第90回 Perfume FES!! Perfume×スガシカオ
2017年9月6日、愛知県体育館にてPerfume FES!! 秋の陣(命名:あ~ちゃんのっち)が開催されました(ご指摘いただき修正しました)。初めて行った会場でしたが、コンサート利用だと7000人くらいのキャパシティと見ました。
↑これがカメラの性能の限界でした。思いっきり光が飛んでいてすみません
この日の対バン相手はスガシカオさん!
スガさんはおそらく2008年頃からPerfumeファンを公言し、特に「マカロニ」が大好きらしいと伺っていました。また、これまでのPerfume FES!!でもライムスターや東京スカパラダイスオーケストラといったソウル~ファンク、ジャズなどを通過したアクトとの共演はずば抜けて良かったこともあり、個人的にスガさんとの対バンは〈秋の陣〉でもっとも観たい顔合わせでした。
ほぼオンタイムでライヴはスタート。先攻はスガさんです。「Perfume FES!!、楽しみにしてきました。初めて俺のライヴを見る人も多いと思うので、今日は他の人に提供した曲なんかも含めて大サービスで行きます」とのMC通り、「午後のパレード」で始まりKAT-TUNに提供した「Real Face」、「19才」などスガシカオ弱者な私でも知っている曲ばかり。サウンドのテクスチャーはロックだし、「Real Face」ではヘヴィー・ロック的な激しさも垣間見せていましたが、スガさんバンドのエッセンスはソウル~ファンク直系のグルーヴ感にあり、このサウンドなら3時間くらいぶっ通しで聴いても楽しめるなーと思ってニヤニヤしながら聴いておりました。
◇愛について
途中でMCタイム。Perfumeについては、ファン歴の長さと対照的に「みんなPerfume好き? 俺も好きです」とサラッと流します。石川(2014年)で〈Perfumeと俺の文脈〉について延々と語っていた宇多丸さんの姿をなぜか思い出しました。
しかしPerfume FES!!出演の経緯については「テレビ局のスタジオでPerfumeと一緒になったときに、本人たちから直接〈出ていただけませんか〉と依頼されて。これはもうマネージャーとか関係ない!と思って〈出ます!〉と即答しました」と、やはり隠し切れないほど強い思い入れを炸裂させるスガさんでした。
「俺はひとりだけどPerfumeは3人で、3人いると誰に向かって話せばいいかわからなくなる。ずっとひとりと話していると、〈この人、気があるんじゃない?〉って思われそうだし、3人にまんべんなく話しかけると安いホストみたいになる」と。「そういう場合、男としてはいちばんブスに話しかけるのがいいと思うんだけど、でも3人とも可愛いからさー!」。途中に毒っ気もありつつ、あくまでも〈いちばん言いたかった最後の部分への繋ぎ〉ということでノープロブレムです(?)
とある曲を歌う前にはアコースティック・ギターに持ち替えて、スガさんが話し始めます。「この曲を書いたのはいつ頃だったかな……もう覚えていないけど、SMAPには3~4曲提供しています。(リンゴ・ジュース!と叫んだ客に)そうそう笑 ……彼らが解散したときは凄くショックだった。もう〈夜空ノムコウ〉はやらないって言ったりしたし、いまもそのショックが癒えたわけではないんだけど…………まあ今日は歌おうかなと思います。
あ、みんなこの曲知ってるよね!? 全員知ってる前提で話しちゃったけど笑 歌い出しは弾き語りっぽくて静かなので、よかったらみんなも一緒に歌って下さい」。そしたらまあみんな歌える歌える! まぎれもない国民的ヒット曲、そして日本の音楽史に残る名曲を、Perfumeファン・スガさんファンの皆さんと合唱できました。
その後は真鍋さんも以前出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」でお馴染みの「Progress」、「コノユビトマレ」などを演奏。実はライムスターやスカパラみたいに、本編でPefume曲をカヴァーしないかな?と思っていましたが、結局それはなく、スガさん大サービスな1時間近くのステージが終わりました。いやーカッコよかった!!!
◇The Opening
20分くらいの転換を挟み、Perfumeのライヴがスタート。今回、入場時の演出が明らかにネクスト・レヴェルに到達しており、スタンド席から見ていたら「入場のためだけにここまでやるのか!」と驚くほど手が込んでいました。
楽曲も幕張メッセのPerfume FES!!とは大きく入れ替わって、アップデートされています。
最初のMC。スガさんはライヴ終了後、Perfume3人へ「ホントに良いお客さんだね!」と声をかけてくれたそうで、あ~ちゃん感激。「ステージに立つ側として、やっぱり受け入れてくれてやりやすい雰囲気もあれば、そうじゃないときもあるので」と語り、Perfume FES!!が温かい雰囲気になっていることを喜んでいましたが、やはり昔のスーパーアウェイ時代の会場の空気も忘れていないのでしょうね……
「恐れ多くも」お誘いしたというスガさんのステージについて、大サービスの選曲で感激したと口々に賞賛。のっちは会場の後ろの方で、歯磨きしながら見ていたそうですが、「いつもはおらー!!とか煽って怖がられたりするんですが、今日は嫉妬した!〈夜空ノムコウ〉の大合唱に嫉妬した!! Perfumeのライヴはみんなで曲を合唱することがないので、もう一度、あの声を聴かせて! ♪あーれっかぁら~」といきなり歌い始め、アカペラで場内大合唱に。小節の終わりには〈夜空の向こうには!〉と次の歌詞をガイドしたり、ちょっとみんなの歌詞覚えが危うく合唱がばらけそうになった瞬間に〈♪待っている~!〉と力技で持って行ったりと、なかなかいい塩梅のパワープレイでした。
かしゆかが〈初めてPerfumeのライヴを観る人〉に挙手してもらったり、平日なのに仕事はどうしたのか、有給休暇か早退したのか、など話していたところにステージを離れていたあ~ちゃんが戻り「みんな仕事しとるの?」といきなりぶちかましてきたので一瞬で目が覚めました(ご本人も「仕事しとるよね、それでこのお金も出とるんじゃし、いきなり出てきて何言ってるんだろうね!」と反省の弁でした。とはいえ現代ニッポンでは平日も気軽に休める会社だってそう多くないでしょう……)
この日のチーム分けはやはりというか、〈ヨゾ〉〈ラノ〉〈ムコウ〉でした。
◇Dedicate
今回、Perfumeは事前に「スガさんの好きなPerfumeの曲は何ですか?」と訊いて、それでメドレーを作ってきたそうです。2014年のライムスターとの対バンでは、宇多丸さんのリクエストで「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」を披露していましたが、スガさんはメドレーなんだ……と一瞬思いましたが、それはさておき。
名称〈スガさんに捧げるメドレー〉は、いきなり「エレクトロ・ワールド」でスタート。長い間奏(オイパート)から、一気にラストの〈この世界のスイッチ/押したのは誰なの〉に繋げるショート・ヴァージョン。曲の終わりから音が途切れることなく「ワンルーム・ディスコ」へ。2コーラスくらい歌うと、初めて聴くテクノっぽいブレイクビーツが流れます。あれ、この曲なんだろう聴いたことないぞ?と思うや否や、斜めに並んだ3人が〈ダン!ダン!ダン!〉というブレイクに合わせて1人ずつ「ねぇ」のフリを決めて、そのまま「ねぇ」に突入! これは展開の意外性も含めて超上がりましたね。
SONICMANIAでのノンストップ・ダンス・ミックスも良かったですが、この〈スガさんに捧げるメドレー〉もミックスの巧みな演出と、2006年~2010年の曲だけで固めた選曲というコア感があり、これはPerfume FES!!ならではの見所でしょう。
その後、とある曲でフューチャー・ベースの話が出て、ノリ方の指南(サビは4分のリズムで両手を仰ぎながら、8分のリズムで身体を揺らす)をしたり、そんなこんなでPerfumeのライヴが終了。締めの挨拶は以下のような感じです。
かしゆか「あっという間でしたけど、本当に楽しかったです。ありがとうございました!」
のっち「スガさんのオトナなライヴの後に、Perfumeがやることでどうなるんだろう?と思ったけど、新しいPerfumeを見せることができたと思います。楽屋とか実家にいるみたいな雰囲気で、皆さん温かく受け入れて下さってありがとうございます!」
3人が舞台から去ると、セット転換でスガさんバンドの楽器が次々と運び込まれます。来ました来ましたコラボレーションタイム! 幕張メッセでのPerfume FES!!は電気グルーヴとの共演こそなかったし、チャットモンチーのときはコラボといっても、あ(以下略)
◇Strength
10分足らず(体感)でふたたびステージ上が明るく照らされ、スガさんバンドのメンバーと共にPerfumeがステージに登場。Perfume3人それぞれのTシャツに〈ス〉〈♡〉〈ガ〉とプリントされています。3人がくるっと客席に背を向けると、バックプリントは〈シ〉〈カ〉〈オ〉に。あ〜ちゃんのTシャツは表が〈♡〉で、一見市販されていそうなデザインですがバックは〈カ〉のみ。
のっちとかしゆか「ちから!!ちから!!」おお確かにそう読める!
あ~ちゃん「ちから……なんか学園祭のTシャツみたい!」
そしてPerfume3人と、観客みんなで「スガさーーん!」と呼び込むと、グッズの白Tシャツを着たスガさんが颯爽とステージに登場。ひとしきり3人にライヴを褒め称えられ、あきらかに照れながらそれを極力抑えつつ「…ありがとう!」と答えたり、Perfumeが着ているスガTシャツ(元はZARA製)の件などを話していました。
twitter.com/meatsaucetaro/status/9054286855あ「スガさんは今回、誰よりも早く決まった方で」
の「テレビ局のスタジオで直接お願いしたんですけど、そのときどう思われましたか?」
スガさん「その場で〈出ます!〉って即答したよ」
の「でもこの業界で長く揉まれると、信じていい言葉と信じられない言葉があるんですよ」
あ「業務上の、社交辞令みたいなね」
ス「(苦笑)」
の「でも別のルートを通して確認したら、そこでもOKで、ホントに出て下さるんだ!って」
ス「本当はもっと早く呼ばれるんじゃないかと思ってたんですよ……(最初に呼ばれた)斉藤和義とかさ、デレデレしてたし、奥田民生も出て。なんで俺は呼ばれないのかなぁ、とも思ってたから」
あ「でもスガさん、2週間後(の9月18日)に〈スガフェス!〉もあって」
ス「大阪のね」(観客拍手)
あ「それなのに出て下さってありがとうございます。普通は〈あ、そこ自分のイベントに近いんで! そっちに集中したいんで!〉って言われるところなのに」
ス「あー……(普通は)そうするんだ?」
このくだりでも、スガさんがこのPerfume FES!!にどれだけ出たかったのかビシビシ伝わってきました……
〈スガさんに捧げるメドレー〉について、「スガさんリクエストの3曲の流れがばっちりだったー!」と3人が口々にスガさんを褒め称えます。ここでデレデレしないあたりがさすがスガシカオさん(51歳)。「エレクトロ・ワールド! カッコいいよね!」と軽口を叩いたりされていました。
そして待ちに待ったコラボレーション!! 1曲目はスガさんの曲「アシンメトリー」。
TVドラマ「整形美人。」の主題歌で、Perfumeが13歳くらいの頃にそのドラマにはまっていたらしいです。あ~ちゃんの説明によると
・ヒロインが整形して米倉涼子になる
・モテて人生が軌道に乗る
・でも(もうひとりの主役である)椎名桔平には全然整形が効かない
・心がブスなのがバレるんよ……怖いね!
で、ドラマの盛り上がるところで「アシンメトリー」がうまく使われていて印象に残っていたそうで、この曲をスガさんバンドと共に4人の生歌で披露することに。Perfumeも「生演奏だって! 超豪華だね!」と嬉しそうです。
しかしスガさんに「これいきなりサビから入るからね。うまく行かなかったらもう1回やるから」と言われプレッシャーを感じたと思しき3人ですが、〈♪涙の色はきっと~〉の歌い出しは1回で見事成功! サビは3人がユニゾンで歌ったり(スガさんと4人で歌っていたかも?)、平歌はPerfume3人とスガさんで歌い分けをしたり。マイナー調で陰のあるメロディーはPerfumeの曲にあまりないので、フレッシュでしたね。
「アシンメトリー」が終わり、拍手喝采! そしてまだコラボは続きます。
あ「この曲、スガさんがPerfumeでいちばん好きな曲なんですよね」
ス「大好きです。カラオケで歌いまくります」
あ?「スガさんカラオケとか行かれるんですか!?」
ス「……ごくまれに!」
あ「そんな場面でも……ありがとうございます。そんな位置に〈マカロニ〉があるんですね」(客拍手)
……えっ、あ~ちゃんいま思いっきりネタバレしなかった? いや、まあでもそこそこ詳しいお客さんならもう「マカロニ」一択なのは察知しているでしょうね……。
ス「これは自分に合っている曲だと思って選ばせてもらいました。こないだ〈Amuse Fes〉があったでしょ? そこでポルノグラフィティの岡野昭仁が〈ポリリズム〉をカヴァーしてたのを観たんだけど……もうぐちゃぐちゃだった! 選曲が悪い! 〈ポリリズム〉は首に青筋立てて歌う曲じゃない!!」(客爆笑)
そして誰か記憶飛びましたが〈くぅりかぁえーすーこぉのぉポリリズムゥ!〉とポルノ岡野さん風のモノマネも入りました。
さておき、「マカロニ」はスガさんがこの日のために「俺たちっぽいアレンジを作ってきた」そうで、これこそPerfume FES!!でしか聞けないコラボであり、やはりスガさんの尋常ではない気合いが炸裂しまくってますね。ドラムのイントロから演奏がスタート。
このとき、私はバンドの演奏にもかなり注目していました。ギターはフュージョン~AOR調で、エレクトリック・ピアノの音色はフェンダー・ローズのように滑らかで艶っぽい。ベースは前ノリで、音数多めでグルーヴィー。そして驚いたのはドラムスが16ビートになっていたことです。原曲のメロウなテイストをより洗練させつつ、ビートの推進力が高まった感じで、そこにPerfume3人のエンジェリックな歌声が乗るので、これはもう極上の音楽体験!
そこにスガさんが黒いレスポールで、渋いソロを入れたりロックなフレージングを聴かせてくれます。そしてスガさんの歌う「マカロニ」は、高めのキーゆえのハスキーな声で、たまらない色気もあって……うーん、これあの場でしか聴けないのもったいないですよ! 日本の音楽産業の損失ですよ? また2014年のときみたいに映像化してくれないかな……Perfumeとスガさんの相乗効果とケミストリー、そしてスガさんのPerfume愛が極まった1曲でした。
コラボは以上でおしまい。もう1曲やってほしかった……というのはさすがに贅沢というものでしょう。Perfumeと観客は去って行くスガさんとバンドのメンバーに惜しみない拍手を送るのでした。
◇あの頃の未来に
Perfume FES!! 秋の陣、幕開けを飾るスガさんとの対バンはこのように素晴らしいものでした。「どうやらスガさんもPerfumeが好きらしい」と聞いたときから早くも8年以上が経過して、ずっとスガさんが歌う「マカロニ」を聴いてみたかったけれど、ようやくこんな夜が訪れました。確かに〈あの頃の未来〉に立ってましたよ。スガさんも、私も!!
そしてやはり冒頭にも書いたとおり、ソウル~ファンク、ジャズといった基本(とあえて書きます)を押さえているアーティストとPerfumeの共演は、間違いなく良い!という確信を深めました。
……考えてみれば、この翌日に登場するレキシ、そして星野源さんもソウル~ファンク、ジャズあたりをものすごくしっかり押さえていると思われますので、確実に良いであろうことに気づきましたが、私が行けるのはスガさんの日しかなかったので、それ以外の余計なことは一切考えない、という結論に落ち着きました。
とはいえそのあたりの公演に参加される皆様におかれましては、ぜひ詳細なレポートをお願い申し上げます!!!!
◇おまけ
スガさんバンドの演奏する「マカロニ」を聴いて、こういうサウンドの曲、もっと聴きたい!という方がおられると思うので、いくつかピックアップしようと思ったのですが、あまりに膨大で、それ以上に僭越なため、超有名曲だけ貼っておきます。
こんなところですかね……あれ?
そうか、あの日の「マカロニ」を気に入った人は、スガさんの曲を聴けばいいんだ!!!(いまさら)