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R.E.P

Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第10回 Spending all my timeは世界を狙う?その2

◆「Spending all my time」は海外市場向けなのか?

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前回のつづき)確かにサウンド面ではほぼ英語詞なこともあり、〈まるで洋楽〉〈EDMそのままで没個性〉〈違和感がある〉〈こんなのPerfumeらしくない!〉という反応もあるようですね。

ただ、メロディーの起伏こそ抑え目ですが、ビート(つまり楽曲の核)は昨今のPerfume楽曲とさほど異なるものではないと思います。そして、ここで「日経エンタテインメント!」2012年9月号、きゃりーぱみゅぱみゅ特集内の中田ヤスタカインタヴューより引用させていただきます。

 

きゃりーが世界規模で人気を集めたことについて)「僕には世界を狙って、標準的なものを作ろうという気持ちは全然ないです。僕が作っているのは完全に日本の音楽です。今も昔もそれは変わらない。外国のことは分からないから合わせることもできないですし」

「ネットが進化したから、日本で作った音楽が、物理的距離を超え、世界中で聴いてもらえるようになっただけ」

「世界中のどんな音楽でも、その音が生まれた環境、例えば目に見える風景や接する人達などに少なからず影響を受けるはず。つまり、日本にいるとおのずと日本の音になる」

 

相変わらずきゃりーについては饒舌です。もちろんヤスタカの中では、きゃりーPerfumeの位置付けは違うでしょうけれど、制作においての根本や本質はさほど変わらないようにも思います。

 

むしろ国内市場向け?

ユニバーサル・インターナショナル日本ディヴィジョンのマネージング・ディレクター、加藤氏は今年3月のロイターによる配信記事で 「Perfumeの持つ〈日本らしさ〉が大切」「100%英語で歌わせたり、西洋化を進めるつもりはない」「現在Perfumeが日本でやっている、このかたちのままで送り出したい」と語っていました。「Spending~」がどういう意図をもって制作されたのか、誰も明言していないこともあり、この1曲だけが〈海外向けへ振り切ったもの〉かは何とも言えません(前述のロイター記事内で加藤氏が挙げている"FUTURISTIC, ROBOTIC, DOLL-LIKE"という売り出しのコンセプトにはばっちり沿っていると思われます)。

個人的には〈近未来テイストに挑んだひとつの新曲〉というくらいの認識で、むしろ〈欧米のトレンドであるEDMを、Perfumeを通してダイレクトな形で日本へ提示した〉、ドメスティックな方向性の方が意味合いとしては大きいのでは?と考えています。ヤスタカが常々言っている「ポップスとして受け入れられる音楽の幅を拡げたい」という姿勢にブレはありません。まあ、リアーナ「We Found Love」に似てるなーとは思いますが

 

◆ではパッケージ全体では?

むしろ今回は「Spending~」だけを取り沙汰するより、パッケージ全体で捉えたいです(だってCDなんだし)。 カップリングの「ポイント」は、Perfume初のドラムンベース リアーナが新作でチェイス・アンド・ステイタス(ロンドンのドラムンベース・ユニット)を起用していたように、UKを中心にふたたび注目を集めているビートです。

昨今のアイドル・ポップではTomato'n PineLinQドラムンベースをやっていましたし、氷結のCMでこの曲を聴いた瞬間「やっとPerfumeも!」と嬉しかったですね。ハープを採り入れた清涼感のあるアレンジで、Perfume流のドラムンベースとして非常にキャッチ―。こういうPerfumeが聴きたかった(むしろ「ポイント」の方が、「Spending~」より大胆な変化では?)。先の 「コミュニケーション」ではレゲエの裏打ちビートを採用していたし、ヤスタカが「いままで使っていなかったリズム」に取り組んでいる様子が窺えます(僕はここに新しい伸びしろを感じて、高まっています)。

そして「Hurly Burly」も構造は「Spending~」に似て英語詞が多かったり、珍しく下世話なシンセを入れたりと攻めていますが、基本はポップで手堅い、ファンが期待するPerfume節と言えるでしょう。2012年にPerfumeがこの3曲を引っ提げて、サマーソニックリアーナやケシャ、ピットブルらと同じステージに出演することは、もう本当に絶妙なタイミングだと思っています。

この3曲をまとめたパッケージからは、いまPerfume(というかヤスタカ)がどこを見ているのか、どう進もうとしているのかがぼんやりと浮かび上がってくる気がします。改めて、Perfumeひとつの要素だけを取って判断できない、多面的な存在だと実感させられます。

 

◆余談

現在発売されている雑誌のインタヴューでは、メンバー3人が「Spending~」に感じた戸惑いや不安が語られています。それは〈すべて英語詞〉であること、そしてレコード会社側とのコミュニケーション不足が背景にあるようですが、むしろPerfumeのメンバー3人の自我が大きくなってきているようにも感じました。Perfumeをどうしたいのか、どう見せていきたいかの主張が強くなってきた、と。それが今後のPerfumeにどう影響していくのかは、まだわかりませんが(ちょっと保守的なようにも感じますし)。

それはさておき、近年のPerfumeのEDM路線で出色だったのは「不自然なガール」でしょうか。世界最高峰のエレクトロ・ハウスです(※個人の感想です)