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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第98回 Perfume at Coachella!!!!!

Perfumeは2019年4月14日と21日、2週に渡りCoachella Valley Music and Arts Festivalへ出演しました。

私は19日のロサンゼルスでのワンマンと、コーチェラ2週目のライヴを現地で観ることができました。LA公演は「Future Pop」日本ツアーの延長線上にあり、そこに「チョコレイト・ディスコ」など海外での人気曲を採り入れ、新たな機構も導入したりと、ローカライズとアップデートがなされたものに。会場は満員で、日系の文化が根付いたLAの特色もあってか、アジア系の方々が多く来られていました。

……とLA公演について書きたいこともあるのですが、今回はコーチェラのことを。

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コーチェラ出演の意義について以前書きましたが、たとえ世界で最も注目を集めるフェスに出演しても、その場で観客が集まらなければ、良いパフォーマンスにならなければ、せっかくの機会を活かし切ることはできません。

春に行われるコーチェラは、いまやその1年の音楽市場のトレンドを象徴するとされています。世界中のフェス主催者、プロモーター、エージェントが「今年はどのアーティストが良いライヴをするかな?」と注目していますから、ここで目立ったアクトは、世界各国の夏フェスやイベント、ツアーのブッキングが期待できます!

さらにYouTubeでのリアルタイム配信も影響力が大きいため、間違いなくどのアクトも完璧に仕上げてきます。Perfumeは世界的な知名度ではどうしても分が悪いですが、コーチェラ期間中にMixmag、そしてRolling Stoneという人気メディアが〈コーチェラで観るべきアクト/1週目のベストアクト〉としてPerfumeを採り上げてくれました。

なおRolling Stoneは、アルバム『COSMIC EXPLORER』を、2016年の年間ベストに入れてくれたこともあります。これについても以前書きました。

こういった音楽メディアの人たちは仕事柄、常に新しいもの、おもしろいものを探していますので、そこにPerfumeが引っかかったのは、コーチェラ出演がフックになり、届くべきところにようやく届き、評価されつつあることの表われとも言えるでしょう。もしかしてPerfumeのコーチェラ、かなり行けるのでは……?という気もしてきたのです。 

とはいえ、私が観られるのは2週目のみ。ということで1週目に関する情報は極力遮断して当日を迎えました。

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◇What's Up, Coachella!!

コーチェラに行くのは2回目ですが、今回も世界中から集まったお客さんは人種も年代も多様。とはいえ平均年齢は30歳前後といった感じか、若い世代が多く参加しています。

この年のラインナップの特徴として、かつて猛威を振るっていたEDM系のDJが一気に少なくなりました。DJも曲を流すだけでなく、楽器を演奏したりバンドを従えたり。そしてEDM勢が鳴りを潜める一方で、非英語圏……つまりラテン・アメリカやアジア、ヨーロッパ圏のアーティストが存在感を増しています。

前回は、夜になるにつれて英語圏のアーティストが増えた印象でしたが、今回はメインどころだけ挙げても、まずコロンビアのJ BalvinプエルトリコBad Bunnyが最大規模のCoachella Stageに堂々の出演(真ん中にいるのはゲストのCardi Bですね。この3人による「I Like It」は近年を代表する超ヒット曲です。

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トリニダード・トバゴCalypso Rose(御年78歳!!!)

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フランスからCharlotte GainsbourgにGesaffelstein

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ロシアからNina Kraviz

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アジアからは我らがPerfumeBLACKPINK、Hyukohなどなど。

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ずいぶん国際色豊かになっていて、それに伴い2018年のコーチェラに感じた「意外と音楽性が限られるんだな」という印象から、随分と幅広いフェスになっています。これを受けて、各国のフェスはどれくらい変化するのでしょうか? 楽しみですね。

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さて、マニアック(?)な話はこのへんにして……ここからようやくPerfumeの話です!!

◇2019.4.21

Perfumeの出演当日、会場を見て回りました。

他にも、Pusha TやBlood Orange、Boy Pablo、SOB X RBEなど観ました。正直言って、どのアクトも実に凄いライヴをやっていて「本当にこのフェスに、僕が知ってるあのPerfumeが出るんだろうか……??」と途中から現実味がなくなりました笑 あ~ちゃんが大好きなAriana Grandeも(しかもPerfumeのすぐ後に)出るくらいですからね。非常に不思議な感覚というか、ふわふわした心持ちだったのを覚えています。

Perfumeの出演時間(20:25)が近づいてくると、Perfumeが出演するGobiと、すぐ隣のMojaveの動員が気になります。この2つは同規模だと思っていましたが、僕の記憶違いかステージプラン変更があったのか、GobiはMohaveより小さく、Mojaveの4分の3といったところでしょうか。

19時過ぎの時点で、Gobiは070 Shake、MojaveはClairoとどちらも女性アーティストが演奏していますが、どちらも人の入りはそれほどではありません。その分、Coachella StageのZeddと、こちらも巨大なステージであるSaharaに出演するYG(地元カリフォルニア出身のラッパー)に人が集まっています。

たとえしっかり準備して、良い演奏ができたとしても、裏に強力なアクトがいれば人はそちらに流れてしまうのがフェスの難しいところ。はたしてPerfumeは大丈夫かなぁ……

 

19:40頃になり、気になっていたOutdoor Theatreに移動。Justice(か2000年代後半の中田ヤスタカ?)をダークにした感じのGesaffelsteinも、かなり多くの人を集めています。

みんなー、20:25からGobiでPerfume始まるぞー!グサフェルもいいけどこっちもいいぞー!と渾身の力で呼びかけたいところですが、Zeddを見終わった人までもが続々とこちらへ集まってきます。この人の流れが、Gobiにも行っているといいのですが……

 

刻一刻と時間が迫ってきます。せっかくなのでギリギリまでGesaffelsteinを見て、20:10にGobiに到着しましたが、状況はこれ。

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うーん思った以上にアウェイというか、もう少し集まってくれると思ったんだけど……いいところ4〜500人くらいでしょうか。サブヘッドライナーでこれではあまりにも寂しい。でもまだ開始まで15分くらいあるから……大丈夫なはず!!きっと!!!

 

不安に駆られながらも、お隣のMojaveで演奏中のSofi Tukkerの様子を見に行くと、これが「マジか……」と声が出てしまうほどの大入り。

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前回のエントリではすっかり抜けていましたが、NY発のユニークで知的で優れたダンス・ポップが身上である彼らは、どこかPerfumeとも重なる部分があります。さらにデビュー曲がグラミー賞にノミネートされたり、iPhone XのCM曲を担当していたりと、どう考えてもカードが強すぎです……残念だけど、本当に残念だけど、さすがにこうなるとPerfumeは苦しいかもなぁ。

 

複雑な気持ちになりながらGobiに向かうと、20:25まで少し時間があるものの、テントから白い光が漏れていて、大音量の音楽が聞こえます。あれっ、もう始まってる?と歩みを早めると、流れているのはなんと「Dream Fighter」のインスト。ステージ上には透過型スクリーンがいくつか置かれているだけで、メンバーはいません。ライヴ開始前のSEということみたいですね。

先ほどよりは人も集まってきましたが、それでもまだ会場の前方だけ。やはり知名度がないんだろう、もうこれはこれで仕方ない……

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……でも、観客が何人だろうと関係ない! たとえどんな状況でも、彼女たちはベストを尽くすでしょう。それが私のずっと見てきたPerfumeです。

◇最高を求めて

Dream Fighter」が終わると、場内が暗転。待ちわびた観客から歓声が上がり、いよいよPerfumeのコーチェラライヴ(2週目)が始まります。先日のLA公演同様、これまでのPerfumeの軌跡が映像となってスクリーンに映し出される中、3人がステージに登場。そのままインダストリアルなイントロが……これは「STORY」!!! 2015年のSXSWと同様、いきなり先鋭的な面を打ち出して、冒頭から会場を掴みにかかります。インタラクションを駆使したプロジェクション・マッピングに、手動でスクリーンを動かすアナログな手法のミックスがPerfumeらしさ。ライヴが始まったこともあってか、徐々に人が増えてきた気がします。

続いては、来ました「Future Pop」!! こういったフェスで効果のありそうなドラムンベースで、一気に会場も爆発!!と思ったのですが、まあまあの盛り上がり。次の「エレクトロ・ワールド」も、日本なら鉄板の盛り上げ曲ですし、スクリーンに映し出されるリアルタイム生成のCGも、このクオリティでは他の誰もやっていないと思うのですが(コーチェラのAphex Twinは、スクリーンに観客の顔を勝手に映して、イヤな感じで変化させるリアルタイムCG生成はやってましたが、映された人はあまり嬉しくなさそうだった)、それもそこそこの反応。むむむ……とはいえ、先ほどから人が増えてきて、半分近くまでは埋まってきました。最後尾に陣取っていた私は徐々に後ろに下がることになります。

そして「If you wanna」。こういったフューチャー・ベース調の曲は、Saharaで出ているようなDJもちょいちょいかけていたので、サウンドとしてはまだまだ有効だろうと思ったのですが、この曲が終わるとGobiを出て行く人がちらほら。おいおい、まだまだ良い曲たくさんあるのに……君たちはまだ本当のPerfumeを知らない!!と思いつつ、私にはその背中を見送ることしかできません。

 

ここで最初のMC。メンバーの自己紹介などを手短に済ませて、すぐさま「FUSION」へ。普段のライヴとはまったく異なる性急な進行に、これでは全然休めないのでは?と感じつつ、コーチェラに賭ける決意がひしひしと伝わっても来ました。

「FUSION」の演出で、影絵がバン!と拡大されるとみんな「Ohhhhh!!!!」と超フレッシュな反応。これは嬉しかったですね。LA公演でも使われた、無線制御の稼働スクリーン(下に車輪が付いていて自由に動く)で、メンバーが乗っても自由自在に動き回る機構に驚きでした(コーチェラでは使っていなかったかも?あまりステージ見えなかったので)。

 

この「FUSION」から、はっきりと人の流れが変わりました。Perfumeより先に、MojaveのSofi Tukkerのライヴが終わったことが大きいですが、先進的な演出と3人のダンス、強力なビートと重低音、ちょっとエキゾティックなメロディーが「何やってるんだろう?」と通りすがりの人を引き込むのに十分なフックになったのだと思います。

◇the best thing

コーチェラに限らず、いろんな海外フェスを観てきて感じたことは、ああいう場での観客はオープンマインドです。たとえ自分が知らないアーティストや、普段よく聞くジャンルでなくても、気に入れば存分に楽しむし、「Not for me」と思えばすぐに移動してしまう人が多いように見えます。

このとき周りを見渡すと、集まっている人たちは人種も年代も性別もバラバラ。きっとみんなPerfumeのことは知らないし、日本語の歌詞は意味がよくわからないでしょう。それでも、踊れる曲だから、なんだか楽しそうだから、他に観るものを決めていないから……きっとそんな人たちが集まってきて、あっという間にGobiが人で埋まっていきます。

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ずっと人混みの最後列をキープしていた私は、最初は会場の前方にいたはずなのに、気が付くとGobiのかなり後方まで来ていました。それでもなお、止まることなく人が増えていきます。歩いて入ってくる人、駆け込んでくる人。スマートフォンでステージを撮影しながら、友達と話しながら、ダンスしながら……これは、凄いことが起きようとしている。ライヴ中にツイッターを開くつもりなど毛頭ありませんでしたが、慌ててこうツイートしました。

 

しかし、ここで急に迷いが生じました。

 

どうしよう? ここまで後ろに下がってしまうと、まずステージは見辛くなる。もちろんPerfumeの晴れ舞台を見届けたいし、いまならまだ前の方に行ける。近くで3人の姿を見られて、ライヴを思いっきり楽しめる。せっかくこんなに遠くまで来たんだから、と。

 

 

でも私は、Perfumeメンバーを近くで観たいがために、コーチェラまで来たわけでもありません。

Perfumeが、世界最高の舞台といえるコーチェラでどう戦って、その結果として何が起きるのかを知りたい。

世界中から来ている観客が、それにどう反応して、どう楽しんでくれるのかを知りたい。

そういう好奇心に駆られて、はるばるコーチェラまで来たのです。あと、まあ配信もあるし…!!!

 

そう決心し、会場前方へと向かう人の流れに逆らって、Gobiのいちばん後ろまで行きました。そこから見ると、すでにGobiの9割は埋まろうとしていて、テントの外ではSofi Tukkerを観ていた大勢の人々がメインステージ方面へ移動中。その大きな人の流れから、少なくない人たちが続々とGobiに入ってきます。そして……

このとき、自分が目の当たりにしている光景が、にわかには信じがたかったです。こうなってほしいな、こうだったらいいのに、というイメージが目の前で本当にそうなっている。その興奮と驚きと喜びで、かなり気が動転していました。心底嬉しくて涙が出そうだけど、それ以上にPerfumeのカッコよさに笑いが止まらないような。

Perfumeは……やっぱり凄い! 本当にやってくれた! この「edge(⊿-mix)」で、Gobiはついに満員になりました。

◇Speed of Sound

間髪を入れずPerfumeが繰り出すのは「だいじょばない」。ここでコーチェラでのPerfumeのモードがはっきり見えた気がしました。おそらく、一見のお客さんも含めて一気に引き込むためにキラー・チューンを畳み掛ける、Perfume史上もっともアグレッシヴでアップリフティングで、スピーディーなセットになるだろうと。彼女たちはここまでほとんど休憩らしい休憩を取っていませんが、それでもなお一切の隙なく、短距離走者のようなスピードで、持ち時間の50分を駆け抜けるつもりなのだと察しました。 

「だいじょばない」もまた、会場の大多数が初めて聴く曲と思われますが、なかなか人が減らないどころか、さらに集まってくる。「edge」で一気に高まった会場の温度が、さらに熱を帯びていくようです。

この辺でGobiに入り切れない人たちが、テントの外に集まって踊り始めます。たとえ意味のわからない日本語でも(というか「だいじょばない」の詞は日本人でも完璧には意味がわかりませんが笑)身体を動かし、心を躍らせることで、音楽は言葉の壁も人種も年代も超えて届いていきます。この伝播こそ音楽の力であり、文化芸術の素晴らしさです。

このときこの場所にいた人たちは、Perfumeが気に入るかもしれませんし、Perfumeを観たことなんてすぐに忘れてしまうかもしれません。それでも、人が集まるにつれてエネルギーの渦みたいなものがどんどん大きくなっていく興奮は忘れがたいものでした。

 

この時点で、私はテントの外に出ていましたので、もうステージ上の3人はほとんど見えません。でもPerfumeの音楽はよく聞こえるし、それを思い思いに楽しむ、本当にたくさんの人たちが目の前にいる。そして「だいじょばない」から立て続けに披露される「Pick Me Up」、「FAKE IT」!! ここまでの9曲、スパートを掛けるようにほとんど立て続けに披露されています。これが、コーチェラでのPerfumeです。

 

この日のPerfumeの姿は本当に、〈戦っていた〉という言葉が相応しいのですが、それは決してコーチェラそのものや観客、他の出演者たちとの戦いではなく、それまでの限界を打破するため、新しい可能性を切り拓くため、持てる力を出し切るための、自分たち自身との戦いのようにも感じました。

いつものような、観客と和やかにコミュニケーションを取りながらの幸福感に溢れたワンマン・ライヴでも、当然そのような厳しい一面はあるでしょう。それでも、これまで観てきたどのライヴよりも、このときのPerfumeは尖っていて、切実でひたむきで、がむしゃらに何かを追い求めているように感じたのです。

 

それはまるで〈常に崖っぷち〉で、とにかく必死だった頃の彼女たちの姿が、どこかダブって見えるような……

◇パーフェクトスター・パーフェクトスタイル

もちろん、Perfumeはコーチェラのサブヘッドライナーとして呼ばれていますし、日本に帰ればアリーナツアーもドーム公演も開催可能です。ファンが昔の苦労話に浸るのはもはや感傷や懐古に過ぎませんし、そういった〈物語性〉は、Perfumeほんの一面に過ぎません。人気は安定しているし、かといってそれに胡坐をかいて進歩を止めたり努力を怠ることもなく、着実にキャリアを積み重ねながら、コンスタントに新しいファンを獲得しています(新規ファンの獲得は、キャリアの長いアーティストにとって非常に重要な命題ですが、なかなか簡単ではありません)

それこそいまのPerfumeは、言うなれば〈すべてパーフェクトなスター〉です。

 

思えば、初めて本格的に海外フェスに出演した2013年のUltra Koreaでは、アルバム『LEVEL3』の序盤のように楽曲をシームレスに繋ぎ、ダンス・ミュージックとしての機能性を高めようとするトライアルがありました。なかなか披露されない「Hurly Burly」がセットに組み込まれたりとおもしろい試みでも、あいにくUltra Koreaでは客入りがさほどではなく、苦戦していた印象です。でもそのときの経験がなければ、このコーチェラでそういった路線にトライしていた可能性だってあります。

これまでの経験を経てこの境地にたどり着いた、Perfumeの姿がコーチェラにはありました。

 

繰り返しになりますが、コーチェラという世界最高の舞台で、とことんストイックに、決意と覚悟をもって、自分たちにできることを突き詰めるアイドル・グループPerfumeなのです。凄いことです、これは本当に……。

 

なお、私がその凄みに打ち震えているときに、眼前に広がっていた光景がこちらです笑。

現在に過去や軌跡を重ねてシリアスに感じ入ることもできれば、即効性に優れたダンス・ミュージックとしても機能する、これもまた音楽の豊かさなのだと思います。

 

「FAKE IT」までほぼ連続で来ていたため、メンバーの体力がかなり心配にもなったのですが(もちろん、大きなお世話ですね、彼女たちはプロフェッショナルの中のプロフェッショナルです)この曲が終わってようやくMCに。私も感無量だったのでうろ覚えですが、

あ~ちゃん「コーチェラ、楽しんでもらえましたか?」

かしゆか「参加できてうれしいです!」

のっち「夢が叶いました! またコーチェラに戻ってきてもいいですか!?

といった手短な英語MCに、大歓声で応える観客。あ~ちゃんが「私たちの最後の曲です!」と宣言して始まったのがFLASHでした。

◇最高のLightning Game

海外の人々にとってはエキゾティックであろう〈和風のメロディー〉に、クールで先鋭的な振付を重ねることで、ある意味でのPerfumeらしさが凝縮された「FLASH」は、まさに海外進出にはうってつけです。ここで最も大きな盛り上がりを見せて、この状態まで熱狂が拡がってきました。テントの外でこの状況なので、場内は推して知るべしでしょう。

FLASH」が終わると、この日唯一の日本語MCである「それではー、Perfumeでした! ありがとうございましたー!!」が快活に響いて、3人がステージを去って行きます。私は、いま起きたことは何だったんだろう? Perfumeのこの先に何が待っているんだろう?と、ぼんやりとした頭で、とても熱い何かを胸の内に感じながら、しばしその場に立ち尽くしました。

◇Next Stage with YOU

Perfumeの初めてのコーチェラは、大成功でした!

とはいえ、もしPerfumeの出番がMojaveのSofi Tukkerより早かったら、途中で観客がMojaveに流れてしまい、これほどの大盛況にはならなかった可能性はあります。スケジュールに助けられた部分もあるかもしれませんが、運だって実力の内です。それに、流動的な人の流れをしっかり引き寄せて、Gobiを満員にしたのは間違いなくPerfumeチームの地力であり、私の期待や予想を遥かに超える反応だったことは事実です。

 

そしてこのパフォーマンスに、ライゾマティクスが手掛けるリアルタイムAR・シームレスMRなどのエフェクトを(後からの編集ではなくリアルタイム処理で)採り入れた映像が、全世界に向けてYouTubeで配信されました。Ariana Grandeの直後の放送ということで、多くの視聴者数が期待できます。

Perfumeの北米ツアーは、コーチェラでのライヴをもって、華々しいフィナーレを迎えたと言えるでしょう。

 

それでは、コーチェラの先には何があるのでしょうか?

 

前述のとおり、コーチェラは世界中のプロモーターやエージェントなどが注目しています。コーチェラで優れたパフォーマンスを行ったアクトには、各国の夏フェスやイベント出演、ツアーのオファーが来るもので、それはアーティストとしてのステージを上げる大きなチャンスです。

はたしてPerfumeは、その流れに上手く乗っていくことになるのでしょうか。それとも海外展開はここで一区切りで、次は日本国内での活動にシフトするのでしょうか。早くも日本での夏フェス出演が数本発表されていますし、なんとなく後者になりそうな予感はありますね。

 

これは決してどちらが良いという話ではありませんが、BLACKPINKのコーチェラへの取り組み方はPerfumeと対照的です。

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BLACKPINKはコーチェラをスタート地点に、その直後のLA公演から北米~ワールドツアーをキックオフさせています。コーチェラでのバズを、そのままツアーの動員に反映させる狙いは明らかで、ニュージャージーのPrudential Center(2万人収容。NYから割と近いので、実質的にほぼNY公演)は、なんと2日間の開催で初日をソールドアウトさせています……! この動員力だと、近い将来のMadison Square Garden公演すら可能にも思えます。

韓国国内の音楽市場の小ささゆえに、海外進出が至上命題のK-Pop勢と、日本市場がまだまだ大きなPerfumeではそもそものベクトルが違いますが、ここまではっきり違いが出るとは。でも他所は他所、うちはうちです。日本国内と海外でうまくバランスを取りながら活動することはかなりの難題と思われますが、コーチェラを成功させたPerfumeなら、それも可能な気がします。

 

2019年、これから開催されるヨーロッパやアメリカ、アジアのフェスPerfumeが呼ばれることだってあるでしょうし、Perfumeの次なるワールドツアーは、おそらくこれまでとはまったく違う規模感のものになるでしょう。世界における知名度や評価を高めるという意味では、もはや東京オリンピックなんかにこだわる必要もないのでは? それほど大きなインパクトと、見事なパフォーマンスを見せてくれたのがコーチェラでのPerfumeでした。

 

そして、コーチェラでのPerfumeの盛り上がりは決して〈奇跡〉なんかではありません。あらゆる現象には理由があり、その意味ですべては必然です。

Perfumeチームの長きに渡る積み重ねと、未来への希望、そして海外でPerfumeを待ってくれている大勢のファンの存在があったからこそ、あの時間があったのだと思います。

2019.4.21 Coachella Valley Music and Arts Festival SET LIST

SE. Dream Fighter(Instrumental)

1. STORY

2. Future Pop

3. エレクトロ・ワールド

4. If you wanna

MC

5. FUSION

6. edge(⊿-mix)

7. だいじょばない

8. Pick Me Up

9. FAKE IT

10. FLASH