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R.E.P

Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第85回 Rolling Stone 20 Best Pop Albums of 2016

いやー、これはさすがに〈マジで!?〉と思ってしまいました。Perfume『COSMIC EXPLORER』が、音楽や映画、政治などを扱うアメリカでもっとも著名なカルチャーメディア、Rolling Stoneの〈20 Best Pop Albums of 2016〉の16位と発表されています。

 

記事には見たことのないマニアックな単語が並んでいて骨が折れましたが、ひとまず訳してみました。

16. Perfume, 'Cosmic Explorer'

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15年ものキャリアを経てなお、ベストの作品が発表できるグループは決して多くない。しかしPerfumeの『COSMIC EXPLORER』――2016年でもっとも壮大で伝播力のあるJポップのアルバム――は、これまでの最高到達点だ。

かしゆか、あ~ちゃん、のっちという女性シンガーのトリオである彼女たちは、すべての作曲とプロダクションを司る電子の魔術師、ヤスタカ・ナカタそそのかされて、これまでの4枚のアルバムでは忘れがたいポップな仕掛けを、ダンス・ミュージックのドラマティックな構造と結び付けていた。轟々と回転するリズムの歯車とメロディーのミックスから生じた電子音の波が、爆発的な勢いで高みへと登り詰めていく。

確かに『COSMIC EXPLORER』は甘くて気分爽快かもしれないが、秘められた野心を見逃してはならない。6分に至らんとする「STORY」は、ダンス・ポップの小さな交響曲だ。――キース・ハリス

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ありがとう、キース!! 君のアメイジングなレヴューに感謝しているよ。『COSMIC EXPLORER』が最高傑作と言っても良い、野心的な作品であることは僕も同感だ。いまどき珍しいコンセプト・アルバムであることには一切触れられていないけど……やっぱり歌詞が日本語だからね、気にすることはない。

それと、彼女たちはシンガーでもあり、優れたダンサーでもあるんだよ。あと、君の〈4枚のアルバム〉って記述は、『GAME』『⊿』『JPN』『LEVEL3』を指すのかな? 君が『Complete Best』もエンジョイしてくれることを願っているよキース!!!!

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ああそうだ、文中に〈Electronic Dance Music〉と書かれているけど、そちらでは〈EDM=電子音によるダンス・ミュージック全般〉を指す広義の意味合いと聞いているから〈PerfumeはEDMではない!〉とか面倒くさいことは言わないよキース。

 

◇Music is everything

このランクインは日本におけるPerfumeの評価にありがちな〈謙虚で誠実な人柄〉〈努力を続ける真摯さ〉〈3人の関係性、物語性〉を完璧に度外視した、純粋に音楽面での評価ですね。これはいまのPerfume評において異例ともいえるし、非常に真っ当な評価ともいえます。

 

でも、なんで数多くのポップス作品から『COSMIC EXPLORER』が選ばれたんだろう? そもそもこのランキング自体の基準は何?と思ったらページ冒頭のテキストで解説されていました。

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「ポップ(・ミュージック)」について語ることは、えてして巨大ヒットしたシングルについて語ることと等しい。2016年、その比率はますます高まっている。しかし、フル・レングスのポップ・アルバムはこれまでどおり健在だ。リアーナやブリトニー・スピアーズのような老兵たちをもっとも魅力的に見せ、トーヴ・ローのような新たなスターを自分自身へと入り込ませる。ギター・ポップも、ザ・1975のような醒めた子供たちから、毅然とした旧世代たるザ・モンキーズまでが確固たる立ち位置にあり、ヒット曲を聴いて、ポップスターについて語り合う1年になった」。

 

なるほど、フル・アルバムというフォーマットで発表されたことに意味のある作品……つまりセールスや話題性だけではなく、1枚を通して時代を牽引したり、トレンドを象徴したり、独自の世界観や〈新しいモード〉を提示したり、個性を深掘りしたり、アーティストの新たな一面に光を当てたりすることが基準なわけですね。そういう作品の在り方は〈批評的〉とも言えると思いますし、そんな作品を作り出せる人は長く支持を得られるでしょう。

 

改めてのRolling Stoneの「20 Best Pop Albums 2016」ランキングはこちら。

20. Kristin Kontrol, 'X-Communicate'

19. JoJo, 'Mad Love'

18. M.I.A., 'AIM'

17. Kitten, 'Heaven or Somewhere In Between' EP

16. Perfume, 'Cosmic Explorer'

15. Tkay Maidza, 'Tkay'

14. Lizzo, 'Coconut Oil'

13. DNCE, 'DNCE'

12. Bruno Mars, '24k Magic'

11. Ariana Grande, 'Dangerous Woman'

10. Fifth Harmony, '7/27'

9. Tegan and Sara, 'Love You to Death'

8. Pet Shop Boys, 'Super'

7. Lady Gaga, 'Joanne'

6. Carly Rae Jepsen, 'Emotion: Side B' EP

5. Britney Spears, 'Glory'

4. The Monkees, 'Good Times!'

3. Tove Lo, 'Lady Wood'

2. Rihanna, 'Anti'

1. The 1975, 'I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It'

 

いやはや、全部はもちろん聞けておりませんし「えっこれこんなに上位なの?」という作品もありますが、ブルーノ・マーズアリアナ・グランデ、DNCE、フィフス・ハーモニーみたいな乗りに乗っている人気者から、リアーナやブリトニー、カーリーにガガ様みたいなビッグネーム、トーヴ・ローやザ・1975といった新しいスター、はたまたM.I.Aみたいにエッジーでオルタナティヴなアイコンが入り乱れる中にPerfumeの名前があるとは……

しかもPerfumeは、英語以外の言語による作品としては唯一のランクイン。これは2014年に2NE1が『CRUSH』で6位を記録した以来の事態です。

結果的に『CRUSH』は2NE1の最期の作品になってしまいました。彼女たちにはまだまだ可能性があったのに……なお私は彼女たちの最高傑作は『NOLZA』だと思います

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◇A Rolling Stone Gathers...

〈Rolling Stoneでも評価されるなんて、Perfume凄い!〉という〈世界が称賛する日本〉的な解釈もできますが、Rolling Stoneのランクインには重要な点がふたつあると思います。

 

まずひとつが、Perfumeは当代の、そしてグローバルなポップ・ミュージックのシーンで注目すべき、頭一つ抜けた存在であると改めて(初めて?)光があてられたこと。アジア的なエキゾティシズムや、キッチュで物珍しい存在としてではなく、いま聴いて普通にカッコいいものとして採り上げられています。

映画評論家の町山智浩さんが(確か文春の連載で)「最近のRolling Stoneは誤報もあったり、記事の質が下がっている」と書かれていましたが、腐っても鯛です。

 

ふたつめに、このRolling Stoneのランキングはたまたまではなく、ちゃんと届くべきところに、Perfumeの音楽が届きつつある状況の表れにも見えます。このランクインを活かして、アメリカの市場にもしっかり腰を据えて取り組めば、さらなる展望のきっかけにもなりえます。

 

ドームツアーのMCにて、あ~ちゃんは「アメリカツアーは厳しかった、打ちのめされた」とすっかり自信を無くしてしまったように映りましたが(実際、マディソン・スクエア・ガーデンのことは一言も口にしなかったPerfumeのアメリカ進出は、まだまだこれから。そういう意味では、順調と言ってもいいのかもしれません。

 

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いまだかつて、アメリカのポップ・ミュージックのメインストリーム(つまりV系やメタル、アニソンなどのニッチな文脈ではないところ)で正当に評価された日本人はほとんどいません。その数少ない例のひとつがPerfumeだと思います。

 

あの巨大なMSGに、そうそう簡単に行けるわけがありませんし、MSGでライヴをやればアメリカで成功したことになるとも思いませんが、少なくとも、いまの彼女たちの行く末には可能性があります。残り時間は限られているとしても……

 

私はNYで、Perfumeを(日本のファンと同じように)心から応援して、自分たちの街に、国に来てくれることを願っている人々と出会いました。その願いをできる限り叶えて、さらにビジネス的にも成立させて、長く活動できることが、海外進出における〈成功〉なんじゃないかな、と薄らぼんやり考えている次第です。

 

余談ですが、〈あ~ちゃん〉の英語表記はA~chanではなくAh~chanの方が、少なくとも発音の点では正しいのでは……文字面は壊滅的にアレな感じですが。