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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第91回 OTONOKO2017

12月2日のOTONOKO、行って参りました。

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全体の感想は〈かなり良いダンス系フェスで、東京でもこのレベルのフェスはそうそうない〉というところ。国産ダンス・ミュージックのフェスとしてしっかり芯を食ったラインナップで、ヤスタカの故郷・金沢(つまり東名阪のような大都市ではない街)で、こういうエッジの立ったフェスが開催されることの意義は大きいでしょう。

会場には遠方から来たであろうPerfumeファン(外国人含む)の姿も多く見受けられましたが、せっかくの良いフェスだし、もっともっと現地の若者も気軽にたくさん来たらいいな、とも思いました。このフェスでダンス・ミュージックに触れたことをきっかけに、トラックメイクやDJ、ソングライティングなんかを始めるような、それこそ昔のヤスタカみたいに音楽を真剣に取り組む若者が増えて、後々活躍してくれたら本当に素晴らしいですよ。

 

チケット代の6,800円も、この規模のフェスとして良心的な価格です。1日のみの開催は2DAYS以上の公演と比べると費用対効果がかなり低いですから(例えば宣伝費や、舞台設営・機材運搬などのコストを考えると、2DAYSなら1日あたり50%で済みますが、1日開催だとそこにコストが100%乗ってきます)、利益が出ているかも正直謎です。動員自体は初回の6,500人から、2017年は8,620人とアップしたようで良かったですが……

それでも、地元の若者には思い切ってチケット代は半額にしたりして、それが地域文化の活性化に繋がれば、地域発のフェスとして理想的ですね。

あとはポーター・ロビンソンやマデオン、ゼッド、サージョン、アナマナグチ、アフロジャック、マックス・ツンドラといったヤスタカ~Perfumeファンの海外クリエイターを呼んだりとかもいいですねー!兼六園に連れて行って、金沢のお寿司なんかも食べさせれば一発ですよ!!(関係者じゃないから好き放題言ってます

 

◇HOME

OTONOKO、私はCAPSULEから観ました。

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巨大なディスプレイを多数配したステージのデザインは海外のEDMフェスっぽいし、CAPSULEのサウンドも〈EDMブーム以降〉のアップリフティングなモードでしたが、やはりヤスタカが凡百のEDMクリエイターと一線を画すのは、とにかくソングライティングの質の高さ、そして洗練されたサウンド・デザインの独自性&意外性で、これはたとえばマーティン・ギャリックスゼッドデッドマウスなんかにも決して負けていないと思うんですが……褒めすぎ?

 

CAPSULEは30分という短い持ち時間でしたが、セットリストは「Another World」「FLASH BACK」「Hero」といったキラー・チューンの目白押しで、ひたすらアッパーに押し切る祝祭感の強いステージ。「More! More! More!」「Jumper」といった少し前の曲は〈EDM以降〉のアレンジやビートにアップデートされていたような気がしましたが、何しろCAPSULEを観るのがよく考えたら初めてだったため、気のせいかもしれません。やっぱヤスタカ才能あるなー、いつもPerfumeに良い曲をありがとな!と思いながら観ていました(誰目線?)

 

CAPSULE以降も、ユニークな持ち味やサウンドを押し出すアクトが揃っていて非常に楽しかったです! とりわけ、初見だった岡崎体育は批評性の高さ、メタでファニーなアプローチ、意外なくらいの(失礼)音楽性の高さ、そしてあのヴィジュアルならではの説得力など、どこか初期電気グルーヴにも通じる佇まいがクールかつ爆笑ものでした。

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banvoxはEDM系トラップを含むベース・ミュージック、ハウス、ブレイクビーツなど、多様なビート解釈を柔軟に組み合わせたミックスが、センス・スキル共に極めて巧みで、次々とこちらの予想を裏切ってくる意外性はもっと長く聴いていたいと思わせるもの。

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彼のプレイは何度か観ていますが、ますます進化していると思うし、いやはや脱帽です!

 

そしてbanvoxのDJプレイの終盤、引き継ぎのためにステージに現れたのはtofubeatsです。

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Perfumeの握手会に行ってアイドルに開眼した男、そして活動初期の高校生時代にはPerfume曲を使った(イリーガルかもしれない)マッシュアップ「The endless polyrhythm lovers」某動画投稿サイトにアップして注目を浴びるなど、Perfumeが人生に大きな影響を及ぼした、それこそ筋金入りのPerfumeファンです。

彼がこの日の、Perfumeの一つ前というものすごい出演順に気負っていないはずがない!と思ったのですが、いつもどおりの飄々とした語りで曲を紹介し、お客さんを煽ったり、時折チューン・ヴォイスで自分の歌を重ねたりしながら、「POSITIVE」「Too Many Girls」「ディスコの神様」「Don't Stop The Music」など、人気曲を立て続けにプレイ。良質なポップ・ミュージックのエッセンスと、ダンス・ミュージックの親しみやすさを掛け合わせたような楽曲に、会場内はじんわり熱く、ハッピーな空気で満たされます。

名曲「朝が来るまで終わることの無いダンスを」から「水星」で締める構成を観て、Perfumeファン代表だと思っていたtofubeatsが、Perfumeの直前にここまで堂々たるステージを見せてくれるとは……と勝手に感無量でした。「この後はPerfumeと中田さんです、最後まで楽しんで下さい!」的なことを言い残して、ステージを去るtofubeats。その姿はPerfumeファン代表に留まらず、非常に優れたクリエイターのそれでした。

 

◇The Opening

しばしの転換時間を経て(場内にいる8,602人で、大型ディスプレイに流れる地元のラーメン屋さんのCMを何度も観たりしました)ディスプレイには〈Next Artist〉、そしてPerfumeのロゴが表示されます。この日いちばんともいえる大歓声、お客さんが一気に前方に詰めかけるなか、突如鳴り響く「GLITTER」のイントロ! 2017年はSONICMANIAPerfume FES!!などでもこの曲が披露されましたが、このオープニング演出は『JPN』ツアーの沖縄公演以来ではないでしょうか。私はトップクラスに好きな曲なので歓喜です!!!

グリーンのレーザー光線が入り乱れる中、鮮やかな赤い衣装に身を包んだPerfumeの3人が登場。「GLITTER」は一時期よく使われていた、シングル・ヴァージョンとAlbum-mixが混ざったような印象でした。OTONOKOは(場所にもよりますが)音響もなかなか良かったですし、もう最高でしたね!そして立て続けにFLASH。いまやライヴの鉄板曲で、SONICMANIAに続いてPerfumeのハイパー・ダンスモード炸裂ですが、この2曲でひとまずMCに。 

◇MC

以下、大体の記憶です。

あ~ちゃん「中田さんとライヴで一緒になるのは初めてです。14歳からPerfumeをやっていて、いま28,29歳。中田さんもよう飽きんと続けてくれた飽きることもある人だと思うけど、そのことがありがたいです。中田さんとは去年くらいから一緒にTVに出たりして、今年はOTONOKOに呼んでいただきました」

あ「みんな重低音ずっと聴いてて、身体おかしくなってない?ならない?OTONOKOの音好きな皆さんはさすが、うちらも精進します」

 

この日のグループ分けは〈な・か・た〉になりました。

あ「みんなで神の名前を叫んで、最高の時間にしたいと思います!」

神の名前を叫ぶと、神々しさだかご利益だかを感じる、みたいな話もあったような……

 

そしてまだ2曲しかやってないけど、早くもP.T.A.のコーナー」へ。この日のPerfumeの持ち時間は40分で、ここまでも結構な時間を使っていたように思いますが、続いての「FAKE IT」で一気に場内大爆発!これはこの日いちばんの熱狂状態だったかもしれません。

続いてちょっと意外なチョコレイト・ディスコで、アッパーなダンスモードからシフトダウン。この曲が中盤に入ることは珍しく、その場では少し不思議に感じましたが、続けてあ~ちゃんの「紅白歌合戦、今年も出場することができて本当に嬉しいです。私たちの今年は、この曲です」というMCから、ゆったりとしたイントロの「TOKYO GIRL」に入ったので、いま思えばそこへの(モードやテンポの)調整にもなっていたかもしれませんね。

 

「TOKYO GIRL」が終わると、「次が最後の曲です。新曲で、3人でやるのはこれが初めてです。FUSION!」というあ~ちゃんのMCから最新曲「FUSION」へ。3人が舞台上で正三角形のフォーメーションを取り、イントロが流れると場内前方で大きな歓声が。何だろう?と思っていると、ステージの上段がライトで照らされ、なんとPerfumeの背後にDJブースに立つヤスタカの姿が!瞬時に驚きが広がり、大歓声が沸き上がります。

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Perfumeとヤスタカのステージ上での共演が、2003年のコラボレーション開始から14年を経て、初めて実現した瞬間でした。

 

◇FUSION

この「FUSION」、やや和風のメロディーを持つインスト主体の曲で、キックの4つ打ちからも脱却して、最近のPerfumeには少ないテクノに仕上げられています。

Perfumeはこれがライヴでの初披露ということで、集中力を高めて全身全霊でパフォーマンスしていたように見えましたが、ヤスタカは最初の「Yeah」で軽く人差し指を掲げたり、「Yeah, Yeah, Yeah」の連呼ではハンズアップで客を煽ったり、音域のミックスを少し変えたり(していたような気がしましたが勘違いかもまあ言うなれば平常運転に見えましたね。

 

それにしても、まさか両者の初共演が「FUSION」になるとは……踊り慣れた「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」でコラボしても別に良いはずで、それを初披露の最新曲でやることは、もっともハードルが高いでしょう

それにあえてトライし、(それこそフュージョンして)見事にやり切って見せた4人。常に新しいことに挑戦し続けて、アイドルグループとして前人未踏の成果を成し遂げてきたPerfumeとヤスタカに、これ以上相応しいコラボレーションもなかっただろうと思います。 

◇KANAZAWA

「FUSION」が終わると、Perfume3人は弾けるような笑顔で、DJブースのヤスタカを盛り立てるように手を振り、舞台袖に消えていきます。そのままフェスのトリを務めるヤスタカは、何事もなかったかのように自分の曲「Source of Light」NHK「NEWS CHECK11」のオープニングテーマ)を流します。

 

えっ、どちらもこの共演について何も言わないんだ!!

Perfumeファンからすると(そしておそらくPerfumeメンバーや関係者にとっても)ヤスタカとの共演は歴史的な瞬間ですが、そのパフォーマンス中に「DJ、中田ヤスタカーー!!」みたいに特別にそれを煽ることも、そもそも歌詞以外の言葉が交わされることもなく、あくまでもサラッと披露された印象でした。

 

ただ、初披露の最新曲を、この大一番で見事に決めてみせるPerfumeの頼もしさと成長、そして4人でパフォーマンスする姿に、ここまでのすべてが込められているかのようで、むしろ言葉は野暮だったかもしれません。Perfumeとヤスタカがこれほどスマートかつプロフェッショナルな音楽的対話を見せてくれる日が来るとは……

そしてそれがヤスタカの故郷であり、恩人・ライムスター宇多丸さんとの対バンも行った金沢という街であったことに、何か巡り合わせも感じました。

 

ヤスタカはその後も「NANIMONO」やゼッド「Stay」のリミックスなど、自分が関わった曲を活き活きとプレイしていましたが、Perfume「If you wanna」を流すと、ステージにPerfumeが再登場!これまた「FUSION」に続いて最近の曲ですね。新しい作品をベースにコラボする、というモードが徹底されています。

 

大勢のお客さんで埋まったアリーナ会場で、

Perfume」のロゴがスクリーンに大写しになり、

中田ヤスタカのDJで踊るPerfume3人。

うーん、こんな未来が待っていたとは……私がPerfumeを知った頃には正直予想だにしていませんでした。

 

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この日、Perfumeとヤスタカは同じステージの上で音楽を共有し、そして翌日からはまたそれぞれ違うステージに立つのでしょう。両者の軌跡が、またステージ上で重なることもあるのかもしれませんが、それはそれとして。

ここからまた、Perfumeとヤスタカがお互いに良い影響を与え合いながら、末永く活躍してくれることを願ってやみません。 

 

 

 

 

……あ、そういえば冬の金沢の魚介類はミラクルに美味しかったので、最後に貼っておきますね!!!!!(ぶちこわし)

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第90回 Perfume FES!! Perfume×星野源

2017年9月13日、Perfume FES!! 秋の陣の第3弾、星野源さんとの対バンライヴが開催されました。私は行く予定が一切なかったのですが、チケットが余ったという友人の誘いをありがたく受けて急遽大阪に飛びました。

  

開演ギリギリに会場入り。スガシカオさんの日と比べると若い世代が相当多く、女性もかなり多かったです。Perfume FES!!のタオルなど、グッズを持っている人も多い。そして平日にも関わらず城ホールはぎっしりで、空席もほとんど見つけられないような状況。

 

先攻は星野源さん。定刻を過ぎると、ステージ上にバンドメンバーが三々五々登場して、軽く音出しを始めます。ギター、ベース、ドラムスにキーボードは2人、ホーン隊3人、そして驚いたことにストリングスも4人含むフル・バンド。いまどきのライヴでストリングスはキーボードで代替したり、打ち込みを流したりするのが通例だと思いますが、まさか生で弦楽四重奏を聴かせてくれるとは……! 何というか、星野源さんの破竹の勢いを感じるしかないリッチな編成です。

 

場内が暗転すると演奏が始まり、ステージの下手(客席から向かって左)から「こんばんはー!星野源でーす!」と、黒いジャケット姿のどうみても普通の兄ちゃんスターが登場。いきなり場内は物凄い盛り上がりです。

源さんの一挙手一投足、一言一言に大きなリアクションを返すお客さん。たちまち数曲を演奏し終えてMCに入ります。

Perfume FES!!、以前から〈出てね〉と誘ってもらっていて、ようやく実現しました。ずっとツアーをしていて、3日前に終わったばかりですが、ここ大阪城ホールでもライヴしまして、好きな会場です。初めてPerfumeと会ったのもここで、それは物凄く変わったイベントだったんですが、来てた人もいるかな(はーい!と反応してるお客さんも結構いました)

そのときは〈ほしゆか〉として登場して、miwaちゃんとかしゆかちゃんとシシド・カフカ、3人ともにほんのかすかに似ていたんですけど。当時はまだアミューズ所属でもなかったので、そこで初めてご挨拶して。いまでは事務所の後輩としてがんばっています」

 

余談ですが、私は星野さんが在籍していたSAKEROCKのファースト・アルバム(2005年)に関する原稿を(短いものですが)リリース当時に書いたりしていたので、星野さんの音楽には相当早くから触れていたのですが、そこからはほぼまともな接点がないままこの日に至ったため、観るものすべてが初めてでした。

 

◇STUFF

ライヴは時折MCを挟みながら進んでいくのですが、星野源バンド、これがまためちゃくちゃ上手い!と思ったらドラムが河村カースケさん、ベースが伊賀航さん、ギターがペトロールズにして東京事変長岡亮介さんって、このトップクラスのプレイヤーを普通に集めている(ように見える)あたりが、星野源さんの破竹の勢いしか感じないところですね。

 

キーボードのひとりが元PANIC SMILE石橋英子さんなのも驚きました。石橋さんは普段アヴァンギャルドだったり実験的な音楽をやられているとばかり思っていたので、まさかこんなにポップなサウンドとは……「SUN」の冒頭でなんか「ヴーーッ!!」と極太のノイズが鳴っていたので、あれは石橋さんのアドリブかと思ったら後でそういう仕様だと知りました。

 

バンド全体としてはスティーヴィー・ワンダーをはじめとする70年代ソウルや山下達郎さん、細野晴臣さんなんかの影響が濃い、ライトなソウル・ポップという印象ですが、とにかく達人揃いのメンバーが盤石のバンド・アンサンブルを聴かせて、しかし我を出すのではなくヴォーカルを引き立てることに専念しているという、非常に贅沢かつプロフェッショナルなステージでした。

 

その主役たる星野源さんのヴォーカルは、まあ決して超絶技巧であるとか、声域が広いとかの(一般的に歌が上手いと評されるタイプの)歌手ではなく、声の特徴やキャラクターがあのメロディーや作風にぴったり合っている、ということなのでしょう。ファルセット(裏声)を多用するところにもソウル・ミュージックの影響が窺えました。

 

◇HEAT WAVE

ライヴが進むと、長袖ジャケットを着た源さんはかなり暑いらしく「皆さん暑くないですか? (暑いー、という観客の声に)ハアハア……いっしょだね!

熱中症にならないよう、水分取って下さいね。僕はこの間、家でなりました。クーラーの修理で業者を予約したら〈1週間後で〉と言われたので、その間は仕方なく扇風機だけで過ごしていたら熱中症になって、病院に行ったら〈自宅での熱中症はお金のない若者か老人しかならないよ〉と言われました」と、本当に気さくです。

 

それと源さんはスポンサーや関係者への配慮が超丁寧です。タイアップ曲をやる前に「ウコンの力、飲んでる?」と問いかけたり、「良かったらサッポロ黒ラベルも飲んで下さい」「次にやる曲は過保護のカホコというドラマの主題歌で」など、この気遣いは石原プロを彷彿とさせるな、と思いました。

石原プロのドラマは、劇中にスポンサーの商品がガンガン出てきたり、犯人が脅迫電話をかけている背後でタイアップ企業のCMソングが流れて、それを聞いた刑事が犯人の居場所のヒントを掴んだりします

 

「2年くらい前に出した『Yellow Dancer』というアルバムの1曲目の、〈時よ〉という曲をやります。いつもはELEVENPLAYのダンサーさんといっしょにやるんですが、今日はいないので、ひとりでがんばります」という前振りから「時よ」。私でも聴いたことがあるくらいの、とても良く出来た曲ですが、曲の途中でステージ下手から、白い襟の赤いワンピースを着た女性が2人出てきます。

 

あれ変だな?ELEVENPLAYはいないんじゃ……あっ、Perfume!!!?

あ~ちゃんとかしゆかです。上手からはのっちも登場、3人で「時よ」のダンスを踊ります。特にのっちは楽しくてたまらない様子が顔に表れて、もうニッコニコ。途中から源さんも合流して、4人でがっちりシンクロしたダンスを決めると、すでに場内のテンションは最高潮です!

Perfumeは赤いワンピースに負けないよう、真っ赤なリップなどメイクもかなりはっきりめだったように見えました。手袋をしてダンスするPerfumeというのも初めて観ましたね。

 

◇Love

「時よ」が終わっても、Perfumeはステージに残っています。

ということは……ということは……!!!!

 

源さんが「皆さんいっしょに踊って下さい! 去年めちゃくちゃ歌った曲です!」と声を張り上げるやいなや、流れ出す「恋」のイントロ!!! 踊り始めるPerfume!!! すでに観客のヴォルテージと大歓声は城ホールの天井をぶち破らんばかりで、私も本来はこの曲の演奏もじっくり聴きたかったのですが、もはやそれどころではありません。

スター4人が発する、瑞々しい輝きは目も眩みそうなくらい。場内は狂喜乱舞でお客さんも踊りまくり、ポップ・ミュージックのダイナミズムや興奮の極致といった様相です。そうですね、いま瞬間最大風速的な流行りの言葉で言うと、音楽の魔法がありましたね。

 

この曲のMIKIKO先生による振付は、普段のPerfumeのモードから考えるとずいぶん可愛らしくてポップですが、振付があの素晴らしいソウルフルなバンド・サウンドと合わさり、そこでPerfumeがダンスすることで、こんなPerfume観たことない!という新たな一面を引き出しているようにも見えました。

ラストは源さんも加わって4人での恋ダンス!! 尋常ではない歓声と熱狂的な盛り上がりで、場内は客席で何人か失神していてもおかしくないレベルの興奮状態。源さんはキレの良さやリズム感など、ダンサーとしても相当良い線行っていましたね。

 

「恋」が終わるとMCタイム。

改めてPerfumeと対峙した源さんは「可愛い……」と床に崩れ落ちます。

あ「(衣装は)源さんの好きそうな感じで

源「好きです

あ「今日のこのために作った衣装なんです」

源「Perfume凄い、全然覚える時間もなかったのに完璧に踊れてた。俺も客席から観たかった! ステージで踊ってるから見られない!!

あ「一生懸命覚えたのに、お客さんみんな(普通に)踊ってた……」

 

源「Perfumeと初めて会ったのが大阪城ホールで……」

Perfume3人「(苦笑と困惑)」

源「あれ、これあまり触れない方がいい思い出だった? (かしゆかの様子をみて)怯えてる?

か「怯えてないです笑」

 

源「水飲まないと、ちょっと3人で話していて下さい

あ「でもうちらももうハケるから」

そして源さんにPerfumeでしたー!」と送り出してもらい、のっちは颯爽と帰ろうとしましたが先にいたかしゆかがお辞儀をしていたので、急いでお辞儀していましたね。

 

源「可愛かった……(水を飲んで)なんでいま俺ひとりなんだろう……」

客「(笑)」

源「………………(しばし放心状態)」

客「(爆笑)

 

 

ライヴの最後には「Perfumeをずっと追ってきました。いつも観て、本当にカッコいい、こんな人たちは他にいないと思った。Perfume FES!!は数少ない機会で、出られる人も限られているなか、そこで呼んでもらえて嬉しいです」と真摯な御礼を述べて、「最後まで楽しんで下さい! 星野源でした! 次は、Perfumeでーす!!!

 

いまの圧倒的な人気にも納得の、問答無用に楽しいハッピーなステージでした。いやー時代の寵児って凄い!

 

◇THE TIME

25分くらいと思われる転換時間を経て、場内が暗転。今回のPerfume FES!!での入場スタイルは、重厚なSEに合わせて、碁盤の目のような並びで吊られたライトからの光線マスゲームみたいに規則的に動くという趣向。床下に設置された機構(入場時にしか使わない、贅沢)から3人がスーッとステージに上がってきます。3人が腕を動かすと、それとシンクロして照明も動くなど、光とダンスするような趣向で、この演出は4月に開催されたRhizomatiks Research x ELEVENPLAY Dance Installation at Gallery AaMoから繋がっていると思われます。

 

なお私が観ていた位置は音響もとても良く、〈衣服がビリビリ振動する〉を越えて風圧を感じるレベルの重低音の出力がありながらもクリアな出音で、反響による遅延(ビートが遅れて聞こえてくる)もなかったです。PAさんに感謝です……

 

1曲目はFLASH」! そして「GLITTER」から「GAME」と、立て続けに強力なダンス・チューンを連打(「GAME」の前か後に衣装の早替えもあったような)。そして続く「Everyday」で空気を変えます。この「Everyday」、可愛らしい曲調なのに重低音や残響音の出し方が常軌を逸していてかなり好きなのですが、ライヴの大音量で聴くことで、これまで気づかなかったような音の存在や配置、響きを堪能できました。

 

4曲を終えると最初のMCタイム。

あ~ちゃん「最近はライヴの絶対数が多くて、人気のある会場はなかなか取れない。今回平日になってしまってごめんなさい! でも、皆さんは来てくれました。貴重な有給、大事な時に取っておきたかった有給で来てくれた以上、満足してもらえるよういろいろ盛り込みました」

あ「盛り上がる準備できてるー? こっちに乗っかってくれるー? 頼むよ、良いところ見せたいんだ! 今日はアミューズの偉い人たくさん来てるから大阪城ホールは大きいから、リハのときはここが埋まるのかな?と思いました」

のっち「Perfumeとして、星野源さんファンとしても念願の対バンが実現しました、そして女性スタッフがウッハウハ

かしゆか「自分たちの出番前に他人のステージに出るのが、あんなに緊張するとは、足が震えたけど、ELEVENPLAYさんの代わりなので、スッと見えるようにがんばりました。今日、グッズ着用率が高い! みんなグリーンの(フェス)タオルしてくれてる! 優秀!

そしてかしゆかが「今日、初めてPerfumeを観るって人ー!!」と訪ねると、かなり多い! ざっとですが、15%~20%くらいは手を挙げていたように見えました。星野源さんファンでしょうか。

か「星野源さん、〈Family Song〉という新曲を発表されたそうで」

の「プロモーションみたい!」

か「なんて、知ってるわ! 毎朝聴いてるわ!

あ「今回、〈Family Song〉にちなんで〈Family Ring〉というグッズを作りました。スマホに着けるリング。めちゃ堅く作ってます。ニャンキホーテとかで買うものよりずっと堅い。今日しか買えないので」

の「源さんもお気に入り……かもしれない!

あ「お気に入りとは言わん、正直者じゃ」

の「源さんとお揃い……かもしれない!

 

よってこの日のチーム分け……じゃなくて秘密の合い言葉は〈ファミ〉〈リー〉〈リング〉で、「源さんの新曲はー!?」と聞かれたら〈Family Song!!〉と答えるという約束になりました。

 

そして話題は「恋」ダンスにも。

あ「他の人の曲でも、MIKIKO先生の曲を踊れたことの達成感が凄いです。〈恋〉はスタジオに入って、ELEVENPLAYさんに教えてもらって40分くらいでフリを入れたら、頭がパーン!ってなった。ついていけないかも……と思ったけど、1日寝て起きたら踊れて、Perfumeって思った」

 

◇FOREIGNER

あ「スタッフさんから聞いたんですが、今日は海外からも来られているそうです。パラグアイアイルランド、イギリス、アメリカ、台湾、韓国……しかもこのチケットが激戦の日に!」

日本の人でも簡単にはチケットが取れなかったのに、純粋に凄い気合いだなと思いました。しかし来場者の国籍をどう調べたのかも興味ありますね。

 

今回も、事前に源さんにPerfumeで好きな曲」を尋ねてメドレーを作ってきたそうです。いろいろなリクエストがあった中から選ばれたのは「マカロニ」「ナチュラルに恋して」「Magic of Love」。他にインディーズ時代の曲もあったらしいですが、あ~ちゃん曰く「ああ、源さん忙しいしふざけているんだ」と思って流したそうです。

 

なお「マカロニ」は、名古屋でスガシカオさんもレキシも採り上げているので3公演連続ですし、「ナチュラルに恋して」はライムスターとの対バンのコラボでも大々的にフィーチャーされていました。アーティストの好むPerfumeの曲が、ソウル~ファンク路線の曲に集まっているのは注目のポイントと思います(その割にそういう曲が非常に少ないのですが……)

 

「マカロニ」は2コーラスくらいで〈♪最後の時が~〉に繋ぐショート版、「ナチュラルに恋して」はほぼフル・コーラス? そして「Magic of Love」はシングル・ヴァージョンで、アルバム版の長いアウトロがなくスパッと終わるのもメドレーの締めには最適でした。

あ「可愛い曲ばかりで恥ずかしくなるくらい! 愛とか恋の曲ばかりで、源さんの〈女性への理想〉があるのかなー。そうそう、源さんのライヴのELEVENPLAYの衣装は、本人じゃなくて源さんがチェックして、直し(修正の指示)も源さんがやっとるんだって」

客「(驚きの声)」

か「(笑顔で)そう考えると、次に観る時の印象が変わるよね!

その後、あ~ちゃんの「理想を具現化していて凄いよね」というフォロー(?)なども入っておりました。

 

メドレーに続いて新曲「If you wanna」。名古屋では〈フューチャー・ベイス〉と発音していた(ように聞こえた)あ~ちゃんですが、ここでは〈フューチャー・ベース〉と自然な発音でしたね。

 

P.T.A.のコーナー」から、なんと「FAKE IT」! さらにピークを更新するような会場の熱狂です。名古屋(スガさんの日)はこの位置に「コンピューターシティ」だったのですが、かなり変わっています。で、同じく名古屋ではこの次に「チョコレイト・ディスコ」だったんですが……

 

「FAKE IT」の熱が充満する中、静まり返る会場。Perfumeメンバーも動かず、あ~ちゃんの息づかいだけが聞こえてきます……これは?と思うやいなや、「せーの!」と掲げられる手のひら。「MY COLOR」、久々!!!

Perfumeファンも源さんファンも、みんなそれぞれ踊り、歌い、楽しんでいます。意外な選曲でしたが、いかにもこの日に相応しい、美しいフィナーレを迎えました。(あ、本当のラスト曲は「TOKYO GIRL」でした)

 

ちなみにPerfumeがステージを降りた時点で21:30を回っており、「今日の終演は22時過ぎるな!」と確信いたしました。

 

◇THE ORIGINALS

しばしの転換時間を経て、明るくなったステージにはバンドセットではなく、スタンドマイク2本にモニター・スピーカー、アコースティック・ギターが1本セットされています。

そこでPerfume3人がフェスTシャツで登場。改めてこの日の主賓である源さんを呼び込むことになりました。

あ「じゃあせーので〈源さーん〉って呼ぼうか。せーの」

全員「源さーん!

 

すると「ちょっと待ってよー」とか言いながら女装した不審者ほしゆかが登場! Perfume FES!!の白Tシャツにシルバーのロングスカート、ピンクの靴下に白いスニーカーといういで立ちで「星野源はもう帰ったわ」と言い放つ。

ほしゆか「ひさしぶりね

「何年ぶり?」「前もここで会ったわね」など話しながら、Perfume3人にどんどんにじりよるほしゆか。

あ「めっちゃ近くに来るわね

ほしゆか「グイグイ行くわ」

か「そのスカートよくあったわね

 

ほしゆか曰く「今日は私もPerfumeだから!」とのことで、いつもの「Perfumeです!」の挨拶を4人でやることに。しかしほしゆかは「ちょっと事前に手のサインだけ確認していいかしら?」と何度か試すもののうまく行きません。どうやら、ついついピースサインをした指が開きがちのようです。

「ピースが年齢を感じる」「いまはこうだからね(ピースサインで指をくっつけながら)」と語るPerfumeメンバー。

ほしゆか「やめて! 年齢の話はやめて!

 

そして4人揃って「Perfumeです!」、一応成功しました。

ほしゆか「良かった、今日はこれをやりに来たわ

 

その後、ほしゆかは「暑い! 頭が暑い! あと背中も暑いわ!」と苦しんでいましたが、髪に覆われているからですね。

か「あたしもいつも首から背中まで保温されています」

ほしゆか「あなた大変ね!」

 

ほしゆか「さっきのメドレー素敵だったわ……素敵だった。でもこれの準備があったから全部は観られなかったんだけど、素敵だったわ」

途中、女言葉がなくなったり、星野源です」と名乗ったりと、割とキャラがブレたまま進んでいくほしゆかでした。

 

◇THE MUSIC

あ「これから一緒に歌うんだけど……」

しかし観客はすでにステージ上のギターも見ていますし、織り込み済みの展開のためか、ほぼ無反応……

 

あ「ここは湧くところです!

客「(湧く)

ほしゆか「ここで反応なかったら、私何しに来たのかしら?ってなるわ」

 

そしてほしゆか「ひとりでやるんじゃなくて、妹(と言っていたような?)呼んでも良い?」と断ってから舞台袖に声を掛けます。すると、よりによって似たようなシルバーのスカートを着用したながゆか(ペトロールズ長岡さん)も登場。ほしゆか曰く「ながゆかは男性ホルモン多めで、ヒゲ生えてるのよ」。

 

あとはほしゆかが前屈みになって猛然と髪を洗うような仕草をしたり、ながゆかの髪がギターを弾くときに邪魔そうだったのであ~ちゃんが率先して後ろに流したりと、そんなこんなで歌う体勢が整いました。

あ「これは事前に音源が送られてきて、すごく熱いアレンジで」

ほしゆか「この曲を聴いたとき、このアレンジでやりたいと思って。新曲の〈If you wanna〉を、ギター2本でやります

 

おお、最新曲であり、特にギターの生演奏だとどうなるのか想像が付かない選曲ですね。「これはもうここでしか聴けないから!」というような煽りを経て演奏が始まると、ギター2本でコード進行は大体ざっくりと再現しながらダウンピッキングで刻み、サビでのシンコペートしたシンセとキックは、アタックの強いリフで表現する感じです。Perfume3人も生歌で健闘。キーは高めながら、堂々と歌い上げています。

いやいや、意外性のある挑戦でいいじゃないですか……と思っていたら途中の間奏からほしゆか・ながゆかがヘッドバンギングしながらメタリカみたいなヘヴィーなリフを叩きつけてきます。髪を振り乱しながら一心不乱にギターを弾く女装姿の男性2人をみんなで見届けました。

 

演奏が終わると、Perfumeは「やったー!」「カッコよかったー!」などと喜びますが、なぜかほしゆかは「ハードコアだったわ……」と達成感を漂わせていました。

 

コラボレーションはまだ終わりません。

ほしゆか「もう1曲やりたいんだけど、私Perfumeですごく好きな曲があって」

あ「わっ!……

ほしゆか「でもこの曲の名前を出すと、3人が凄く渋い顔するの」

あ「でもこれも音源を送ってもらって、カッコいいアレンジだったから、これならいいかな?って」

ほしゆか「〈スウィートドーナッツ〉って曲だけど(大歓声を受けて)……ほらみんな喜んでる!! みんなのためになってる!! この曲の〈♪疑問は増える〉ってところが好きなの」

なぜそこ!?

かしゆかは「この曲久しぶりに聴いたら、どこの子供が歌ってるんだろう?って思った。しゃべるみたいに歌ってたもん」

あ~ちゃん「あれが商品として販売されてたのが凄いよね」

ほしゆか「最後がこの曲だから、みんなこの曲を心に持って帰るのよ!」

 

しかしこのあたり、MCの進行ではPerfumeも源さんも、お互いの出方を見るような空気に……と思ったらほしゆかが「進行はどうしようかしら? 打ち合わせしてないからドキドキするわ」と。結局「あなたたち(Perfume)に任せるわ」ということになり、かしゆかの「生まれ変わったこの曲を聴いてください、スウィートドーナッツ!」という紹介から演奏がスタート。

 

イントロ、キーボードの賑やかなフレーズはながゆかが弾き、全体のコード進行はほしゆかが担当。かしゆかが〈♪最後の一言すっと冷えて~〉と歌い出すと、〈ゆかちゃーん〉のコールがどこか申し訳なさそうにあちこちから聞こえてきます。のっちは久々に聞いたであろうコールについ吹き出したり。でもPerfumeは歌いながらもそれなりにフリをやっていたり、コールも徐々に本気になってきたりと、なかなかの盛り上がりを見せました。

コーラスでほしゆか・ながゆかも歌っていたような気もするのですが、さすがに詳細は思い出せません。

 

そしてかしゆかが歌う〈疑問は増える♪〉の直前、ほしゆかのギターを弾く手が止まります。そしてすぐ近くにいたかしゆか、なんとほしゆかとしっかり目を合わせながら〈疑問は増える♪〉と可愛らしく歌う! この待遇で気絶・動転などしないあたりがさすが時代を牽引するスター・星野源さんです!!

 

演奏を終えたほしゆか、拍手喝采を受けながらステージから去ろうとしますが、一瞬立ち止まり、ながゆかの手を取るとそのまま手を繋いで舞台袖へと消えていきました。Perfumeは「さっきの見た? 手繋いでたよ!!」と話題騒然です。

 

ラストの挨拶。

か「盛りだくさんすぎて頭がいっぱいでした笑。ずっと踊ってほしいと言われていた〈恋〉を、源さん本人と、こんな正式な場所で一緒に踊れて良かった。コラボの2曲も、源さんじゃなかったらできなかった曲です」

の「凄く贅沢な時間で(言ってたののっちじゃなかったかも?)音楽って楽しいなぁ、と改めて思いました」

あ「恋、実は源さんから〈一緒に踊るのはどうかい?〉と提案してもらいました。あの人柄が人を惹きつけるんだと思います。今回はチケットがものすごい売れ行きで、先行販売で全部出てしまって、観てほしかった人もいたんだけど友達全然呼べなかった」

「1日じゃ足りない、2DAYSやればよかった。またやったらみんな来てくれる? 源さんにお願いしてみようかな……名残惜しいですが、会場の時間もあるので。それでは、Perfumeでしたー!

 

終わった後時計を見たら、22時20分近かったですよ!

でも、参加した人は大満足であろう、3時間超のコンサートでした。次回の対バンも楽しみです!(2回目がある前提)

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2017.9.13 Perfume SET LIST

1. FLASH

2. GLITTER

3. GAME

4. Everyday

 MC

5. 星野源さんに捧げるメドレー(マカロニ~ナチュラルに恋して~Magic of Love)

6. If you wanna

7. P.T.A.のコーナー

8. FAKE IT

9. MY COLOR

10. TOKYO GIRL

En1. If you wanna feat. ほしゆか・ながゆか

En2. スウィートドーナッツ feat. ほしゆか・ながゆか

第90回 Perfume FES!! Perfume×スガシカオ

2017年9月6日、愛知県体育館にてPerfume FES!! 秋の陣(命名:あ~ちゃんのっち)が開催されました(ご指摘いただき修正しました)。初めて行った会場でしたが、コンサート利用だと7000人くらいのキャパシティと見ました。

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↑これがカメラの性能の限界でした。思いっきり光が飛んでいてすみません

 

この日の対バン相手はスガシカオさん!

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スガさんはおそらく2008年頃からPerfumeファンを公言し、特に「マカロニ」が大好きらしいと伺っていました。また、これまでのPerfume FES!!でもライムスターや東京スカパラダイスオーケストラといったソウル~ファンク、ジャズなどを通過したアクトとの共演はずば抜けて良かったこともあり、個人的にスガさんとの対バンは〈秋の陣〉でもっとも観たい顔合わせでした。

 

ほぼオンタイムでライヴはスタート。先攻はスガさんです。「Perfume FES!!、楽しみにしてきました。初めて俺のライヴを見る人も多いと思うので、今日は他の人に提供した曲なんかも含めて大サービスで行きます」とのMC通り、「午後のパレード」で始まりKAT-TUNに提供した「Real Face」、「19才」などスガシカオ弱者な私でも知っている曲ばかり。サウンドのテクスチャーはロックだし、「Real Face」ではヘヴィー・ロック的な激しさも垣間見せていましたが、スガさんバンドのエッセンスはソウル~ファンク直系のグルーヴ感にあり、このサウンドなら3時間くらいぶっ通しで聴いても楽しめるなーと思ってニヤニヤしながら聴いておりました。

 

◇愛について

途中でMCタイム。Perfumeについては、ファン歴の長さと対照的に「みんなPerfume好き? 俺も好きです」とサラッと流します。石川(2014年)で〈Perfumeと俺の文脈〉について延々と語っていた宇多丸さんの姿をなぜか思い出しました。

しかしPerfume FES!!出演の経緯については「テレビ局のスタジオでPerfumeと一緒になったときに、本人たちから直接〈出ていただけませんか〉と依頼されて。これはもうマネージャーとか関係ない!と思って〈出ます!〉と即答しました」と、やはり隠し切れないほど強い思い入れを炸裂させるスガさんでした。

 

「俺はひとりだけどPerfumeは3人で、3人いると誰に向かって話せばいいかわからなくなる。ずっとひとりと話していると、〈この人、気があるんじゃない?〉って思われそうだし、3人にまんべんなく話しかけると安いホストみたいになる」と。「そういう場合、男としてはいちばんブスに話しかけるのがいいと思うんだけど、でも3人とも可愛いからさー!」。途中に毒っ気もありつつ、あくまでも〈いちばん言いたかった最後の部分への繋ぎ〉ということでノープロブレムです(?)

 

 

とある曲を歌う前にはアコースティック・ギターに持ち替えて、スガさんが話し始めます。「この曲を書いたのはいつ頃だったかな……もう覚えていないけど、SMAPには3~4曲提供しています。(リンゴ・ジュース!と叫んだ客に)そうそう笑 ……彼らが解散したときは凄くショックだった。もう〈夜空ノムコウ〉はやらないって言ったりしたし、いまもそのショックが癒えたわけではないんだけど…………まあ今日は歌おうかなと思います。

あ、みんなこの曲知ってるよね!? 全員知ってる前提で話しちゃったけど笑 歌い出しは弾き語りっぽくて静かなので、よかったらみんなも一緒に歌って下さい」。そしたらまあみんな歌える歌える! まぎれもない国民的ヒット曲、そして日本の音楽史に残る名曲を、Perfumeファン・スガさんファンの皆さんと合唱できました。

その後は真鍋さんも以前出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」でお馴染みの「Progress」、「コノユビトマレ」などを演奏。実はライムスターやスカパラみたいに、本編でPefume曲をカヴァーしないかな?と思っていましたが、結局それはなく、スガさん大サービスな1時間近くのステージが終わりました。いやーカッコよかった!!!

 

◇The Opening

20分くらいの転換を挟み、Perfumeのライヴがスタート。今回、入場時の演出が明らかにネクスト・レヴェルに到達しており、スタンド席から見ていたら「入場のためだけにここまでやるのか!」と驚くほど手が込んでいました。

楽曲も幕張メッセPerfume FES!!とは大きく入れ替わって、アップデートされています。

 

最初のMC。スガさんはライヴ終了後、Perfume3人へ「ホントに良いお客さんだね!」と声をかけてくれたそうで、あ~ちゃん感激。「ステージに立つ側として、やっぱり受け入れてくれてやりやすい雰囲気もあれば、そうじゃないときもあるので」と語り、Perfume FES!!が温かい雰囲気になっていることを喜んでいましたが、やはり昔のスーパーアウェイ時代の会場の空気も忘れていないのでしょうね……

 

「恐れ多くも」お誘いしたというスガさんのステージについて、大サービスの選曲で感激したと口々に賞賛。のっちは会場の後ろの方で、歯磨きしながら見ていたそうですが、「いつもはおらー!!とか煽って怖がられたりするんですが、今日は嫉妬した!夜空ノムコウ〉の大合唱に嫉妬した!! Perfumeのライヴはみんなで曲を合唱することがないので、もう一度、あの声を聴かせて! ♪あーれっかぁら~」といきなり歌い始め、アカペラで場内大合唱に。小節の終わりには〈夜空の向こうには!〉と次の歌詞をガイドしたり、ちょっとみんなの歌詞覚えが危うく合唱がばらけそうになった瞬間に〈♪待っている~!〉と力技で持って行ったりと、なかなかいい塩梅のパワープレイでした。

かしゆかが〈初めてPerfumeのライヴを観る人〉に挙手してもらったり、平日なのに仕事はどうしたのか、有給休暇か早退したのか、など話していたところにステージを離れていたあ~ちゃんが戻り「みんな仕事しとるの?」といきなりぶちかましてきたので一瞬で目が覚めました(ご本人も「仕事しとるよね、それでこのお金も出とるんじゃし、いきなり出てきて何言ってるんだろうね!」と反省の弁でした。とはいえ現代ニッポンでは平日も気軽に休める会社だってそう多くないでしょう……)

この日のチーム分けはやはりというか、〈ヨゾ〉〈ラノ〉〈ムコウ〉でした。

 

◇Dedicate

今回、Perfumeは事前に「スガさんの好きなPerfumeの曲は何ですか?」と訊いて、それでメドレーを作ってきたそうです。2014年のライムスターとの対バンでは、宇多丸さんのリクエストで「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」を披露していましたが、スガさんはメドレーなんだ……と一瞬思いましたが、それはさておき。

名称〈スガさんに捧げるメドレー〉は、いきなり「エレクトロ・ワールド」でスタート。長い間奏(オイパート)から、一気にラストの〈この世界のスイッチ/押したのは誰なの〉に繋げるショート・ヴァージョン。曲の終わりから音が途切れることなくワンルーム・ディスコへ。2コーラスくらい歌うと、初めて聴くテクノっぽいブレイクビーツが流れます。あれ、この曲なんだろう聴いたことないぞ?と思うや否や、斜めに並んだ3人が〈ダン!ダン!ダン!〉というブレイクに合わせて1人ずつ「ねぇ」のフリを決めて、そのまま「ねぇ」に突入! これは展開の意外性も含めて超上がりましたね。

SONICMANIAでのノンストップ・ダンス・ミックスも良かったですが、この〈スガさんに捧げるメドレー〉もミックスの巧みな演出と、2006年~2010年の曲だけで固めた選曲というコア感があり、これはPerfume FES!!ならではの見所でしょう。

 

その後、とある曲でフューチャー・ベースの話が出て、ノリ方の指南(サビは4分のリズムで両手を仰ぎながら、8分のリズムで身体を揺らす)をしたり、そんなこんなでPerfumeのライヴが終了。締めの挨拶は以下のような感じです。

かしゆか「あっという間でしたけど、本当に楽しかったです。ありがとうございました!」

のっち「スガさんのオトナなライヴの後に、Perfumeがやることでどうなるんだろう?と思ったけど、新しいPerfumeを見せることができたと思います。楽屋とか実家にいるみたいな雰囲気で、皆さん温かく受け入れて下さってありがとうございます!」

 

3人が舞台から去ると、セット転換でスガさんバンドの楽器が次々と運び込まれます。来ました来ましたコラボレーションタイム! 幕張メッセでのPerfume FES!!は電気グルーヴとの共演こそなかったし、チャットモンチーのときはコラボといっても、あ(以下略)

 

◇Strength

10分足らず(体感)でふたたびステージ上が明るく照らされ、スガさんバンドのメンバーと共にPerfumeがステージに登場。Perfume3人それぞれのTシャツに〈ス〉〈♡〉〈ガ〉とプリントされています。3人がくるっと客席に背を向けると、バックプリントは〈シ〉〈カ〉〈オ〉に。あ〜ちゃんのTシャツは表が〈♡〉で、一見市販されていそうなデザインですがバックは〈カ〉のみ。

のっちとかしゆか「ちから!!ちから!!」おお確かにそう読める!

あ~ちゃん「ちから……なんか学園祭のTシャツみたい!」

そしてPerfume3人と、観客みんなで「スガさーーん!」と呼び込むと、グッズの白Tシャツを着たスガさんが颯爽とステージに登場。ひとしきり3人にライヴを褒め称えられ、あきらかに照れながらそれを極力抑えつつ「…ありがとう!」と答えたり、Perfumeが着ているスガTシャツ(元はZARA製)の件などを話していました。

 

twitter.com/meatsaucetaro/status/9054286855あ「スガさんは今回、誰よりも早く決まった方で」

の「テレビ局のスタジオで直接お願いしたんですけど、そのときどう思われましたか?」

スガさん「その場で〈出ます!〉って即答したよ」

の「でもこの業界で長く揉まれると、信じていい言葉と信じられない言葉があるんですよ

あ「業務上の、社交辞令みたいなね」

ス「(苦笑)」

の「でも別のルートを通して確認したら、そこでもOKで、ホントに出て下さるんだ!って」

ス「本当はもっと早く呼ばれるんじゃないかと思ってたんですよ……(最初に呼ばれた)斉藤和義とかさ、デレデレしてたし、奥田民生も出て。なんで俺は呼ばれないのかなぁ、とも思ってたから」

あ「でもスガさん、2週間後(の9月18日)に〈スガフェス!〉もあって」

ス「大阪のね」(観客拍手)

あ「それなのに出て下さってありがとうございます。普通は〈あ、そこ自分のイベントに近いんで! そっちに集中したいんで!〉って言われるところなのに」

ス「あー……(普通は)そうするんだ?

このくだりでも、スガさんがこのPerfume FES!!にどれだけ出たかったのかビシビシ伝わってきました……

 

〈スガさんに捧げるメドレー〉について、「スガさんリクエストの3曲の流れがばっちりだったー!」と3人が口々にスガさんを褒め称えます。ここでデレデレしないあたりがさすがスガシカオさん(51歳)。「エレクトロ・ワールド! カッコいいよね!」と軽口を叩いたりされていました。

 

そして待ちに待ったコラボレーション!! 1曲目はスガさんの曲アシンメトリー

TVドラマ「整形美人。」の主題歌で、Perfumeが13歳くらいの頃にそのドラマにはまっていたらしいです。あ~ちゃんの説明によると

・ヒロインが整形して米倉涼子になる

・モテて人生が軌道に乗る

・でも(もうひとりの主役である)椎名桔平には全然整形が効かない

・心がブスなのがバレるんよ……怖いね!

 

で、ドラマの盛り上がるところで「アシンメトリー」がうまく使われていて印象に残っていたそうで、この曲をスガさんバンドと共に4人の生歌で披露することに。Perfumeも「生演奏だって! 超豪華だね!」と嬉しそうです。

しかしスガさんに「これいきなりサビから入るからね。うまく行かなかったらもう1回やるから」と言われプレッシャーを感じたと思しき3人ですが、〈♪涙の色はきっと~〉の歌い出しは1回で見事成功! サビは3人がユニゾンで歌ったり(スガさんと4人で歌っていたかも?)、平歌はPerfume3人とスガさんで歌い分けをしたり。マイナー調で陰のあるメロディーはPerfumeの曲にあまりないので、フレッシュでしたね。

 

アシンメトリー」が終わり、拍手喝采! そしてまだコラボは続きます。

あ「この曲、スガさんがPerfumeでいちばん好きな曲なんですよね」

ス「大好きです。カラオケで歌いまくります」

あ?「スガさんカラオケとか行かれるんですか!?」

ス「……ごくまれに!

あ「そんな場面でも……ありがとうございます。そんな位置に〈マカロニ〉があるんですね」(客拍手)

 

……えっ、あ~ちゃんいま思いっきりネタバレしなかった? いや、まあでもそこそこ詳しいお客さんならもう「マカロニ」一択なのは察知しているでしょうね……。

ス「これは自分に合っている曲だと思って選ばせてもらいました。こないだ〈Amuse Fes〉があったでしょ? そこでポルノグラフィティ岡野昭仁が〈ポリリズム〉をカヴァーしてたのを観たんだけど……もうぐちゃぐちゃだった! 選曲が悪い! 〈ポリリズム〉は首に青筋立てて歌う曲じゃない!!」(客爆笑)

そして誰か記憶飛びましたが〈くぅりかぁえーすーこぉのぉポリリズムゥ!〉とポルノ岡野さん風のモノマネも入りました。

 

さておき、「マカロニ」はスガさんがこの日のために「俺たちっぽいアレンジを作ってきた」そうで、これこそPerfume FES!!でしか聞けないコラボであり、やはりスガさんの尋常ではない気合いが炸裂しまくってますね。ドラムのイントロから演奏がスタート。

このとき、私はバンドの演奏にもかなり注目していました。ギターはフュージョンAOR調で、エレクトリック・ピアノの音色はフェンダー・ローズのように滑らかで艶っぽい。ベースは前ノリで、音数多めでグルーヴィー。そして驚いたのはドラムスが16ビートになっていたことです。原曲のメロウなテイストをより洗練させつつ、ビートの推進力が高まった感じで、そこにPerfume3人のエンジェリックな歌声が乗るので、これはもう極上の音楽体験!

そこにスガさんが黒いレスポールで、渋いソロを入れたりロックなフレージングを聴かせてくれます。そしてスガさんの歌う「マカロニ」は、高めのキーゆえのハスキーな声で、たまらない色気もあって……うーん、これあの場でしか聴けないのもったいないですよ! 日本の音楽産業の損失ですよ? また2014年のときみたいに映像化してくれないかな……Perfumeとスガさんの相乗効果とケミストリー、そしてスガさんのPerfumeが極まった1曲でした。

 

コラボは以上でおしまい。もう1曲やってほしかった……というのはさすがに贅沢というものでしょう。Perfumeと観客は去って行くスガさんとバンドのメンバーに惜しみない拍手を送るのでした。

 

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◇あの頃の未来に

Perfume FES!! 秋の陣、幕開けを飾るスガさんとの対バンはこのように素晴らしいものでした。「どうやらスガさんもPerfumeが好きらしい」と聞いたときから早くも8年以上が経過して、ずっとスガさんが歌う「マカロニ」を聴いてみたかったけれど、ようやくこんな夜が訪れました。確かに〈あの頃の未来〉に立ってましたよ。スガさんも、私も!!

そしてやはり冒頭にも書いたとおり、ソウル~ファンク、ジャズといった基本(とあえて書きます)を押さえているアーティストとPerfumeの共演は、間違いなく良い!という確信を深めました。

 

……考えてみれば、この翌日に登場するレキシ、そして星野源さんもソウル~ファンク、ジャズあたりをものすごくしっかり押さえていると思われますので、確実に良いであろうことに気づきましたが、私が行けるのはスガさんの日しかなかったので、それ以外の余計なことは一切考えない、という結論に落ち着きました。

とはいえそのあたりの公演に参加される皆様におかれましては、ぜひ詳細なレポートをお願い申し上げます!!!!

 

◇おまけ

スガさんバンドの演奏する「マカロニ」を聴いて、こういうサウンドの曲、もっと聴きたい!という方がおられると思うので、いくつかピックアップしようと思ったのですが、あまりに膨大で、それ以上に僭越なため、超有名曲だけ貼っておきます。

 

 

こんなところですかね……あれ?

そうか、あの日の「マカロニ」を気に入った人は、スガさんの曲を聴けばいいんだ!!!(いまさら)

第89回 「If you wanna」と「TOKYO GIRL」とフューチャー・ベース

先日のSONICMANIAのラストで立て続けに披露された、2つの新曲「TOKYO GIRL」と「If you wanna」。ここにPerfume的に新機軸といえる〈フューチャー・ベース〉が導入されているのでは、と前回のエントリーでは書きました。

 

 

 

「If you wanna」のTVプロモーションでも〈フューチャー・ベースという新しいサウンドという押し出し方がされていますね。

 

ちなみに、私が初めて「If you wanna」を聴いた瞬間に連想したのはこの曲です。

よもやPerfumeを聴いてデヴィッド・ゲッタを連想する日が来るとは……とはいえ、共通点としては

1:スタートからしばらくは音数も少なく抑制的

2:ビルドアップ(シンセの音程を徐々に上げたり、ビートを倍速にしたりしてアゲていくパート)を経由して間奏へ

3:ドロップと呼ばれる、サビっぽいけど歌のない間奏ではシンコペート(リズムや拍子をあえてずらす)した派手なシンセでピークを作る→また抑制的に戻る

4:3分ちょっとで短い

という楽曲の構造がよく似ているなー、という程度でした。

 

その後いろいろ聴いてみたら、「If you wanna」の間奏ほぼそのまんまな曲もありました(1分20秒~)。2015年末に発表されたトキモンスタのリミックスです。他にもいろいろありそうですね。余談ですが、2014年のTomorrowWorld(アトランタで開催されたダンス系フェス)でトキモンスタ観ました。音は尖っていたけどご本人はキュートでした。

 

そして、私が「TOKYO GIRL」を聴いて連想したのはこの曲です。

2015年発表の言うまでもない超有名曲ですが、これも音数の少なさ、シンコペートしたキック、ビルドアップからサビに向かう構成が特徴です。

「TOKYO GIRL」はあきらかに〈ザ・チェインスモーカーズ以降〉を意識したプロダクションだと感じました。

 

ここに貼った3曲は、いずれも〈フューチャー・ベース(系)〉と括られているようです。そうなると「If you wanna」「TOKYO GIRL」はフューチャー・ベースを採り入れたり、その影響下にあるサウンドと位置づけられます。

※「TOKYO GIRL」は、あくまでもフューチャー・ベース(のポップ化)を踏まえた楽曲という解釈で、シンセなどの上物がわかりやすく〈それっぽい〉わけではありませんが、キックのパターンにはフューチャー・ベースの要素を含むと捉えています

 

 

それでは、フューチャー・ベースとは何でしょうか?

 

〈EDM系トラップ〉通過後の、ドリーミーでキラキラしたシンセとシンコペートしたキック?

ゲーム音楽っぽい音色や、ドロップでのド派手なシンセ?

メリハリの利いた曲構造?

 

これで大体合ってると思うんですが……はたしてそれだけなのかな? そもそもフューチャー・ベースってどういう由来?と思ったので調べました。その結果が今回のエントリーです。

これは〈私が調べてみたらこうだった〉というだけで、憶測も飛躍も偏りも見落としもあると思いますが、むしろ識者の方々にそのご指摘をいただきたく、あえてアップします。

このブログで肝に銘じているのが〈よく知らないことは書かない〉ですが、今回だけは脇に置きます笑

 

◇(Future) Bass Music

実はフューチャー・ベースという単語、ここ数年で降って湧いたものではありませんサウンドの明確な定義もなかなか困難です。ググってみたら、単語としては2009年頃にはすでに使われていた形跡がありました。Perfume史でいえば『⊿』の頃ですね……

 

以下、いくつかのCD作品を参考に、それを勝手な思い込みで繋げてフューチャー・ベースの軌跡を考えてみます。

 

まず外せないのが、UKのソウル・ジャズ・レコーズ(※世界一信頼できるレーベル)から2010年9月にリリースされた、その名も『Future Bass』というコンピレーションです。

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サウンドとしての〈フューチャー・ベース〉を謳った作品として最古の部類でしょう。内容は、当時〈ポスト・ダブステップと呼ばれていたベース・ミュージック(解説ページはこちら)の見本市です!

……が、この辺は危険なほど知識がないため、以下ベース・ミュージック ディスクガイドより抜粋させていただきます。

 

ダブステップ:ジャングル~ドラムンベース、UKガラージ~2ステップ、グライムなどを元に、2000年代序盤のUKクラブ・シーンで生まれたビート・ミュージック。ヘヴィーなベースとシンコペートしたキックが特徴

ポスト・ダブステップダブステップにテクノやハウス、エレクトロニカ、ジャズなどをミックスしたサウンド

 

コンピ『Future Bass』は、世界的なムーヴメントになったダブステップが多様化し、過渡期を迎えた当時のドキュメンタリー的な一枚で、いま言われるようなフューチャー・ベースとは異なりますが、ここで聴けるビートのパターンやサウンドの音色は、2017年(のフューチャー・ベース)と地続きになっています。

 

また、これに先んじて2010年4月にはサブ・フォーカスというドラムンベースのアーティストが『Future Bass!』というコンピを雑誌の付録として発表しています。あいにく現物を聴けていませんが、ポスト・ダブステップドラムンベース、エレクトロ系の選曲のようですね。

これらのコンピから察する限り、2010年頃のフューチャー・ベースは〈ベース・ミュージックの未来はここにある〉というステートメントのような使われ方だったみたいです。ソウル・ジャズのサイトにある紹介文も〈Future Music! Future Bass!〉とハイテンションでした。

 

◇Bass To The Future

2012年9月には、UKを代表するレーベルのミニストリー・オブ・サウンドからも『Future Bass』というコンピが登場します。

ここで見逃せないのが、ラスティーとハドソン・モホークがピックアップされていること。ふたりとも、スコットランド出身の若きトラックメイカー/DJ/プロデューサーです。

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彼らのサウンドレイヴ(解説ページはこちら)ダブステップ、ヒップホップ、テクノなどの影響が濃いのですが、ここでのラスティーはすでに現行のフューチャー・ベースにかなり近いサウンドですし、ハドソン・モホークが組んでいたトゥナイト(TNGHT)というユニットはその後のEDM系トラップの隆盛に繋がって、その流行りが現行のフューチャー・ベースに至ると見ています。

そういう意味だと、最初にフューチャー・ベース(と現在呼ばれるサウンド)の流れを作ったのはラスティーなんでしょうか?

 

また、同じく2012年にはザ・ポップ・グループという超重要バンドを率いるマーク・ステュワートがソロ・アルバム『The Politics Of Envy』を発表しました。彼はこの作品に関するコメント(下記リンク先)で、ブリストルの新世代が作るベース・ミュージックをフューチャー・ベースと定義しており、そのビートやシンセの音色はやはり2017年の現在に通じています。

このように2012年のUKではすでにフューチャー・ベースが生まれていたと言えそうです。その後ミニストリー・オブ・サウンド2014年2015年にも『Future Bass』を冠したコンピを出すものの、ベース・ミュージック色が後退してハウス~UKガラージ系の選曲になっていました。2012年版の方向性を続けてくれれば、非常におもしろいシリーズになった気がするのですが、どうしてそうなったのか……

 

◇#Future bass

憶測ですが、フューチャー・ベースという用語は、2013年頃からSoundCloud(音声ファイルの共有サービス)経由で広まったのではないでしょうか?

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SoundCloudのプレイリストをハッシュタグ #Future bassで検索すると、2013年の後半からこのタグが付けられた投稿が増加しています。

とはいえ、まだそこではフューチャー・ベースとEDM系トラップの差はあまりはっきりしていないようで、フューチャー・ベースが「If you wanna」で聴かれるような特徴を持つようになったのは2015年以降と見ています。派手派手なビッグルーム系が幅を利かせる状況への反動として、EDMの多様化が進み、なかでもEDM系トラップが流行する一方、ドリーミーでチルアウトでメランコリックなサウンドも増えていった時期ですね。

ちなみに、2014年のTomorrowWorldではEDM系トラップは結構流れていましたが、フューチャー・ベースのようなサウンドはついぞ耳にしませんでした。

 

EDM系トラップの人気ドリーミーなサウンド志向、このふたつの流れが合わさって生まれたのがフューチャー・ベースではないか、というのが(やや強引で安直ですが)私の推論です。

 

 

とはいえ、いまでもフューチャー・ベースとEDM系トラップの明確な違いはそこまで大きくないと感じますし、逆に〈フューチャー・ベースはこういうサウンド!〉みたいに類型化させず、いろんな要素が混ざったり、作り手の個性が出ている方が音楽としてはおもしろい部分もあるのですが……

 

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↑フルーム

 

2016年以降は、フューチャー・ベースがメインストリームにも浸透(=トレンド化)して、前述のデヴィッド・ゲッタ、ザ・チェインスモーカーズ以外にもマーティン・ギャリックス、ナーヴォ、イエロー・クルーあたりもフューチャー・ベースを採り入れた曲を発表しています。

 

そしてオーストラリア出身のフルームによる2016年作『Skin』が今年のグラミー賞で〈ベスト・ダンス/エレクトロニック・アルバム〉を獲得し、USのマーケットでも一気にフューチャー・ベースが〈グラミーのお墨付き〉として広まりそうな感もあります。

 

このような流れでいまのフューチャー・ベースがあり、そしてPerfume「If you wanna」に至るのかな、といったところです。

 

Perfumeというアイコン(そしてアイドル)を通して、日本のポップ・ミュージックのモードをアップデートしようとする、もしくはそこまで大それたものではなくても、折々の目新しいサウンドをキャッチーかつ独創的に仕立てて提案していくという、中田ヤスタカのラディカルなチャレンジ精神はますます軒昂です。

やはりPerfume最大の魅力は、新しくておもしろいことに次々挑戦して、進化を続けているところなのでは、と改めて認識した次第です。

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結論:Perfumeやっぱ最高!!!!!

 

 

◇Outro

以上、拙いフューチャー・ベース論をお届けしました。御意見・ツッコミなどお待ちしております。

 

今回、思い切ってこのテキストを書いた理由は、それこそダブステップやEDMが流行ったときに、その背景や文脈や多様性など一切頓着せず、ただただ記号的にありがたがる向きが一部メディアやユーザーから感じられたからです。

今回のフューチャー・ベースではその轍を踏まないよう、どこか音楽雑誌やWebサイトがバシッと解説しないかな、でもどうも誰もやらなさそう……という予感がして、調査を始めました。

 

そしてテキストを書き進める最中、まさにヤスタカが表紙のサウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号」フューチャー・ベースの解説がなされているのを発見いたしました笑

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https://www.rittor-music.co.jp/magazine/sound-recording/

 

あれ……てことは、私はお呼びじゃなかった?と割と悟ったのですが、解釈もちょっと違うし、もう結構書いてしまったから最後までやり切るか!と書き上げました。

 

でもこのテキストも、私なりの「覚悟」と「正しさ」とかいうもの?で作り上げたかもしれないので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます!

第88回 SONICMANIA2017

2017.8.18 SONICMANIA SETLIST

1. FLASH

2. GLITTER

3. Miracle Worker

  MC

4. MEDLEY:ポリリズム~Spring of Life(Album-mix)~Cling Cling(Album-mix)~NIGHT FLIGHT

5. SEVENTH HEAVEN

  P.T.A.のコーナー

6. FAKE IT

7. ワンルーム・ディスコ

 MC

8. If you wanna

9. TOKYO GIRL

この日は(かつて2013年のUltra Koreaでも披露していましたが)SONICMANIAでしか見られないPerfumeハイパー・ダンスモードという感じで、数ある楽曲の中からとにかくアップリフティングなビートを持つものを選りすぐって固めたようなセットリストでした。しかも、昔の人気曲に頼るのではなく、常にというのは過去のSONICMANIAも見ていますので)新しい曲で勝負をかけられる点Perfumeの他と異なる凄さでしょう。

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22時、ほぼオンタイムで場内が暗転。重いビートによるシンプルな入場SEが流れ、スポットライトがビートとシンクロするように光るなか、3人が登場。いきなり歌い出しから始まるのはFLASH! オープニングに映えますね。緩急のある構成で、一気に場内の空気が加熱していきます。

しかし一度くらいは、この曲のAlbum-mixが披露されたらなぁ……と思いつつ、続いて「GLITTER」! 近年のライヴではなかなか聴けない曲のひとつですが、前回のSONICMANIAでも披露されており、後述しますがPerfumeメンバー的には〈踊れる曲〉という位置付けでセットリストに組み込まれています(その割に、盛り上がりはそこそこといったところでしたが…私は特に好きな曲なので嬉しかった!)

続いて間髪入れず「Miracle Worker」が流れた瞬間、やはり今回もSONICMANIA(というかダンス・ミュージックのフェス)仕様のアッパーでアグレッシヴなセットリストで来ていることを確信。観客もPerfumeをよく見ている層ばかりではなく、この曲を初めて聴く人も少なくなかったと思いますが、そのあたりも巻き込んで最初のピークへと登り詰めていく、この曲の爆発力は頭一つ抜けています。

ちなみにこの日のSONICMANIAこういうちょっと前のカルヴィン・ハリスやアヴィーチー、デヴィッド・ゲッタ、ゼッドみたいなビルドアップ(徐々にアゲていくパート)からドロップ(派手なフレーズでクライマックスとなるパート)を備えたビッグルーム・ハウス(≒一時期よく言われていたEDM)系のサウンドが流れることは、私が観た限りほぼありませんでした。が、そういうサウンドも聴きたいなぁーという層も来ていたはずで、もしかしたら「Miracle Worker」はそのあたりのニーズも満たしていたのかもしれません。

 

◇Club Foot

3曲を終えるとMCへ。大型スクリーンに映るメンバーは、早くもかなりの汗をかいています。「SONICMANIAはよくお世話になっています。呼んで下さって嬉しいです。今回日本人は電気(グルーヴ)さんと私たちだけということで……」と語るあ~ちゃん。ですが、別のステージではBOOM BOOM SATELLITESの中野さん、凛として時雨のTKさんから成るユニット=PANDAS日本語ラップ・グループのKANDYTOWNなども出てます、一応……笑 まあそちらはステージも楽屋も離れていて把握できなかったのでしょう。

 

のっちの煽り(夏休みの人、仕事帰りの人を確認、日本の夏にソニマニがあって良かった!など)を経て、かしゆかが「ソニマニは2015年以来…と語るとざわめきが起きましたが、あれは2016年はソニマニが開催されなかった(ブッキングがうまく行かなかったそう)のと関係あるのかな……

 

そしてあ~ちゃん曰く「隣の楽屋がカサビアンと。UKを代表するロック・バンドのひとつですね。

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あ「でも楽屋の仕切りがパーテーション1枚しかなくて。着替え中にバランスを崩して『あーー』(目を見開いてパーテーションに倒れこむフリ)ってなったら、向こうはカサビアン」と。

現場にいた私は、これを〈ものの例え〉として笑いながら聞いていましたが、これがもし実話なら、カサビアン着替え中のPerfumeを目撃した世界で唯一のバンということになりそうですが、まあそれはどうでもいいですね!

そんなこんなでこの日のチーム分けは〈パー〉〈テー〉〈ション〉でした。 

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◇Fancy Dancer

あ~ちゃんが「今日は踊れる曲ばっかり持ってきたから!」と煽り、「それではメドレーを聞いて下さい、ポリリズムー!!」。おお、最近ワンマンではやらないことも多いこの曲ですが、やはり観客の知名度は抜群で反応も良いです。〈ポリループ〉を経て、いつも観客がハンド・クラップする間奏に差し掛かると、メンバーが観客に背を向けて少し後方へと移動。おや?と思うのと同時に、そのBPMをキープしたままシームレスに「Spring of Life(Album-mix)」へと繋がって大歓声!

Perfumeのライヴでメドレー構成はときどきありますが、DJミックスのように〈観客を踊らせること〉に特化したメドレーとは限らず、どちらかというと、セットリストから漏れた曲をまとめる意味合いも強いです。しかし完全ダンス志向のメドレーが聴けるのはいまのところSONICMANIAだけ!……になるのでしょうか(2013年の出演時も同様のミックスパートがありました)。そして「Spring of Life」も特に好きな曲のため歓喜です。

 

そしてこの曲のクライマックスとなる間奏。アンドロイドのような振り付けで、かしゆかとのっちが座った姿勢のあ~ちゃんを引き上げるのですが、ここでの2人は直接あ~ちゃんの身体には触れず、肩の上あたりの宙を引っ張ると、あ~ちゃんの身体も引き上げられるという、まるで見えない糸で引っ張られてい……と思ったその瞬間鳴り響くシンセの短いビルドアップと強烈なビートの連打、激しく明滅するフラッシュ! 「Cling Cling(Album-mix)」です。この繋ぎ、『COSMIC EXPLORER』のツアーでの「Pick Me Up~Cling Cling(Album-mix)」と同じだったように思うのですが、やはりこの不意打ちは非常に強力で、場内はクレイジーな盛り上がりです。

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こうなると私もさすがに昂揚しまくりで、次の「NIGHT FLIGHT」にはどう繋がったのか正直あまり覚えていませんが、「Cling Cling」のサビ終わりからそのまま「NF」のイントロに繋がったのかな? ここでステージ後方の高台3つを使っていたかな? 高台使ったのは「Spring of Life」だったっけ? うろ覚えで恐れ入りますが、それくらい興奮したということで……

 

見事なメドレーが終わると、熱気が充満した場内に鳴り響くメランコリックなピアノの旋律。ここでまさかのSEVENTH HEAVENとは……! この巧みな緩急の付け方、さすが手練れです。

ちなみにこの辺でようやく気がついたのですが、ソニマニは舞台奥の低めの位置に(観客から見て)逆光の照明がたくさん設置されており、その大光量が思いっきり観客の目に飛び込んでくるので、じっとPerfumeを見ていると割と目がつぶれそうになります笑 すべての曲でその照明が使われるわけではないので、その照明が全開のときはスクリーンを見るなどして防衛しましたが、あれは再考をお願いしたいですね……

 

あ、そうそう「SEVENTH HEAVEN」でしたね。冒頭こそ抑制が利いていますが、これもダンサブルなエレクトロ・ハウスですし〈踊れる曲〉というテーマとしっかり沿っています。いやはや、この流れは聞いていて幸福感溢れますね……Perfumeが凄く眩しかったです(いろんな意味で

 

◇HA!!!

恒例のP.T.A.のコーナー」。いつもどおりの流れで進んでいきます……が、ここで先日の〈Perfume FES!!〉で初披露された、チャットモンチー作の「はみがきのうた」が組み込まれていました。

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や、わかりますよ! 確かに曲も振りもかわいいですよね! 誰でもすぐに覚えられて、みんなで歌えますよね! 重低音とビートに乗せてキレの良いダンスを踊る、〈クールでカッコいいPerfumeだけじゃない面も見られますよね!

 

 

でもこの日に限っていえば、ライヴの流れがここで完全に停滞してしまったように見えました。

 

アクセル全開でアップリフティングな流れを(緩急も付けつつ)ずっと作ってきて、さらなるピークへ向けて跳躍できるタイミングで、あのチャイルディッシュな歌と振りは残念ながらあまり効果的ではなかったと思います(※個人の感想です)まあせっかく作ってもらった以上はやらないといけないとか、いろいろあるんでしょうけど……

 

◇Fake it!(by 電気グルーヴ

さておき〈パー!〉〈テー!〉〈ション!〉の連呼で場内のヴォルテージを上げていくPerfume。ここで満を持して放たれる「FAKE IT」! Perfume屈指のアッパー・チューンで、SONICMANIAにも非常に相応しい選曲です。そして怒濤のようなクライマックスへ突入する場内に鳴り響く、ワンルーム・ディスコのシンセ。「FAKE IT」の狂乱からグッとギアを落とし、ミディアム・テンポのグルーヴで繋ぐ意外性はなかなか効果的で(それこそ上手いDJっぽい)、場内の熱気もしっかりキープされていました。

そして短いMC(新曲の告知)を挟み、その新曲「If you wanna」、そしてあ~ちゃんの「この曲を最後を歌いたいです」という口上から「TOKYO GIRL」と、新曲の連発でこの日のライヴを締め括りました。

 

「If you wanna」のクールで緻密でちょっとマシーナリーな振り付けも相当カッコよかったですが、さておきこのラスト2曲のサウンド、Perfumeの新機軸といえるフューチャー・ベースを導入していますね。

Perfume常に新しくておもしろいことにチャレンジし続けるのが最大の魅力だと思っていますが、定番の人気曲ではなく新曲2つ(=最新型のPerfumeを見せることでフィナーレを飾るという、まさにチャレンジし続ける姿勢が表われた(そして奏功した!)ライヴだったと思います。

 

そういう意味でPerfumeはまだまだ進化し続けているし、この日のライヴは非常に素晴らしいものでした。

 

結論:Perfumeやっぱり最高!!!!!!

 

◇After Hours

(以下、余談です)昨今、TwitterなんかにおけるPerfumeを巡る論調は、ともすれば3人のキャラクターや関係性に耽溺したり、一方では一部メンバーや事務所に対する〈否定的な意見〉も見受けられるように思います。

何事も楽しみ方や捉え方は人それぞれですし、その何が正しい、何が間違っていると決めつけるのは傲慢でしかありませんが、ともかく少しファンの雰囲気が変わってきているのかな、と感じます。それはPerfume自身の変化もあれば、ブレイク以降の長い時間の経過に起因するもの(ファン層の固定化)なども原因なんでしょうけど……とかうだうだ考えるのがバカバカしくなるくらい、SONICMANIAPerfume圧倒的に凄かったです!

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SONICMANIAのライヴを観ながら、私はPerfumeの楽曲とライヴ・パフォーマンスが異様に好きでファンになったこと(つまり初心)を思い出しました。

もちろん3人のキャラクターや物語、関係性もPerfumeに欠かせない魅力でしょう。でも万人がフラットに受け取ることができるのは〈楽曲とライヴ・パフォーマンス〉だけだと思います(キャラクターや関係性の本質は、それこそ本人やスタッフしかわからないので)。それ以外の部分をひたすら愛でたり、または否定するつもりはありませんし、そんな時間も余力もありません。

 思い入れが強いぶん、良くも悪くもいろいろ言いたくなるタイプのファンが多いのだと思いますが(このブログもその手のものですが)、なんというか……これからもPerfumeとファンが良好な関係(※依存ではなく)を保ち、Perfumeもファンもそれぞれが長きに渡って充実した活動ができたらいいし、そしてPerfume歴史に残るアイドルになればいいな、というのが結論ですね。

 

 

……あっ、アイドルと言えば、書き忘れてた!

SEVENTH HEAVEN」で最後のサビを歌い終わり、アウトロに入っていくところで、大型スクリーンに映るかしゆかがばっちりウィンクを決めていて、いやーPerfumeは世界最高のアイドルだな! もうこれで11500円のチケット代の元が取れたな!!と思った(多分どうかしていた)のを思い出したので書いておきます(キャラクター愛でているじゃないか、というツッコミはご容赦下さい)

次回は「If you wanna」リリース記念として、「TOKYO GIRL」との共通点でもあるフューチャー・ベースについて書く予定です。

第87回 Perfume FES!! 2017 Perfume×電気グルーヴ

Perfume恒例となった対バンイベント、2017年の第1弾は電気グルーヴ

 

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今回は前置きなしでライヴの感想から。私が電気を観るのは2015年のSONICMANIA以来でしたが、今回は新作『TROPICAL LOVE』からの曲をガンガンやっていて、古い曲もアレンジや繋ぎ方を変えており、常に更新され続けるバンドである姿を見せてくれました(彼らはインタヴューで自分たちをユニットやグループではなく、〈バンド〉と名乗っています)。

電気のお客さんばかりではないイベントなので、わかりやすいおもしろ路線で来るのかなーと予想していましたがMCほとんどなし(ときどき二人が不条理なアジテーションをするくらい)、ほぼノンストップで演奏し続けるストイックでぶっ飛んだ1時間でした。中盤あたりの、強靭なビートのインストで会場を制圧していく展開がマジでカッコよかったです! そしてPerfumeが初めての東京ドームで披露した〈10人のかしゆか〉へのオマージュである〈10人の瀧〉も炸裂(アニメの瀧が例のフォーメーションで10人踊るという)! ラスト、映画「未知との遭遇」のメロディーで終わるのもイカしてました。ゲストで登場したトミタ栞ちゃんに、瀧が股間の下に通したマイクスタンドで歌わせたのは、あれ一瞬とはいえトミタちゃんの親が見たら泣くぞと思いましたが……

 

テクノだけでなく、アシッド・ハウスやエレクトロ、ブレイクビーツ、エキゾチカなどなどを混ぜながら一貫して電気印なサウンドに、ユーモラスで不条理な歌詞。いきなりですが、ここで近田春夫さんが「考えるヒット」で「Missing Beatz」(2013年)を評したものから引用します。

〈こういう音を作れる人にこういうコトバの書ける人はなかなかいない。こういうコトバを書く人にこういう音楽をきわめた人はほとんどいない。電気グルーヴの凄味とは、一種不可能とも思えることをやり抜いてきたにもかかわらず、存在を決して重くしていない。そのことに尽きるような気がするのである〉。

 

そして卓球はインタヴューで「電気ではテクノをやっているつもりはない、あくまでJ-Popの一種」のような発言をしていますが、〈世間ではテクノとイメージされがちだが、実のところは決してテクノではない〉といえば、そうです、あの3人組も……!!

 

 

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電気グルーヴPerfumeは、先述の点(というか立ち位置)で、数少ない同類だと思います。そしてPerfumeのライヴ、これがまたオープニングから「うおっ、こういうのが観たかった!」というやり方を、こちらの想像の200倍くらいは凄くやってくれるのでたまりません。詳しくはまた明日、ですかね……

 

Perfume MC

電気グルーヴがあこがれの存在だったという3人。そのきっかけは、状況直後のPerfumeについていた、頭がぶっ飛んだ当時のマネージャー(自転車で現場に来て現地解散など)が「テクノと言ったらライヴっしょ!」的な発言(with 変なハンドサイン)で連れられて行った〈WIRE04〉。そこで中学生だった3人は電気グルーヴと初遭遇しますが、当時はその音楽の良さがまったく理解できず、しかも客はステージもろくに見ず踊り狂っており、ぽかーんとしていたら、さらにステージの上ではおじさんがふざけていたのが衝撃だったと(ちなみにそのとき、瀧はスキンヘッドに白いスーツ姿でセグウェイを乗り回していました。余談ですが私も会場にいました)

それから2~3年して、ようやく良さがわかり、大ファンになったと……しかしPerfumeの周りで「電気とやるの、アツいっすね!」と言ってくるのは少し上の世代ばかり。ということで場内の年代チェックをしました。私の見たところ

10代……15%

20代……25%

30代……30%

40代……25%

50代以上……5% といったところでしょうか。そして40代以上のリアクションのイキの良さに、あ~ちゃん「おじさまステキー!おじさまステキー!

かしゆか疲れたら係の者へ!!

のっち「いや、50代以上をなめるな!って言われるよ!」(あ~ちゃんの発言だったかも?)

 

瀧もだけど、君たちも大概ふざけてるよ!(もちろんそれが魅力のひとつですが)

 

ほか、のっちが電気グルーヴ「孤高の存在」と評していて、まあそうといえばそうなのですが、その表現は初めて聴いたので何かウケました。あ~ちゃんが瀧のステップを再現したら、かしゆかが卓球のアクション(何か〈こまわりくん〉みたいなの)を真似したり、賑やかでしたね。この日のチーム分けは〈セ〉〈グ〉〈ウェイ〉でした。

 

ちなみにこの日、22:30終演予定と聞いていましたが、電気が終わった時点で21時を結構回っており、あれ?この時間配分だと、なんかおかしいぞ……と思ったのですが……

 

P.T.A.のコーナー

ひとしきりコーナーが進むと、あ~ちゃんが「いつもPerfume FES!!では、対バンの相手とコラボレーションして、お互いの歌をカヴァーしたり、いっしょに何かやったりしています……ですが、今回はできませんでした! ごめんなさい!(お辞儀)」

場内に落胆の声。私もすごく楽しみにしていました。ただ、電気が終わった時間を見て「これコラボやる時間ないんじゃ?」と危惧していたら……。

 

あ「向こうは大物だし、いろいろ難しかったのかも。連絡先知らんけえ、お互いのマネージャーを通して何度もやり取りしたんだけど〈今回はできません〉って……でもね、本人がそう言っとるとは限らんし

あ~ちゃん、さらっと言っているがそれは相当踏み込んだ発(以下略)

あ「大人の事情もあるかもしれないし、レコード会社も事務所も違うし……だけど、私たちの電気グルーヴさんへの愛は伝えたい!」

そしてあ~ちゃん、かしゆかがそれぞれいかに電気との対バンを楽しみにしていたかを語ります。のっちは「私は楽しみすぎて、昨日の夢に電気グルーヴさんが出てきました!」

客「ワーー!!

の「夢の中で、瀧さんとキスしちゃいました!!」

客「ワーーー!!(一部悲鳴)

の「そしたらね、もう興奮してきて、すごくイイ曲が思い浮かんだの! じゃあ今日はみんなでそれを歌いたいと思います

客「ワーー!!(一部戸惑い)

か「えっ、そんなにすぐ歌えるものなの?」

の「行くよー、〈♪夢でKISS KISS KISS〉

客「♪夢でKISS KISS KISS(そう来たか!!!)

あ、か「なんか聞いたことあるなー? どっかで聞いたなー?」

の「あっ、もう曲までできた! それでは聴いて下さい、Shangri-la』!!

流れ出す流麗なストリングス(念のため、あのストリングスのサンプリングソースはシルヴェッティ「Spring Rain」です)! 湧き上がる爆発的な歓声!! その中でスーッとセグウェイみたいな物体に乗ってステージ中央に滑り込んでくるあ~ちゃん!!! 電気オマージュとしての完成度が高すぎる!!! いやはや感服&脱帽&爆笑でした。

Shangri-la」の音源をほぼそのまま流しながら、あ~ちゃんはセグウェイ風の物体でステージを徘徊し、のっちはあの曲のMVを意識したのか、足を組んだりステージにしなだれかかったりと艶っぽいダンス(?)を披露。映像も電気のVJっぽい仕上がり(むしろ先方に発注した?)で、MVに出てくるような赤い花がCGでくるくる回ったりしてましたね。

〈♪夢でKISS KISS KISS〉のコール&レスポンスを経て、曲が短めの尺で終わると、のっちは「売れそう!」とコメント(もう売れている、という2人からのつっこみあり)。のっちは「あ~ちゃんが乗っていたセグウェイもどきは、2月15日のあ~ちゃんのお誕生日に私がプレゼントしたものです」とドヤ顔でした。

 

あ~ちゃん「今回はコラボできなかったけど、もしかしたら次の機会があるかもしれない。みんなが〈Perfumeはこんなにも電気グルーヴ愛を表現していた〉と呟いてくれたら、電気グルーヴさんがそれを見て、かわいそうに次はコラボしよう、と思ってくれるかもしれないから、みんなつぶやいて!」と客を扇動していました。

 

そして長いP.T.A.のコーナーを終え、その後いろいろあり、時間は22:25くらい。まもなく終演予定時刻です。

 

あ~ちゃん「あのね、最後にもしかするとご本人が出てきて何かいっしょにやってくれるかもしれないから、この時間はふわふわっとさせておいて(内容を決めずに)、ギリギリまで待ったんだけど……(電気グルーヴさんは)次の予定があるということでもう出られました

コラボの可能性がゼロになり、客にまたも落胆の声。しかしこの日、卓球は渋谷のクラブ・WOMBでレギュラーパーティーがあったんですね。

 

むしろよく電気で出てくれたなー。ありがとう!

 

◇Last Supper

あ~ちゃん「さっきの曲で終わりの予定だったけど、最後にもう1曲やろうか?」

かしゆか「自分たちの曲ならできるよね」

あ「みんな、何がいい?

いままで数多くのPerfumeライヴを見てきましたが、この展開(リクエストコーナー)は初めて観ました! お客さんはそれぞれにリクエストを叫び、「Miracle Worker」などが候補になったのですが、そこでのっちが「私、やりたい曲あります! まだ声出し足りないって人もいるだろうし、〈ディスコ!〉な曲がいいなー」

2人もそれはいいね、ということで決まりましたチョコレイト・ディスコ

あ「これ、ホント急に決まった奴だから、照明はお手柔らかに!」とのことで、確かに照明は本当にその場で対応している感じの白色中心のシンプルなものでしたが、盛り上がりには影響なく、見事なフィナーレを迎えました。

 

そんな感じでPerfume FES!! 2017初日は終了しました。これまで意外とダンス系アクトとの対バンはなかったし、そういう意味では電気グルーヴの登場は満を持してと言えるでしょう。そりゃもちろん両者のコラボは観たかった! 観たかったのですが、それを補って余りある、非常に満足度の高いイベントだったと思います。今後もダンス系アクトとの対バンはぜひやってほしいですね。

 

さあ、今日は2日目、迎えるはチャットモンチーです!

第86回 「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった8の理由

 2016年5月から11月に至るツアーで、Perfumeとそのチームは25公演を、国境を越えて駆け抜けました。彼女たちの歴史において、ここまで長期のツアーは初めて。しかも時期によって内容を大きく変化させることで進化を繰り返す、まさに〈ライヴ〉なパフォーマンスを繰り広げました。

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今回はツアーの最終形であるドーム公演の模様をお伝え……と書いたものの、レポート自体は多くのネット媒体で遥か昔にアップされましたし、そもそもWOWOWで放送済ですね!

 

ただ、ドームツアーの各会場や、ツアーごとの比較はあまりされていないと感じましたので、今回はこんな体裁でお送りします。

Perfume 6th Tour

「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった8の理由

 

どうですか? この安いキュレーションメディアみたいなタイトル!

 

◇「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった理由1〈挑戦と進化〉

「COSMIC EXPLORER」ツアー全体に通底するテーマがあったとすれば、やはり〈挑戦〉でしょう。

 

福井・徳島・和歌山など、初めて訪れるエリアも多かったアリーナツアー。

初めてのアメリカツアー。

名古屋・福岡という初めての会場も含むドームツアー。

 

いずれもPerfumeにとって〈新たな挑戦〉でしたが、さらにそれぞれのツアーならではのひねりと工夫が加えられていました。

 

国内アリーナツアーでは、2015年の〈PPPPPPPPPP〉から続くすごろくでの曲決め=〈3:5:6:9コーナー〉を導入し、日々セットリストの異なるライヴを展開。大規模会場のツアーで、こんなに手間のかかるサービスをわざわざやる人はそんなにいません。

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余談ですが、ライムスターはちょうど〈PPPPPPPPPP〉と同時期の2015年、ツアーの日替わりコーナーで候補曲20曲からダーツで3曲を選び、その場で曲順とつなぎ方を打ち合わせてメドレーを作っており、Perfumeの他にも奇特な人達がいるなと思いました

 

アメリカツアーでは不慣れな土地ながら、日本のワンマンですらまだやっていないドローン演出(曲は「COSMIC EXPLORER」)に挑み、規制でドローンを飛ばせなかったLA公演を除いて大成功。ツアーの最後を飾る〈Dome Edition〉では、わずか5公演ながらセットリストもステージも演出も一新させて臨みました。

 

ツアーのたび、そしてひとつひとつのライヴのたびに反省と工夫を重ねて、曲を繋ぐタイミングの調整からセットリスト変更、音響や照明、ダンスなどのクオリティー向上に余念のないPerfumeチームによる〈Dome Edition〉は、『COSMIC EXPLORER』ツアーの集大成であると同時に、Perfumeの進化を刻み付けた、世界に誇れるライヴだった!!と言い切りたいです(※個人の感想です)

 

PerfumeのNY公演の翌日、私がマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で観たカニエ・ウェストにも全然負けていないと思いましたし(※個人の感想です)、ドーム会場にふさわしい、こんなにスケールの大きなライヴができるなら、MSGという世界で屈指のアリーナ会場に立つことも何らおかしくない、むしろいますぐやればいいと感じました(※個人の感想です)

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◇「Dome Edition」が真に凄かった理由2〈観客の力〉

ここで正直に申し上げますと、実はちょっとPerfumeの動員を甘く見ていました。ドームツアーをやると聞いたとき、はたして埋まるのかな、アルバムのセールスも結構下がってしまったけれど(『LEVEL3』の出荷数は約23万枚、『COSMIC EXPLORER』は18万枚程度)と懸念しました……しかし、完全に杞憂でした。

 

 

……え? 「ドームの4階席や5階席は無人だったよ」「お客さん少なかったね」って、ちょっと待ってくださいよ! 例えば11月4日のナゴヤドーム2万人以上は入っていたように見えました。

名古屋市の人口:220万人、東京23区の人口:900万人と考えると、単純計算すれば名古屋で2万人を集めるのは東京でその4倍の8万人を集めるようなもの(商圏人口は考慮から外します)。しかも土日と比べて確実に動員が落ちる平日公演。これは実際、売り切れでなくとも立派な動員力です。売り切れなかっただけで安直に〈Perfume凋落!〉とか書き立てるアサ芸とかいう媒体もありましたがShame on you!!!!!

 

この動員力、もちろん各地のプロモーターやメディアの宣伝の効果もあったでしょう。特に福岡では、駅構内や電車を使った交通広告でテコ入れ……もとい力を入れていました。

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Perfumeのツアーはひとりで何会場も参加するリピーターも多いですが、そんなコアなファンだけでドームツアーができるわけもなく、この動員力はPerfumeのライヴはお金を払ってでも観たい!」と思う人の多さと言っていいでしょう。

 

これは素晴らしいことで、なぜなら〈良いものを作る=売れる〉というほど音楽産業は単純でも牧歌的な世界でもありません。いまや音楽は〈タダで楽しめるネット上の娯楽〉の筆頭。わざわざお金を払ってまで音楽なんて聞きたくない、というユーザーだって少なくないはずで、これから先もどんどん増えていくでしょう。恐ろしい未来ですが、それが時代の変化というものかもしれません。

そして〈良い音楽をしっかり作る〉という面倒でコストが掛かる割に大抵そこまでのリターンが見込めないことより、TVでの露出の量やイメージ戦略が人気を左右します。そのうえ、流行の移り変わるサイクル(=消費されるスピード)は、ネット社会における情報量の激増に伴い、加速の一途を辿っています。もういい加減、限界まで来ているかもしれませんが……

 

〈売上と人気を維持して長く活動すること〉がますます至難の業になっている芸能の世界、しかも〈若さ〉に価値を置かれがちなアイドル産業で、別にいまブームでもバブルでもない、結成から15年以上経っている女性グループが、地道に作品とライヴを作り続けてきた結果、ドーム会場をここまで埋められるとは……!!

 

 

あのお客さんの多さに、私はPerfumeの底力を見る思いでした。

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お客さんのヴァイブスも良い感じで、やたら熱かった大阪と名古屋、ほんわかと温かかった福岡。特に大阪2日目は、場内のあまりのヒートアップにあ~ちゃんも途中で感極まっていましたね。

どんなライヴも、お客さんの盛り上げあってこその成功です。そしてどのドームでも、3人はカッコつけたり気取ったりしない、ひたすら心理的にオープンなMCを通して、かなり早い段階から観客の共感を得られていたと思います。

大阪では観客の熱さへの信頼感を。名古屋では第2の故郷としての愛着を。福岡ではずっと昔から知っていたドームでライヴできる喜びを、各々が率直に語っていました。その言葉が会場の空気を作り、観客の力を引き出すことにも繋がったはずです。これもPerfumeの能力かもしれませんね。

 

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由3〈最新のセットリスト〉

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〈宇宙探索〉というコンセプトの『COSMIC EXPLORER』ですが、最初のアリーナツアーでは〈3:5:6:9コーナー〉を入れたり、要所要所でメドレーや古い曲が差し挟まれていたため、アルバムの世界観があまり判然としませんでした

初めて行く土地も多い(=初めてPerfumeを観る人も多い)分、コンセプチュアルに作り込むより、多様な要素を盛り込むことを重視したと踏んでいますが、アルバムの出来が良かった分、若干の中途半端さも感じてしまいました……

 

しかしPerfumeは続けてのアメリカツアー、そして〈Dome Edition〉で『COSMIC EXPLORER』の作品世界に大きく踏み込みます。NYのライヴが「Navigate」→「COSMIC EXPLORER」で始まったときは「アルバムのテーマを再現する、こういうライヴが観たかった!」と思ったものです。

 〈Dome Edition〉はアルバムのコンセプトを体現する選曲と、これまでのライヴで要になってきた人気曲から成るセットリストでした。これこそ〈最新かつ最高のPerfumeでしょう。

 

Perfume 6th Tour

「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」SET LIST

SE.Navigate

1. COSMIC EXPLORER

2. Pick Me Up

3. Cling Cling(Album-mix)

4. ワンルーム・ディスコ

MC

5. Next Stage with YOU

6. Perfume Medley 2016 -Dome Edition-

Relax In The City~ナチュラルに恋して~マカロニ~Twinkle Snow Powderly Snow~透明人間~セラミックガール~心のスポーツ~Sweet Refrain

7. Baby Face

8. Perfumeの掟

9. FLASH

10. Miracle Worker

P.T.A.のコーナー

11. FAKE IT

12. エレクトロ・ワールド

13. Party Maker

14. だいじょばない

15. パーフェクトスター・パーフェクトスタイル(※大阪2日目より追加)

16. チョコレイト・ディスコ

17. STAR TRAIN(Album-mix)

 

途中のメドレーについて、こんなツイートもしました。

 

ただ、正直言いますと「Hold Your Hand」でライヴを締めてほしかった……〈君と手を繋ぎたい〉という小さな曲で、〈宇宙探索者〉という壮大なテーマの作品が終わることにも意味があると思います。

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◇「Dome Edition」が真に凄かった理由4〈卓越した照明と音響技術〉

業務用のオリコンこと「コンフィデンス」の11月14日号にMIKIKO先生が登場し、リオ五輪の閉会式での引き継ぎパフォーマンスについて語っていました。

記事によると、閉会式会場の巨大さゆえに「200~300人のダンサーが必要」とリオ五輪サイドに提案されたものの、様々な制約で50人しか連れて行けなかったそうです。

その逆境に対して、MIKIKO先生は「そこはPerfumeなどでの経験が活きましたね。観る側の視点がどこに集中すれば良いのかを、演者の動きと音と映像と照明をすべてシンクロさせることで誘導すると、たとえ東京ドームにたった3人しか立っていなくても、広さを味方にして3人が空気を支配しているように見せることができるんです」。

 

おおー……つまり、ドームという巨大空間ならではのPerfumeらしい見せ方ができるとも言えそうで、実際、照明とダンスの考え抜かれたコンビネーションがPerfumeライヴの大きな魅力です。

〈Dome Edition〉の照明で思い出深いシーンは多々ありますが、ここではメドレー内の「透明人間」、〈♪同じ照明を浴びたいのに〉で3人が両手を天にかざす瞬間、スポットライトの逆光の中、3人のシルエットが浮かび上がるシーンが超カッコよかった、だけ書いておきましょう。

 

 

そして音響も特筆ものでした。

こんなツイートもしましたが、〈Dome Edition〉は想像以上に音が良かった! ドームとは思えないクリアさで、反響による遅延もほぼなく(※座席位置で異なります)、まるでクラブで聴いているような高解像度のサウンド。これはドームツアーのPAシステムで使用された〈MLA〉というスピーカーの機能によるもので、MLAは2015年の〈PPPPPPPPPP〉でも使われたそうです。

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 MSI JAPANの「CONCERT」ページより。TUBEの甲子園ライヴもMLA!

 

でもこのMLA、実際は何がどう凄いんだろう?と思った私はある催しへ赴きました。幕張メッセで開催された、音響や放送、通信、映像制作関連企業の見本市である〈InterBEE〉。ここでMLAを含む、コンサートで使われる大型スピーカーの聴き比べができたのです。

 

私はこの辺かなり疎いですが、素人ながらいくつものスピーカーの出音を聴き比べたところ、いずれも音の再現性の高さ、ハイファイさが特徴のようで、ボリュームを上げても音が歪まなかったり、耐久性に優れていたりと、いまのスピーカーは非常に高性能になっているのだと知りました。

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↑真ん中の小さなスピーカーがMLA

 

そしていよいよMLAの試聴時間がスタート。まず驚いたのが、スピーカー直近でも会場の最後方でも、音質の差異が感じられないこと。普通は距離が離れるほど音がぼやけたりしそうですが、そうではない。これ、どうやっているんだろう? 参加者の皆さんと共に会場内を回遊して、聴こえ方をチェックしている最中、MLAのエンジニアの方がマイクでこう告げました。

 

「えーそれでは今から、椅子席の後ろのゾーンだけ音をカットします

 

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ちょうど椅子席より後方にいた私が、〈え?いまなんて?〉と思っていると、みるみる音量が下がっていき、体感で最初の半分くらいになりました。えっ!?と慌てて椅子席より前に移動すると、そこではちゃんと元通りの音が鳴っています。

これには驚きましたが、どうやらMLAのキャビネット(平たく言うとスピーカーのボディ)の中に、それこそ細胞のように多数のスピーカーが配されていて、そのひとつひとつをコンピューターでシミュレーション&制御して〈どこからどこまで音を届けるか、どこに音を当てないか〉を調整できるようです。MLAの正式名称〈Multi-cellular Loudspeaker Array〉にも合点が行きました。

 

つまりMLAなら、ドームの壁際の観客まではしっかり音を届けて、それ以上の音の広がりをバシッとカットすることで、音の反響による遅延(キックやベースが遅れて聞こえる現象)を防ぐことができ、しかも会場のどこでもほぼ同じ音質で聞こえるという。最高じゃないですか。〈Dome Edition〉のクオリティーには、こんな技術も寄与していたのです。

もっとも、アリーナツアーでもMLAを使っていたようですが、ちょいちょい遅延が気になりしました。あれは何だったんだろう……

 

と、ここまででまた長くなっていますので、あとはサクッと行きます。

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由5〈ステージ構造〉

ドームツアーとはいえ、ステージの機構も含めた物量は「LEVEL3」のツアーの方が大掛かりだったように思います。

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今回はセンターステージに機構を集めた、比較的シンプルな見せ方でした。2010年の東京ドーム公演のアップデート版とも言えそうです。

ステージに関しても私は大して知らないため、「凄かった」の一言で済ませたいところですが、目を見張ったのは「Party Maker」など、メンバーがリフターで10m近く上がる演出。リフターそのもののスペースはせいぜい〈畳2畳〉程度に見えましたが、そこには転落防止の柵もベルトも何もありませんでした。普通は何か付けそうなものですし、これまでのライヴのリフターには常に柵がありましたが……いやはや、腹括ってやってるなーPerfume

カニエ・ウェストのMSG公演も、空中に浮かんだ板の上舞台でライヴをしていましたが、カニエの方がずっとスペースは広かったし、高度も低かったし、舞台の中央とカニエの背中はでしっかり結ばれていましたよ。


◇「Dome Edition」が真に凄かった理由6〈演出のバランス感覚〉

これは言うまでもありませんが、AR(拡張現実)やプロジェクション・マッピング、LED仕込みの衣装といったテクノロジー演出や、宇宙船がモチーフの機構などは、あくまでダンスや楽曲の世界観を引き立てる手段であり、決して演出で圧倒すること自体が目的になっていないのが(ドームという巨大空間でも!)徹底されているのがさすがです。

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ライヴにおける文脈や、作品のテーマとあまりリンクしない演出だろうと、それで客が盛り上がれば良かろうという考えもあるでしょうけれど、それを安易に良しとしないあたりがPerfumeらしさかもしれません。2016年末の紅白歌合戦は、珍しく演出が先走っていた感もありましたが……

 

Perfumeのライヴは、ヤスタカやMIKIKO先生、Rhizomatiksをはじめ、当代一流のクリエイターたちのコラボレーションの場としても有機的に機能しています。これは舞台監督としてのMIKIKO先生の采配の賜物で、こんなに才覚のある人が、よく偶然Perfumeの同郷で振付師をやっていたなーとつくづく思います。

 

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由7〈進歩するダンス〉

Perfumeダンスは年々進化しており、それはMIKIKO先生の振付に依るところも大きいです。今回の〈Dome Edition〉で特に印象に残ったのが「FLASH」でした。

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武術のような振付も含む、ややエキゾティックなダンスは、いままでになく静と動のコントラストを活かしたダイナミックさもあり、まだまだPerfumeダンスには伸びしろがあると見せてくれました。

いまのPerfumeだからカッコよく踊れるダンスとも言えそうですし、新しい曲ながら早くもライヴの核になっていたのは、ダンスの力も大きいでしょう。でも、この曲は〈Album-mix〉で聞きたかった……アルバム中でも屈指の完成度の楽曲だと思います。

 

◇「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった理由8〈Perfumeの掟〉

〈Dome Edition〉で特に大きな話題を呼んだのが、6年ぶりとなる「Perfumeの掟」です。

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このパフォーマンスを巡って、さまざまな論説があるようです。〈掟〉はPerfumeにとって重要な局面で披露されるもので、そこにPerfumeの本質と原点が凝縮されているとか、3人の関係性を表しているとか……

 

もっとも、Perfumeの本質や関係性と言っても、人によって見え方・捉え方は違いますし、〈物語性〉の深読みは不得手なので他の方々にお任せして……

 

 

私の「Perfumeの掟」の認識は、〈普通に歌って踊るだけではないライヴ・パフォーマンス〉の一環です。その挑戦がライヴの自由度や、表現の幅を拡げるプラスアルファになるでしょうし、インスタレーション(雑に言うと空間を用いたアート作品)的な楽しみにも繋がっていると感じます。

 

2007年の〈掟〉は一度だけ見ていますが、何しろ10年前なので細部はさっぱり覚えていません。ただ、アイドルとしてのPerfumeのあり方をメタ的に表現していた印象は残っています。〈事務所の方針なんで〜〉なんてセリフもあったような。

 

2010年の〈掟〉ではのっちが過去の曲の振付を次々繰り出したり、かしゆかが10人になったり、あ〜ちゃんがレーザー銃で風船を割ったりと、それまでの軌跡を振り返ると共に、いまに繋がるメディアアート路線の演出に挑みました。Rhizomatiksとの初コラボレーションもこのときですね。

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また『JPN』ツアーにおける「JPNスペシャル」や、〈ぐるんぐるんツアー〉の「Episode 0」も、新曲と映像を組み合わせたエクスクルーシヴなパフォーマンスという意味では「Perfumeの掟」と近い位置づけと言えるはずです。

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とはいえ、〈Perfumeそのもの〉がテーマ(というかモチーフ?)ともいえる〈掟〉はやはり特別でしょう。そして2016年の「Perfumeの掟」のために、ヤスタカはこの曲を書き下ろしました。

曲調はプログレッシヴ・ハウスで、曲名は「Atmospheric Entry」。〈大気圏突入〉ですね。ここでも『COSMIC EXPLORER』のアルバム・コンセプトとの連続性があり、ヤスタカが今回のコンセプトを気に入っている感がひしひしと伝わってきます。

 

この曲に合わせて、センターステージに360度張り巡らされた透過スクリーンに、3人の3Dモデルデータや映像が次々と映し出されます。「Spring of Life」「JPNスペシャル」「Hurly Burly」「edge」……そして2010年の「Perfumeの掟」。曲中のセリフや演出、3人のダンスにも既出の物が(おそらくはあえて)使われていました。

 

2010年の〈掟〉をアップデートして、いま使える3D映像素材を盛り込んだだけ……とも取れますが、ここまで回顧的な演出はPerfumeのライヴでは初めてで、一瞬走馬灯を見ている気になりました。つまりPerfumeの〈軌跡とその終わり〉を意識したのですが、それではなぜいま「Perfumeの掟」を披露し、こういう内容になったのかというと……皆目見当がつきません

 

その意図が公式に説明されることはきっとないでしょう(Perfumeチームは〈説明しすぎない〉ことを重んじているようですし)。観た人が感じたものが、すべてです。

 

 

もちろんいくらでも深読みはできますし、そういった議論が起きれば盛り上がりにも繋がります。

ただ、何もかもをわかりやすく説明してくれる(そして内容も単純な)、脳味噌をそんなに使わなくていいコンテンツばかりになってきたこのご時世でも、あえて説明をしないこと、考えさせることで作品の世界を拡げるアプローチは、やはり至極真っ当で普遍的な手法だと言えそうですね。

 

◇A Happy New Year!!

新年を迎え、Perfume公式サイトでは新たなアーティスト写真が公開されました。

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2017年2月15日にはニュー・シングル「TOKYO GIRL」のリリースも予定されています。新しいアルバムはまだまだ先でしょうけれど、ツアーの映像作品や、続くシングルのリリースなどもあるでしょうし、各地のフェスやイベント出演も決まっているはず。「Perfume FES!!」や海外ツアーもまた開催してほしいですし、初となる大型野外ワンマン・ライヴなんかも見てみたいですね。

メンバーは29歳になろうという2017年ですが、今年も楽しい一年になることを願っています!!