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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第70回 How Perfume Works

◇〈Perfumeはなぜ続くのか?〉

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言われてみれば、いままであまり表立っては語られなかったテーマかもしれません。

Perfumeはなぜ続くのか。

 

 

それはもちろん、所属事務所に十分な利益をもたらしているから……という考えは(事実であっても)よろしくない見方ですので、当ブログとしてこの問いに(※問われていなくても)答えるとすれば一言、

 

 

Perfumeは独自の価値を創出し続けているから〉です。

この〈価値〉は、音楽的・文化的な価値に加えて、ビジネス面での成功も含みます。

 

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◇Hard Times

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日本レコード協会ホームページより。2014年までのデータで、「有料音楽配信」の売上は入っていません

週刊文春の平成28年3月31日号、近田春夫さんのJ-Pop時評連載「考えるヒット」では、音楽業界にとっての2016年という時代を、以下のように表現されています。

 

〈音楽商売が、あらゆる意味でかつてほどにはもう“美味しくない”ものだ、ぐらいのことを、子供たちがとっくに見透かすようになってしまった時代〉

この書き方に異論もあるでしょうけど、完全に否定はできません……

そんな時代に、Perfumeが収めている成功とその実績は群を抜いています。

 

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ではその成功の秘訣は何か?

 

 

 

それは、ずっとこのブログで書き続けている(つもりの)、Perfume〈新しくて面白いことに挑戦し続ける姿勢〉が、独自の価値に繋がっていると見ています。

 

 

……と言っても、「別に新しいことなんかやらなくてもいいよ。Perfumeがあの3人であるだけで最高じゃん!」って方もいらっしゃるでしょう。

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それではここで、アルファベット社(※Google持ち株会社。現時点での時価総額は世界一)の会長であるエリック・シュミット氏と、同社のラリー・ペイジCEO(※Google共同創業者)のアドヴァイザーであるジョナサン・ローゼンバーグ氏が上梓した「How Google Works」から引用してみましょう。

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◇How Google Works

エリックとジョナサンは、「情報」「インターネットへの接続」「コンピューティング能力」の3つが安価になり、誰でも簡単に手に入れられるようになった結果、あらゆる産業を巡る環境が激変したことを踏まえて、〈いまや企業の成功に最も重要な要素は、プロダクトの優位性になった〉と書いています。プロダクトは競合他社と大差ないものにして、プロモーションや売り方で勝負するやり方はもう正しくないのだ、ってことですね。

消費者にとって、かつてないほど情報が溢れ、魅力的な選択肢がたくさんある時代を迎えた以上、あらゆる企業はプロダクト開発プロセスのスピードと、プロダクトの質を高めることを最優先すべきである、と。

 

そして劇的に優れたプロダクト作りに必要なのは、優れてクリエイティヴなスタッフが自由に創意工夫と試行錯誤を重ねられる環境であり、プロダクトの優位性を左右するのは、技術的アイデア(革新的な技術の活用方法やデザイン)である、と定義しています。これらによって生まれるのが、いわゆるイノヴェーションですね。

 

◇How Perfume Works

上記の図式をPerfumeに当てはめてみます。

クリエイター陣の創意工夫と試行錯誤に裏打ちされたプロダクト(=作品とライヴ・パフォーマンス)の優位性があり、技術的アイデアを活かした、フレッシュなライヴ演出やプロモーション手法があります。

それらの要素は激変する音楽業界においても、Perfume独自の新しさや面白さとして、広く支持されていると思います。

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その意味で、Perfume音楽産業においてイノヴェーションを起こす(そして維持する)ことに成功した、日本では数少ないグループかもしれません。だからこそ、国境を越えて支持されているわけで……。

 

 

作品とライヴの新しさ・おもしろさ以外では、3人の可愛らしさや衣装・髪型といったヴィジュアルの見せ方、そしてメンバーのキャラクターも、プロダクトの優位性のひとつですね。

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……ん? そういえば冒頭の画像……

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夢を未来に変え続ける3人に迫る超大特集……

 

 

◇I Dreamed A ...

音楽メディアがPerfumeを採り上げる際に、すぐメンバーの人柄や関係性、物語性を〈信頼〉〈絆〉〈希望〉〈未来〉〈夢〉といった美辞麗句で褒めちぎる傾向は、「GAME」~「⊿」期にはそこまで目立たなかったように思うのですが、昨今では

Perfumeメンバーの謙虚な人柄

・3人のお互いへの思いやり、支え合い

・夢を諦めず、一生懸命努力する真摯な姿勢

・メンバー同士の仲の良さと、3人であることの強み

・広島での下積み時代から、世界へと羽ばたいていく物語性

あたりがやたらとフォーカスされるようになっています。

 

でもこの論調には、大きな不備が2つあるように思います。って変な日本語ですね。

 

 

【1】Perfumeメンバーの〈関係性〉〈物語性〉に特化した紹介では、映画で例えるならば俳優そのものと、映画のストーリーばかり話していて、肝心の映画の出来栄えに何も言及していないのと等しいです。

 

映画には、俳優(のパフォーマンス)を魅力的に見せるための演出やカメラワーク、脚色、編集、セット、照明、美術、衣装、メイク、特殊効果など、ありとあらゆる要素があります。そして何より、その映画が〈いまこの時代に作られて、観られる意味〉が、作品のテーマやメッセージに込められています(※込められていないものもあります)

それらにほとんど触れず、俳優の人柄やその関係性、映画のストーリー進行を追うだけのテキストが、芯を食ったものと言えるでしょうか。

 

映画と同様にポップ・ミュージック、とりわけヒット・ソングは、時代を映す鏡です。大衆の欲望を具現化し、満たすものです。Perfume(その関係性、物語性込みで)押しも押されもしない位置にいますが、中田ヤスタカはその評価に甘んじることなく、Perfumeの作品リリースでは一貫して〈じゃあ、こういう音楽はどうかな?〉という提案型のアプローチを試みてきました。そこから生じる意外性や新しさが、Perfumeプロダクトとしての優位性でもあったはずです。

 

ヤスタカのそういう姿勢にも関わらず、〈いま、この音楽の何がおもしろいのか?〉をとことん考え抜いて読者に伝えることはせず、関係性やら夢やら未来しか語らないのは、音楽ジャーナリズムとは言えません(偉そう)。

 

 

【2】音楽メディアがPerfumeを評するにあたり、〈夢を未来に変え続ける3人〉のようなポエミーな文章に留まってしまうのは、はっきり言って2007~2008年当時のPerfumeの取り上げ方から、ちっとも前に進んでいないと思います。Perfume自体はずっと前進しているのにも関わらず。

 

 

Perfumeは音楽産業にイノヴェーションを起こすことに成功しました。でもそれは、優れた音楽が軸にあり、そしてメンバー3人だけじゃないチーム編成だからこそ可能だったわけで、それを安易に〈3人の関係性と物語性〉で括ってしまうような論調には違和感を禁じ得ません。

 

◇STORY

それでも、〈夢を未来に変え続ける3人〉というポエ……もといリードが〈ファンが読みたいPerfumeの物語〉であることも、紛れのない事実でしょう。いまの時代には、Perfume〈関係性〉から紡がれる〈物語性〉こそが渇望され、価値のあるものと見なされていると思います。

 

 

 

だからこういうブログも始めたんですけどね。