第93回 Future Popが示すものは
毎回5時間くらいかけて書いてきたこのブログですが、いろいろあって時間がないため、このエントリーは30分で書いてみます(注:案の定30分では書けなかったので60分にしました)
8月15日、Perfumeの7枚目となるアルバム『Future Pop』がリリースされます!
【完全生産限定盤】(CD+Blu-ray+ステッカー) UPCP-9020 ¥4,980 (tax in)
【完全生産限定盤】(CD+DVD+ステッカー) UPCP-9021 ¥4,600 (tax in)
【通常盤】(CD+Blu-ray) UPCP-1003 ¥3,980 (tax in)
【通常盤】(CD+DVD) UPCP-1004 ¥3,600 (tax in)
えっ高い!!!! 全体的に高い!!!!!!
今回、どの仕様でもDVDなりBlu-rayが付いてくるんですね。つまり映像ディスクありきで成り立つ作品(というか商品)であると。
えっ、でもこれって〈抱き合わせ販売〉にならないの?
参考リンク:
まあそれは冗談として(?)、この形態のCD+DVDリリースはビヨンセもここ2作でやってますね。ただビヨンセの場合、収録曲すべてのMVを作ってDVDに収録するというこれまた尋常ではないアプローチだったりもするのですが……
◇ファン層の変化、時代の変化
なぜ今回、このような形態のアルバムリリースになったか想像してみますと、まずPerfumeのフィジカル(CDやDVDなど。パッケージとも言います)のセールスがかなり落ち着いてきていて、これはつまりCDやDVD買うのはコアなファン層(おそらく、わざわざこのブログを読んで下さる貴殿のような方々)に偏ってきているのだと思われます。
曲だけ聞ければ良いのではなく、コンテンツは(質・量共に)可能な限り楽しみたい、そのための出費は惜しまない、という層ですね。
そうなると高価格の映像ディスク込みのパッケージにしても、そこまでセールスは下がらないであろうと。『COSMIC EXPLORER』は初週12万枚くらいだったと思いますが、『Future Pop』は初週で8~9万枚くらいは行けるのではないでしょうか。むしろこの価格設定で初週10万枚行ったら凄いと思います。
さてそれでは、そこまでコアではないファン層の売上はどこに行ったか。
オリコン(業務用)を見ていて、気になるデータがありました。
2018年上半期における、Perfumeのシングル「無限未来」の売上です。
シングルCD:54,438枚(全体の48位)
デジタルシングル(ダウンロード販売):58,947枚(全体の42位)
なんと、ダウンロード販売の数がパッケージを上回っています。
CD買うほどじゃないけど、Perfumeの曲は好きだからダウンロードしよう、という層も結構多いのですね。こういった方々は「アルバムなら買おう」という方もいるでしょうし「高いからダウンロードにしよう」という向きもあるでしょう。
ダウンロードならアルバム全体ではなく、気に入った曲だけを買うことも可能です。そもそもアルバムという形態自体が抱き合わせ販売ともいえます。2000年代中盤のアメリカ音楽産業で生じた激変を描く力作ノンフィクション「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち」でもこの点は指摘されていましたね。
さておき、かなり思い切った方針ともいえる今回のアルバム。
そしてタイトルは『Future Pop』……Perfumeのアルバムで、初めて音楽用語っぽいものが出てきましたね。
◇未来のポップ?
この〈フューチャー・ポップ〉というタームですが、それではこういう音楽ジャンルがあるのか?というと、はっきり言って私は存在していないと思います。
えっWikipediaにあるじゃん?
うーん、ジャンル名というのは、ある程度マーケットや市場に浸透して、それなりの人数が使うようになってこそのものだと思います。
チルウェイヴやダブステップ、トラップ、ムーンバートン、ジューク/フットワーク、トロピカル・ハウスなどなど……(あっフューチャー・ベースもありましたね!)そのサウンドが注目されてきて呼び名が必要になったり、サウンドの傾向を表すためのものがジャンルであったり、音楽用語の機能です。
そもそも音楽にジャンルなんていらないじゃん、CD屋が商売のために作ったものだよ、という説もありますが、恐ろしく卑近な例でいえば、お蕎麦とうどんとラーメンは同じ麺類でもそれぞれ別の物です。音楽ジャンルもそれくらいのレベルの区分ではないかと思うのですが……。
むしろ違いを意識して、それを超えて幅広く楽しむためにジャンルという線引きがあるのではないでしょうか。
〈フューチャー・ポップ〉というジャンルは存在しない(というか確立されていない)と思いますが、少し言い方を変えて〈フューチャリスティック(未来的)なポップス〉ということになると、これはものすごく膨大に存在しそうです。それを聴いた地点からの未来を想起させるような音楽という、割と主観に依った位置づけになるでしょうか。
あくまでも〈その時代の人が聴いて、未来を感じられる音楽〉ですから、初期の電子音楽だったり、シンセサイザーを使った音楽が登場した頃、その時代の人々にとって「これすげえ未来っぽい!!」と受け取られていたのではないでしょうか。
また、音楽の未来そのものを拓いたジャンルというのもあり、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノ、ヒップホップといったサウンドはまったく新しいマーケットを作り出していまに至りますが、スケールの大きな話は不得手なのでこのあたりで……
Perfumeに話を戻しますと、たとえば『GAME』はものすごく真新しいヴィジョンを持ったサウンドでしたし、いま聴いても色あせないフューチャリスティックな作品だったと思います……
……あれ、ていうかPerfume、〈未来を描いたポップ・ミュージック〉ってとっくにやってたじゃん!!!
つまり『Future Pop』、未来のポップはいわゆる〈近未来3部作〉への回帰……になっているのでしょうか?
聴いてみないと何とも言えませんが、そろそろお時間ですのでこの辺で!!!(逃げます)