確か「P.T.Aのコーナー」?)がバシッとキマったとき、あ~ちゃんが「ポゥポゥポゥポーーゥッ!!!」と景気良く叫びながら、手でギャング・サインなポーズ(厳密にはたぶん違うと思うけど)をキメていましたが、あれ、誰か止めなくていいのかな? 日本なら大丈夫か……海外でやるとどう受け取られるかわかりませんが。
◇のっちの駆けっこ解釈
◇Too Many Gain(=音量高すぎ→爆音)
とある曲(派手で盛り上がる奴)をやる前に、PAスタッフの方に、低音の出力アップをお願いするくだりがありました。するとあ〜ちゃんがさりげなく「よろしくお願いします! 姉さんの魂継いでるから」。
「ポリリズム」前の代官山UNITから共にPerfumeのライヴを作り上げ、そして今は亡きPAエンジニアの佐々ふみさんのことに、公の場で初めて……観客も静かに拍手。そしてPAさんのおかげで、この「ノンストップ猫ちゃん」(by あ~ちゃん)パートを最高のテンションで駆け抜けました!
◇静岡初日の総括
Perfumeらしい改善っぷりがどう発揮されるか注目していましたが、上述のある曲でちょっとタイミングが合わなかったり、まだまだ発展途上の部分もあるように見えました。あ~ちゃんも「ツアー2か所目なんだけど、仙台から2週間空いてるから、あんまり入ってこないところもある」と随分思い切ったトークをしていました。
とはいえ、随所で進行の効率化が図られていると感じましたし、MCもどれくらいの尺で「これからやること」を説明するかのバランスがぐっと良くなっていたと思います。楽しい良いライヴでした!
5月22日(日)静岡・エコパアリーナ
快晴に恵まれた2日目。エコパアリーナの周りには空と山しかありません。
◇のっちのiTunesチャート監視
ソロMC。長かったので箇条書きです。
・「FLASH」がずっとiTunesチャート1位だった! 嬉しい!
・最初ずっとチャートを見ていたら「FLASH」は2位で、1位は弊社のONE OK ROCK
・ワンオク聴きたかったけど、チャートで負けてて悔しいので絶対聞かない。そして「FLASH」を自分でダウンロードした
・そうしたらそのちょっと後、「FLASH」が1位になった!
あ~ちゃん「いや、ひとりだけでそんな影響ないじゃろ」
ちなみに、初日の最初のMCではすぐにステージを離れたあ~ちゃんでしたが、この日は結構長く話してからステージを離れました。少し余裕が出てきたんですかね。
◇のっち VS おにぎり
のっちのソロMC「最近食べたいちばん美味しかったおにぎりは、あ〜ちゃんのお母さんが握ってくれたおにぎりののっちです! 最近よくあ~ちゃんのお家にメンバーで集まって、広島時代の友人のお誕生日会をやったりしているんです。あ~ちゃんのお母さんがいろんな料理を作ってくれるんですけど、そこで作ってくれたおにぎりが本当に美味しくて!」
かしゆか「お塩だけのね」
の「お米の炊き具合も、握る力も、塩加減も完璧だった」
か「のっち自身のおにぎりはどうなん? おにぎり代表じゃろ」
かしゆかには珍しい雑なフリ!
の「うーん、自分が握るおにぎりには、そこまで愛情がない」
◇人生(ZIN-SAY!)
かしゆか、「Perfumeを人生で初めて観るっていう人ー!」と聞こうとして、「Perfumeの人生で…………先走ったね」
その調査ですが、この日は見たところ〈4年前の静岡ライヴも来ていた人〉は昨日より倍増して3割くらい。初めてPerfumeのライヴを観る人は2割くらい。土曜は他エリア、日曜は地元の方々が多かったみたいです。
◇チーム分け
◇「WE ARE Perfume」でのロンドン再現
あ~ちゃんの再現芸はなかなかのものです。
◇The Choice Is Yours
ライヴの途中でのっちが、ある選択をします。お客さんは大盛り上がり!
しかしあ~ちゃん、大笑いしながら「この人ばかでしょー! だって○○○○○ ○○○(以下割愛)」
この指摘にのっちはびっくりまなこ(何も考えてなかった!!的な)。でも己の決断を変えることはありません。そしてその曲について話し合いが開かれました。
◇P.T.Aのコーナー
◇Never Too Much
◇ティー・フォー・スリー
◇ネタバレ自粛のお触れ
第72回 Perfume 6th Tour『COSMIC EXPLORER』仙台公演
2016年5月3日(火)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
ライヴの内容はレポートしづらいのですが、「MCならまあ書いていい」とのことでしたので。
◇仙台とPerfume(談:3人)
Perfumeメンバーはよく仙台を訪れているそうです。一昨日リハーサルをして、本番前日はオフだったと。メンバーは何をしていたのでしょうか。
かしゆか「仙台に友達がいて、友達に会いに時々来る。広島よりよく帰ってるかも。昨日はその友達とランチしたあと、アップルストアでiPhoneケース(※充電もできる奴らしいです)を買いました」
あ~ちゃん「私もプライヴェートで仙台には来ていて。駅前の街並みの変化とか……西口に新しいパルコを作っていて、そこにTOHOシネマズ入るんじゃね。そうなるとまた仙台に来てしまう。
昨日は高校の時以来、一人で映画を観に行った。高校時代に観たのは『踊る大捜査』のユースケ・サンタマリアさんが主役ので、朝8時40分の回から観た。昨日行ったのはチネ・ラヴィータって映画館で(地元の観客どよめく)」
あ「観たのは、『誰もいない』……は柳楽優弥くんか(※正しくは『誰も知らない』)。『僕』……」
か「『僕だけがいない街』。マンガが原作のね」
あ「藤……」
か「藤原竜也さん(主演)。全部私が言ってる(笑)」
あ「有村架純ちゃんを見たくて、上映の1時間前に予約して。そのときはガラガラだったけど、この後に続々と来るんじゃろうって思って。時間になって会場入ったらもう暗くなってて、〈すみませんすみません〉って感じで入っていったら、誰ひとりおらん。貸し切り状態。
しかも映画がまさかのミステリー!よく人が刺されたりして、途中何度も出ようと思ったけど、がんばって最後まで観た。あれね、めっちゃおもしろいよ!絶対に観た方がいい。でもゴールデンウィークなのに、あんなに人いなくて」
のっち「それはね、みんな……(目を見開きながら小声で)『ちはやふる』観てたんだよ!」
↑確かにチネ・ラヴィータでやってました
の「じゃ、そろそろ……」
あ「あんた何やっとったん」
の「いま良い流れで曲に入れたのに! 2行で言えます。牛タン食べて、寝た」
か「でも、いちばん仙台らしいかも!」
の「牛タンは、お土産屋さんなんだけど、10分くらい待てば焼いてくれるお店があって、それを部屋に持ち帰って」
あ「あんたそれ東京と何も変わっとらん」
おっと、このペースでだらだら書くとまた長くなるので簡潔に。
その後のチーム分け、最初にあ~ちゃんが〈チネ〉を指定。〈ラ〉〈ヴィータ〉と続ける予定だったと思われますが、あまりしっくりこなかったのか(お客さんのざわめきもあり)〈ちは〉〈や〉〈ふる〉に変更されました。
◇『COSMIC EXPLORER』週間1位(談:あ~ちゃん)
・やっとみんなに直接報告できた!と喜ぶ3人
・チャート発表の日はスタジオでリハーサルしていたら、スタッフの方が「『COSMIC EXPLORER』、週間1位でした!」と報告して下さって、〈1位おめでとう!〉という大きなケーキも用意してくれて、スタジオにユニバーサル・ミュージックの偉い人が次から次に来られた
・しかもBEE-HIVEの古くて小さいスタジオに
・そのとき、スタッフの方がiPhoneのスピーカーから『COSMIC EXPLORER』を流してくれていたが、大人数が喋っていると完全にかき消される。ときどき静かになると、小さな音で〈シャンシャンシャン……〉って聞こえて、あっ流してくれてたんだ、と
◇その他
ある展開があって、笑顔のあ~ちゃんが両手を大きく広げて「奇跡が! 奇跡が起きています! ああーーーーー!! あああーーーーー!」とシャウト。何かの宗教かと思いました。
◇私見
音響・照明・舞台はやっぱり凄かったし、3人も初日の緊張に負けじと奮闘していましたが、ライヴの構成や流れが何だかちぐはぐなように感じました。
僕が期待していたような内容とはかなり異なっていたこともあって(まあそれは当たり前としても)、ちょっとがっかりしたのが本音です。でも、きっとPerfumeチームはここから改善してくるだろうとも思いながら。
5月4日(水)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
↑会場の裏手は、小鳥たちのさえずりに包まれる高原
この日もライヴの内容は触れずにMCだけ。
◇プロモーター(談:あ~ちゃん、かしゆか)
あ「仙台のプロモーターで、インディーズ時代から担当して下さった方が外れてしまった。新しい担当のIさんは、普段は何もしゃべらない。クール。でも(自分たちが喋っていると)笑ってくれて、優しい。
仙台に、のっちとかしゆかを連れて行きたいお茶屋さんがあって。あと、美味しいお餅屋さんもある。なんか、養老乃瀧、みたいな名前の(注:延命餅)。そんな話を、昨日の車の中でギャーギャー言っていた(※補足すると、ライヴ初日の帰り、22時ころのお話)。
今日会場に入ったら、私が言っていたお茶屋さんのお茶と、お餅が届いとった。昨日の夜言ったばかりなのに。以前の担当さんに、ずっとお世話になったことへの想いは凄くある。でも、それだけじゃないなって思った」
か「会場のケータリングも、仙台は美味しいものがたくさんあるけど、それが毎日変わるの」
↑イメージ画像。名店「司」にて
あ「ケータリング部屋も、〈2年ぶりのライヴ、おめでとうございます!〉ってメッセージとか、紙で作ったお花とか、手作りの飾り付け……幼稚園児が〈ゥワァァァッ!!!〉ってなる奴もあって、しかもそれも毎日変わるの。
その歓迎してくれる気持ちが本当に嬉しくて、しかもプロモーターの人は誰もそのことを言わんのよ……だから、今日は熱い良い時間にしたい! 会場の皆さんもきっと私たちに想いを持って、時間を費やして下さっているはずだし。皆で最高の時間にしましょう!」
◇ライヴの長さ(談:あ~ちゃん)
・でもライヴは3時間も4時間もやれない。皆さんが立ってライヴを観て下さっているのは、誠実さ! 〈誠〉!!
◇チーム分け(談:あ~ちゃん)
・今日はこれしかないでしょう。〈養〉!〈老〉!!〈乃瀧〉!!!
・「延命餅」でも良かったんだけど、それは〈養老乃瀧〉の引き出しに入っとる
◇グッズ小芝居(談:3人)
の「皆さん、グッズ買ってくれてありがとう!」
か「今回は宇宙っぽい名前をたくさん付けました。アースグレイ、コスモピンク、スペースブルー……あとブラックホールとか」
の「今回も可愛いグッズがたくさん、おしゃれ靴下とか」
(ステージに不在だったあ~ちゃんが帰ってくる)
の「あっ、おしゃれ靴下のプロデューサー!」
あ「(ゆったり歩きながら手を振って)どうも……おしゃ下の……プロデューサーです(以下大意。ちゃあぽんがいつも地方に行くと派手な靴下をお土産にくれる。それを気に入って履いていたが、2人の靴下はシンプル。でも自分のタンスの靴下ゾーンはカラフル。シンプルだけどカラフルな靴下が欲しい……)今回、それを…………実現しました」
か「パシャー! パシャー!(エアカメラ)」
の「こっちも目線下さーい!(エアカメラ)」
あ「(アルカイックスマイルで悠然と手を振る)」
◇引っ込んでいくマイクスタンドあれを見て(談:のっち)
の「収納の儀も済んだところで」
◇若さ(談:3人)
あ「行ける?」
か「(精いっぱいの若くてカワイイ声で)行ける!」(客大喝采)
あ「行ける?」
の「(少し喉を鳴らしてから精いっぱいの若さで)行ける!」(あ~ちゃん大爆笑)
あ「なんか〈んんっ〉って言っとった! それも込みで、あんたおもしろいねえ!大好きよ!」
◇起こせミラクル?(談:あ~ちゃん)
仙台、ミラクル起きるねぇ! ♪起こるミラクル~、起こせ想い~(いきなり「Sweet Refrain」アカペラ歌唱)
あといろいろあったんですが、ライヴの内容に関わるものはバッサリ割愛するとして、差し支えないところで「これもあったよー」など、コメントでご教示ください。
◇私見
現在の仙台駅は、石を投げればPerfumeファンに当たりそうな状況ですが、僕のように何のグッズも一切身につけていないマニア(往々にして最もやばいタイプ)も潜んでいると思われます pic.twitter.com/TOkF8bHxcQ
— t_kito (@t_kito) 2016年5月4日
初日のライヴにはちょっとがっかりしましたが(ちなみにアリーナの結構良い席)、この日はスタンドの最上段。つまりいちばん後ろの席でしたが……このライヴはとても楽しかった! 3人のダンスのグルーヴ感も良好でした。
音響は、場所が違うので単純に比較できませんが、初日は腕の体毛がチリチリ震えるようなド迫力の鳴りをクリアに堪能できて、2日目はちょっと遅延はありながらも、あまり気にならなかったです。
何より、今回のステージセットは大規模な仕掛けがあり、それはスタンド席がいちばん見やすいのですが、それをごく自然に成功させていることにつくづく感服しました。
ただ観ている分には、わぁー凄いなーで済ませられますが、もしあれが急に動かなくなったら?スピードやタイミングがずれてしまったら? 決して簡単なものではなく、毎回確実に成功するものでもありません。
その精度と正確性をどこまで高められるか?しかも効率的に。それがメンバーとスタッフの皆さまの命題であり、それを実現するための膨大な労力と工夫(K.U.F.U)がライヴの成功を支えていることを、まざまざと目のあたりにしたライヴでした。
まあね、「この曲なんでまだやるの?」とか、「なんでこの構成なの?」という思いはそれでもありますけど、構成については2日目、メンバーの説明で腑に落ちました。ライヴ全体の流れ的にどうなんだろう……とは思いつつ、でもある意味凄くライヴらしいとも言えるし……という歯切れの悪さでもってレポート終了です! 次回は僕の生まれ故郷、静岡です。
↑仙台駅の「北辰鮨」。これは1階のお店ですが、3階の立ち食いも極めて美味しいです
↑ありがとう、仙台ワシントンホテル
第71回 『COSMIC EXPLORER』
前置きは不要ですね。『COSMIC EXPLORER』は、Perfumeと中田ヤスタカの新たな挑戦と工夫、独創性と意外性が存分に発揮された、2016年を代表するアルバムです。
どんなアイドルグループもDJ/トラックメイカーも、いまだかつてこのような作品は作っていないでしょう。その理由のひとつに、中田ヤスタカが特に『JPN』以降注力している、アルバムを1枚通して(つまりじっくり時間をかけて)聴くことに意味を持たせるサウンド・デザインが、『COSMIC EXPLORER』においては徹底的に突き詰められていることが挙げられます。
いきなりですが、あなたは普段音楽を、いつ・どこで・どうやって聴いていますか?
おそらくは移動中などの隙間時間に、iTunesのようなアプリに曲をインポートしたり、YouTubeや音楽配信サービスで好きな曲を選んだりして、スマートフォンのようなデジタル・デバイスで聴いている方が多いでしょう。
えっ? CDを買って、家でじっくり聴いているって? うん、僕もそうですけど、それかなりのマイノリティーですよ!
でもそんなご時世だからこそ、ヤスタカは〈時間の芸術〉である音楽を、時間を掛けてじっくり聴く楽しさを提案しています。いまの時代ならではの批評性ですね。
◇2016 : A SPACE ODYSSEY(2016年宇宙の旅)
アルバムの序盤は、聴き手を作品の世界に導入する序曲「Navigate」から5曲目の「STORY」まで、初めて音源化される曲で固めてきました。
壮大なスケール感とマニアックに入り組んだアレンジを両立させたエレクトロ「COSMIC EXPLORER」、HardwellやCalvin Harris、Aviciiあたりが速攻で思い浮かぶプログレッシヴ・ハウス「Miracle Worker」、ディスコ・ブギーなイントロのエレクトロ・ハウス「Next Stage with YOU」、ヘヴィーでブリーピーなエレクトロ組曲「STORY」と畳み掛けます。
ここには現行ダンス・ミュージックのトレンドもあれば、他に誰もやっていなさそうな路線もある。重要なのは、ヤスタカとPerfumeというフィルターを通して、よくある〈流行ってるらしいから(or 誰もやってないから)やってみました〉的な出オチに陥らない、独自性と高い完成度を……といっても、そこはいつも大抵クリアしていますね。それも実に凄いことですが。
◇Next Stage
アルバムの序盤は『LEVEL3』以降の、それこそPerfumeの〈Next Stage〉を提示する役割も果たしています。中盤以降はほとんど既発曲ですが、ヤスタカは単なるシングル曲の寄せ集めに陥らないよう、シングル曲をアルバムの一部として新たに機能させるための〈Album-mix〉を、多く混ぜる戦略を取りました。
「FLASH(Album-mix)」では、初出ヴァージョンでのよくあるビッグルーム・ハウスに和風のメロディーを載せたという印象が一転。プログレッシヴ・ハウスからユーロ・ダンス、テクノ・ポップにテック・ハウスなどを行き来し、ビートを抜き差ししながら次々とサウンドを変貌させていきます(最初のサビがまさかのビートレスで、これが物凄く利いています! あえて音を抑えることも、一種の演奏なんです)。
へー、こう展開するんだ!じゃあ次はどうなるんだろう?……うわ!こう来るか!!というワクワクがずっと続く、これこそ〈時間の芸術〉たる音楽の醍醐味です。
不遇の名曲「Sweet Refrain」のAlbum-mixでは、ブロステップ色が後退し、エレクトロ・ハウス寄りに。原曲はポップな甘いメロディーとゴリゴリのウォブル・ベース(強烈に歪んだ、不規則なリズムのシンセ・ベース)のマリアージュがちょっと歪ながら、それゆえクセになる魅力があった(そして他に誰もやってなかった)ので、そのまま入れても面白かったかもしれませんが、ヤスタカのバランス感覚による変更なのでしょう。ちなみに2番でヤスタカがノリノリで弾いているギターは……まあご愛敬ということで。
アルバム中では最後となる新曲「Baby Face」は、一転して音数をそぎ落としたアレンジで、3人の歌と〈Wow...〉というコーラスを立てています。こういう曲をここに挟んでくる緩急の付け方も流石です。お姉さん目線の詞もいままでなかったタイプですね。間奏のシンセが、Yellow Magic Orchestraの「1000 Knives」ほとんどそのままなのは……まあご愛敬ということで。なおこちらのBabyfaceも最高なのですが、たぶん一切関係ないですね。
◇銀河を超えて 星屑たちの川上り
王道のPerfume節と言えるエレクトロ・ハウス「TOKIMEKI LIGHTS(Album-mix)」を挟んで、ついに出ました! YouTubeで16億回再生された、世界的超絶ヒット・ナンバー!! 急逝した俳優のポール・ウォーカーに捧げ……
えっ? この曲、Wiz Khalifaの「See You Again」のリメイクでしょ? ピアノのリフもコード進行も〈Wow...〉のコーラスも、激似ですよ?
お時間のある方は、下の曲に合わせて「STAR TRAIN」を歌ってみて下さい。〈手探りで夢を見る/何もない ただ信じて/空までが遠いほど/片道切符を求めて〉。
……という意地悪はさておき、でもこれは決してパクリじゃないですよ。パクるなら普通、もっとバレないようにやります。ですのでこれは「See You Again」に対する、日本からのアンサー・ソングなのだと思います。なぜよりによってヤスタカがアンサーしたのかはよくわかりませんが。
◇輝く星空のような
続いて「Relax In The City」「Pick Me Up」が、それぞれシングル盤と変わらないヴァージョンで登場。
「Relax In The City」はPerfume史において、傑出した完成度を誇る楽曲でしょう(宇多丸さんも「マブ論」で、「2015年の彼女たちのリリースではこれがベスト!」と太鼓判)。私見ですが、この曲はシングルの時点で、これ以上変えようがないくらい完成していたと推察しています。
Perfume初の歌い上げ系ビッグルーム・ハウス「Pick Me Up」もシングル版のままですが、アルバムを通して聴くと、いかにもEDMです!なビルドアップ(この曲の10秒~15秒みたいな、強引にアゲていくブレイク部分)を含むのはこの曲だけですね。これこそAlbum-mixで聴いてみたかったけれど、手を入れなかったのには、何か意図があるのでしょうか……
「Cling Cling(Album-mix)」。
変わりすぎだろ、シングルと……!! 原曲のエキゾ感をそぎ落とし、テクノやブロステップ、ハウス、エレクトロなどを盛り込んだ、ダンス・ミュージック幕の内なアレンジ。「FLASH(Album-mix)」ともやや被るので、思いっきりミニマルとかにしてもおもしろかったような。ハウスやテクノの前時代の、シンセサイザー・ミュージックを思わせる音色も気になりました。メロディーに対するコードの当て方も相当ひねっていて、CAPSULE「Transparent」を彷彿とさせます。この曲はアルバム中で唯一、初期のようなチューン・ヴォイスを使っていますね(※他にもあったらすみません)。
◇Hey Baby(I wanna hold your hand)
アルバムの最後を飾るのは「Hold Your Hand」。
「Relax In The City」と双璧を成す、傑出した楽曲だと思います。そして〈宇宙探索〉という壮大なテーマで始まるアルバムが、〈キミと手を繋ぎたいんだ〉という、恐ろしくスケールの小さい、プライヴェートなコミュニケーションの歌で終わること。この流れはいろいろな解釈できますね。
僕がいちばん感じたのは、〈宇宙探索〉と〈キミと手を繋ぎたい〉を並列に、しかも短い時間で豊かに表現できるのって、やっぱり音楽ならではだよなーと。音楽を聴くのって、やっぱり音楽でしか味わえない体験だし、何よりめちゃくちゃおもしろいな!ってことでした。
そう思わせてくれる音楽は少ないです(Perfumeファンだからそう思うのかもしれないけれど)。そして今回も、期待を上回る素晴らしい作品が届いたことを、心から嬉しく思っています。
そして最後になってしまいましたが、3人のヴォーカルはその肉体性や存在感を、より豊かに感じられました。歌声のアンサンブルとハーモニーが醸す美しさこそ、やっぱりPerfume最大の魅力かもしれませんね。
ちなみに「Hold Your Hand」で締める意味は、〈人間の心は宇宙よりも……〉とかの解釈もできそうですけど、まあそれは誰かに任せますんでよろしく!
第70回 How Perfume Works
◇〈Perfumeはなぜ続くのか?〉
言われてみれば、いままであまり表立っては語られなかったテーマかもしれません。
Perfumeはなぜ続くのか。
それはもちろん、所属事務所に十分な利益をもたらしているから……という考えは(事実であっても)よろしくない見方ですので、当ブログとしてこの問いに(※問われていなくても)答えるとすれば一言、
〈Perfumeは独自の価値を創出し続けているから〉です。
この〈価値〉は、音楽的・文化的な価値に加えて、ビジネス面での成功も含みます。
◇Hard Times
↑日本レコード協会ホームページより。2014年までのデータで、「有料音楽配信」の売上は入っていません
週刊文春の平成28年3月31日号、近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」では、音楽業界にとっての2016年という時代を、以下のように表現されています。
〈音楽商売が、あらゆる意味でかつてほどにはもう“美味しくない”ものだ、ぐらいのことを、子供たちがとっくに見透かすようになってしまった時代〉
この書き方に異論もあるでしょうけど、完全に否定はできません……
そんな時代に、Perfumeが収めている成功とその実績は群を抜いています。
ではその成功の秘訣は何か?
それは、ずっとこのブログで書き続けている(つもりの)、Perfumeの〈新しくて面白いことに挑戦し続ける姿勢〉が、独自の価値に繋がっていると見ています。
……と言っても、「別に新しいことなんかやらなくてもいいよ。Perfumeがあの3人であるだけで最高じゃん!」って方もいらっしゃるでしょう。
それではここで、アルファベット社(※Googleの持ち株会社。現時点での時価総額は世界一)の会長であるエリック・シュミット氏と、同社のラリー・ペイジCEO(※Google共同創業者)のアドヴァイザーであるジョナサン・ローゼンバーグ氏が上梓した「How Google Works」から引用してみましょう。
◇How Google Works
エリックとジョナサンは、「情報」「インターネットへの接続」「コンピューティング能力」の3つが安価になり、誰でも簡単に手に入れられるようになった結果、あらゆる産業を巡る環境が激変したことを踏まえて、〈いまや企業の成功に最も重要な要素は、プロダクトの優位性になった〉と書いています。プロダクトは競合他社と大差ないものにして、
消費者にとって、かつてないほど情報が溢れ、魅力的な選択肢がたくさんある時代を迎えた以上、あらゆる企業はプロダクト開発プロセスのスピードと、プロダクトの質を高めることを最優先すべきである、と。
そして劇的に優れたプロダクト作りに必要なのは、優れてクリエイティヴなスタッフが自由に創意工夫と試行錯誤を重ねられる環境であり、プロダクトの優位性を左右するのは、技術的アイデア(革新的な技術の活用方法やデザイン)である、と定義しています。これらによって生まれるのが、いわゆるイノヴェーションですね。
◇How Perfume Works
上記の図式をPerfumeに当てはめてみます。
クリエイター陣の創意工夫と試行錯誤に裏打ちされたプロダクト(=作品とライヴ・パフォーマンス)の優位性があり、技術的アイデアを活かした、フレッシュなライヴ演出やプロモーション手法があります。
それらの要素は激変する音楽業界においても、Perfume独自の新しさや面白さとして、広く支持されていると思います。
その意味で、Perfumeは音楽産業においてイノヴェーションを起こす(そして維持する)ことに成功した、日本では数少ないグループかもしれません。だからこそ、国境を越えて支持されているわけで……。
作品とライヴの新しさ・おもしろさ以外では、3人の可愛らしさや衣装・髪型といったヴィジュアルの見せ方、そしてメンバーのキャラクターも、プロダクトの優位性のひとつですね。
……ん? そういえば冒頭の画像……
夢を未来に変え続ける3人に迫る超大特集……
◇I Dreamed A ...
音楽メディアがPerfumeを採り上げる際に、すぐメンバーの人柄や関係性、物語性を〈信頼〉〈絆〉〈希望〉〈未来〉〈夢〉といった美辞麗句で褒めちぎる傾向は、「GAME」~「⊿」期にはそこまで目立たなかったように思うのですが、昨今では
・Perfumeメンバーの謙虚な人柄
・3人のお互いへの思いやり、支え合い
・夢を諦めず、一生懸命努力する真摯な姿勢
・メンバー同士の仲の良さと、3人であることの強み
・広島での下積み時代から、世界へと羽ばたいていく物語性
あたりがやたらとフォーカスされるようになっています。
でもこの論調には、大きな不備が2つあるように思います。って変な日本語ですね。
【1】Perfumeメンバーの〈関係性〉〈物語性〉に特化した紹介では、映画で例えるならば俳優そのものと、映画のストーリーばかり話していて、肝心の映画の出来栄えに何も言及していないのと等しいです。
映画には、俳優(のパフォーマンス)を魅力的に見せるための演出やカメラワーク、脚色、編集、セット、照明、美術、衣装、メイク、特殊効果など、ありとあらゆる要素があります。そして何より、その映画が〈いまこの時代に作られて、観られる意味〉が、作品のテーマやメッセージに込められています(※込められていないものもあります)。
それらにほとんど触れず、俳優の人柄やその関係性、
映画と同様にポップ・ミュージック、とりわけヒット・ソングは、時代を映す鏡です。大衆の欲望を具現化し、満たすものです。Perfumeも(その関係性、物語性込みで)押しも押されもしない位置にいますが、中田ヤスタカはその評価に甘んじることなく、Perfumeの作品リリースでは一貫して〈じゃあ、こういう音楽はどうかな?〉という提案型のアプローチを試みてきました。そこから生じる意外性や新しさが、Perfumeのプロダクトとしての優位性でもあったはずです。
ヤスタカのそういう姿勢にも関わらず、〈いま、この音楽の何がおもしろいのか?〉をとことん考え抜いて読者に伝えることはせず、関係性やら夢やら未来しか語らないのは、音楽ジャーナリズムとは言えません(偉そう)。
【2】音楽メディアがPerfumeを評するにあたり、〈夢を未来に変え続ける3人〉のようなポエミーな文章に留まってしまうのは、はっきり言って2007~2008年当時のPerfumeの取り上げ方から、ちっとも前に進んでいないと思います。Perfume自体はずっと前進しているのにも関わらず。
Perfumeは音楽産業にイノヴェーションを起こすことに成功しました。でもそれは、優れた音楽が軸にあり、そしてメンバー3人だけじゃないチーム編成だからこそ可能だったわけで、それを安易に〈3人の関係性と物語性〉で括ってしまうような論調には違和感を禁じ得ません。
◇STORY
それでも、〈夢を未来に変え続ける3人〉というポエ……もといリードが〈ファンが読みたいPerfumeの物語〉であることも、紛れのない事実でしょう。いまの時代には、Perfumeの〈関係性〉から紡がれる〈物語性〉こそが渇望され、価値のあるものと見なされていると思います。
だからこういうブログも始めたんですけどね。
第69回 Perfume 1st US Tourの会場あれこれ
今年の夏に行うPerfume 6th Tour 2016 「COSMIC EXPLORER」の北米ツアー日程が決定!今回は、初上陸となるシカゴ、サンフランシスコを含む、4都市5公演を行います!詳しくはこちら⇒https://t.co/88vWJMC5mM#prfm
— Perfume_Staff (@Perfume_Staff) 2016年3月5日
ついに詳細が発表されました、Perfume初のアメリカツアー!といっても初めて名前を聞く会場ばかりですが、はたしてどういうところなのでしょうか?
Venue 1 : The Wiltern(Los Angeles, CA)
初のアメリカツアー、8月26日(金)のオープニングを飾るはLA。Perfumeのアメリカ進出のきっかけがこの街(映画「カーズ2」のワールドプレミア)だったことを考えれば、〈Perfumeの物語性〉が好きな方々にも納得のセレクトでしょう。
コリアンタウンに位置するこの会場、1931年に開業し、85年に改修再オープンを果たしました。キャパシティは公演によって(スタンディングか座席指定かで)変動するようですが、3000~3500というところみたいで、いまなお〈LAで最大のシアター〉だそうです。過去の出演者も枚挙に暇がなく、Rolling StonesやDavid Bowie、Elton Johnといった大物からAdele、Kendrick Lamar、Sigur Ros、そして我らがOK Goも出てます。
現在(2016年3月5日)決まっているラインナップですと、日本人だとガゼット(V系)やBABYMETALもワンマンライヴを実施。他にもGalantis(EDM)、Umphrey's McGee(ジャム・バンド)、Floetry(R&B)、Third Eye Blind(ロック)、Kirk Franklin(ゴスペル)、Dream Theater(プログレ)など。ジャンルは多岐に渡っていますが、実力派といえるアクト揃いですね。
Venue 2 : The Warfield(San Francisco, CA)
http://www.thewarfieldtheatre.com/
2本目の8月28日(日)も続けてカリフォルニア州と来ました。1922年に設立され、2008年に改修再オープンした2250人収容の会場。当初はヴォードヴィル(歌や踊り、劇や曲芸など)や映画向けの劇場だったようで、そんななかLouis Armstrongやチャップリンなんかもステージに立っていたらしいですが(さらっと書いてみたけど震える)、79年に伝説的プロモーターのBill GrahamがBob Dylanを、しかも2週間ブッキングしたことを機にコンサートホールに転じたようです。由緒も伝説も保つ、アメリカらしいホールですね。
出演者はそのディランに始まり、地元が誇るGrateful Dead、Prince、最近だとThe Killers(ロック)やAdele、Skrillex(EDM)なんかも挙げられています。
現時点でのラインナップはSlayer、Tinashe(R&B)、At The Drive-In(ロック)のほか、B.A.P.やAOMG(これはレーベルのショーケース)といったK-Pop勢の名前も。と思ったら初音ミク&Anamanaguchi(Ultra KoreaでPerfumeと同じステージに立ち、その場でファンを公言したNYのオタクバンド)なんてのもありますね。カオス。そしてそれがおもしろい。
Venue 3 : The Vic Theatre(Chicago, IL)
8月31日(水)、3本目はイリノイ州のシカゴです。1912年にヴィクトリア・シアターとしてオープン。ここまで実に長い歴史のある会場ばかりです。日本にはそんな会場ほとんどないというのに……メインフロアはスタンディングのみで1400人収容、さらに椅子席が1000ある模様。
↑すみません、以前の画像は違う会場のものだったようで、こちらは正しいです。
過去の出演者は、こちらもDavid Bowie、Paul Simon、Pearl Jam(ロック)、King Crimson(プログレ)、Trent Reznor(ロック)、Phish(ジャム・バンド)、Emeli Sande(ポップス)などなど。
他のラインナップは、こちらもK-Pop勢のDynamic Duoがいますね。Adam Lambert(ポップス)、Pusha T(ヒップホップ)、St Germain(ハウス~テクノ)などなど、おもしろそうなアクトが目白押しです。Wilco(ロック)のJeff Tweedyも出ているな?と思ったら、彼らはシカゴのバンドでしたね。
Venue 4&5 : HAMMERSTEIN BALLROOM(New York, NY)
Perfume World Tour 3rdでもライヴを行った会場に凱旋。しかも今回は9月3日(土)、4日(日)の2DAYSです。1906年にオープンし、当初はオペラ劇場だったとか。マンハッタンを代表する多目的ホールのひとつで、収容人数は3500です。
過去にはGuns n' Roses、Beck、Swedish House Mafia(EDM)やJustin Timberlake(ポップス~R&B)、Ed SheeranにBABYMETALなどなど。直近だとFutureとTy Dolla $ignという注目ラッパーのツーマンがソールドアウトさせたみたいです。
3月時点での他のラインナップはMetric(ロック)、St. Germain、Santigold(R&B~ベース)、Macklemore & Ryan Lewis(ヒップホップ)、Walk The Moon(ロック)、そしてここにも初音ミク!!
と、ここまで見てきました。どれも伝統あるホールばかりですね。それにしても新しい会場は取れなかっ……いやいや邪推は止めましょうか。
これまでのPerfumeの海外ツアーは〈お披露目公演〉的な位置づけ&セットリストでしたが、あくまでも今回は「COSMIC EXPLORER」リリース・ツアーの一環という位置づけです。Perfumeが、地域に根差した(=地元住民に長く親しまれている)これらの会場でどのようなライヴをやるのか、どう受け止められるのか。またもや新しい挑戦が始まります。
なお個人的には「もし、せっかくアメリカまで行くのなら、Perfume以外のライヴも観たいな……」が本音ですので、そのテーマは引き続き調べて参ります。
第68回 「STAR TRAIN」は、新たなスタートラインか?
Perfumeの2015年を、簡単ですが振り返ってみましょう。
3月 映像作品「Perfume WORLD TOUR 3rd」リリース、「SXSW」出演
4月 シングル「Relax In The City / Pick Me Up」リリース
5月~8月 各地のフェス/イベント出演
9月 「Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP」開催
10月 シングル「STAR TRAIN」リリース、映画「WE ARE Perfume –WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」公開
こうして見ると、結成15周年&メジャー・デビュー10周年に相応しく、周到に計画・準備のなされた、充実したアニバーサリー・イヤーでしたね。
その記念的な1年の締め括りにリリースされたシングルが「STAR TRAIN」です。映画「WE ARE Perfume –WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」のために作られたこの曲。SNSでの評判を見ると「泣ける!」「この曲はPerfumeそのもの!」「ヤスタカから3人へのメッセージ!」などなど、極めて好評のようです。
でも、これは全部、歌詞への称賛であり、サウンド面などにはあまり言及されません。なぜでしょうか?
◇Thinkin bout...
映画だけでなく、「LIVE 3:5:6:9」でもフィナーレを飾るという、象徴的な使われ方だった「STAR TRAIN」。近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」924回(週刊文春2015年11月19日号)で、この曲が採り上げられていたので、主な内容を引用させていただきます。
・PerfumeがTVに出演して「今回は泣ける曲です」と言っていたけど、大丈夫なのか? これまでに聴いてきたPerfumeの曲は、どれひとつとして〈泣ける曲〉〈泣かせる曲〉などなかった
・J-Popの世界は、作品の良し悪しではなく、演者への感情移入や応援が優先されるという意味での〈アーティスト至上主義〉の世界と言える
・そんななかでも、Perfumeはあくまでもサウンドのおもしろさや新しさでのアピールに徹してきたはずだ。言い換えれば、決して情に訴えるようなことはしなかったのに、今回は様子が違う……
・悲しいことに予感が的中してしまった。まったくビートっ気のない曲調、ベタでひねりのない歌詞。どこにも刺激が感じられない
・あれほど近未来的なテクノ(筆者注:厳密にはテクノではないと思います……)をやっていた人たちとは思えぬほど、普通に普通のJ-Popの音
・キツい言い方になるが、これは退行ではないか?
・これを機に、Perfumeも無難な路線に進んでしまうのだろうか。聞けば聞くほど不安が募る
近田さんは、ずっとPerfumeを(それなりの距離を取りながら)応援して、その楽曲の魅力を高く評価してこられた方です。
それは近田さんがPerfumeのライヴでお馴染みの「ジェニーはご機嫌ななめ」の作曲者である、という背景とも違う、ミュージシャンとしてのフラットかつフェアな評価でした。直近では「Relax In The City」なんかも、近田さんは惜しみなく評価して下さっています。こちらはブログにも書いています。
また先日出版された「Fan Service[TV Bros.]~」では、2007年の近田さんとPerfumeの対談も掲載されており、こちらも必読です!
そんな近田さんが「STAR TRAIN」を、違和感や戸惑い、不満を隠すことなく、正面から批評(※単なる批判ではありません)しました。
この記事を読んだ私は〈そんなことない、「STAR TRAIN」は泣けるよ!〉〈近田さんはPerfumeの関係性をわかっていない!!〉といったことを……
まあ1ミリも思いませんでしたね。この記事には一理ありますし、むしろ私の感じたところを、踏み込んで表現して下さったようにも感じました。
◇Music is everything?
ここで私の「STAR TRAIN」の感想を、サウンド面から書かせていただくならば、これはPerfume流のスタジアム・ロック(アリーナ・ロックとも言う)だと思います。なおこの見方、ネット上では他にどなたも書いていません。一応英語も含めてググって確かめました。
では、そのスタジアム・ロックって何?ですが、大雑把ながら
1:大会場に似合う、壮大な曲調・サウンドで
2:群衆がシンガロングして盛り上がれる曲
でしょうか。それこそColdplayやFoo Fighters、Imagine Dragons、U2なんかをイメージしていただければと思います。One DirectionやTaylor Swiftもある意味ではそうかもしれません。イメージ的に1曲挙げるとすれば、これですかね。
そして2010年代のスタジアム・ロック(的にウケているもの)といえば、間違いなくEDMです(とりわけビッグルーム・ハウス。サウンド面での差異はさておき)。これはアトランタのダンス・フェス、TomorrowWorldでも体感しました。ド派手なサウンドに合わせて、群衆がシンガロングしまくり。たとえその曲がインストであっても、観客は大声でウォウウォウと歌うことで、会場の一体感を高めていきます。
「STAR TRAIN」の〈ウォーーオーー、ウォウォゥオオーーー〉(他に書き方ないのか)というシンガロング・パートは、まさにそれですし、途中でいかにもなビルドアップ(1分15秒あたりとかの、アゲていくブレイク)が入るのも、ビッグルーム・ハウス的です。
Perfume版のスタジアム・ロック(としてビッグルーム・ハウスを拝借する)というアイデア、いままでになかったしおもしろいですよね。しかも、これみよがしにドラマティックな展開にもできるところ、それは避けて、基本的に4つのコードが循環するだけの、抑制の利いた構造もユニークです。
しかし、それで新鮮なおもしろい曲になるかは、また別のお話なわけで……。
ヤスタカは「STAR TRAIN」の構造をシンプルにする代わり、アレンジで抑揚を付けています。これを単調と取るかダイナミックと取るかは人それぞれですが、確かに近田さんの指摘する通り、ミディアムのビートは良くも悪くも平凡な印象です。それに乗るピアノもギターも普通のアコースティックな音色で、ちょっぴり保守的な印象は拭えません。
もちろん「STAR TRAIN」に新味がないわけではなくて、3分20秒からのアカペラで声を重ねてアゲていく感じは新鮮です。あとは、うーんと……まあいろいろありますよね……
◇ You ready for this?
「音楽と人」2015年12月号によると、今回は最初に「TOKIMEKI LIGHTS」ができていたものの、もう1曲(つまり「STAR TRAIN」)を作るためにヤスタカは相当な時間をかけて、レコーディングの予定も延期を重ねたそう。これは〈5分の曲なら5分で作れる〉とうそぶくヤスタカにしてはかなり珍しいことのようです。
そしてようやく曲が出来上がり、レコーディングに臨むメンバー3人が詞を読み、〈この曲、私たちのことを書いてくれている……!〉と泣いた。というのが、言ってしまえばこの曲の最大のポイントなわけで、そこに乗れるかどうかが、この曲の評価を大きく分ける気がします。
〈そこに乗れるかどうか〉、つまりPerfumeのストーリーや、3人の関係性にどれくらい感情移入できるか、心酔しているか、です。「STAR TRAIN」は、Perfumeの〈ストーリーと関係性〉を描くためにあるような曲です。〈肩を組んで笑ってきた/僕らはきっと負けない〉とか〈歯車のように噛み合う力は/一人じゃきっと伝わらない〉とかね。
Perfumeの楽曲には、ヤスタカがその時々のPerfumeを巡る状況や、3人へのメッセージを、詞に書き込んだと思しきものが散見されます。解釈は人それぞれですが、「love the world」や「マカロニ」(たぶん)、「JPNスペシャル」、言わずもがなの「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」……
そして「Dream Fighter」。
この曲、リリース当時は初の日本武道館公演に挑むPerfumeを象徴する楽曲という印象でしたが、いまやこの曲は普遍的な応援ソング(a.k.a 頑張れソング)として、多くのファン、そして何よりPerfumeメンバーから親しまれています。
今回の「STAR TRAIN」の受け入れられ方は、「Dream Fighter」と非常に近いものがあります。それ自体はまあそうだろうな、という感じですが……さあ、ここからが本題ですよ(※前置きが長い)。
前回のエントリーで、Perfumeには〈多面的な魅力〉があり、ファンがそれぞれ自分の好きな要素を見い出すと書きました。いま、その需要が〈Perfumeのストーリー性〉と〈3人の関係性を含むキャラクター性〉に偏ってきているのではないでしょうか。あと、〈最新テクノロジーの活用〉もあるんですが、それはまた稿を改めて……
◇SERVICE
以前、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さんは「昨今の日本人が、やたらと感動しよう、感動しよう、でなきゃツッコミを入れよう、入れよう、としている」と、ブログで書かれていました。その通りだと思います(もしあとひとつ付け加えるなら、褒められたがっている、特に海外から、とも感じます)。
その風潮の背景には様々な社会的要因がありそうですが、それはさておき、感動できて、泣けて、ツッコミを入れられる(そして海外でも認められる)ことにコンテンツの価値があるとするのなら、Perfumeってそういう意味では完璧かもしれません。
でも、Perfumeの……というより音楽の魅力は、〈感動できること〉だけではないわけで。
今回の「STAR TRAIN」、やたらと〈感動〉ばかりに焦点が当たっていますが、では実際にヤスタカはどういうつもりで書いたのか?
もちろん、Perfume3人のことを想って書いているとは思いますが、むしろヤスタカが時々やる、「お前らこういうの好きなんだろ?」的なサーヴィス精神の表れといいますか……
ここで、CMなどのタイアップが付いた、近年の楽曲の傾向を考えてみましょう。
「Natural Beauty Basic」のCMソング「ナチュラルに恋して」
「氷結」のCMソング「GLITTER」
「氷結やさしい果実の3%」のCMソング「微かなカオリ」
「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)」の主題歌「未来のミュージアム」
「VIERA」(ディスプレイ)のCMソング「DISPLAY」
「メルセデス・ベンツ Aクラス」のコンセプト〈Next Stage with YOU〉をそのまんま拝借した「Next Stage with YOU」
これらに見られる、これでもか!!というくらいクライアントやその商品に寄せていく意匠が、間違いなく今回の「STAR TRAIN」にも透けて見えると思います。
むしろその意味で、Perfumeらしい曲でもありつつ、ものすごーーくヤスタカらしい曲とも言えるのではないでしょうか。
なお「STAR TRAIN」はWiz KhalifaとCharlie Puthの異常ヒット曲「See You Again」に似ている……というかそっくり……いや激似という話はまあ置いておきましょう。
◇Next Stage with YOU
いろいろ書いてきましたが、Perfumeは常に過渡期にあり(ますよね?)、「STAR TRAIN」が〈感動〉面での支持を集めても、結局はPerfumeの過程の、ひとつに過ぎないはずです。
この先に控えているニュー・アルバムとツアーで、また新しくておもしろい何かを見せてくれることを、心から楽しみにしています。
第67回 Perfumeにまったく興味ない人の映画「WE ARE Perfume」感想
皆さん、映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」はご覧になりましたか?
きっとこのブログを見て下さるような(奇特な)方は、すでに鑑賞済でしょう。ぴあの満足度調査でも高得点をマークして1位、SNSをちょっと見ても絶賛の嵐です。宇多丸さんにも(当然ながら)好評でした。私も、クレバーなドキュメンタリー作品であり、誠実なアイドル映画であり、素晴らしい音楽映画だと思っています。
でも……これって、すでにPerfumeファンだったり、少なくとも興味がある人が観に行っているからだろうなぁ……Perfumeに関心を持っていない人、肯定的に評価していないような人が、あの映画を観たらどう思うんだろう?
決して、Perfumeファンじゃないと楽しめない、内向きな作品ではないと思うから、興味がない人にもぜひ見てほしい…………
あ、私が興味ない人を劇場に連行すればいいのか!!
ということで、確実にPerfumeに興味なさそうな友人を誘いました。
性別:女性
年齢:Perfumeメンバーより下
職業:コンテンツ制作
この友人に白羽の矢が立ったのは、この映画は〈ものづくりに携わっている人〉なら楽しんでもらえるんじゃないかな、という見立てによります。
さっそく連絡したところ、「Pefumeの映画ですか? 友達も観に行ってたし、見てみたいです!」とのことで、ここまでは良かったのですが、映画を観る当日に意外な情報が揃いました。
・音楽は好き、やっぱりジャニーズは外せない
・映画館に行くのは数年に1回
・ドキュメンタリーは好きじゃない
・好きなお店は渋谷109
うん…………どの要素も、今回の映画やPerfumeから、それなりに距離ある!!
(念のため。私もジャニーズのライヴには行ったことがあり、群を抜いて凄いショーだと存じ上げています)
しかも、以下は映画鑑賞後に聞いた(鑑賞後だからこそ、打ち明けてくれたと思いますが)、かつてのPerfumeの印象。
「TVで観たことはあったけど、あ~ちゃんがあまり好きじゃなかった」
「曲もどれも同じような印象」
「事務所が大きいから、きっとプロデューサーとか誰かの言いなりでやってるんだろうと思ってた」
当然ですが、テレビでPerfumeを知って、こういう印象を持った人も、そりゃいますよね。というかそんな低評価に関わらず、よくもまあ映画館まで来たな!!
実は、以前も女性にPerfumeの印象を訊いて、ヒヤリとする場面が何度もありました(白人女性に「Plastic」と言われたことすらあります。今思い出しても悔しいよ……)。どのへんで良し悪しを判断しているかは皆目わかりませんが、まあ女性が同性を見る目は厳しいということですかね。
◇対決の日が来る
ひとまず喫茶店で女の子と楽しくお喋りしながら(その情報いる?)Perfumeの簡単な来歴と、MIKIKO先生など重要人物を簡単にレクチャーしました。「『ポリリズム』でデビューしたと思ってた!」そうで、実にフレッシュな反応です。
そのとき、女の子から「Perfumeは歌やダンスを間違えたりしないんですか?」と訊かれて、「まあ、それは映画を観てもらうとして……」とお茶を濁しました。
さあ、いよいよ映画の上映が始まります!
……そして2時間後。場所を近場のレストランに移して、以降はそこでの会話を一問一答形式でお伝えします。
◇キミの好きそうな映画 ちょっと眠たい?
―(上映中は)起きてた?
「起きてました」
―映画、少しは楽しめた?
「すっごく良かったです!! お話したいことたくさんあります。あ~ちゃん……ですか? もうホント凄い! テレビで見てて、前はあんまり好きじゃなかったけど、一気に好きになりました」
―印象に残っているシーンは?
「たくさんあります! あの曲(「STORY」のこと)、あれ凄いです!あのカメラのスイッチング、どうやってるのか全然わからなかったけど、凄すぎて、いま自分が見ているのがライヴなのかCGなのか、わからなくなるくらい。
あと、ニューヨークでライヴが始まる直前、あ~ちゃんがカメラに向かって(※以下ネタバレになるので省略)。ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、ダメ出し会であ~ちゃんが(※以下ネタバレになるので省略)。ライヴが始まる瞬間の、お客さんがめっちゃ盛り上がってるシーンも最高です。お客さんの層もとっても幅広いですね。あ、ニューヨークの会場で、超胸元開いた黒人さんいましたよね? あの方はゲイですか?」
―ダンス・ミュージックはゲイ・カルチャーと密接な関係がありますからね。さておき、あの地道な反省会のシーンはどう見た?
「事務所が大きいから、プロデューサーとかがいて、その言う通りにやっているんだろうって思ってたんですけど、あんなに細かいところまで、本人たちが決めているなんて思いませんでした。
マイクだって、ずっとヘッドセットでやれば楽なのに、ハンドマイクもちゃんと使って、しかもどこでどうマイクを受け渡すか、細かく調整していてびっくりしました。LAでしたっけ、あ~ちゃんが延々と修正箇所を言っていくところ、あれ凄いです。あ~ちゃんが本当に凄いです!」
―(やっぱりあ~ちゃん、すげえな……)
「あと、セットリストをあれだけ変えていくなんて! しかもそれがお客さんの声を活かしたり、お客さんの反応を見て入れ替えていく柔軟さがあって、あんなのPerfumeくらい人気がある人で、他にやっている人いないと思います。「(ネタバレ)」をどこに入れるか、ずっと話し合っているところもありましたけど、そういう変更でライヴが全然違うものになると思いますし」
―ああいうエレクトロニックなサウンド、普段は聞かないよね?
「全然聞きませんねー。でも、前は曲がどれも同じような印象でしたけど、こんなにいろんな曲があるとは思いませんでした。それはやっぱり振付があるからで、実際に目で見てみて、どの曲も全然違うと感じました。
Perfumeのライヴって、ダンスを見て、視覚で楽しむ感じだと思ってたけど、ああいう振付(たぶん「MY COLOR」とか)で、お客さんもいっしょに作っていくところもあるんですね」
―のっちが派手にダンスを間違えるシーンはどう見ましたか?
「テレビで見ていると、のっちがいちばんクールでしっかりしてそうな感じだったんですけど……」
―………。では、お客さんの姿がたくさん映っていたのはどう思った?
「普通のドキュメンタリーなら、Perfumeの映像が中心になりますよね。ライヴはもっと日本人ばっかりだと思ってたんですが、現地の人多いですね! まあそういうショットを選んで使っているのかもしれないんですが、それでも現地の人が凄く多いのはわかりました。あと、ライヴを観ながら泣いているお客さんもいて、自分も昔、泣いたライヴのことを思い出しました」
―Perfumeの魅力を大きく分けて、〈1:メンバー3人のキャラクター〉〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉〈3:スタッフとのチームワーク〉〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉があるとして、印象に残ったのは?
「〈3:スタッフとのチームワーク〉ですね。MIKIKO先生だけじゃなくて、スタッフの方々はずっと昔からいっしょなんですよね? そういう関係があって、そこで良いものを作ろうとしているのは、自分もものづくりに携わっている身として、凄くうらやましいです。
さっきも言いましたが、ロンドンでLEDが点灯しなかったとき、あ~ちゃ(以下ネタバレのため省略)あの思いやり! 自分も似たような経験があって、あのシーンはそれを思い出して泣きそうになりましたね。
Perfumeが海外に来るのをずーっと待っていた人たちにとって、あのライヴの2時間って特別ですよね。そういう時間を作れることって凄い。その分、絶対に失敗できないですけど。昔、自分もライヴの仕事に憧れていたのを思い出しました。やっぱり音楽の仕事もいいなぁ……って」
―映画の中で〈2:Perfumeの苦労人的ストーリー〉は感じた?
「売れていない頃からPerfumeを観ていたら、初めてのアメリカ・ツアーは超感動するんでしょうけど、それはわかりませんでした。でも、Perfumeにはストーリーがあるんだ、というのは映画で伝わりました」
―佐渡監督の編集はどう見た? 僕はライヴも反省会もお客さんもオフショットも、ちょうど良い配分で、考え抜かれたバランスだと思いました。
「そうですね。その映像がみんな、最後のニューヨークへと向かっていく感じがとても印象的でした」
―女性ファンには「Perfumeみたいになりたい」「むしろPerfumeになりたい」という願望がある(人もいる)らしくて、男性の僕にはよくわからないけど、それはどう思う?
「うーん…………Perfumeには、女性として尊敬できる部分が凄く多かったです。憧れますよ。でも、例えばメンバーの足の細さも、単にガリガリな細さじゃなくて、しっかり筋肉が付いてました。物凄い努力をしていることは一目でわかります。だから、自分がそこまで大した努力もしていないから、安易に〈Perfumeみたいになりたい〉とは言えないですね」
―(想像だにしない回答を食らって絶句)えーっと……
TOHO新宿での映画「WE ARE Perfume」トークショー 佐渡監督「Perfumeメンバーは本当に良い。もっと3人を好きになって欲しいと思ってこの映画を作ったので、それが伝わったら良いです。映画で言っていたとおり、大きな目標に向かう3人を、僕たちも全力で応援していきます」
— t_kito (@t_kito) 2015, 11月 7
ということらしいんですが、映画を観て、Perfumeの3人を少しは好きになった?
「あれ観たら、好きになりますよ!!ライブも行きたいです」
―では映画で、ここはあまり良くなかったな、というところは?
「手持ちカメラでメンバーに密着しているので、手ぶれが大きいところがあって、テレビならまだしも大画面で見ると、ちょっと気持ち悪くなります……」
―会長について一言。
「どの業界でも〈会長〉って呼ばれる人は、ああいう感じなんだなって思いました」
―ちなみに今日は、なぜ映画を観に来てくれたのかな? あっ(髪をかき上げながら笑顔で)やっぱり誘ったのが僕だったから……
「〈映画観たらご飯おごるよ〉って言われたからです」
―最後に何か一言。
「映画、本当に楽しかったです! 今度、六本木のウルフギャング・ステーキに連れて行って下さい!」
↑ ウルフギャング(この店名どうなんだ)名物のプライムステーキ。1名分あたり8000円!!!
―申し訳ないけどそれは無理です。
はい、以上です。私が「○○のシーンはどう思う?」など、話を引き出した部分も少なくありませんし、順番も編集していますが、女の子の感想はほぼそのまま使わせてもらいました(※最後のオチだけは勝手に作りました)。
◇P.T.A. MOVIE(〈Perfumeとあなた〉の映画)
映画の感想を聞くうちに、図らずもPerfume論的な話まで行きましたが、そこで思ったのは、劇中でかしゆかも語っているとおり、Perfumeは多面的な要素で構成されているため、観る人は、そこに自分が求めているものを見い出すのだろうな、ということです。
私はPerfume最大の魅力は〈4:新しくておもしろいことに挑戦し続ける姿勢〉だと思っていますが(つまり宇多丸さんやピエール中野さんと同意見)、メンバー3人の関係性に心酔する人もいれば、苦労人的ストーリーに感情移入する人もいます。
映画に付き合ってくれた女の子みたいに、スタッフの皆さんとのチームワークに共感する人も多いでしょうし、とにかくPerfumeの曲が好きなんだ!という人、メンバーが可愛いから大好き!な人、ライヴが最高に良いから!という人もいるはず(そしてこれらの複合も)。
Perfumeは観る人の心(や願望)を反映する、映し鏡のような存在になっているのかもしれません。Perfumeファンが100人いれば、100通りの見方があるのでしょう。
でも、考えてみれば、これって映画の見え方と完全に同じですよ。
観る人の年齢、性別、人生経験や性格によって、同じ映画を観ていても、感じる内容は結構違います。例えば映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観て(このブログでよく名前出てくるな……)、
「なんか砂漠を車が走りまくっているだけの映画」「これこそ現代の神話なんだ!」
「アクションこそ映画のすべてだと証明している」「大したストーリーもない、単調な映画だったよ」
「これは男のための映画!」「女性讃歌の映画だ!」
「主人公のマックスが最高!」「これフュリオサの映画でしょ?」
「イモーータァァーーーン!!!!」
※このブログは、〈すべての読者がマッドマックスを観ている〉という前提で制作されています。
みんなが同じものを観ているはずなのに、その見え方は全然違う。私は、それが映画の魅力と豊かさだと思ってきました。
ですから、ただでさえ多様な楽しみ方のできるPerfumeが、映画になる!というのは、物凄くジャストな題材と言えますし、それは輝くような体験(〈brilliant experience〉……この引用元、わかる人いるかな?)となるのです!
映画「WE ARE Perfume」は、掛け値なしに素晴らしい〈映画〉です。ぜひ見てみてください。