R.E.P.

Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第93回 Future Popが示すものは

毎回5時間くらいかけて書いてきたこのブログですが、いろいろあって時間がないため、このエントリーは30分で書いてみます(注:案の定30分では書けなかったので60分にしました)

 

8月15日、Perfumeの7枚目となるアルバム『Future Pop』がリリースされます!

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【完全生産限定盤】(CD+Blu-ray+ステッカー) UPCP-9020 ¥4,980 (tax in)

【完全生産限定盤】(CD+DVD+ステッカー) UPCP-9021 ¥4,600 (tax in)

 

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【通常盤】(CD+Blu-ray) UPCP-1003 ¥3,980 (tax in)

【通常盤】(CD+DVD) UPCP-1004 ¥3,600 (tax in)

 

えっ高い!!!! 全体的に高い!!!!!!

 

今回、どの仕様でもDVDなりBlu-rayが付いてくるんですね。つまり映像ディスクありきで成り立つ作品(というか商品)であると。

えっ、でもこれって〈抱き合わせ販売〉にならないの?

 

参考リンク:

抱き合わせ販売等:公正取引委員会

 

まあそれは冗談として(?)、この形態のCD+DVDリリースはビヨンセもここ2作でやってますね。ただビヨンセの場合、収録曲すべてのMVを作ってDVDに収録するというこれまた尋常ではないアプローチだったりもするのですが……

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◇ファン層の変化、時代の変化

なぜ今回、このような形態のアルバムリリースになったか想像してみますと、まずPerfumeのフィジカル(CDやDVDなど。パッケージとも言います)のセールスがかなり落ち着いてきていて、これはつまりCDやDVD買うのはコアなファン層(おそらく、わざわざこのブログを読んで下さる貴殿のような方々)に偏ってきているのだと思われます。

曲だけ聞ければ良いのではなく、コンテンツは(質・量共に)可能な限り楽しみたい、そのための出費は惜しまない、という層ですね。

 

そうなると高価格の映像ディスク込みのパッケージにしても、そこまでセールスは下がらないであろうと。『COSMIC EXPLORER』は初週12万枚くらいだったと思いますが、『Future Pop』は初週で8~9万枚くらいは行けるのではないでしょうか。むしろこの価格設定で初週10万枚行ったら凄いと思います。

 

 

さてそれでは、そこまでコアではないファン層の売上はどこに行ったか。

 

オリコン(業務用)を見ていて、気になるデータがありました。

2018年上半期における、Perfumeのシングル「無限未来」の売上です。

 

シングルCD:54,438枚(全体の48位)

デジタルシングル(ダウンロード販売):58,947枚(全体の42位)

 

なんと、ダウンロード販売の数がパッケージを上回っています。

 

CD買うほどじゃないけど、Perfumeの曲は好きだからダウンロードしよう、という層も結構多いのですね。こういった方々は「アルバムなら買おう」という方もいるでしょうし「高いからダウンロードにしよう」という向きもあるでしょう。

ダウンロードならアルバム全体ではなく、気に入った曲だけを買うことも可能です。そもそもアルバムという形態自体が抱き合わせ販売ともいえます。2000年代中盤のアメリカ音楽産業で生じた激変を描く力作ノンフィクション「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち」でもこの点は指摘されていましたね。

 

さておき、かなり思い切った方針ともいえる今回のアルバム。

そしてタイトルは『Future Pop』……Perfumeのアルバムで、初めて音楽用語っぽいものが出てきましたね。

 

◇未来のポップ?

この〈フューチャー・ポップ〉というタームですが、それではこういう音楽ジャンルがあるのか?というと、はっきり言って私は存在していないと思います。

 

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えっWikipediaにあるじゃん?

 

うーん、ジャンル名というのは、ある程度マーケットや市場に浸透して、それなりの人数が使うようになってこそのものだと思います。

チルウェイヴやダブステップ、トラップ、ムーンバートン、ジューク/フットワーク、トロピカル・ハウスなどなど……(あっフューチャー・ベースもありましたね!)そのサウンドが注目されてきて呼び名が必要になったり、サウンドの傾向を表すためのものがジャンルであったり、音楽用語の機能です。

 

そもそも音楽にジャンルなんていらないじゃん、CD屋が商売のために作ったものだよ、という説もありますが、恐ろしく卑近な例でいえば、お蕎麦とうどんとラーメンは同じ麺類でもそれぞれ別の物です。音楽ジャンルもそれくらいのレベルの区分ではないかと思うのですが……。

むしろ違いを意識して、それを超えて幅広く楽しむためにジャンルという線引きがあるのではないでしょうか。

 

〈フューチャー・ポップ〉というジャンルは存在しない(というか確立されていない)と思いますが、少し言い方を変えて〈フューチャリスティック(未来的)なポップス〉ということになると、これはものすごく膨大に存在しそうです。それを聴いた地点からの未来を想起させるような音楽という、割と主観に依った位置づけになるでしょうか。

あくまでも〈その時代の人が聴いて、未来を感じられる音楽〉ですから、初期の電子音楽だったり、シンセサイザーを使った音楽が登場した頃、その時代の人々にとって「これすげえ未来っぽい!!」と受け取られていたのではないでしょうか。

 

また、音楽の未来そのものを拓いたジャンルというのもあり、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノ、ヒップホップといったサウンドはまったく新しいマーケットを作り出していまに至りますが、スケールの大きな話は不得手なのでこのあたりで……

 

Perfumeに話を戻しますと、たとえば『GAME』はものすごく真新しいヴィジョンを持ったサウンドでしたし、いま聴いても色あせないフューチャリスティックな作品だったと思います……

 

 

……あれ、ていうかPerfume〈未来を描いたポップ・ミュージック〉ってとっくにやってたじゃん!!!

 

つまり『Future Pop』、未来のポップはいわゆる〈近未来3部作〉への回帰……になっているのでしょうか?

 

聴いてみないと何とも言えませんが、そろそろお時間ですのでこの辺で!!!(逃げます)

 

第92回 「Perfume×Technology presents Reframe」

NHKが時折放送している特集番組「Perfume×Technology」のライヴ版、Perfume×Technology presents Reframe」行って参りました。

昨今はPerfumeといえば最新テクノロジー!〉といった採り上げ方がマスメディアで増えている気がしていて、確かにトピカルだし目立っているけど、それだけが注目されてしまうようになったら、グループ(の今後)にとって良いことなのだろうか……とモヤモヤがありまして、そんななか〈テクノロジーを冠したライヴ〉が開催されると聞いて、最初はちょっと複雑でした。

テクノロジー演出はやたら凄いけど、これ別にPerfumeでなくてもいいんじゃない?的なライヴになってしまう可能性はないのだろうか?

 

……まあMIKIKO先生が監修なさっている以上、まずそんなことはないだろう、と思いつつ会場に足を運びました。以下、すべて記憶をもとに書いていますが、とにかく情報量が多かったため混同や記憶違いがありそうです。ご容赦下さい。

 

会場のNHKホールは約3700席、3階建ての構造です。ステージ上には緞帳ではなく、大小さまざまな白っぽいパネルをたくさん合わせたような壁がそびえています。今回は着席での視聴が指示されており、普段と異なる雰囲気で場内も結構静かでした。

開演時刻を少し過ぎた頃、場内が暗転。IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック。エレクトロニカ~テクノの一種)っぽいインストが流れると、壁を構成するパネルに、それぞれのサイズに合わせたプロジェクション・マッピングでモノクロの幾何学模様やノイズが映し出されます。そして「2018/3/21」とこの日の日付が大きく表示されたかと思うと、その数字が一気に遡って「2005/9/21」に。言わずもがなのPerfumeメジャー・デビュー日です。

すると壁面には「リニアモーターガール」からのすべてのシングルのリリース順に、MVの映像とヴォーカルを短くチョップ(切り取り)して繋げたものが流れていきます。ビートは最初のインストからずっと続くものですが、歌や映像は音楽としての意味をなさないほど凄まじいスピードで切り替わっていき、この時点で相当実験的です。

えっこれホントにTVで放送するのかな……?と思いましたが、それをメンバー3人分それぞれにフォーカスして、しっかり3回やります。さらにインディーズ時代、そして上京前(小学生?)の頃の映像とインタビュー音声が流れたりして、かなりのカオスに。するとまた日付が一気に進んで「2018/3/21」に戻ります。今思えば、この一連の演出からすでにライヴのテーマが示されていましたね。

 

マッピング・ショーの途中ではそのパネルがいくつか(不規則に)欠けて、そこにメンバー3人の姿が登場。かと思いきやまたメンバーの姿は見えなくなり、マッピングがしばらく続くと、いきなり壁の真ん中にぽっかりと大きな空間が空き、そこに3人が並んでいます。この時点からずっと「どうやっているのかよくわからない状態」でした。

そして始まる「DISPLAY」MVの3次元における実現版といった感じで、3人がいる9:16っぽい比率の空間を囲むようにマッピングが施されて、あたかもステージが奥へ奥へと移動しているように見えます(文章で表現するのが難しいですが……)

気づくと、最初ステージ上にあった壁はなくなっており、メンバー3人が立っているかなり高いステージが奥へ移動するとともに、舞台袖から巨大な直方体マッピングのスクリーンも兼ねている)が3つほど登場。テクノロジー主体のライヴと聞いてたけど、この直方体そのものはかなりアナログだな!と思いました。

そのデカい直方体たちが縦横無尽に動き回り、その動作へのインタラクション(相互作用)できっちりマッピングが施されます。直方体の動きをリアルタイムで追跡・解析して、それに合わせて映像を投影しているのですね。しかしあの大きさの物体、なおかつ複数でもそれが可能とは…… 

◇VOICE

「DISPLAY」の終盤、巨大な直方体がステージ中央に3つ並びます。それぞれの直方体にはスタンドマイクが1本置かれた、電話ボックスみたいな〈レコーディング・ブース〉が備え付けてあります。これは明らかに、3人が多くの歌を録音してきたかつてのヤスタカのホーム・スタジオを模していますね。

するとブースの下に「●REC」という文字が映し出され、メンバーがひとりずつ「あ~ちゃん、西脇綾香、あーーーーー」「のっち、大本彩乃、ちっちっ」「かしゆか樫野有香、うーー」といった感じで、声を吹き込んでいきます。音楽が流れますが、これまた未知の楽曲で、これもIDMっぽい。おそらくこれまでもPerfumeのライヴ用にエレクトロニックな楽曲を提供してきたevalaさんの作ではないかな、と思いました。

 

●REC」が映し出されたブース内のメンバーが声を発すると、それが即座に4小節くらいのループに組み込まれて、曲というかトラック(のようなもの)になっていきます。こういうリアルタイムでの録音と組み上げは結構やっている人いますが、Perfumeでは初めてですね。

声が重ねられていくことで、音数がどんどん増えていきますが、ある時点から特定の音の繰り返し(リ・リ・リ・リ・リみたいな感じ)になり、ステージバックの大きなスクリーンにはメンバーの唇のアップが大量に表示されます。圧巻です(いろんな意味で)。

 

たぶんここだったような気がするのですが、3人が声を揃えて「私たちにできること」と言います。これは2012年の『Perfume 3rd Tour JPN』でお馴染みのフレーズ。あのときは〈3.11〉の甚大な被害や社会不安に対して、いま自分たちは何ができるのか?という意味合いでしたが、今回はテクノロジーを活用して何ができるか、という意味になっていますね。

 

音が止まって場内が静かになると、あ~ちゃんがマイクを通して歌い始めます。

 

「♪薄い 羽のように」

 

つづいてかしゆか

 

「♪軽く しなやかに」

 

のっちは

「♪ふわり 香り残し」

 

3人で声を揃えて

「♪飛んで 消えるように」

 

静まり返った場内に流れ出す、「Butterfly」のイントロ! 普段のライヴであれば狂喜の声が上がるでしょうけれど、この日はみんな、固唾を飲んで見つめているようでした。

◇Butterfly

この曲がライヴで披露されるのは、2008年『Perfume First Tour GAME』および2012年の『WORLD TOUR 1st』以来ですが、その時はメンバーの衣装替えタイムに充てられてステージ上は無人だったため、3人がきちんとこの曲をパフォーマンスするのは初めてです。

メンバー3人はそれまでレコーディング・ブースとなっていた巨大直方体から下りて、ステージ前方へ移動。無人になった直方体がくるりと向きを変えると、そこに「Butterfly」の歌詞が映し出されます。この日のために振付された「Butterfly」。小さく手をパタパタさせるような可愛いフリもありましたが、〈甘い光の粉 まるで誘うように〉など、結構大人びた歌詞だったんだなーと思いました。

 

そうこうしているうちに、ステージ奥に設置された22台ものドローンが一斉に起動、次々と宙に浮かび上がって3人の頭上でフォーメーションを取ります。それぞれのドローンが明滅して空中に光る図形を描くような趣向で、ハート型だったり三角形だったりと陣形を変えていく。ドローンの動きと3人のダンスがシンクロする場面もあり、これまでにも〈2014年の紅白歌合戦〉や『COSMIC EXPLORER』の北米ツアーでドローン演出はありましたが、この台数は圧巻です。ドローンそのものも小型化されているように見えて、先程の巨大直方体へのマッピングもそうですが、これまでに披露されたテクノロジー演出もそれぞれ改善・進化していますね。

 

「Butterfly」の終盤、3人が機構に乗ってステージから姿を消すと、しばらくはドローンたちが主役です。フォーメーションを変えながら光の図形を描き、曲が終わるのと同時に元の位置に整然と着地。統率の取れた動きの安定感に、ドローン操作・管理技術の進歩を窺わせました。

 

◇本当の「キミ」を知りたいの

「シークレットシークレット」のイントロが流れ、衣装を替えたメンバーが機構から登場。遠目でよくわかりませんでしたがとにかくふわっふわの衣装でしたね。また、ステージの床を照らすライトがプリズムのように、何千何万もの明るい色彩を映し出していて、あんな照明は初めて観ました。

色とりどりのライトに包まれて「シークレットシークレット」を踊る3人。この曲ではこれ以外にテクノロジー演出はないのかな……と思い始めた終盤、突如ステージバックの巨大スクリーンにこの曲のMVが映し出されます(くじけたかしゆかにあ~ちゃんがPINOを食べさせるシーンなど)。そして曲が突然エラーでも起こしたように、同じフレーズの繰り返しに。2008年の日本武道館での「コンピューターシティ」みたいな感じです。

するとスクリーンには〈キミ〉という歌詞が入っている、あらゆるPerfumeの楽曲のMVと〈キミ〉の文字が、これまた物凄い速さで音と映像を切り替えながら映し出されます。前もって誰かが編集したのか、AIでピックアップしているのか、どうやっているのかさっぱりわかりませんでしたが、このあたりでようやく、このライヴのテーマのひとつに〈テクノロジーを用いたPerfumeの音源・映像アーカイヴの再構築〉があると察しました。まあReframe=再構成なので、本来は考えるまでもなかったんですが……

ひとつのフレーズにフォーカスすることで、さまざまな〈キミ〉を歌うPerfumeが、時代を超えて繋がるような感覚。〈ヒカリ〉の歌詞でも同様の見せ方をしたりと、割と応用が利くみたいでしたね。

 

「シークレットシークレット」が終わると、ステージ上には巨大スクリーンがいくつも登場。AIでピックアップされたと思しきランダムな数字や単語が大量に映し出されます。流れる曲はこれまた新曲で、いかにもヤスタカが作りそうな洒落たコード進行のテック・ハウス。ただ、この曲だけヤスタカが関与したとも考えにくいので、やっぱりこれもevala氏によるもののような気がしました(後述しますが、これは勘違いでした

この曲は途中で様相を変えて、ダブステップっぽいキックバスドラムが主体のヒップホップ調のトラックに切り替わります。そのビートに乗せて、メンバーがさまざまなPerfumeの歌詞を朗読し、そのMVや詞がスクリーンにも映し出されます。「edge」の〈誰だっていつかは死んでしまうでしょう〉とかもありましたが、〈この世界 僕が最後で最後最後だ〉など、徐々に「エレクトロ・ワールド」の詞が多くを占めていきます。

するとステージ両端にあった巨大スクリーンがスーッと移動し、Perfumeを囲むように5枚で〈八〉を形作ると、ダイナミックVRを使った「エレクトロ・ワールド」がスタート。2016年末の紅白歌合戦で披露した「FLASH」のような、仮想空間を猛スピードで移動する映像演出です。

◇FUSION

そのままノンストップで最新曲「FUSION」。巨大スクリーンをそのまま使いますが、驚いたのはメンバー3人の影(本物)と、巨大化したり縮小したりする影(映像)を合わせて使うというアイデア。実体(の影)をもとに映像の影が作られているようにも見えるし、映像の影がまるで本物の影のようにも見える。

さらに巨大スクリーンが(どうやっているかわかりませんが)無人制御で次々に移動するという、スペクタクルな影絵とダンスの融合。シンプルながら非常にインパクトがあり、新しくも懐かしいような感覚がありました。ふわっふわ衣装から早替えした3人の、衣装の長い裾を翻しながらのシャープなダンスも、このうえなくクールでカッコよかったですね。

影絵という極めてアナログな手法を、テクノロジーを活用してアップデートした、間違いなく公演のハイライトだったと思います。

 

「FUSION」が終わると、ステージ上のスクリーンにこの写真とメッセージが映し出されます。

 

そして流れる「願い(Album-mix)」のイントロ。この曲、2009年の『直角二等辺三角形ツアー』以来で、当時は音源に被せて3人がしっかり歌っていましたね。ステージ左右の巨大スクリーンには、ユーザーから投稿された〈大切な写真〉とメッセージが表示されます。その写真がたくさんの光の粒になり、舞台中央で歌うPerfume3人に吸い込まれていく映像演出でした。選曲も含めて、唐突にウェットな展開でちょっと面食らいましたが、起承転結の〈転〉を担っていたと思います。

 

◇目を凝らす未来

続いて「無限未来」。長方形の黒いフレームがたくさん、ステージ中央へスルスルと降りてきて、上手からドローンが1台飛んできます。このドローンにはカメラが搭載されており、ステージバックの巨大なスクリーンでドローンが撮ったPerfumeの映像が映し出されます。NHKホールを3Dスキャンして、そのデータ上に写真が浮かんでいるという映像もありましたね。

3人が長方形のフレームを手に取り、空中に掲げると、スクリーン上では3人の周りにたくさんの写真がふわふわ浮かんでいます。AR(拡張現実。「ポケモンGO」みたいな、実際の映像にCGを重ねたりする手法)MR(ミックスド・リアリティー。仮想現実であるVRとARを組み合わせたもの)と呼ばれる手法ですが、これはドローン撮影を介したインタラクション(たぶんダイナミックVR)も含むので、ARというよりMRが適切かなと思いました。

 

宙に浮かぶ写真たちは、直前の「願い(Album-mix)」と同様、ユーザーから投稿されたもののよう。その写真が次々と光の粒になって、映像内の3人が持つフレームへと吸い込まれていきます。

これも巨大直方体と同様に、フレームの場所をリアルタイムで追跡・解析して、そこに光の粒が吸い寄せられるCGを生成しているように思いますが、ここではむしろその仕組みより、〈ユーザーの想いをPerfumeが受け止める〉というライヴ上のストーリー展開が肝でしょう。フレームの枠に沿ってレーザー光線が投射されたりと、ここでもインタラクションが有効活用されていました。

◇FINALE

「無限未来」を歌い終えると、メンバー3人はそのまま機構に乗って退場。舞台には透明なスクリーンが降りてきて、ドットで構成された3人のシルエットと〈Reframe〉の文字を投影。ここでもスクリーンの降りてくる動きに合わせてぴったり映像を投影していました。

 

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透明スクリーンに投影された映像はこんな感じでした

これをもってPerfume×Technology presents Reframe」は閉幕。MCなし、休憩時間もほとんど挟まずにパフォーマンスを続けた60分間。個人的には、激烈な演奏をほぼノンストップで60分間続ける、かつてのBRAHMANみたいだなと思いました。

 

鳴り止まない拍手の中、ふたたび場内が明るくなり、機構に乗って3人が登場。以下のようなことを話し、ライヴは締め括られました。

 

のっち「テクノロジーは人が作る、愛のあるもの。そのテクノロジーと一緒に、新しいことに挑戦できる場所を与えてもらえることが、本当に嬉しいです」

かしゆか「自分たちのこれまでを再構築して新しいものにできて、それが温かいものになるのは、ずっと見てくれているスタッフさんや皆さんの想いがあるから。これからも新しいことに挑戦しても、過去を忘れず、スタッフさんや皆さんの想いを大切に、自分たちがワクワクドキドキできることをやっていきたい」

あ~ちゃん「テクノロジーといっても、どうなっているか自分たちではよくわからない。でもテクノロジーだからといって冷たく突き放されるのではなく、温かいものになるのは、テクノロジーひとつひとつに全部手が入っているから。テクノロジーは絆を伝えられるものだと思うし、自分たちを通じて、テクノロジーは身近で温かいものなんだと思ってくれたら嬉しい」

「ステージに立っているのは3人でも、本当に多くのスタッフが関わってこれができました。スタッフに大きな拍手を!!

◇Reframe

今回のPerfume×Technology presents Reframe」、〈無機質なテクノロジーがチームPerfumeの絆と人間性によって云々〉はまあもちろんあるとして、私が感じたのは、ほんの1か月前はファンクラブ会員限定で、3人のキャラクターを前面に押し出した和やかで親密なライヴをしていたPerfumeが、ここではほとんど正反対といえる、極めて挑戦的かつ実験的なライヴを見せた、かつてないほどの表現の振れ幅です。どちらか一方ならできる人はたくさんいるでしょうけど、両方できる(しかもどちらも圧倒的に凄い)人ってそんなにいないだろうな……と。

 

 

「Reframe」は、テクノロジーとアートの関係性を突き詰めて、ギリギリのせめぎ合いの中からその調和を模索し、新たな表現領域を見出そうとするような、実に野心的で画期的なトライアルです。

2010年からコラボレーションを継続し、数々の大舞台(と困難)を共に切り抜けてきたライゾマティクスとPerfume、そしてMIKIKO先生だからこその到達点であり、世界的にも類例のない試みでしょう。

 

恐ろしいほど手が込んだ、このライヴの制作および準備に必要だった時間・技術・機材・人員の物量は想像が付かないほど。にもかかわらずチケット価格が5300円~5800円というのは、いったい収支どうなってるんだろう??と心配になりましたが、まあそこは我らのNHK受信料が使われているんでしょうね!(あくまで予想です)

実際、日本ではエンタテインメント企業にそれほどの資金力がありませんから、公共放送NHKは国営ではありません)くらいのスケールメリットがないと、ここまで冒険的なアプローチは不可能なのが実情でしょう。ここからテクノロジー×アートの新しい流れができたりしたら素晴らしいですね。

 

それにしても対極にあるようなライヴを2か月で続けて見せる、この連続性と意外性はあえて狙ったスケジュールという気がします(単にNHKホール側の空き状況でそうなっただけの可能性もありますが)

 

そこの部分は凄く気になったので、なぜか終演後にNHKホールの外で〈Amuse Fes IN MAKUHARI 2018〉のチラシを配っていた(しかも両日)、Perfumeマネージャーの山本さんに直接お尋ねしたいところでしたが、お仕事の邪魔をするわけにはいかないので帰路を急ぎました。

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山本さんにいただいたチラシ

2018.3.20&21 「Reframe」 SET LIST

1. 新曲(IDM風)

2. DISPLAY

3. 新曲(IDM風)

4. Butterfly

5. シークレットシークレット

6. 新曲(テック・ハウス~ヒップホップ調)

7. エレクトロ・ワールド

8. FUSION

9. 願い(Album-mix)

10. 無限未来

 

◇追記

このレポートを書いている間に、ネットメディアでレポートいくつか上がってたみたいですね。上のセットリストは私の「多分こうだった」という記憶以外の何者でもありませんので、ご了承下さい。

それと、「シークレットシークレット」の再構成(=Reframe)Seihoが手がけているそうですね。彼はライゾマティクス忘年会にも出演しているし、実験的でユニークなソロ作からSugar's Campaignみたいなポップスも作れますから、間違いない人選です!!

 

そして「Reframe」は「FUSION」以降のアーカイヴもアップされていますね。このブログをアップしたらじっくり見てみます!(記憶と全然違っていたらどうしよう) 

第91回 OTONOKO2017

12月2日のOTONOKO、行って参りました。

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全体の感想は〈かなり良いダンス系フェスで、東京でもこのレベルのフェスはそうそうない〉というところ。国産ダンス・ミュージックのフェスとしてしっかり芯を食ったラインナップで、ヤスタカの故郷・金沢(つまり東名阪のような大都市ではない街)で、こういうエッジの立ったフェスが開催されることの意義は大きいでしょう。

会場には遠方から来たであろうPerfumeファン(外国人含む)の姿も多く見受けられましたが、せっかくの良いフェスだし、もっともっと現地の若者も気軽にたくさん来たらいいな、とも思いました。このフェスでダンス・ミュージックに触れたことをきっかけに、トラックメイクやDJ、ソングライティングなんかを始めるような、それこそ昔のヤスタカみたいに音楽を真剣に取り組む若者が増えて、後々活躍してくれたら本当に素晴らしいですよ。

 

チケット代の6,800円も、この規模のフェスとして良心的な価格です。1日のみの開催は2DAYS以上の公演と比べると費用対効果がかなり低いですから(例えば宣伝費や、舞台設営・機材運搬などのコストを考えると、2DAYSなら1日あたり50%で済みますが、1日開催だとそこにコストが100%乗ってきます)、利益が出ているかも正直謎です。動員自体は初回の6,500人から、2017年は8,620人とアップしたようで良かったですが……

それでも、地元の若者には思い切ってチケット代は半額にしたりして、それが地域文化の活性化に繋がれば、地域発のフェスとして理想的ですね。

あとはポーター・ロビンソンやマデオン、ゼッド、サージョン、アナマナグチ、アフロジャック、マックス・ツンドラといったヤスタカ~Perfumeファンの海外クリエイターを呼んだりとかもいいですねー!兼六園に連れて行って、金沢のお寿司なんかも食べさせれば一発ですよ!!(関係者じゃないから好き放題言ってます

 

◇HOME

OTONOKO、私はCAPSULEから観ました。

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巨大なディスプレイを多数配したステージのデザインは海外のEDMフェスっぽいし、CAPSULEのサウンドも〈EDMブーム以降〉のアップリフティングなモードでしたが、やはりヤスタカが凡百のEDMクリエイターと一線を画すのは、とにかくソングライティングの質の高さ、そして洗練されたサウンド・デザインの独自性&意外性で、これはたとえばマーティン・ギャリックスゼッドデッドマウスなんかにも決して負けていないと思うんですが……褒めすぎ?

 

CAPSULEは30分という短い持ち時間でしたが、セットリストは「Another World」「FLASH BACK」「Hero」といったキラー・チューンの目白押しで、ひたすらアッパーに押し切る祝祭感の強いステージ。「More! More! More!」「Jumper」といった少し前の曲は〈EDM以降〉のアレンジやビートにアップデートされていたような気がしましたが、何しろCAPSULEを観るのがよく考えたら初めてだったため、気のせいかもしれません。やっぱヤスタカ才能あるなー、いつもPerfumeに良い曲をありがとな!と思いながら観ていました(誰目線?)

 

CAPSULE以降も、ユニークな持ち味やサウンドを押し出すアクトが揃っていて非常に楽しかったです! とりわけ、初見だった岡崎体育は批評性の高さ、メタでファニーなアプローチ、意外なくらいの(失礼)音楽性の高さ、そしてあのヴィジュアルならではの説得力など、どこか初期電気グルーヴにも通じる佇まいがクールかつ爆笑ものでした。

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banvoxはEDM系トラップを含むベース・ミュージック、ハウス、ブレイクビーツなど、多様なビート解釈を柔軟に組み合わせたミックスが、センス・スキル共に極めて巧みで、次々とこちらの予想を裏切ってくる意外性はもっと長く聴いていたいと思わせるもの。

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彼のプレイは何度か観ていますが、ますます進化していると思うし、いやはや脱帽です!

 

そしてbanvoxのDJプレイの終盤、引き継ぎのためにステージに現れたのはtofubeatsです。

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Perfumeの握手会に行ってアイドルに開眼した男、そして活動初期の高校生時代にはPerfume曲を使った(イリーガルかもしれない)マッシュアップ「The endless polyrhythm lovers」某動画投稿サイトにアップして注目を浴びるなど、Perfumeが人生に大きな影響を及ぼした、それこそ筋金入りのPerfumeファンです。

彼がこの日の、Perfumeの一つ前というものすごい出演順に気負っていないはずがない!と思ったのですが、いつもどおりの飄々とした語りで曲を紹介し、お客さんを煽ったり、時折チューン・ヴォイスで自分の歌を重ねたりしながら、「POSITIVE」「Too Many Girls」「ディスコの神様」「Don't Stop The Music」など、人気曲を立て続けにプレイ。良質なポップ・ミュージックのエッセンスと、ダンス・ミュージックの親しみやすさを掛け合わせたような楽曲に、会場内はじんわり熱く、ハッピーな空気で満たされます。

名曲「朝が来るまで終わることの無いダンスを」から「水星」で締める構成を観て、Perfumeファン代表だと思っていたtofubeatsが、Perfumeの直前にここまで堂々たるステージを見せてくれるとは……と勝手に感無量でした。「この後はPerfumeと中田さんです、最後まで楽しんで下さい!」的なことを言い残して、ステージを去るtofubeats。その姿はPerfumeファン代表に留まらず、非常に優れたクリエイターのそれでした。

 

◇The Opening

しばしの転換時間を経て(場内にいる8,602人で、大型ディスプレイに流れる地元のラーメン屋さんのCMを何度も観たりしました)ディスプレイには〈Next Artist〉、そしてPerfumeのロゴが表示されます。この日いちばんともいえる大歓声、お客さんが一気に前方に詰めかけるなか、突如鳴り響く「GLITTER」のイントロ! 2017年はSONICMANIAPerfume FES!!などでもこの曲が披露されましたが、このオープニング演出は『JPN』ツアーの沖縄公演以来ではないでしょうか。私はトップクラスに好きな曲なので歓喜です!!!

グリーンのレーザー光線が入り乱れる中、鮮やかな赤い衣装に身を包んだPerfumeの3人が登場。「GLITTER」は一時期よく使われていた、シングル・ヴァージョンとAlbum-mixが混ざったような印象でした。OTONOKOは(場所にもよりますが)音響もなかなか良かったですし、もう最高でしたね!そして立て続けにFLASH。いまやライヴの鉄板曲で、SONICMANIAに続いてPerfumeのハイパー・ダンスモード炸裂ですが、この2曲でひとまずMCに。 

◇MC

以下、大体の記憶です。

あ~ちゃん「中田さんとライヴで一緒になるのは初めてです。14歳からPerfumeをやっていて、いま28,29歳。中田さんもよう飽きんと続けてくれた飽きることもある人だと思うけど、そのことがありがたいです。中田さんとは去年くらいから一緒にTVに出たりして、今年はOTONOKOに呼んでいただきました」

あ「みんな重低音ずっと聴いてて、身体おかしくなってない?ならない?OTONOKOの音好きな皆さんはさすが、うちらも精進します」

 

この日のグループ分けは〈な・か・た〉になりました。

あ「みんなで神の名前を叫んで、最高の時間にしたいと思います!」

神の名前を叫ぶと、神々しさだかご利益だかを感じる、みたいな話もあったような……

 

そしてまだ2曲しかやってないけど、早くもP.T.A.のコーナー」へ。この日のPerfumeの持ち時間は40分で、ここまでも結構な時間を使っていたように思いますが、続いての「FAKE IT」で一気に場内大爆発!これはこの日いちばんの熱狂状態だったかもしれません。

続いてちょっと意外なチョコレイト・ディスコで、アッパーなダンスモードからシフトダウン。この曲が中盤に入ることは珍しく、その場では少し不思議に感じましたが、続けてあ~ちゃんの「紅白歌合戦、今年も出場することができて本当に嬉しいです。私たちの今年は、この曲です」というMCから、ゆったりとしたイントロの「TOKYO GIRL」に入ったので、いま思えばそこへの(モードやテンポの)調整にもなっていたかもしれませんね。

 

「TOKYO GIRL」が終わると、「次が最後の曲です。新曲で、3人でやるのはこれが初めてです。FUSION!」というあ~ちゃんのMCから最新曲「FUSION」へ。3人が舞台上で正三角形のフォーメーションを取り、イントロが流れると場内前方で大きな歓声が。何だろう?と思っていると、ステージの上段がライトで照らされ、なんとPerfumeの背後にDJブースに立つヤスタカの姿が!瞬時に驚きが広がり、大歓声が沸き上がります。

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Perfumeとヤスタカのステージ上での共演が、2003年のコラボレーション開始から14年を経て、初めて実現した瞬間でした。

 

◇FUSION

この「FUSION」、やや和風のメロディーを持つインスト主体の曲で、キックの4つ打ちからも脱却して、最近のPerfumeには少ないテクノに仕上げられています。

Perfumeはこれがライヴでの初披露ということで、集中力を高めて全身全霊でパフォーマンスしていたように見えましたが、ヤスタカは最初の「Yeah」で軽く人差し指を掲げたり、「Yeah, Yeah, Yeah」の連呼ではハンズアップで客を煽ったり、音域のミックスを少し変えたり(していたような気がしましたが勘違いかもまあ言うなれば平常運転に見えましたね。

 

それにしても、まさか両者の初共演が「FUSION」になるとは……踊り慣れた「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」でコラボしても別に良いはずで、それを初披露の最新曲でやることは、もっともハードルが高いでしょう

それにあえてトライし、(それこそフュージョンして)見事にやり切って見せた4人。常に新しいことに挑戦し続けて、アイドルグループとして前人未踏の成果を成し遂げてきたPerfumeとヤスタカに、これ以上相応しいコラボレーションもなかっただろうと思います。 

◇KANAZAWA

「FUSION」が終わると、Perfume3人は弾けるような笑顔で、DJブースのヤスタカを盛り立てるように手を振り、舞台袖に消えていきます。そのままフェスのトリを務めるヤスタカは、何事もなかったかのように自分の曲「Source of Light」NHK「NEWS CHECK11」のオープニングテーマ)を流します。

 

えっ、どちらもこの共演について何も言わないんだ!!

Perfumeファンからすると(そしておそらくPerfumeメンバーや関係者にとっても)ヤスタカとの共演は歴史的な瞬間ですが、そのパフォーマンス中に「DJ、中田ヤスタカーー!!」みたいに特別にそれを煽ることも、そもそも歌詞以外の言葉が交わされることもなく、あくまでもサラッと披露された印象でした。

 

ただ、初披露の最新曲を、この大一番で見事に決めてみせるPerfumeの頼もしさと成長、そして4人でパフォーマンスする姿に、ここまでのすべてが込められているかのようで、むしろ言葉は野暮だったかもしれません。Perfumeとヤスタカがこれほどスマートかつプロフェッショナルな音楽的対話を見せてくれる日が来るとは……

そしてそれがヤスタカの故郷であり、恩人・ライムスター宇多丸さんとの対バンも行った金沢という街であったことに、何か巡り合わせも感じました。

 

ヤスタカはその後も「NANIMONO」やゼッド「Stay」のリミックスなど、自分が関わった曲を活き活きとプレイしていましたが、Perfume「If you wanna」を流すと、ステージにPerfumeが再登場!これまた「FUSION」に続いて最近の曲ですね。新しい作品をベースにコラボする、というモードが徹底されています。

 

大勢のお客さんで埋まったアリーナ会場で、

Perfume」のロゴがスクリーンに大写しになり、

中田ヤスタカのDJで踊るPerfume3人。

うーん、こんな未来が待っていたとは……私がPerfumeを知った頃には正直予想だにしていませんでした。

 

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この日、Perfumeとヤスタカは同じステージの上で音楽を共有し、そして翌日からはまたそれぞれ違うステージに立つのでしょう。両者の軌跡が、またステージ上で重なることもあるのかもしれませんが、それはそれとして。

ここからまた、Perfumeとヤスタカがお互いに良い影響を与え合いながら、末永く活躍してくれることを願ってやみません。 

 

 

 

 

……あ、そういえば冬の金沢の魚介類はミラクルに美味しかったので、最後に貼っておきますね!!!!!(ぶちこわし)

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第90回 Perfume FES!! Perfume×星野源

2017年9月13日、Perfume FES!! 秋の陣の第3弾、星野源さんとの対バンライヴが開催されました。私は行く予定が一切なかったのですが、チケットが余ったという友人の誘いをありがたく受けて急遽大阪に飛びました。

  

開演ギリギリに会場入り。スガシカオさんの日と比べると若い世代が相当多く、女性もかなり多かったです。Perfume FES!!のタオルなど、グッズを持っている人も多い。そして平日にも関わらず城ホールはぎっしりで、空席もほとんど見つけられないような状況。

 

先攻は星野源さん。定刻を過ぎると、ステージ上にバンドメンバーが三々五々登場して、軽く音出しを始めます。ギター、ベース、ドラムスにキーボードは2人、ホーン隊3人、そして驚いたことにストリングスも4人含むフル・バンド。いまどきのライヴでストリングスはキーボードで代替したり、打ち込みを流したりするのが通例だと思いますが、まさか生で弦楽四重奏を聴かせてくれるとは……! 何というか、星野源さんの破竹の勢いを感じるしかないリッチな編成です。

 

場内が暗転すると演奏が始まり、ステージの下手(客席から向かって左)から「こんばんはー!星野源でーす!」と、黒いジャケット姿のどうみても普通の兄ちゃんスターが登場。いきなり場内は物凄い盛り上がりです。

源さんの一挙手一投足、一言一言に大きなリアクションを返すお客さん。たちまち数曲を演奏し終えてMCに入ります。

Perfume FES!!、以前から〈出てね〉と誘ってもらっていて、ようやく実現しました。ずっとツアーをしていて、3日前に終わったばかりですが、ここ大阪城ホールでもライヴしまして、好きな会場です。初めてPerfumeと会ったのもここで、それは物凄く変わったイベントだったんですが、来てた人もいるかな(はーい!と反応してるお客さんも結構いました)

そのときは〈ほしゆか〉として登場して、miwaちゃんとかしゆかちゃんとシシド・カフカ、3人ともにほんのかすかに似ていたんですけど。当時はまだアミューズ所属でもなかったので、そこで初めてご挨拶して。いまでは事務所の後輩としてがんばっています」

 

余談ですが、私は星野さんが在籍していたSAKEROCKのファースト・アルバム(2005年)に関する原稿を(短いものですが)リリース当時に書いたりしていたので、星野さんの音楽には相当早くから触れていたのですが、そこからはほぼまともな接点がないままこの日に至ったため、観るものすべてが初めてでした。

 

◇STUFF

ライヴは時折MCを挟みながら進んでいくのですが、星野源バンド、これがまためちゃくちゃ上手い!と思ったらドラムが河村カースケさん、ベースが伊賀航さん、ギターがペトロールズにして東京事変長岡亮介さんって、このトップクラスのプレイヤーを普通に集めている(ように見える)あたりが、星野源さんの破竹の勢いしか感じないところですね。

 

キーボードのひとりが元PANIC SMILE石橋英子さんなのも驚きました。石橋さんは普段アヴァンギャルドだったり実験的な音楽をやられているとばかり思っていたので、まさかこんなにポップなサウンドとは……「SUN」の冒頭でなんか「ヴーーッ!!」と極太のノイズが鳴っていたので、あれは石橋さんのアドリブかと思ったら後でそういう仕様だと知りました。

 

バンド全体としてはスティーヴィー・ワンダーをはじめとする70年代ソウルや山下達郎さん、細野晴臣さんなんかの影響が濃い、ライトなソウル・ポップという印象ですが、とにかく達人揃いのメンバーが盤石のバンド・アンサンブルを聴かせて、しかし我を出すのではなくヴォーカルを引き立てることに専念しているという、非常に贅沢かつプロフェッショナルなステージでした。

 

その主役たる星野源さんのヴォーカルは、まあ決して超絶技巧であるとか、声域が広いとかの(一般的に歌が上手いと評されるタイプの)歌手ではなく、声の特徴やキャラクターがあのメロディーや作風にぴったり合っている、ということなのでしょう。ファルセット(裏声)を多用するところにもソウル・ミュージックの影響が窺えました。

 

◇HEAT WAVE

ライヴが進むと、長袖ジャケットを着た源さんはかなり暑いらしく「皆さん暑くないですか? (暑いー、という観客の声に)ハアハア……いっしょだね!

熱中症にならないよう、水分取って下さいね。僕はこの間、家でなりました。クーラーの修理で業者を予約したら〈1週間後で〉と言われたので、その間は仕方なく扇風機だけで過ごしていたら熱中症になって、病院に行ったら〈自宅での熱中症はお金のない若者か老人しかならないよ〉と言われました」と、本当に気さくです。

 

それと源さんはスポンサーや関係者への配慮が超丁寧です。タイアップ曲をやる前に「ウコンの力、飲んでる?」と問いかけたり、「良かったらサッポロ黒ラベルも飲んで下さい」「次にやる曲は過保護のカホコというドラマの主題歌で」など、この気遣いは石原プロを彷彿とさせるな、と思いました。

石原プロのドラマは、劇中にスポンサーの商品がガンガン出てきたり、犯人が脅迫電話をかけている背後でタイアップ企業のCMソングが流れて、それを聞いた刑事が犯人の居場所のヒントを掴んだりします

 

「2年くらい前に出した『Yellow Dancer』というアルバムの1曲目の、〈時よ〉という曲をやります。いつもはELEVENPLAYのダンサーさんといっしょにやるんですが、今日はいないので、ひとりでがんばります」という前振りから「時よ」。私でも聴いたことがあるくらいの、とても良く出来た曲ですが、曲の途中でステージ下手から、白い襟の赤いワンピースを着た女性が2人出てきます。

 

あれ変だな?ELEVENPLAYはいないんじゃ……あっ、Perfume!!!?

あ~ちゃんとかしゆかです。上手からはのっちも登場、3人で「時よ」のダンスを踊ります。特にのっちは楽しくてたまらない様子が顔に表れて、もうニッコニコ。途中から源さんも合流して、4人でがっちりシンクロしたダンスを決めると、すでに場内のテンションは最高潮です!

Perfumeは赤いワンピースに負けないよう、真っ赤なリップなどメイクもかなりはっきりめだったように見えました。手袋をしてダンスするPerfumeというのも初めて観ましたね。

 

◇Love

「時よ」が終わっても、Perfumeはステージに残っています。

ということは……ということは……!!!!

 

源さんが「皆さんいっしょに踊って下さい! 去年めちゃくちゃ歌った曲です!」と声を張り上げるやいなや、流れ出す「恋」のイントロ!!! 踊り始めるPerfume!!! すでに観客のヴォルテージと大歓声は城ホールの天井をぶち破らんばかりで、私も本来はこの曲の演奏もじっくり聴きたかったのですが、もはやそれどころではありません。

スター4人が発する、瑞々しい輝きは目も眩みそうなくらい。場内は狂喜乱舞でお客さんも踊りまくり、ポップ・ミュージックのダイナミズムや興奮の極致といった様相です。そうですね、いま瞬間最大風速的な流行りの言葉で言うと、音楽の魔法がありましたね。

 

この曲のMIKIKO先生による振付は、普段のPerfumeのモードから考えるとずいぶん可愛らしくてポップですが、振付があの素晴らしいソウルフルなバンド・サウンドと合わさり、そこでPerfumeがダンスすることで、こんなPerfume観たことない!という新たな一面を引き出しているようにも見えました。

ラストは源さんも加わって4人での恋ダンス!! 尋常ではない歓声と熱狂的な盛り上がりで、場内は客席で何人か失神していてもおかしくないレベルの興奮状態。源さんはキレの良さやリズム感など、ダンサーとしても相当良い線行っていましたね。

 

「恋」が終わるとMCタイム。

改めてPerfumeと対峙した源さんは「可愛い……」と床に崩れ落ちます。

あ「(衣装は)源さんの好きそうな感じで

源「好きです

あ「今日のこのために作った衣装なんです」

源「Perfume凄い、全然覚える時間もなかったのに完璧に踊れてた。俺も客席から観たかった! ステージで踊ってるから見られない!!

あ「一生懸命覚えたのに、お客さんみんな(普通に)踊ってた……」

 

源「Perfumeと初めて会ったのが大阪城ホールで……」

Perfume3人「(苦笑と困惑)」

源「あれ、これあまり触れない方がいい思い出だった? (かしゆかの様子をみて)怯えてる?

か「怯えてないです笑」

 

源「水飲まないと、ちょっと3人で話していて下さい

あ「でもうちらももうハケるから」

そして源さんにPerfumeでしたー!」と送り出してもらい、のっちは颯爽と帰ろうとしましたが先にいたかしゆかがお辞儀をしていたので、急いでお辞儀していましたね。

 

源「可愛かった……(水を飲んで)なんでいま俺ひとりなんだろう……」

客「(笑)」

源「………………(しばし放心状態)」

客「(爆笑)

 

 

ライヴの最後には「Perfumeをずっと追ってきました。いつも観て、本当にカッコいい、こんな人たちは他にいないと思った。Perfume FES!!は数少ない機会で、出られる人も限られているなか、そこで呼んでもらえて嬉しいです」と真摯な御礼を述べて、「最後まで楽しんで下さい! 星野源でした! 次は、Perfumeでーす!!!

 

いまの圧倒的な人気にも納得の、問答無用に楽しいハッピーなステージでした。いやー時代の寵児って凄い!

 

◇THE TIME

25分くらいと思われる転換時間を経て、場内が暗転。今回のPerfume FES!!での入場スタイルは、重厚なSEに合わせて、碁盤の目のような並びで吊られたライトからの光線マスゲームみたいに規則的に動くという趣向。床下に設置された機構(入場時にしか使わない、贅沢)から3人がスーッとステージに上がってきます。3人が腕を動かすと、それとシンクロして照明も動くなど、光とダンスするような趣向で、この演出は4月に開催されたRhizomatiks Research x ELEVENPLAY Dance Installation at Gallery AaMoから繋がっていると思われます。

 

なお私が観ていた位置は音響もとても良く、〈衣服がビリビリ振動する〉を越えて風圧を感じるレベルの重低音の出力がありながらもクリアな出音で、反響による遅延(ビートが遅れて聞こえてくる)もなかったです。PAさんに感謝です……

 

1曲目はFLASH」! そして「GLITTER」から「GAME」と、立て続けに強力なダンス・チューンを連打(「GAME」の前か後に衣装の早替えもあったような)。そして続く「Everyday」で空気を変えます。この「Everyday」、可愛らしい曲調なのに重低音や残響音の出し方が常軌を逸していてかなり好きなのですが、ライヴの大音量で聴くことで、これまで気づかなかったような音の存在や配置、響きを堪能できました。

 

4曲を終えると最初のMCタイム。

あ~ちゃん「最近はライヴの絶対数が多くて、人気のある会場はなかなか取れない。今回平日になってしまってごめんなさい! でも、皆さんは来てくれました。貴重な有給、大事な時に取っておきたかった有給で来てくれた以上、満足してもらえるよういろいろ盛り込みました」

あ「盛り上がる準備できてるー? こっちに乗っかってくれるー? 頼むよ、良いところ見せたいんだ! 今日はアミューズの偉い人たくさん来てるから大阪城ホールは大きいから、リハのときはここが埋まるのかな?と思いました」

のっち「Perfumeとして、星野源さんファンとしても念願の対バンが実現しました、そして女性スタッフがウッハウハ

かしゆか「自分たちの出番前に他人のステージに出るのが、あんなに緊張するとは、足が震えたけど、ELEVENPLAYさんの代わりなので、スッと見えるようにがんばりました。今日、グッズ着用率が高い! みんなグリーンの(フェス)タオルしてくれてる! 優秀!

そしてかしゆかが「今日、初めてPerfumeを観るって人ー!!」と訪ねると、かなり多い! ざっとですが、15%~20%くらいは手を挙げていたように見えました。星野源さんファンでしょうか。

か「星野源さん、〈Family Song〉という新曲を発表されたそうで」

の「プロモーションみたい!」

か「なんて、知ってるわ! 毎朝聴いてるわ!

あ「今回、〈Family Song〉にちなんで〈Family Ring〉というグッズを作りました。スマホに着けるリング。めちゃ堅く作ってます。ニャンキホーテとかで買うものよりずっと堅い。今日しか買えないので」

の「源さんもお気に入り……かもしれない!

あ「お気に入りとは言わん、正直者じゃ」

の「源さんとお揃い……かもしれない!

 

よってこの日のチーム分け……じゃなくて秘密の合い言葉は〈ファミ〉〈リー〉〈リング〉で、「源さんの新曲はー!?」と聞かれたら〈Family Song!!〉と答えるという約束になりました。

 

そして話題は「恋」ダンスにも。

あ「他の人の曲でも、MIKIKO先生の曲を踊れたことの達成感が凄いです。〈恋〉はスタジオに入って、ELEVENPLAYさんに教えてもらって40分くらいでフリを入れたら、頭がパーン!ってなった。ついていけないかも……と思ったけど、1日寝て起きたら踊れて、Perfumeって思った」

 

◇FOREIGNER

あ「スタッフさんから聞いたんですが、今日は海外からも来られているそうです。パラグアイアイルランド、イギリス、アメリカ、台湾、韓国……しかもこのチケットが激戦の日に!」

日本の人でも簡単にはチケットが取れなかったのに、純粋に凄い気合いだなと思いました。しかし来場者の国籍をどう調べたのかも興味ありますね。

 

今回も、事前に源さんにPerfumeで好きな曲」を尋ねてメドレーを作ってきたそうです。いろいろなリクエストがあった中から選ばれたのは「マカロニ」「ナチュラルに恋して」「Magic of Love」。他にインディーズ時代の曲もあったらしいですが、あ~ちゃん曰く「ああ、源さん忙しいしふざけているんだ」と思って流したそうです。

 

なお「マカロニ」は、名古屋でスガシカオさんもレキシも採り上げているので3公演連続ですし、「ナチュラルに恋して」はライムスターとの対バンのコラボでも大々的にフィーチャーされていました。アーティストの好むPerfumeの曲が、ソウル~ファンク路線の曲に集まっているのは注目のポイントと思います(その割にそういう曲が非常に少ないのですが……)

 

「マカロニ」は2コーラスくらいで〈♪最後の時が~〉に繋ぐショート版、「ナチュラルに恋して」はほぼフル・コーラス? そして「Magic of Love」はシングル・ヴァージョンで、アルバム版の長いアウトロがなくスパッと終わるのもメドレーの締めには最適でした。

あ「可愛い曲ばかりで恥ずかしくなるくらい! 愛とか恋の曲ばかりで、源さんの〈女性への理想〉があるのかなー。そうそう、源さんのライヴのELEVENPLAYの衣装は、本人じゃなくて源さんがチェックして、直し(修正の指示)も源さんがやっとるんだって」

客「(驚きの声)」

か「(笑顔で)そう考えると、次に観る時の印象が変わるよね!

その後、あ~ちゃんの「理想を具現化していて凄いよね」というフォロー(?)なども入っておりました。

 

メドレーに続いて新曲「If you wanna」。名古屋では〈フューチャー・ベイス〉と発音していた(ように聞こえた)あ~ちゃんですが、ここでは〈フューチャー・ベース〉と自然な発音でしたね。

 

P.T.A.のコーナー」から、なんと「FAKE IT」! さらにピークを更新するような会場の熱狂です。名古屋(スガさんの日)はこの位置に「コンピューターシティ」だったのですが、かなり変わっています。で、同じく名古屋ではこの次に「チョコレイト・ディスコ」だったんですが……

 

「FAKE IT」の熱が充満する中、静まり返る会場。Perfumeメンバーも動かず、あ~ちゃんの息づかいだけが聞こえてきます……これは?と思うやいなや、「せーの!」と掲げられる手のひら。「MY COLOR」、久々!!!

Perfumeファンも源さんファンも、みんなそれぞれ踊り、歌い、楽しんでいます。意外な選曲でしたが、いかにもこの日に相応しい、美しいフィナーレを迎えました。(あ、本当のラスト曲は「TOKYO GIRL」でした)

 

ちなみにPerfumeがステージを降りた時点で21:30を回っており、「今日の終演は22時過ぎるな!」と確信いたしました。

 

◇THE ORIGINALS

しばしの転換時間を経て、明るくなったステージにはバンドセットではなく、スタンドマイク2本にモニター・スピーカー、アコースティック・ギターが1本セットされています。

そこでPerfume3人がフェスTシャツで登場。改めてこの日の主賓である源さんを呼び込むことになりました。

あ「じゃあせーので〈源さーん〉って呼ぼうか。せーの」

全員「源さーん!

 

すると「ちょっと待ってよー」とか言いながら女装した不審者ほしゆかが登場! Perfume FES!!の白Tシャツにシルバーのロングスカート、ピンクの靴下に白いスニーカーといういで立ちで「星野源はもう帰ったわ」と言い放つ。

ほしゆか「ひさしぶりね

「何年ぶり?」「前もここで会ったわね」など話しながら、Perfume3人にどんどんにじりよるほしゆか。

あ「めっちゃ近くに来るわね

ほしゆか「グイグイ行くわ」

か「そのスカートよくあったわね

 

ほしゆか曰く「今日は私もPerfumeだから!」とのことで、いつもの「Perfumeです!」の挨拶を4人でやることに。しかしほしゆかは「ちょっと事前に手のサインだけ確認していいかしら?」と何度か試すもののうまく行きません。どうやら、ついついピースサインをした指が開きがちのようです。

「ピースが年齢を感じる」「いまはこうだからね(ピースサインで指をくっつけながら)」と語るPerfumeメンバー。

ほしゆか「やめて! 年齢の話はやめて!

 

そして4人揃って「Perfumeです!」、一応成功しました。

ほしゆか「良かった、今日はこれをやりに来たわ

 

その後、ほしゆかは「暑い! 頭が暑い! あと背中も暑いわ!」と苦しんでいましたが、髪に覆われているからですね。

か「あたしもいつも首から背中まで保温されています」

ほしゆか「あなた大変ね!」

 

ほしゆか「さっきのメドレー素敵だったわ……素敵だった。でもこれの準備があったから全部は観られなかったんだけど、素敵だったわ」

途中、女言葉がなくなったり、星野源です」と名乗ったりと、割とキャラがブレたまま進んでいくほしゆかでした。

 

◇THE MUSIC

あ「これから一緒に歌うんだけど……」

しかし観客はすでにステージ上のギターも見ていますし、織り込み済みの展開のためか、ほぼ無反応……

 

あ「ここは湧くところです!

客「(湧く)

ほしゆか「ここで反応なかったら、私何しに来たのかしら?ってなるわ」

 

そしてほしゆか「ひとりでやるんじゃなくて、妹(と言っていたような?)呼んでも良い?」と断ってから舞台袖に声を掛けます。すると、よりによって似たようなシルバーのスカートを着用したながゆか(ペトロールズ長岡さん)も登場。ほしゆか曰く「ながゆかは男性ホルモン多めで、ヒゲ生えてるのよ」。

 

あとはほしゆかが前屈みになって猛然と髪を洗うような仕草をしたり、ながゆかの髪がギターを弾くときに邪魔そうだったのであ~ちゃんが率先して後ろに流したりと、そんなこんなで歌う体勢が整いました。

あ「これは事前に音源が送られてきて、すごく熱いアレンジで」

ほしゆか「この曲を聴いたとき、このアレンジでやりたいと思って。新曲の〈If you wanna〉を、ギター2本でやります

 

おお、最新曲であり、特にギターの生演奏だとどうなるのか想像が付かない選曲ですね。「これはもうここでしか聴けないから!」というような煽りを経て演奏が始まると、ギター2本でコード進行は大体ざっくりと再現しながらダウンピッキングで刻み、サビでのシンコペートしたシンセとキックは、アタックの強いリフで表現する感じです。Perfume3人も生歌で健闘。キーは高めながら、堂々と歌い上げています。

いやいや、意外性のある挑戦でいいじゃないですか……と思っていたら途中の間奏からほしゆか・ながゆかがヘッドバンギングしながらメタリカみたいなヘヴィーなリフを叩きつけてきます。髪を振り乱しながら一心不乱にギターを弾く女装姿の男性2人をみんなで見届けました。

 

演奏が終わると、Perfumeは「やったー!」「カッコよかったー!」などと喜びますが、なぜかほしゆかは「ハードコアだったわ……」と達成感を漂わせていました。

 

コラボレーションはまだ終わりません。

ほしゆか「もう1曲やりたいんだけど、私Perfumeですごく好きな曲があって」

あ「わっ!……

ほしゆか「でもこの曲の名前を出すと、3人が凄く渋い顔するの」

あ「でもこれも音源を送ってもらって、カッコいいアレンジだったから、これならいいかな?って」

ほしゆか「〈スウィートドーナッツ〉って曲だけど(大歓声を受けて)……ほらみんな喜んでる!! みんなのためになってる!! この曲の〈♪疑問は増える〉ってところが好きなの」

なぜそこ!?

かしゆかは「この曲久しぶりに聴いたら、どこの子供が歌ってるんだろう?って思った。しゃべるみたいに歌ってたもん」

あ~ちゃん「あれが商品として販売されてたのが凄いよね」

ほしゆか「最後がこの曲だから、みんなこの曲を心に持って帰るのよ!」

 

しかしこのあたり、MCの進行ではPerfumeも源さんも、お互いの出方を見るような空気に……と思ったらほしゆかが「進行はどうしようかしら? 打ち合わせしてないからドキドキするわ」と。結局「あなたたち(Perfume)に任せるわ」ということになり、かしゆかの「生まれ変わったこの曲を聴いてください、スウィートドーナッツ!」という紹介から演奏がスタート。

 

イントロ、キーボードの賑やかなフレーズはながゆかが弾き、全体のコード進行はほしゆかが担当。かしゆかが〈♪最後の一言すっと冷えて~〉と歌い出すと、〈ゆかちゃーん〉のコールがどこか申し訳なさそうにあちこちから聞こえてきます。のっちは久々に聞いたであろうコールについ吹き出したり。でもPerfumeは歌いながらもそれなりにフリをやっていたり、コールも徐々に本気になってきたりと、なかなかの盛り上がりを見せました。

コーラスでほしゆか・ながゆかも歌っていたような気もするのですが、さすがに詳細は思い出せません。

 

そしてかしゆかが歌う〈疑問は増える♪〉の直前、ほしゆかのギターを弾く手が止まります。そしてすぐ近くにいたかしゆか、なんとほしゆかとしっかり目を合わせながら〈疑問は増える♪〉と可愛らしく歌う! この待遇で気絶・動転などしないあたりがさすが時代を牽引するスター・星野源さんです!!

 

演奏を終えたほしゆか、拍手喝采を受けながらステージから去ろうとしますが、一瞬立ち止まり、ながゆかの手を取るとそのまま手を繋いで舞台袖へと消えていきました。Perfumeは「さっきの見た? 手繋いでたよ!!」と話題騒然です。

 

ラストの挨拶。

か「盛りだくさんすぎて頭がいっぱいでした笑。ずっと踊ってほしいと言われていた〈恋〉を、源さん本人と、こんな正式な場所で一緒に踊れて良かった。コラボの2曲も、源さんじゃなかったらできなかった曲です」

の「凄く贅沢な時間で(言ってたののっちじゃなかったかも?)音楽って楽しいなぁ、と改めて思いました」

あ「恋、実は源さんから〈一緒に踊るのはどうかい?〉と提案してもらいました。あの人柄が人を惹きつけるんだと思います。今回はチケットがものすごい売れ行きで、先行販売で全部出てしまって、観てほしかった人もいたんだけど友達全然呼べなかった」

「1日じゃ足りない、2DAYSやればよかった。またやったらみんな来てくれる? 源さんにお願いしてみようかな……名残惜しいですが、会場の時間もあるので。それでは、Perfumeでしたー!

 

終わった後時計を見たら、22時20分近かったですよ!

でも、参加した人は大満足であろう、3時間超のコンサートでした。次回の対バンも楽しみです!(2回目がある前提)

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2017.9.13 Perfume SET LIST

1. FLASH

2. GLITTER

3. GAME

4. Everyday

 MC

5. 星野源さんに捧げるメドレー(マカロニ~ナチュラルに恋して~Magic of Love)

6. If you wanna

7. P.T.A.のコーナー

8. FAKE IT

9. MY COLOR

10. TOKYO GIRL

En1. If you wanna feat. ほしゆか・ながゆか

En2. スウィートドーナッツ feat. ほしゆか・ながゆか

第90回 Perfume FES!! Perfume×スガシカオ

2017年9月6日、愛知県体育館にてPerfume FES!! 秋の陣(命名:あ~ちゃんのっち)が開催されました(ご指摘いただき修正しました)。初めて行った会場でしたが、コンサート利用だと7000人くらいのキャパシティと見ました。

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↑これがカメラの性能の限界でした。思いっきり光が飛んでいてすみません

 

この日の対バン相手はスガシカオさん!

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スガさんはおそらく2008年頃からPerfumeファンを公言し、特に「マカロニ」が大好きらしいと伺っていました。また、これまでのPerfume FES!!でもライムスターや東京スカパラダイスオーケストラといったソウル~ファンク、ジャズなどを通過したアクトとの共演はずば抜けて良かったこともあり、個人的にスガさんとの対バンは〈秋の陣〉でもっとも観たい顔合わせでした。

 

ほぼオンタイムでライヴはスタート。先攻はスガさんです。「Perfume FES!!、楽しみにしてきました。初めて俺のライヴを見る人も多いと思うので、今日は他の人に提供した曲なんかも含めて大サービスで行きます」とのMC通り、「午後のパレード」で始まりKAT-TUNに提供した「Real Face」、「19才」などスガシカオ弱者な私でも知っている曲ばかり。サウンドのテクスチャーはロックだし、「Real Face」ではヘヴィー・ロック的な激しさも垣間見せていましたが、スガさんバンドのエッセンスはソウル~ファンク直系のグルーヴ感にあり、このサウンドなら3時間くらいぶっ通しで聴いても楽しめるなーと思ってニヤニヤしながら聴いておりました。

 

◇愛について

途中でMCタイム。Perfumeについては、ファン歴の長さと対照的に「みんなPerfume好き? 俺も好きです」とサラッと流します。石川(2014年)で〈Perfumeと俺の文脈〉について延々と語っていた宇多丸さんの姿をなぜか思い出しました。

しかしPerfume FES!!出演の経緯については「テレビ局のスタジオでPerfumeと一緒になったときに、本人たちから直接〈出ていただけませんか〉と依頼されて。これはもうマネージャーとか関係ない!と思って〈出ます!〉と即答しました」と、やはり隠し切れないほど強い思い入れを炸裂させるスガさんでした。

 

「俺はひとりだけどPerfumeは3人で、3人いると誰に向かって話せばいいかわからなくなる。ずっとひとりと話していると、〈この人、気があるんじゃない?〉って思われそうだし、3人にまんべんなく話しかけると安いホストみたいになる」と。「そういう場合、男としてはいちばんブスに話しかけるのがいいと思うんだけど、でも3人とも可愛いからさー!」。途中に毒っ気もありつつ、あくまでも〈いちばん言いたかった最後の部分への繋ぎ〉ということでノープロブレムです(?)

 

 

とある曲を歌う前にはアコースティック・ギターに持ち替えて、スガさんが話し始めます。「この曲を書いたのはいつ頃だったかな……もう覚えていないけど、SMAPには3~4曲提供しています。(リンゴ・ジュース!と叫んだ客に)そうそう笑 ……彼らが解散したときは凄くショックだった。もう〈夜空ノムコウ〉はやらないって言ったりしたし、いまもそのショックが癒えたわけではないんだけど…………まあ今日は歌おうかなと思います。

あ、みんなこの曲知ってるよね!? 全員知ってる前提で話しちゃったけど笑 歌い出しは弾き語りっぽくて静かなので、よかったらみんなも一緒に歌って下さい」。そしたらまあみんな歌える歌える! まぎれもない国民的ヒット曲、そして日本の音楽史に残る名曲を、Perfumeファン・スガさんファンの皆さんと合唱できました。

その後は真鍋さんも以前出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」でお馴染みの「Progress」、「コノユビトマレ」などを演奏。実はライムスターやスカパラみたいに、本編でPefume曲をカヴァーしないかな?と思っていましたが、結局それはなく、スガさん大サービスな1時間近くのステージが終わりました。いやーカッコよかった!!!

 

◇The Opening

20分くらいの転換を挟み、Perfumeのライヴがスタート。今回、入場時の演出が明らかにネクスト・レヴェルに到達しており、スタンド席から見ていたら「入場のためだけにここまでやるのか!」と驚くほど手が込んでいました。

楽曲も幕張メッセPerfume FES!!とは大きく入れ替わって、アップデートされています。

 

最初のMC。スガさんはライヴ終了後、Perfume3人へ「ホントに良いお客さんだね!」と声をかけてくれたそうで、あ~ちゃん感激。「ステージに立つ側として、やっぱり受け入れてくれてやりやすい雰囲気もあれば、そうじゃないときもあるので」と語り、Perfume FES!!が温かい雰囲気になっていることを喜んでいましたが、やはり昔のスーパーアウェイ時代の会場の空気も忘れていないのでしょうね……

 

「恐れ多くも」お誘いしたというスガさんのステージについて、大サービスの選曲で感激したと口々に賞賛。のっちは会場の後ろの方で、歯磨きしながら見ていたそうですが、「いつもはおらー!!とか煽って怖がられたりするんですが、今日は嫉妬した!夜空ノムコウ〉の大合唱に嫉妬した!! Perfumeのライヴはみんなで曲を合唱することがないので、もう一度、あの声を聴かせて! ♪あーれっかぁら~」といきなり歌い始め、アカペラで場内大合唱に。小節の終わりには〈夜空の向こうには!〉と次の歌詞をガイドしたり、ちょっとみんなの歌詞覚えが危うく合唱がばらけそうになった瞬間に〈♪待っている~!〉と力技で持って行ったりと、なかなかいい塩梅のパワープレイでした。

かしゆかが〈初めてPerfumeのライヴを観る人〉に挙手してもらったり、平日なのに仕事はどうしたのか、有給休暇か早退したのか、など話していたところにステージを離れていたあ~ちゃんが戻り「みんな仕事しとるの?」といきなりぶちかましてきたので一瞬で目が覚めました(ご本人も「仕事しとるよね、それでこのお金も出とるんじゃし、いきなり出てきて何言ってるんだろうね!」と反省の弁でした。とはいえ現代ニッポンでは平日も気軽に休める会社だってそう多くないでしょう……)

この日のチーム分けはやはりというか、〈ヨゾ〉〈ラノ〉〈ムコウ〉でした。

 

◇Dedicate

今回、Perfumeは事前に「スガさんの好きなPerfumeの曲は何ですか?」と訊いて、それでメドレーを作ってきたそうです。2014年のライムスターとの対バンでは、宇多丸さんのリクエストで「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」を披露していましたが、スガさんはメドレーなんだ……と一瞬思いましたが、それはさておき。

名称〈スガさんに捧げるメドレー〉は、いきなり「エレクトロ・ワールド」でスタート。長い間奏(オイパート)から、一気にラストの〈この世界のスイッチ/押したのは誰なの〉に繋げるショート・ヴァージョン。曲の終わりから音が途切れることなくワンルーム・ディスコへ。2コーラスくらい歌うと、初めて聴くテクノっぽいブレイクビーツが流れます。あれ、この曲なんだろう聴いたことないぞ?と思うや否や、斜めに並んだ3人が〈ダン!ダン!ダン!〉というブレイクに合わせて1人ずつ「ねぇ」のフリを決めて、そのまま「ねぇ」に突入! これは展開の意外性も含めて超上がりましたね。

SONICMANIAでのノンストップ・ダンス・ミックスも良かったですが、この〈スガさんに捧げるメドレー〉もミックスの巧みな演出と、2006年~2010年の曲だけで固めた選曲というコア感があり、これはPerfume FES!!ならではの見所でしょう。

 

その後、とある曲でフューチャー・ベースの話が出て、ノリ方の指南(サビは4分のリズムで両手を仰ぎながら、8分のリズムで身体を揺らす)をしたり、そんなこんなでPerfumeのライヴが終了。締めの挨拶は以下のような感じです。

かしゆか「あっという間でしたけど、本当に楽しかったです。ありがとうございました!」

のっち「スガさんのオトナなライヴの後に、Perfumeがやることでどうなるんだろう?と思ったけど、新しいPerfumeを見せることができたと思います。楽屋とか実家にいるみたいな雰囲気で、皆さん温かく受け入れて下さってありがとうございます!」

 

3人が舞台から去ると、セット転換でスガさんバンドの楽器が次々と運び込まれます。来ました来ましたコラボレーションタイム! 幕張メッセでのPerfume FES!!は電気グルーヴとの共演こそなかったし、チャットモンチーのときはコラボといっても、あ(以下略)

 

◇Strength

10分足らず(体感)でふたたびステージ上が明るく照らされ、スガさんバンドのメンバーと共にPerfumeがステージに登場。Perfume3人それぞれのTシャツに〈ス〉〈♡〉〈ガ〉とプリントされています。3人がくるっと客席に背を向けると、バックプリントは〈シ〉〈カ〉〈オ〉に。あ〜ちゃんのTシャツは表が〈♡〉で、一見市販されていそうなデザインですがバックは〈カ〉のみ。

のっちとかしゆか「ちから!!ちから!!」おお確かにそう読める!

あ~ちゃん「ちから……なんか学園祭のTシャツみたい!」

そしてPerfume3人と、観客みんなで「スガさーーん!」と呼び込むと、グッズの白Tシャツを着たスガさんが颯爽とステージに登場。ひとしきり3人にライヴを褒め称えられ、あきらかに照れながらそれを極力抑えつつ「…ありがとう!」と答えたり、Perfumeが着ているスガTシャツ(元はZARA製)の件などを話していました。

 

twitter.com/meatsaucetaro/status/9054286855あ「スガさんは今回、誰よりも早く決まった方で」

の「テレビ局のスタジオで直接お願いしたんですけど、そのときどう思われましたか?」

スガさん「その場で〈出ます!〉って即答したよ」

の「でもこの業界で長く揉まれると、信じていい言葉と信じられない言葉があるんですよ

あ「業務上の、社交辞令みたいなね」

ス「(苦笑)」

の「でも別のルートを通して確認したら、そこでもOKで、ホントに出て下さるんだ!って」

ス「本当はもっと早く呼ばれるんじゃないかと思ってたんですよ……(最初に呼ばれた)斉藤和義とかさ、デレデレしてたし、奥田民生も出て。なんで俺は呼ばれないのかなぁ、とも思ってたから」

あ「でもスガさん、2週間後(の9月18日)に〈スガフェス!〉もあって」

ス「大阪のね」(観客拍手)

あ「それなのに出て下さってありがとうございます。普通は〈あ、そこ自分のイベントに近いんで! そっちに集中したいんで!〉って言われるところなのに」

ス「あー……(普通は)そうするんだ?

このくだりでも、スガさんがこのPerfume FES!!にどれだけ出たかったのかビシビシ伝わってきました……

 

〈スガさんに捧げるメドレー〉について、「スガさんリクエストの3曲の流れがばっちりだったー!」と3人が口々にスガさんを褒め称えます。ここでデレデレしないあたりがさすがスガシカオさん(51歳)。「エレクトロ・ワールド! カッコいいよね!」と軽口を叩いたりされていました。

 

そして待ちに待ったコラボレーション!! 1曲目はスガさんの曲アシンメトリー

TVドラマ「整形美人。」の主題歌で、Perfumeが13歳くらいの頃にそのドラマにはまっていたらしいです。あ~ちゃんの説明によると

・ヒロインが整形して米倉涼子になる

・モテて人生が軌道に乗る

・でも(もうひとりの主役である)椎名桔平には全然整形が効かない

・心がブスなのがバレるんよ……怖いね!

 

で、ドラマの盛り上がるところで「アシンメトリー」がうまく使われていて印象に残っていたそうで、この曲をスガさんバンドと共に4人の生歌で披露することに。Perfumeも「生演奏だって! 超豪華だね!」と嬉しそうです。

しかしスガさんに「これいきなりサビから入るからね。うまく行かなかったらもう1回やるから」と言われプレッシャーを感じたと思しき3人ですが、〈♪涙の色はきっと~〉の歌い出しは1回で見事成功! サビは3人がユニゾンで歌ったり(スガさんと4人で歌っていたかも?)、平歌はPerfume3人とスガさんで歌い分けをしたり。マイナー調で陰のあるメロディーはPerfumeの曲にあまりないので、フレッシュでしたね。

 

アシンメトリー」が終わり、拍手喝采! そしてまだコラボは続きます。

あ「この曲、スガさんがPerfumeでいちばん好きな曲なんですよね」

ス「大好きです。カラオケで歌いまくります」

あ?「スガさんカラオケとか行かれるんですか!?」

ス「……ごくまれに!

あ「そんな場面でも……ありがとうございます。そんな位置に〈マカロニ〉があるんですね」(客拍手)

 

……えっ、あ~ちゃんいま思いっきりネタバレしなかった? いや、まあでもそこそこ詳しいお客さんならもう「マカロニ」一択なのは察知しているでしょうね……。

ス「これは自分に合っている曲だと思って選ばせてもらいました。こないだ〈Amuse Fes〉があったでしょ? そこでポルノグラフィティ岡野昭仁が〈ポリリズム〉をカヴァーしてたのを観たんだけど……もうぐちゃぐちゃだった! 選曲が悪い! 〈ポリリズム〉は首に青筋立てて歌う曲じゃない!!」(客爆笑)

そして誰か記憶飛びましたが〈くぅりかぁえーすーこぉのぉポリリズムゥ!〉とポルノ岡野さん風のモノマネも入りました。

 

さておき、「マカロニ」はスガさんがこの日のために「俺たちっぽいアレンジを作ってきた」そうで、これこそPerfume FES!!でしか聞けないコラボであり、やはりスガさんの尋常ではない気合いが炸裂しまくってますね。ドラムのイントロから演奏がスタート。

このとき、私はバンドの演奏にもかなり注目していました。ギターはフュージョンAOR調で、エレクトリック・ピアノの音色はフェンダー・ローズのように滑らかで艶っぽい。ベースは前ノリで、音数多めでグルーヴィー。そして驚いたのはドラムスが16ビートになっていたことです。原曲のメロウなテイストをより洗練させつつ、ビートの推進力が高まった感じで、そこにPerfume3人のエンジェリックな歌声が乗るので、これはもう極上の音楽体験!

そこにスガさんが黒いレスポールで、渋いソロを入れたりロックなフレージングを聴かせてくれます。そしてスガさんの歌う「マカロニ」は、高めのキーゆえのハスキーな声で、たまらない色気もあって……うーん、これあの場でしか聴けないのもったいないですよ! 日本の音楽産業の損失ですよ? また2014年のときみたいに映像化してくれないかな……Perfumeとスガさんの相乗効果とケミストリー、そしてスガさんのPerfumeが極まった1曲でした。

 

コラボは以上でおしまい。もう1曲やってほしかった……というのはさすがに贅沢というものでしょう。Perfumeと観客は去って行くスガさんとバンドのメンバーに惜しみない拍手を送るのでした。

 

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◇あの頃の未来に

Perfume FES!! 秋の陣、幕開けを飾るスガさんとの対バンはこのように素晴らしいものでした。「どうやらスガさんもPerfumeが好きらしい」と聞いたときから早くも8年以上が経過して、ずっとスガさんが歌う「マカロニ」を聴いてみたかったけれど、ようやくこんな夜が訪れました。確かに〈あの頃の未来〉に立ってましたよ。スガさんも、私も!!

そしてやはり冒頭にも書いたとおり、ソウル~ファンク、ジャズといった基本(とあえて書きます)を押さえているアーティストとPerfumeの共演は、間違いなく良い!という確信を深めました。

 

……考えてみれば、この翌日に登場するレキシ、そして星野源さんもソウル~ファンク、ジャズあたりをものすごくしっかり押さえていると思われますので、確実に良いであろうことに気づきましたが、私が行けるのはスガさんの日しかなかったので、それ以外の余計なことは一切考えない、という結論に落ち着きました。

とはいえそのあたりの公演に参加される皆様におかれましては、ぜひ詳細なレポートをお願い申し上げます!!!!

 

◇おまけ

スガさんバンドの演奏する「マカロニ」を聴いて、こういうサウンドの曲、もっと聴きたい!という方がおられると思うので、いくつかピックアップしようと思ったのですが、あまりに膨大で、それ以上に僭越なため、超有名曲だけ貼っておきます。

 

 

こんなところですかね……あれ?

そうか、あの日の「マカロニ」を気に入った人は、スガさんの曲を聴けばいいんだ!!!(いまさら)

第89回 「If you wanna」と「TOKYO GIRL」とフューチャー・ベース

先日のSONICMANIAのラストで立て続けに披露された、2つの新曲「TOKYO GIRL」と「If you wanna」。ここにPerfume的に新機軸といえる〈フューチャー・ベース〉が導入されているのでは、と前回のエントリーでは書きました。

 

 

 

「If you wanna」のTVプロモーションでも〈フューチャー・ベースという新しいサウンドという押し出し方がされていますね。

 

ちなみに、私が初めて「If you wanna」を聴いた瞬間に連想したのはこの曲です。

よもやPerfumeを聴いてデヴィッド・ゲッタを連想する日が来るとは……とはいえ、共通点としては

1:スタートからしばらくは音数も少なく抑制的

2:ビルドアップ(シンセの音程を徐々に上げたり、ビートを倍速にしたりしてアゲていくパート)を経由して間奏へ

3:ドロップと呼ばれる、サビっぽいけど歌のない間奏ではシンコペート(リズムや拍子をあえてずらす)した派手なシンセでピークを作る→また抑制的に戻る

4:3分ちょっとで短い

という楽曲の構造がよく似ているなー、という程度でした。

 

その後いろいろ聴いてみたら、「If you wanna」の間奏ほぼそのまんまな曲もありました(1分20秒~)。2015年末に発表されたトキモンスタのリミックスです。他にもいろいろありそうですね。余談ですが、2014年のTomorrowWorld(アトランタで開催されたダンス系フェス)でトキモンスタ観ました。音は尖っていたけどご本人はキュートでした。

 

そして、私が「TOKYO GIRL」を聴いて連想したのはこの曲です。

2015年発表の言うまでもない超有名曲ですが、これも音数の少なさ、シンコペートしたキック、ビルドアップからサビに向かう構成が特徴です。

「TOKYO GIRL」はあきらかに〈ザ・チェインスモーカーズ以降〉を意識したプロダクションだと感じました。

 

ここに貼った3曲は、いずれも〈フューチャー・ベース(系)〉と括られているようです。そうなると「If you wanna」「TOKYO GIRL」はフューチャー・ベースを採り入れたり、その影響下にあるサウンドと位置づけられます。

※「TOKYO GIRL」は、あくまでもフューチャー・ベース(のポップ化)を踏まえた楽曲という解釈で、シンセなどの上物がわかりやすく〈それっぽい〉わけではありませんが、キックのパターンにはフューチャー・ベースの要素を含むと捉えています

 

 

それでは、フューチャー・ベースとは何でしょうか?

 

〈EDM系トラップ〉通過後の、ドリーミーでキラキラしたシンセとシンコペートしたキック?

ゲーム音楽っぽい音色や、ドロップでのド派手なシンセ?

メリハリの利いた曲構造?

 

これで大体合ってると思うんですが……はたしてそれだけなのかな? そもそもフューチャー・ベースってどういう由来?と思ったので調べました。その結果が今回のエントリーです。

これは〈私が調べてみたらこうだった〉というだけで、憶測も飛躍も偏りも見落としもあると思いますが、むしろ識者の方々にそのご指摘をいただきたく、あえてアップします。

このブログで肝に銘じているのが〈よく知らないことは書かない〉ですが、今回だけは脇に置きます笑

 

◇(Future) Bass Music

実はフューチャー・ベースという単語、ここ数年で降って湧いたものではありませんサウンドの明確な定義もなかなか困難です。ググってみたら、単語としては2009年頃にはすでに使われていた形跡がありました。Perfume史でいえば『⊿』の頃ですね……

 

以下、いくつかのCD作品を参考に、それを勝手な思い込みで繋げてフューチャー・ベースの軌跡を考えてみます。

 

まず外せないのが、UKのソウル・ジャズ・レコーズ(※世界一信頼できるレーベル)から2010年9月にリリースされた、その名も『Future Bass』というコンピレーションです。

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サウンドとしての〈フューチャー・ベース〉を謳った作品として最古の部類でしょう。内容は、当時〈ポスト・ダブステップと呼ばれていたベース・ミュージック(解説ページはこちら)の見本市です!

……が、この辺は危険なほど知識がないため、以下ベース・ミュージック ディスクガイドより抜粋させていただきます。

 

ダブステップ:ジャングル~ドラムンベース、UKガラージ~2ステップ、グライムなどを元に、2000年代序盤のUKクラブ・シーンで生まれたビート・ミュージック。ヘヴィーなベースとシンコペートしたキックが特徴

ポスト・ダブステップダブステップにテクノやハウス、エレクトロニカ、ジャズなどをミックスしたサウンド

 

コンピ『Future Bass』は、世界的なムーヴメントになったダブステップが多様化し、過渡期を迎えた当時のドキュメンタリー的な一枚で、いま言われるようなフューチャー・ベースとは異なりますが、ここで聴けるビートのパターンやサウンドの音色は、2017年(のフューチャー・ベース)と地続きになっています。

 

また、これに先んじて2010年4月にはサブ・フォーカスというドラムンベースのアーティストが『Future Bass!』というコンピを雑誌の付録として発表しています。あいにく現物を聴けていませんが、ポスト・ダブステップドラムンベース、エレクトロ系の選曲のようですね。

これらのコンピから察する限り、2010年頃のフューチャー・ベースは〈ベース・ミュージックの未来はここにある〉というステートメントのような使われ方だったみたいです。ソウル・ジャズのサイトにある紹介文も〈Future Music! Future Bass!〉とハイテンションでした。

 

◇Bass To The Future

2012年9月には、UKを代表するレーベルのミニストリー・オブ・サウンドからも『Future Bass』というコンピが登場します。

ここで見逃せないのが、ラスティーとハドソン・モホークがピックアップされていること。ふたりとも、スコットランド出身の若きトラックメイカー/DJ/プロデューサーです。

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彼らのサウンドレイヴ(解説ページはこちら)ダブステップ、ヒップホップ、テクノなどの影響が濃いのですが、ここでのラスティーはすでに現行のフューチャー・ベースにかなり近いサウンドですし、ハドソン・モホークが組んでいたトゥナイト(TNGHT)というユニットはその後のEDM系トラップの隆盛に繋がって、その流行りが現行のフューチャー・ベースに至ると見ています。

そういう意味だと、最初にフューチャー・ベース(と現在呼ばれるサウンド)の流れを作ったのはラスティーなんでしょうか?

 

また、同じく2012年にはザ・ポップ・グループという超重要バンドを率いるマーク・ステュワートがソロ・アルバム『The Politics Of Envy』を発表しました。彼はこの作品に関するコメント(下記リンク先)で、ブリストルの新世代が作るベース・ミュージックをフューチャー・ベースと定義しており、そのビートやシンセの音色はやはり2017年の現在に通じています。

このように2012年のUKではすでにフューチャー・ベースが生まれていたと言えそうです。その後ミニストリー・オブ・サウンド2014年2015年にも『Future Bass』を冠したコンピを出すものの、ベース・ミュージック色が後退してハウス~UKガラージ系の選曲になっていました。2012年版の方向性を続けてくれれば、非常におもしろいシリーズになった気がするのですが、どうしてそうなったのか……

 

◇#Future bass

憶測ですが、フューチャー・ベースという用語は、2013年頃からSoundCloud(音声ファイルの共有サービス)経由で広まったのではないでしょうか?

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SoundCloudのプレイリストをハッシュタグ #Future bassで検索すると、2013年の後半からこのタグが付けられた投稿が増加しています。

とはいえ、まだそこではフューチャー・ベースとEDM系トラップの差はあまりはっきりしていないようで、フューチャー・ベースが「If you wanna」で聴かれるような特徴を持つようになったのは2015年以降と見ています。派手派手なビッグルーム系が幅を利かせる状況への反動として、EDMの多様化が進み、なかでもEDM系トラップが流行する一方、ドリーミーでチルアウトでメランコリックなサウンドも増えていった時期ですね。

ちなみに、2014年のTomorrowWorldではEDM系トラップは結構流れていましたが、フューチャー・ベースのようなサウンドはついぞ耳にしませんでした。

 

EDM系トラップの人気ドリーミーなサウンド志向、このふたつの流れが合わさって生まれたのがフューチャー・ベースではないか、というのが(やや強引で安直ですが)私の推論です。

 

 

とはいえ、いまでもフューチャー・ベースとEDM系トラップの明確な違いはそこまで大きくないと感じますし、逆に〈フューチャー・ベースはこういうサウンド!〉みたいに類型化させず、いろんな要素が混ざったり、作り手の個性が出ている方が音楽としてはおもしろい部分もあるのですが……

 

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↑フルーム

 

2016年以降は、フューチャー・ベースがメインストリームにも浸透(=トレンド化)して、前述のデヴィッド・ゲッタ、ザ・チェインスモーカーズ以外にもマーティン・ギャリックス、ナーヴォ、イエロー・クルーあたりもフューチャー・ベースを採り入れた曲を発表しています。

 

そしてオーストラリア出身のフルームによる2016年作『Skin』が今年のグラミー賞で〈ベスト・ダンス/エレクトロニック・アルバム〉を獲得し、USのマーケットでも一気にフューチャー・ベースが〈グラミーのお墨付き〉として広まりそうな感もあります。

 

このような流れでいまのフューチャー・ベースがあり、そしてPerfume「If you wanna」に至るのかな、といったところです。

 

Perfumeというアイコン(そしてアイドル)を通して、日本のポップ・ミュージックのモードをアップデートしようとする、もしくはそこまで大それたものではなくても、折々の目新しいサウンドをキャッチーかつ独創的に仕立てて提案していくという、中田ヤスタカのラディカルなチャレンジ精神はますます軒昂です。

やはりPerfume最大の魅力は、新しくておもしろいことに次々挑戦して、進化を続けているところなのでは、と改めて認識した次第です。

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結論:Perfumeやっぱ最高!!!!!

 

 

◇Outro

以上、拙いフューチャー・ベース論をお届けしました。御意見・ツッコミなどお待ちしております。

 

今回、思い切ってこのテキストを書いた理由は、それこそダブステップやEDMが流行ったときに、その背景や文脈や多様性など一切頓着せず、ただただ記号的にありがたがる向きが一部メディアやユーザーから感じられたからです。

今回のフューチャー・ベースではその轍を踏まないよう、どこか音楽雑誌やWebサイトがバシッと解説しないかな、でもどうも誰もやらなさそう……という予感がして、調査を始めました。

 

そしてテキストを書き進める最中、まさにヤスタカが表紙のサウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号」フューチャー・ベースの解説がなされているのを発見いたしました笑

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https://www.rittor-music.co.jp/magazine/sound-recording/

 

あれ……てことは、私はお呼びじゃなかった?と割と悟ったのですが、解釈もちょっと違うし、もう結構書いてしまったから最後までやり切るか!と書き上げました。

 

でもこのテキストも、私なりの「覚悟」と「正しさ」とかいうもの?で作り上げたかもしれないので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます!

第88回 SONICMANIA2017

2017.8.18 SONICMANIA SETLIST

1. FLASH

2. GLITTER

3. Miracle Worker

  MC

4. MEDLEY:ポリリズム~Spring of Life(Album-mix)~Cling Cling(Album-mix)~NIGHT FLIGHT

5. SEVENTH HEAVEN

  P.T.A.のコーナー

6. FAKE IT

7. ワンルーム・ディスコ

 MC

8. If you wanna

9. TOKYO GIRL

この日は(かつて2013年のUltra Koreaでも披露していましたが)SONICMANIAでしか見られないPerfumeハイパー・ダンスモードという感じで、数ある楽曲の中からとにかくアップリフティングなビートを持つものを選りすぐって固めたようなセットリストでした。しかも、昔の人気曲に頼るのではなく、常にというのは過去のSONICMANIAも見ていますので)新しい曲で勝負をかけられる点Perfumeの他と異なる凄さでしょう。

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22時、ほぼオンタイムで場内が暗転。重いビートによるシンプルな入場SEが流れ、スポットライトがビートとシンクロするように光るなか、3人が登場。いきなり歌い出しから始まるのはFLASH! オープニングに映えますね。緩急のある構成で、一気に場内の空気が加熱していきます。

しかし一度くらいは、この曲のAlbum-mixが披露されたらなぁ……と思いつつ、続いて「GLITTER」! 近年のライヴではなかなか聴けない曲のひとつですが、前回のSONICMANIAでも披露されており、後述しますがPerfumeメンバー的には〈踊れる曲〉という位置付けでセットリストに組み込まれています(その割に、盛り上がりはそこそこといったところでしたが…私は特に好きな曲なので嬉しかった!)

続いて間髪入れず「Miracle Worker」が流れた瞬間、やはり今回もSONICMANIA(というかダンス・ミュージックのフェス)仕様のアッパーでアグレッシヴなセットリストで来ていることを確信。観客もPerfumeをよく見ている層ばかりではなく、この曲を初めて聴く人も少なくなかったと思いますが、そのあたりも巻き込んで最初のピークへと登り詰めていく、この曲の爆発力は頭一つ抜けています。

ちなみにこの日のSONICMANIAこういうちょっと前のカルヴィン・ハリスやアヴィーチー、デヴィッド・ゲッタ、ゼッドみたいなビルドアップ(徐々にアゲていくパート)からドロップ(派手なフレーズでクライマックスとなるパート)を備えたビッグルーム・ハウス(≒一時期よく言われていたEDM)系のサウンドが流れることは、私が観た限りほぼありませんでした。が、そういうサウンドも聴きたいなぁーという層も来ていたはずで、もしかしたら「Miracle Worker」はそのあたりのニーズも満たしていたのかもしれません。

 

◇Club Foot

3曲を終えるとMCへ。大型スクリーンに映るメンバーは、早くもかなりの汗をかいています。「SONICMANIAはよくお世話になっています。呼んで下さって嬉しいです。今回日本人は電気(グルーヴ)さんと私たちだけということで……」と語るあ~ちゃん。ですが、別のステージではBOOM BOOM SATELLITESの中野さん、凛として時雨のTKさんから成るユニット=PANDAS日本語ラップ・グループのKANDYTOWNなども出てます、一応……笑 まあそちらはステージも楽屋も離れていて把握できなかったのでしょう。

 

のっちの煽り(夏休みの人、仕事帰りの人を確認、日本の夏にソニマニがあって良かった!など)を経て、かしゆかが「ソニマニは2015年以来…と語るとざわめきが起きましたが、あれは2016年はソニマニが開催されなかった(ブッキングがうまく行かなかったそう)のと関係あるのかな……

 

そしてあ~ちゃん曰く「隣の楽屋がカサビアンと。UKを代表するロック・バンドのひとつですね。

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あ「でも楽屋の仕切りがパーテーション1枚しかなくて。着替え中にバランスを崩して『あーー』(目を見開いてパーテーションに倒れこむフリ)ってなったら、向こうはカサビアン」と。

現場にいた私は、これを〈ものの例え〉として笑いながら聞いていましたが、これがもし実話なら、カサビアン着替え中のPerfumeを目撃した世界で唯一のバンということになりそうですが、まあそれはどうでもいいですね!

そんなこんなでこの日のチーム分けは〈パー〉〈テー〉〈ション〉でした。 

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◇Fancy Dancer

あ~ちゃんが「今日は踊れる曲ばっかり持ってきたから!」と煽り、「それではメドレーを聞いて下さい、ポリリズムー!!」。おお、最近ワンマンではやらないことも多いこの曲ですが、やはり観客の知名度は抜群で反応も良いです。〈ポリループ〉を経て、いつも観客がハンド・クラップする間奏に差し掛かると、メンバーが観客に背を向けて少し後方へと移動。おや?と思うのと同時に、そのBPMをキープしたままシームレスに「Spring of Life(Album-mix)」へと繋がって大歓声!

Perfumeのライヴでメドレー構成はときどきありますが、DJミックスのように〈観客を踊らせること〉に特化したメドレーとは限らず、どちらかというと、セットリストから漏れた曲をまとめる意味合いも強いです。しかし完全ダンス志向のメドレーが聴けるのはいまのところSONICMANIAだけ!……になるのでしょうか(2013年の出演時も同様のミックスパートがありました)。そして「Spring of Life」も特に好きな曲のため歓喜です。

 

そしてこの曲のクライマックスとなる間奏。アンドロイドのような振り付けで、かしゆかとのっちが座った姿勢のあ~ちゃんを引き上げるのですが、ここでの2人は直接あ~ちゃんの身体には触れず、肩の上あたりの宙を引っ張ると、あ~ちゃんの身体も引き上げられるという、まるで見えない糸で引っ張られてい……と思ったその瞬間鳴り響くシンセの短いビルドアップと強烈なビートの連打、激しく明滅するフラッシュ! 「Cling Cling(Album-mix)」です。この繋ぎ、『COSMIC EXPLORER』のツアーでの「Pick Me Up~Cling Cling(Album-mix)」と同じだったように思うのですが、やはりこの不意打ちは非常に強力で、場内はクレイジーな盛り上がりです。

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こうなると私もさすがに昂揚しまくりで、次の「NIGHT FLIGHT」にはどう繋がったのか正直あまり覚えていませんが、「Cling Cling」のサビ終わりからそのまま「NF」のイントロに繋がったのかな? ここでステージ後方の高台3つを使っていたかな? 高台使ったのは「Spring of Life」だったっけ? うろ覚えで恐れ入りますが、それくらい興奮したということで……

 

見事なメドレーが終わると、熱気が充満した場内に鳴り響くメランコリックなピアノの旋律。ここでまさかのSEVENTH HEAVENとは……! この巧みな緩急の付け方、さすが手練れです。

ちなみにこの辺でようやく気がついたのですが、ソニマニは舞台奥の低めの位置に(観客から見て)逆光の照明がたくさん設置されており、その大光量が思いっきり観客の目に飛び込んでくるので、じっとPerfumeを見ていると割と目がつぶれそうになります笑 すべての曲でその照明が使われるわけではないので、その照明が全開のときはスクリーンを見るなどして防衛しましたが、あれは再考をお願いしたいですね……

 

あ、そうそう「SEVENTH HEAVEN」でしたね。冒頭こそ抑制が利いていますが、これもダンサブルなエレクトロ・ハウスですし〈踊れる曲〉というテーマとしっかり沿っています。いやはや、この流れは聞いていて幸福感溢れますね……Perfumeが凄く眩しかったです(いろんな意味で

 

◇HA!!!

恒例のP.T.A.のコーナー」。いつもどおりの流れで進んでいきます……が、ここで先日の〈Perfume FES!!〉で初披露された、チャットモンチー作の「はみがきのうた」が組み込まれていました。

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や、わかりますよ! 確かに曲も振りもかわいいですよね! 誰でもすぐに覚えられて、みんなで歌えますよね! 重低音とビートに乗せてキレの良いダンスを踊る、〈クールでカッコいいPerfumeだけじゃない面も見られますよね!

 

 

でもこの日に限っていえば、ライヴの流れがここで完全に停滞してしまったように見えました。

 

アクセル全開でアップリフティングな流れを(緩急も付けつつ)ずっと作ってきて、さらなるピークへ向けて跳躍できるタイミングで、あのチャイルディッシュな歌と振りは残念ながらあまり効果的ではなかったと思います(※個人の感想です)まあせっかく作ってもらった以上はやらないといけないとか、いろいろあるんでしょうけど……

 

◇Fake it!(by 電気グルーヴ

さておき〈パー!〉〈テー!〉〈ション!〉の連呼で場内のヴォルテージを上げていくPerfume。ここで満を持して放たれる「FAKE IT」! Perfume屈指のアッパー・チューンで、SONICMANIAにも非常に相応しい選曲です。そして怒濤のようなクライマックスへ突入する場内に鳴り響く、ワンルーム・ディスコのシンセ。「FAKE IT」の狂乱からグッとギアを落とし、ミディアム・テンポのグルーヴで繋ぐ意外性はなかなか効果的で(それこそ上手いDJっぽい)、場内の熱気もしっかりキープされていました。

そして短いMC(新曲の告知)を挟み、その新曲「If you wanna」、そしてあ~ちゃんの「この曲を最後を歌いたいです」という口上から「TOKYO GIRL」と、新曲の連発でこの日のライヴを締め括りました。

 

「If you wanna」のクールで緻密でちょっとマシーナリーな振り付けも相当カッコよかったですが、さておきこのラスト2曲のサウンド、Perfumeの新機軸といえるフューチャー・ベースを導入していますね。

Perfume常に新しくておもしろいことにチャレンジし続けるのが最大の魅力だと思っていますが、定番の人気曲ではなく新曲2つ(=最新型のPerfumeを見せることでフィナーレを飾るという、まさにチャレンジし続ける姿勢が表われた(そして奏功した!)ライヴだったと思います。

 

そういう意味でPerfumeはまだまだ進化し続けているし、この日のライヴは非常に素晴らしいものでした。

 

結論:Perfumeやっぱり最高!!!!!!

 

◇After Hours

(以下、余談です)昨今、TwitterなんかにおけるPerfumeを巡る論調は、ともすれば3人のキャラクターや関係性に耽溺したり、一方では一部メンバーや事務所に対する〈否定的な意見〉も見受けられるように思います。

何事も楽しみ方や捉え方は人それぞれですし、その何が正しい、何が間違っていると決めつけるのは傲慢でしかありませんが、ともかく少しファンの雰囲気が変わってきているのかな、と感じます。それはPerfume自身の変化もあれば、ブレイク以降の長い時間の経過に起因するもの(ファン層の固定化)なども原因なんでしょうけど……とかうだうだ考えるのがバカバカしくなるくらい、SONICMANIAPerfume圧倒的に凄かったです!

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SONICMANIAのライヴを観ながら、私はPerfumeの楽曲とライヴ・パフォーマンスが異様に好きでファンになったこと(つまり初心)を思い出しました。

もちろん3人のキャラクターや物語、関係性もPerfumeに欠かせない魅力でしょう。でも万人がフラットに受け取ることができるのは〈楽曲とライヴ・パフォーマンス〉だけだと思います(キャラクターや関係性の本質は、それこそ本人やスタッフしかわからないので)。それ以外の部分をひたすら愛でたり、または否定するつもりはありませんし、そんな時間も余力もありません。

 思い入れが強いぶん、良くも悪くもいろいろ言いたくなるタイプのファンが多いのだと思いますが(このブログもその手のものですが)、なんというか……これからもPerfumeとファンが良好な関係(※依存ではなく)を保ち、Perfumeもファンもそれぞれが長きに渡って充実した活動ができたらいいし、そしてPerfume歴史に残るアイドルになればいいな、というのが結論ですね。

 

 

……あっ、アイドルと言えば、書き忘れてた!

SEVENTH HEAVEN」で最後のサビを歌い終わり、アウトロに入っていくところで、大型スクリーンに映るかしゆかがばっちりウィンクを決めていて、いやーPerfumeは世界最高のアイドルだな! もうこれで11500円のチケット代の元が取れたな!!と思った(多分どうかしていた)のを思い出したので書いておきます(キャラクター愛でているじゃないか、というツッコミはご容赦下さい)

次回は「If you wanna」リリース記念として、「TOKYO GIRL」との共通点でもあるフューチャー・ベースについて書く予定です。