第31回 Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 前編
Perfume 4th Tour in DOME 「LEVEL3」 SET LIST
(※全日程共通)
01. Enter the Sphere(Extended Version)
02. Spring of Life(Album-mix)
03. Magic of Love(Album-mix)
MC
04. 1mm
05. Clockwork
06. ポイント
MC
07. ふりかえるといるよ
08. Sleeping Beauty
09. Party Maker
10. Spending all my time(Album-mix)
11. コンピューターシティ
MC
12. エレクトロワールド
13. ジェニーはご機嫌ななめ
14. ワンルームディスコ
MC
15. 未来のミュージアム
P.T.Aのコーナー
16. だいじょばない
17. ポリリズム
18. チョコレイト・ディスコ
19. MY COLOR
20. Dream Land
Perfume初のドームツアーが終了しました。
私は大阪の2days、そして東京の2daysを観ました(つまり全部)。今回のドームツアーは、アルバム『LEVEL3』の制作より前に決まっていたのだそうです。ライヴが決まってから、ヤスタカにアルバム制作を依頼したと(蛇足ですが、大会場は2年くらい前から押さえるのが普通なので、2011年にはこの計画が動いていたはずです)。つまり『LEVEL3』はPerfumeにとって、ライヴのために制作された初めての作品と言えそうです。
少し前まで、音楽業界では〈コンサートツアー=アルバムのプロモーション〉に過ぎませんでした。だから赤字も上等で全国を回っていたらしいのですが、それでもレコード・CDの売上で十分ペイできていたわけです。でも、全体的にCDセールスが下がってくると、ミュージシャンやプロダクションは〈ライヴでの収益〉を重視せざるを得なくなります。そういう意味で、今回のツアーは、音楽産業の変化を如実に表しているとも言える……のですが、まぁその辺の話は別にいいですね!!
『LEVEL3』ツアーの位置付け
今回のツアーは、〈『LEVEL3』を大会場のライヴでどう表現・再現するか〉のトライアル。だから、セットリストの1曲目「Enter the Sphere」から10曲目「Spending all my time」まで、すべて『LEVEL3』収録曲です。Perfumeのライヴで、このように〈1枚のアルバムを実演する〉ことに重きを置いたものは初めてでしょう。
そして大阪公演から見ていると、今回のツアーでもPerfumeチームの〈KAIZENの鬼〉っぷりは揺るぎないものでした。3人のパフォーマンスはもちろん、映像も、音響も、MCも、毎回K.U.F.U.とアップデートを重ねていました。
The Opening
1曲目「Enter the Sphere」は、ヤスタカ特製のロング・ヴァージョン。今回はいつも以上にヤスタカもライヴの制作面に関わっているそうです(あ~ちゃん談)。場内が暗転すると、メインステージを覆う巨大な白い半球体に、幾何学模様やGlobal Siteの地球儀を映すプロジェクション・マッピングが施されていきます。3人のナレーション〈私たちは、夢の中にいる/それは愛でできている……〉が流れ、ディストーションの利いたベースのメイン・フレーズが入ると映像はメンバー3人のダンスに切り替わる。そして〈光の奥から/歩いて来るの〉の歌い出しで、巨大な球体の上に立つ3人が、歌詞の通り光の奥から登場! その後は文字通りSphereにEnterした3人が、それぞれ違う出島から登場したりと、とにかくド派手でケレン味たっぷりです(なお〈球体〉を用いた演出はこの後も出てきます)。
(画像は公式facebookから拝借しています)
「Enter the Sphere」は、もともと様々なパートと展開を組み合わせた組曲調の構成でしたが、ライヴではさらに長尺かつダイナミックな展開に変わっていて、スタジアム・ライヴの演出にはうってつけでした。なおこの曲、フランスの新星EDMクリエイター・Madeon(19歳!)の「Icarus」(←カッコいいですよ)と結構似てます。
続いて「Spring of Life(Album-mix)」 「Magic of Love(Album-mix)」と、アルバムの曲順通りに進んでいく時点で、このライヴの目的に気付いた人も少なくないはず。〈長い前奏でヒプノティックな肌合いを強めた「Spring of Life」〉と「bounce」誌で書かれていたとおり、この2曲のアルバム・ミックスはダンス・ビートが強調されたうえにインストの比率も上がり、作品のエレクトロニックなイメージを印象付けています。また〈Aメロ→Bメロ→サビ〉的なよくある楽曲構成に留まらない、予測の付かない曲展開や、多彩なサウンド・プロダクションに、ヤスタカが『LEVEL3』で狙ったものも窺えます。
「ポイント」の(いろんな意味での)衝撃
長ーーーいMCタイムを経てライヴ再開。『LEVEL3』の曲順通りに行くと、本来は「Clockwork」「1mm」ですが、まずは「1mm」が先に登場。場内スクリーンには歌詞(カッコよくデザインされてる)が表示されていきます。この演出はRhizomatiks(写真)のプログラミングによる、リアルタイムのグラフィック処理(というか楽曲のヴィジュアライゼーション)かもしれないのですが、果たして。
「Clockwork」は、曲名のとおり〈時計〉をモチーフにしたマシナリーな振付がフレッシュ! しかも3人のダンスのアンサンブルが極めて緻密かつ複雑で(ダンスのこともよく分からないんですが)、3人の恐るべき集中力を感じました。いまのPerfumeはものすごいレベルに達しているのかも? ちなみにこの曲、間奏などモロにYMO感があるので、音色にちょっと懐かしさもあるエレクトロ・ポップ「1mm」と併せて〈おっさん胸キュンタイム〉と名付けました(おっさんの一員として、勝手に)。
そして、曲の発表から何年待ったでしょうか、「ポイント」がライヴ初披露! 名曲ですよ! ここ数年の(日本以外での)再注目も著しい、ドラムンベース~ジャングルの流れにシンクロしていて、しかもハープやドリーミーな電子音による清涼感のあ……えっ振付これだけ!? 〈優しい/その香りを運ぶよ/風のように〉の歌い出しなんて、マイク持って歩いてるだけだ……と困惑していたら、3人がお構いなしにリフターに乗って上空に昇っていくという、色んな意味で度肝を抜かれる展開でした。ちなみに、メンバーがその頭上を通過していったアリーナ席の人たちは、その光景(詳しくは言いませんが)に何人か魂を抜かれていると思います。
〈Are you ready?〉
「ふりかえるといるよ」は、〈現行のシンセ作法でレゲエを響かせた〉と「bounce」誌で評されています。〈現行〉とはつまり、〈ダブ・ステップ以降〉と解釈しました。現在はダブ・ステップのサウンド(というかワード)が拡散し切っていて、正直どこまでをそう称していいのか迷いますが、この曲の重々しいベースと、つんのめるようなビートは、いかにもダブ・ステップ的です(〈Perfume流のダブ・ステップ〉とまでは言えないと思うけど)。ダブ・ステップのサウンドが世界中であたりまえになっている現状を踏まえているから、これは〈現行の作法〉であり、これをダブ・ステップどころかクラブ・ミュージックに免疫のない若者たち(しかも数万人規模)に浴びせかける様は、とてもラディカルだし爽快です。
「ふりかえるといるよ」の振付は、両掌を合わせて頬にあてる〈おやすみのポーズ〉で可愛く終わります(のっちの似合わなさが凄い)。メンバーが出島の内部に引っ込むと、アップリフティングなビートと共に「Sleeping Beauty」がスタート。まさかの〈睡眠繋ぎ〉です(冒頭のナレーションでも〈夢〉という単語がよく出てきたし、締めは「Dream Land」ですし)。映像では当日会場で3Dスキャンした観客を映し出したり、Global Siteの地球儀が登場したり。この地球儀で〈Cannes, France〉〈Koln, Germany〉と、Perfumeがヨーロッパツアーで転戦した地名が表示されるのは、東京から加わった演出です。
また地球儀以外に、オープニングの映像では透明な球体(「Spring of Life」のMVで使われていた)に3人が入っているのですが、それを力いっぱいぶち破るのもこの曲。〈球体〉というテーマで映像や演出に連続性を持たせているのも特徴といえそうです。
そして「Sleeping Beauty」の最後、スクリーンに表示された〈Are you ready?〉の煽り(※東京のみの演出)が消えると「Party Maker」の文字が大写しになりました。
って長い!つづきます。
(補足)察しの良い方もおられるかもしれませんが、ライヴ・レポートに併せて『LEVEL3』の批評も書いています。『LEVEL3』がライヴのために作られたのなら、ライヴで『LEVEL3』は完成するのだからこういう書き方もありかも、という挑戦です。
特に今回、『LEVEL3』の音楽的な評論をあまり見かけず、メンバーの生い立ちを根掘り葉掘り聞いたり、〈テクノ・ポップ〉〈EDM〉という紋切り型の形容で終わっているようなテキストも散見されたので、もっと音楽について話そうよ!と思って書いています(誰にも頼まれてないけど)