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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第80回 Perfume in NYC Day1

Perfume初のUSツアーの最終地点として、彼女たちにとって2度目となるニューヨーク公演が、HAMMERSTEIN BALLROOMにて開催されました。

 

初日の9月3日(土)は、前回のようなソールドアウトこそできませんでしたが、1FのGA(スタンディング)は9割近く入っている感じで、2F指定席は完売、3F指定席も7割以上は埋まっていたように見えました。日本からのファンは2割強というところでしょうか?

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私はスタートの20時より1時間ほど前に行きましたが、会場のあるブロックを1周せんばかりの大行列。並んでいる人種も様々です。白人、黒人、ヒスパニック、アジア系などなど。年代も子供からご年配まで。人種のサラダボウルであるニューヨークらしい客層。この直前にワシントンDCで観たブルース・スプリングスティーンの客層と少し通じるものがありますが、Perfumeの観客の多様性はずば抜けています。

 

入場してスタートを待つ間、近くにいた黒人の女性(たぶんアラサー)にお話を訊きました。彼女はおそらく『JPN』の頃にYouTubePerfumeを知ったそう。テキサスから来ていて、SXSWでのショウにも行ったが短かったので、どうしてもライヴを観たくてニューヨークまで来たのだと。

彼女はDJもやっていて、主に回すのは70年代のファンクから最近のR&B、エレクトロニックなものまで。具体的に訊いて、聞き取れたのはParliamentFunkadelicなど。フェイヴァリットはPrinceだそうです。

実はこの日、チェルシーのギャラリー「Pure Space」で開催された展示「Perfume: A Gallery Experience」でも、私は前に並んでいた黒人男性と話しています。彼もまずは音楽ファンで、幅広いジャンルの音楽が大好きで、YouTubePerfumeを知ったのだと。そしてフェイヴァリットはPrinceであると……何このシンクロニシティ

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スミソニアンにあったプリンス追悼の展示。2人にこの写真を見せたら喜んでくれました

 

 

◇New York City Cerenade

20時10分頃、ライヴがスタートします。セットリストなど、詳しくは明日書きますが、正直日本よりもだいぶ盛り上がっているかもしれん、というくらいとにかく大歓声! みんな夢中になって声を上げ、手を挙げ(日本のロック系ライヴのような統一したフリは皆無)、ジャンプしたりダンスしたり。

ただし日本と大きく違うのは、そこにいる人々はみんな人種も見た目も世代も本当にバラバラなことです。微動だにせずじっと聴いている黒人男性。全身で喜びを体現するように踊る白人の青年。『COSMIC EXPLORER』のTシャツを着た中年の黒人女性。お互いの顔を見合わせながら一緒に歌う、雑誌モデルみたいな白人女性の2人組がいて、どう見てもハード・ロック好きなホワイト・トラッシュという感じの兄ちゃん(失礼)が拳を突き上げ、ヒスパニック系の中年女性2人はニコニコしながらステージを見つめる。こんなに客層が多様なライヴは、きっと凄く珍しいでしょう。

 

その一方で日本と何ひとつ変わらないのが、ステージ上で歌って踊って、楽しそうに笑う3人と、姿は見えませんがこの日のショウのために全力を尽くすスタッフの皆さん(日本以上に大変だとは思いますが……)

 

それぞれが当然のように違うたくさんの人たちが、言語も世代も人種も越えて心を重ね、喜び、共感し、楽しんでいる。スポーツや音楽だからこそ生み出せる、晴れやかな光景です。歓声と歓喜、拍手と口笛、無数の手、笑顔が会場に弾けて、爆発的な盛り上がりが何度もピークを迎えました。

 

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その素晴らしい光景の中心にいたのは、他でもないPerfumeの3人で、強力な重低音とビートに乗せたダンスで瞬く間に熱狂を生み出していきます。これまでに何度も書いてきましたが、振付を含めたPerfumeダンスのノン・ヴァーバル(非言語的)な魅力にはずば抜けたものがあり、しかもそれが年々パワーアップして、いまが最も充実しているように見えます。セットや演出のクオリティも含めて、世界のどこに出しても誇らしく思えるであろう、見事なショウでした。

 

◇Two Hearts

最初のMCでは、これまでのワールドツアーでもやっている「今日はここに来られて嬉しいです!」「楽しむ準備はできていますか?」「楽しみましょう!」といった挨拶を英語で。レッスンの成果か、3人とも発音が滑らかになっていました。

そして一旦3人がセットの奥に消えてから、のっちが現れてのソロMC。何を話していたかはさほど覚えていませんが、それはかしゆかが再登場した瞬間の、女性を中心とした「キャァア゛ア゛アアアーーーーッッ!!!!!!」という凄まじいスクリームの衝撃ゆえにと解釈して下さい(どうも現地の人たちは、かしゆかの日本人形的な佇まいにエキゾティシズムを感じる模様)

そして「コスプレしているお客さんはいますかー?」と呼びかけるのっち。「Spending all my time」の衣装を着た白人女性がいましたが、かしゆか役とあ~ちゃん役しかいません。

のっち「You're aa-chan、You're kashiyuka……Where is nocchi?」

かしゆかスペンディンオールタイムノッチィーーッ!!

 

前回のNY公演のMCで著しく目立っていた黒人のサイモンさんは、今回もLED仕込みの純白の衣装で登場。3人組で来ていて、のっち役は若干ボブカット風の黒人女性、かしゆか役がサイモンさん。あ~ちゃん役は、立派な口ひげを蓄えた濃い顔の黒人男性

あ~ちゃん「えっ……Mustache?

のっち・かしゆか「Mustache!!」

会場の全員「lol

いやーここまでばっちりですよ! そして「もっと皆さんと話したい」ということで、お客さんの中から通訳してくれる人を選ぶことに。今回Perfumeが選んだのは、〈Pick Me Up!日本語OKです〉と書かれた黄色いボード(可愛らしい3人のイラスト入り!)を掲げた、アラバマ?フロリダ?忘れてしまいましたが、そこから来たという30代くらいの女性です。

◇No Surrender

あ~ちゃんの「昨日ステーキ屋さんに行って、そこで食べたTボーンステーキが凄く美味しかった!アツアツでね~」という話の〈凄く美味しい〉をSuper yummyと訳してくれて、メンバーも気に入って口々に「スーパーヤミー!」「スーパーヤミー!」と連呼。(私もライヴ直後に行ったレストランで、店員さんに「料理はどうだった?」と訊かれ「Super yummy!」と答えたら、「スーパーヤミー!? ワオ、それは最高だな!」と歓迎してくれました)

また、かしゆかが雑誌「Nylon」の話をしたり、「Perfume: A Gallery Expeience」の話や、そこで置かれていたダンスヒールのこと、Perfumeのヒールの高さは8.5cmで、インチでいうとどれくらいか、16インチ?(注:1インチは約2.5cm)などいろいろ話していましたが、実は通訳の女性は日本語がそこまで堪能ではなく、途中からスムーズな英訳がなされない部分もありました。

そのたびに3人は「落ち着いて! 大丈夫、一緒に伝えよう!」と励ましたり、英語交じりで話したりとサポート。あ~ちゃんは「でも、あんなボード掲げた以上はやってもらわにゃいけん! 私たちも日本から来てるから!」と冗談半分で厳しめの対応。しかし通訳の女性も結構なパニックに。察する限り、彼女の心理としては、

ライヴ前:ふう、やっとボード書けたわ! 3人は見てくれるかな。もし私が選ばれたらどうしよう! わくわく

        ↓

MC中:どうしよう!選ばれちゃった!! 嬉しい、がんばって翻訳しよう!

        ↓

MC中:あれ、これどうやって訳すればいいんだろう? すごく難しい! 3人はサポートしてくれるけど、どうしよう? いけない、また失敗しちゃった!

        ↓

MC後:ああ、うまく翻訳できなかったわ……

 

ライヴ中や、終演後に彼女がどう感じていたかはわかりませんが、この心理的アップダウンの尋常ではない高低を想像すると、泣けるものがありますね……

個人的には、上手な通訳がもちろんベストですが、この危うさもライヴならではですし、それを3人がフォローする様も観られました。通訳の彼女がライヴを楽しんで、その後もくよくよしないでいてくれたらいいですね(まあ、堂々とあのボードを掲げられる時点で、基本ハートの強い人なんだろうと思いますが)。

 

その後、P.T.A.のコーナーも。ここでは非常にタイムリーかつ異常に力の入ったネタがありましたね。何というサーヴィス精神……!!

 

◇Reason to believe

最後のMCであ~ちゃんは「マディソン・スクエア・ガーデンでライヴをしたい」と、その当地で改めて公言しました。英語で「私たちの夢が、皆さんの夢にもなってくれたらと思っています」。大歓声で応えるお客さんに、あ~ちゃんは「We believe in you」と。その言葉はきっと、会場にいた全員の胸に刻まれたでしょう。

そして「明日もライヴあるから……See you soon!!」とちゃっかり翌日の公演のプロモーションをして(※まだチケット売れ残ってるから)、ライヴは幕を閉じました。

 

◇I'm Going Down

とまあ素晴らしい公演だったのですが、これは書いておかないと。この日の午後、私はこんなツイートをしています。

しかしいざ公演が始まると、舞台上のスクリーンに映し出されるのは、最前列(補足:の一部)に陣取る日本人たち。私が会場前を通りがかったとき、あなた方は待機列にいなかったよ? 思い返せば、確かに持ち主のいない椅子がたくさんありました。そりゃお手洗いに行ったりもするだろうし、たまたま列を離れていただけかもしれません。でも、いくらなんでもあれだけの人数が、揃っていなくなるものかね……

 

彼らがどういう思いでUSツアーに臨んでいるかはわかりかねますが、Perfumeがなぜ海外でツアーをやるかというと、海外の人たちにもライヴを観てほしい、楽しんでほしいから、のはず。そもそもメンバーの立場で考えてみれば、最前列に陣取る日本人を見て「こんなに遠くまで来てくれて、一番前で見てくれて嬉しい!」なんて思うでしょうか……ってそういうあたりまえの発想がないから、こういう振る舞いができるんでしょうけどね。

それは愛情ではなく、幼稚さの表れです。もっとも彼らは、このブログなんてまず読んでいないでしょうけどね……笑

 

◇Dancing In The Dark

さて気分を切り替えて。私は会場の後方、端っこから場内の様子を見ていました。この位置からだとステージも見えるし、会場全体も見渡せます。お客さんはどんな感じで楽しんでいるのかな、どの曲が人気あるのかな、とちょくちょく視線を巡らせていました(それが前半の客層描写にもなっています)。

すると、私の目に留まったのが、2Fの指定席にいる白人の男性。白髪で黒縁のメガネ、グレーの『COSMIC EXPLORER』Tシャツとジーンズという、人種が違うだけで日本にも大量にいるであろう、〈温厚そうなおじさんタイプ〉のPerfumeファンです。

 

ライヴの序盤では特に彼を認識していませんでしたが、途中で自席から通路に出てきて、タコ踊りのようなダンスを披露(このへんから俄然注目し始めた)。メンバーの振付とは何一つシンクロしていないダンスのおじさんは徐々に通路を前進し、気付けば2F通路の最前に。とにかく楽しそうで、ライヴが終盤に差し掛かると、そのダンスもハードになっていきます。「○○○○○ ○○○○○○○」のときなどはもう完全にヒートアップし切って、もはやステージ上のPerfumeには完全に背中を向け、近くにいるお客さんを煽りまくるおじさん! なんかすげえ!! その勢いのまま、ラストの「○○○○○○ ○○○○」へ突入!! さあ、おじさんのダンスは!!?

 

 

えっ…………?

 

微動だにせず、スマホでステージを撮影している?

 

なぜいま?

よりによって最後の曲で?

今日いちばん熱いダンを披露して然るべき場面じゃないの……?

 

「この期に及んで」を英語で何と言うかわかりませんが、まさにそうとしか言いようのない思いでした。

 

とまあ、そんなおじさんを筆頭に、多種多様なPerfumeファンが思い思いにライヴを楽しむ光景こそ、USツアーの醍醐味だと感じました。

 

さて、USツアーも残すところ1公演です! Let's have fun!!!