第59回 ダンス・ミュージック・フェスティバルって何だ?
先日、初めてUltra Japanに行ったのですが、あまりにも思うところが多すぎて、「……やっぱりこれは書いておかないと!たとえ今日がPerfumeのO-WEST公演当日でも!!」と切実に思ったので緊急エントリーです。
◇TomorrowWorld 2014
2014年9月26日~28日、私はアトランタのTomorrowWorldにおりました。なぜわざわざアメリカまで来たかというと、この年に始まった、そしてTomorrowWorldのちょうど同日に開催されるUltra Japanに、普通に行ってもなんかおもしろくないなと思ったからです。みんながUltra Japanに行くなら、僕はアメリカに行こうかな、Ultraは去年韓国で観たからな、と。
ただし、行く前は全くテンションが上がりませんでした。その理由は、うっかりウェスティン(やや高級ホテル)に宿を取ったため、全行程で30万円くらい掛かっただけではありません。
アメリカのダンス系フェスって、どうせいきがった若い白人がウェェーーーーーイ!!!ってやってるだけなんだろうな、「13日の金曜日」なら真っ先に殺されそうな、乱痴気騒ぎが目的の連中ばっかりなんだろうな、会場の雰囲気に馴染めるだろうか……と思っていました。
しかし私が会場で見たものは。
世界中からあらゆる人種の老若男女が集まり、それぞれが自由に音楽を楽しんでいました。白人に黒人、アジア系や中東系……そしてステージ前には、100本を超える国旗が振りかざされます。他にこんなたくさんの国旗を持つ人たちが集まるのは、オリンピックかワールドカップぐらいでしょう。
〈音楽に国境は無い、音楽は言葉の壁を越える〉などとよく言われますが、それがここまで可視化されている状況を、私は初めて目の当たりにしました。
特にEDMブームは〈若い〉〈白人男性〉のDJが牽引していますから、白人優位の文化かと思い込んでいたところ、アフリカ系の観客の多さが意外でした。これはダンスミュージックの、人を踊らせるためにあるというシンプルな機能性ゆえでしょう。そして世代も、若者だけでなく30代、40代もたくさん参加。性別だって、男も女もLGBT(性的マイノリティー)の方々も。昨今の邦楽ロックフェスみたいな全員同じフリではなく、思い思いの自由なダンスで、みんな凄く楽しそうで。
その多様性と自由さは、実に美しいものに見えました。
◇Sound of TomorrowWorld
TomorrowWorldの音楽面についても書いておきます。このフェスはステージが8つあり、メイン・ステージをはじめ、大小さまざまなステージに、それぞれカラーが(しかも日替わりで)あります。メインはいわゆる売れ線EDMが中心ですが、トラップに特化した〈IT'A TRAP!〉ステージ、トランス専門のステージ、他にもベース・ミュージックやテクノ、ハウスなど、ジャンルやサウンドの傾向でステージ分けがなされています。
Diploの〈Mad Decent〉、Richie Hawtinの〈Minus〉、Steve Aokiの〈Dim Mak〉といった、人気DJの主宰レーベルを冠したステージがあったり、BBCの著名DJであるPete Tongがキュレートしたステージもありました。2015年はHardwellのレーベル〈Revealed〉のステージや、フューチャー・ハウス・ステージなんかもあるようです!
つまり参加者は、フェスの会場でダンス・ミュージックの幅広さとトレンドをもれなく堪能できるわけです。ちなみに〈Minus〉ステージのRichie Hawtinのプレイでは、普段ミニマル・テクノやクリック・ハウスなど絶対に聞かないであろう、屈強な黒人や白人たちがタガの外れたように踊り狂っていました。
そういった未知の音楽との予期せぬ出会いが生まれる下地としての選択肢の多さ、そしてここでも多様性が魅力なのです。
◇コミュニケーション
TomorrowWorldの魅力としてもうひとつ、世界中から来た多様な人たちとのコミュニケーションがあります。といいますか、ぼーっとしてると向こうからガンガン話しかけてくる(当然英語で)ので、反強制的コミュニケーションなのですが……これもたくさんエピソードがありますが、ここでは取り急ぎThank you, Everyone!と。
↑なぜ向こうの男どもは脱ぎたがるのか……
はたして日本に、TomorrowWorldみたいなフェスができるかはわかりませんが、このブログを読んで下さるような(?)好奇心があり、勤勉な皆様には、一度は海外フェスへの参加をお勧めします。