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Perfumeに特化した音楽ブログ/音楽に特化したPerfumeブログ

第90回 Perfume FES!! Perfume×スガシカオ

2017年9月6日、愛知県体育館にてPerfume FES!! 秋の陣(命名:あ~ちゃんのっち)が開催されました(ご指摘いただき修正しました)。初めて行った会場でしたが、コンサート利用だと7000人くらいのキャパシティと見ました。

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↑これがカメラの性能の限界でした。思いっきり光が飛んでいてすみません

 

この日の対バン相手はスガシカオさん!

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スガさんはおそらく2008年頃からPerfumeファンを公言し、特に「マカロニ」が大好きらしいと伺っていました。また、これまでのPerfume FES!!でもライムスターや東京スカパラダイスオーケストラといったソウル~ファンク、ジャズなどを通過したアクトとの共演はずば抜けて良かったこともあり、個人的にスガさんとの対バンは〈秋の陣〉でもっとも観たい顔合わせでした。

 

ほぼオンタイムでライヴはスタート。先攻はスガさんです。「Perfume FES!!、楽しみにしてきました。初めて俺のライヴを見る人も多いと思うので、今日は他の人に提供した曲なんかも含めて大サービスで行きます」とのMC通り、「午後のパレード」で始まりKAT-TUNに提供した「Real Face」、「19才」などスガシカオ弱者な私でも知っている曲ばかり。サウンドのテクスチャーはロックだし、「Real Face」ではヘヴィー・ロック的な激しさも垣間見せていましたが、スガさんバンドのエッセンスはソウル~ファンク直系のグルーヴ感にあり、このサウンドなら3時間くらいぶっ通しで聴いても楽しめるなーと思ってニヤニヤしながら聴いておりました。

 

◇愛について

途中でMCタイム。Perfumeについては、ファン歴の長さと対照的に「みんなPerfume好き? 俺も好きです」とサラッと流します。石川(2014年)で〈Perfumeと俺の文脈〉について延々と語っていた宇多丸さんの姿をなぜか思い出しました。

しかしPerfume FES!!出演の経緯については「テレビ局のスタジオでPerfumeと一緒になったときに、本人たちから直接〈出ていただけませんか〉と依頼されて。これはもうマネージャーとか関係ない!と思って〈出ます!〉と即答しました」と、やはり隠し切れないほど強い思い入れを炸裂させるスガさんでした。

 

「俺はひとりだけどPerfumeは3人で、3人いると誰に向かって話せばいいかわからなくなる。ずっとひとりと話していると、〈この人、気があるんじゃない?〉って思われそうだし、3人にまんべんなく話しかけると安いホストみたいになる」と。「そういう場合、男としてはいちばんブスに話しかけるのがいいと思うんだけど、でも3人とも可愛いからさー!」。途中に毒っ気もありつつ、あくまでも〈いちばん言いたかった最後の部分への繋ぎ〉ということでノープロブレムです(?)

 

 

とある曲を歌う前にはアコースティック・ギターに持ち替えて、スガさんが話し始めます。「この曲を書いたのはいつ頃だったかな……もう覚えていないけど、SMAPには3~4曲提供しています。(リンゴ・ジュース!と叫んだ客に)そうそう笑 ……彼らが解散したときは凄くショックだった。もう〈夜空ノムコウ〉はやらないって言ったりしたし、いまもそのショックが癒えたわけではないんだけど…………まあ今日は歌おうかなと思います。

あ、みんなこの曲知ってるよね!? 全員知ってる前提で話しちゃったけど笑 歌い出しは弾き語りっぽくて静かなので、よかったらみんなも一緒に歌って下さい」。そしたらまあみんな歌える歌える! まぎれもない国民的ヒット曲、そして日本の音楽史に残る名曲を、Perfumeファン・スガさんファンの皆さんと合唱できました。

その後は真鍋さんも以前出演した「プロフェッショナル 仕事の流儀」でお馴染みの「Progress」、「コノユビトマレ」などを演奏。実はライムスターやスカパラみたいに、本編でPefume曲をカヴァーしないかな?と思っていましたが、結局それはなく、スガさん大サービスな1時間近くのステージが終わりました。いやーカッコよかった!!!

 

◇The Opening

20分くらいの転換を挟み、Perfumeのライヴがスタート。今回、入場時の演出が明らかにネクスト・レヴェルに到達しており、スタンド席から見ていたら「入場のためだけにここまでやるのか!」と驚くほど手が込んでいました。

楽曲も幕張メッセPerfume FES!!とは大きく入れ替わって、アップデートされています。

 

最初のMC。スガさんはライヴ終了後、Perfume3人へ「ホントに良いお客さんだね!」と声をかけてくれたそうで、あ~ちゃん感激。「ステージに立つ側として、やっぱり受け入れてくれてやりやすい雰囲気もあれば、そうじゃないときもあるので」と語り、Perfume FES!!が温かい雰囲気になっていることを喜んでいましたが、やはり昔のスーパーアウェイ時代の会場の空気も忘れていないのでしょうね……

 

「恐れ多くも」お誘いしたというスガさんのステージについて、大サービスの選曲で感激したと口々に賞賛。のっちは会場の後ろの方で、歯磨きしながら見ていたそうですが、「いつもはおらー!!とか煽って怖がられたりするんですが、今日は嫉妬した!夜空ノムコウ〉の大合唱に嫉妬した!! Perfumeのライヴはみんなで曲を合唱することがないので、もう一度、あの声を聴かせて! ♪あーれっかぁら~」といきなり歌い始め、アカペラで場内大合唱に。小節の終わりには〈夜空の向こうには!〉と次の歌詞をガイドしたり、ちょっとみんなの歌詞覚えが危うく合唱がばらけそうになった瞬間に〈♪待っている~!〉と力技で持って行ったりと、なかなかいい塩梅のパワープレイでした。

かしゆかが〈初めてPerfumeのライヴを観る人〉に挙手してもらったり、平日なのに仕事はどうしたのか、有給休暇か早退したのか、など話していたところにステージを離れていたあ~ちゃんが戻り「みんな仕事しとるの?」といきなりぶちかましてきたので一瞬で目が覚めました(ご本人も「仕事しとるよね、それでこのお金も出とるんじゃし、いきなり出てきて何言ってるんだろうね!」と反省の弁でした。とはいえ現代ニッポンでは平日も気軽に休める会社だってそう多くないでしょう……)

この日のチーム分けはやはりというか、〈ヨゾ〉〈ラノ〉〈ムコウ〉でした。

 

◇Dedicate

今回、Perfumeは事前に「スガさんの好きなPerfumeの曲は何ですか?」と訊いて、それでメドレーを作ってきたそうです。2014年のライムスターとの対バンでは、宇多丸さんのリクエストで「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」を披露していましたが、スガさんはメドレーなんだ……と一瞬思いましたが、それはさておき。

名称〈スガさんに捧げるメドレー〉は、いきなり「エレクトロ・ワールド」でスタート。長い間奏(オイパート)から、一気にラストの〈この世界のスイッチ/押したのは誰なの〉に繋げるショート・ヴァージョン。曲の終わりから音が途切れることなくワンルーム・ディスコへ。2コーラスくらい歌うと、初めて聴くテクノっぽいブレイクビーツが流れます。あれ、この曲なんだろう聴いたことないぞ?と思うや否や、斜めに並んだ3人が〈ダン!ダン!ダン!〉というブレイクに合わせて1人ずつ「ねぇ」のフリを決めて、そのまま「ねぇ」に突入! これは展開の意外性も含めて超上がりましたね。

SONICMANIAでのノンストップ・ダンス・ミックスも良かったですが、この〈スガさんに捧げるメドレー〉もミックスの巧みな演出と、2006年~2010年の曲だけで固めた選曲というコア感があり、これはPerfume FES!!ならではの見所でしょう。

 

その後、とある曲でフューチャー・ベースの話が出て、ノリ方の指南(サビは4分のリズムで両手を仰ぎながら、8分のリズムで身体を揺らす)をしたり、そんなこんなでPerfumeのライヴが終了。締めの挨拶は以下のような感じです。

かしゆか「あっという間でしたけど、本当に楽しかったです。ありがとうございました!」

のっち「スガさんのオトナなライヴの後に、Perfumeがやることでどうなるんだろう?と思ったけど、新しいPerfumeを見せることができたと思います。楽屋とか実家にいるみたいな雰囲気で、皆さん温かく受け入れて下さってありがとうございます!」

 

3人が舞台から去ると、セット転換でスガさんバンドの楽器が次々と運び込まれます。来ました来ましたコラボレーションタイム! 幕張メッセでのPerfume FES!!は電気グルーヴとの共演こそなかったし、チャットモンチーのときはコラボといっても、あ(以下略)

 

◇Strength

10分足らず(体感)でふたたびステージ上が明るく照らされ、スガさんバンドのメンバーと共にPerfumeがステージに登場。Perfume3人それぞれのTシャツに〈ス〉〈♡〉〈ガ〉とプリントされています。3人がくるっと客席に背を向けると、バックプリントは〈シ〉〈カ〉〈オ〉に。あ〜ちゃんのTシャツは表が〈♡〉で、一見市販されていそうなデザインですがバックは〈カ〉のみ。

のっちとかしゆか「ちから!!ちから!!」おお確かにそう読める!

あ~ちゃん「ちから……なんか学園祭のTシャツみたい!」

そしてPerfume3人と、観客みんなで「スガさーーん!」と呼び込むと、グッズの白Tシャツを着たスガさんが颯爽とステージに登場。ひとしきり3人にライヴを褒め称えられ、あきらかに照れながらそれを極力抑えつつ「…ありがとう!」と答えたり、Perfumeが着ているスガTシャツ(元はZARA製)の件などを話していました。

 

twitter.com/meatsaucetaro/status/9054286855あ「スガさんは今回、誰よりも早く決まった方で」

の「テレビ局のスタジオで直接お願いしたんですけど、そのときどう思われましたか?」

スガさん「その場で〈出ます!〉って即答したよ」

の「でもこの業界で長く揉まれると、信じていい言葉と信じられない言葉があるんですよ

あ「業務上の、社交辞令みたいなね」

ス「(苦笑)」

の「でも別のルートを通して確認したら、そこでもOKで、ホントに出て下さるんだ!って」

ス「本当はもっと早く呼ばれるんじゃないかと思ってたんですよ……(最初に呼ばれた)斉藤和義とかさ、デレデレしてたし、奥田民生も出て。なんで俺は呼ばれないのかなぁ、とも思ってたから」

あ「でもスガさん、2週間後(の9月18日)に〈スガフェス!〉もあって」

ス「大阪のね」(観客拍手)

あ「それなのに出て下さってありがとうございます。普通は〈あ、そこ自分のイベントに近いんで! そっちに集中したいんで!〉って言われるところなのに」

ス「あー……(普通は)そうするんだ?

このくだりでも、スガさんがこのPerfume FES!!にどれだけ出たかったのかビシビシ伝わってきました……

 

〈スガさんに捧げるメドレー〉について、「スガさんリクエストの3曲の流れがばっちりだったー!」と3人が口々にスガさんを褒め称えます。ここでデレデレしないあたりがさすがスガシカオさん(51歳)。「エレクトロ・ワールド! カッコいいよね!」と軽口を叩いたりされていました。

 

そして待ちに待ったコラボレーション!! 1曲目はスガさんの曲アシンメトリー

TVドラマ「整形美人。」の主題歌で、Perfumeが13歳くらいの頃にそのドラマにはまっていたらしいです。あ~ちゃんの説明によると

・ヒロインが整形して米倉涼子になる

・モテて人生が軌道に乗る

・でも(もうひとりの主役である)椎名桔平には全然整形が効かない

・心がブスなのがバレるんよ……怖いね!

 

で、ドラマの盛り上がるところで「アシンメトリー」がうまく使われていて印象に残っていたそうで、この曲をスガさんバンドと共に4人の生歌で披露することに。Perfumeも「生演奏だって! 超豪華だね!」と嬉しそうです。

しかしスガさんに「これいきなりサビから入るからね。うまく行かなかったらもう1回やるから」と言われプレッシャーを感じたと思しき3人ですが、〈♪涙の色はきっと~〉の歌い出しは1回で見事成功! サビは3人がユニゾンで歌ったり(スガさんと4人で歌っていたかも?)、平歌はPerfume3人とスガさんで歌い分けをしたり。マイナー調で陰のあるメロディーはPerfumeの曲にあまりないので、フレッシュでしたね。

 

アシンメトリー」が終わり、拍手喝采! そしてまだコラボは続きます。

あ「この曲、スガさんがPerfumeでいちばん好きな曲なんですよね」

ス「大好きです。カラオケで歌いまくります」

あ?「スガさんカラオケとか行かれるんですか!?」

ス「……ごくまれに!

あ「そんな場面でも……ありがとうございます。そんな位置に〈マカロニ〉があるんですね」(客拍手)

 

……えっ、あ~ちゃんいま思いっきりネタバレしなかった? いや、まあでもそこそこ詳しいお客さんならもう「マカロニ」一択なのは察知しているでしょうね……。

ス「これは自分に合っている曲だと思って選ばせてもらいました。こないだ〈Amuse Fes〉があったでしょ? そこでポルノグラフィティ岡野昭仁が〈ポリリズム〉をカヴァーしてたのを観たんだけど……もうぐちゃぐちゃだった! 選曲が悪い! 〈ポリリズム〉は首に青筋立てて歌う曲じゃない!!」(客爆笑)

そして誰か記憶飛びましたが〈くぅりかぁえーすーこぉのぉポリリズムゥ!〉とポルノ岡野さん風のモノマネも入りました。

 

さておき、「マカロニ」はスガさんがこの日のために「俺たちっぽいアレンジを作ってきた」そうで、これこそPerfume FES!!でしか聞けないコラボであり、やはりスガさんの尋常ではない気合いが炸裂しまくってますね。ドラムのイントロから演奏がスタート。

このとき、私はバンドの演奏にもかなり注目していました。ギターはフュージョンAOR調で、エレクトリック・ピアノの音色はフェンダー・ローズのように滑らかで艶っぽい。ベースは前ノリで、音数多めでグルーヴィー。そして驚いたのはドラムスが16ビートになっていたことです。原曲のメロウなテイストをより洗練させつつ、ビートの推進力が高まった感じで、そこにPerfume3人のエンジェリックな歌声が乗るので、これはもう極上の音楽体験!

そこにスガさんが黒いレスポールで、渋いソロを入れたりロックなフレージングを聴かせてくれます。そしてスガさんの歌う「マカロニ」は、高めのキーゆえのハスキーな声で、たまらない色気もあって……うーん、これあの場でしか聴けないのもったいないですよ! 日本の音楽産業の損失ですよ? また2014年のときみたいに映像化してくれないかな……Perfumeとスガさんの相乗効果とケミストリー、そしてスガさんのPerfumeが極まった1曲でした。

 

コラボは以上でおしまい。もう1曲やってほしかった……というのはさすがに贅沢というものでしょう。Perfumeと観客は去って行くスガさんとバンドのメンバーに惜しみない拍手を送るのでした。

 

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◇あの頃の未来に

Perfume FES!! 秋の陣、幕開けを飾るスガさんとの対バンはこのように素晴らしいものでした。「どうやらスガさんもPerfumeが好きらしい」と聞いたときから早くも8年以上が経過して、ずっとスガさんが歌う「マカロニ」を聴いてみたかったけれど、ようやくこんな夜が訪れました。確かに〈あの頃の未来〉に立ってましたよ。スガさんも、私も!!

そしてやはり冒頭にも書いたとおり、ソウル~ファンク、ジャズといった基本(とあえて書きます)を押さえているアーティストとPerfumeの共演は、間違いなく良い!という確信を深めました。

 

……考えてみれば、この翌日に登場するレキシ、そして星野源さんもソウル~ファンク、ジャズあたりをものすごくしっかり押さえていると思われますので、確実に良いであろうことに気づきましたが、私が行けるのはスガさんの日しかなかったので、それ以外の余計なことは一切考えない、という結論に落ち着きました。

とはいえそのあたりの公演に参加される皆様におかれましては、ぜひ詳細なレポートをお願い申し上げます!!!!

 

◇おまけ

スガさんバンドの演奏する「マカロニ」を聴いて、こういうサウンドの曲、もっと聴きたい!という方がおられると思うので、いくつかピックアップしようと思ったのですが、あまりに膨大で、それ以上に僭越なため、超有名曲だけ貼っておきます。

 

 

こんなところですかね……あれ?

そうか、あの日の「マカロニ」を気に入った人は、スガさんの曲を聴けばいいんだ!!!(いまさら)

第89回 「If you wanna」と「TOKYO GIRL」とフューチャー・ベース

先日のSONICMANIAのラストで立て続けに披露された、2つの新曲「TOKYO GIRL」と「If you wanna」。ここにPerfume的に新機軸といえる〈フューチャー・ベース〉が導入されているのでは、と前回のエントリーでは書きました。

 

 

 

「If you wanna」のTVプロモーションでも〈フューチャー・ベースという新しいサウンドという押し出し方がされていますね。

 

ちなみに、私が初めて「If you wanna」を聴いた瞬間に連想したのはこの曲です。

よもやPerfumeを聴いてデヴィッド・ゲッタを連想する日が来るとは……とはいえ、共通点としては

1:スタートからしばらくは音数も少なく抑制的

2:ビルドアップ(シンセの音程を徐々に上げたり、ビートを倍速にしたりしてアゲていくパート)を経由して間奏へ

3:ドロップと呼ばれる、サビっぽいけど歌のない間奏ではシンコペート(リズムや拍子をあえてずらす)した派手なシンセでピークを作る→また抑制的に戻る

4:3分ちょっとで短い

という楽曲の構造がよく似ているなー、という程度でした。

 

その後いろいろ聴いてみたら、「If you wanna」の間奏ほぼそのまんまな曲もありました(1分20秒~)。2015年末に発表されたトキモンスタのリミックスです。他にもいろいろありそうですね。余談ですが、2014年のTomorrowWorld(アトランタで開催されたダンス系フェス)でトキモンスタ観ました。音は尖っていたけどご本人はキュートでした。

 

そして、私が「TOKYO GIRL」を聴いて連想したのはこの曲です。

2015年発表の言うまでもない超有名曲ですが、これも音数の少なさ、シンコペートしたキック、ビルドアップからサビに向かう構成が特徴です。

「TOKYO GIRL」はあきらかに〈ザ・チェインスモーカーズ以降〉を意識したプロダクションだと感じました。

 

ここに貼った3曲は、いずれも〈フューチャー・ベース(系)〉と括られているようです。そうなると「If you wanna」「TOKYO GIRL」はフューチャー・ベースを採り入れたり、その影響下にあるサウンドと位置づけられます。

※「TOKYO GIRL」は、あくまでもフューチャー・ベース(のポップ化)を踏まえた楽曲という解釈で、シンセなどの上物がわかりやすく〈それっぽい〉わけではありませんが、キックのパターンにはフューチャー・ベースの要素を含むと捉えています

 

 

それでは、フューチャー・ベースとは何でしょうか?

 

〈EDM系トラップ〉通過後の、ドリーミーでキラキラしたシンセとシンコペートしたキック?

ゲーム音楽っぽい音色や、ドロップでのド派手なシンセ?

メリハリの利いた曲構造?

 

これで大体合ってると思うんですが……はたしてそれだけなのかな? そもそもフューチャー・ベースってどういう由来?と思ったので調べました。その結果が今回のエントリーです。

これは〈私が調べてみたらこうだった〉というだけで、憶測も飛躍も偏りも見落としもあると思いますが、むしろ識者の方々にそのご指摘をいただきたく、あえてアップします。

このブログで肝に銘じているのが〈よく知らないことは書かない〉ですが、今回だけは脇に置きます笑

 

◇(Future) Bass Music

実はフューチャー・ベースという単語、ここ数年で降って湧いたものではありませんサウンドの明確な定義もなかなか困難です。ググってみたら、単語としては2009年頃にはすでに使われていた形跡がありました。Perfume史でいえば『⊿』の頃ですね……

 

以下、いくつかのCD作品を参考に、それを勝手な思い込みで繋げてフューチャー・ベースの軌跡を考えてみます。

 

まず外せないのが、UKのソウル・ジャズ・レコーズ(※世界一信頼できるレーベル)から2010年9月にリリースされた、その名も『Future Bass』というコンピレーションです。

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サウンドとしての〈フューチャー・ベース〉を謳った作品として最古の部類でしょう。内容は、当時〈ポスト・ダブステップと呼ばれていたベース・ミュージック(解説ページはこちら)の見本市です!

……が、この辺は危険なほど知識がないため、以下ベース・ミュージック ディスクガイドより抜粋させていただきます。

 

ダブステップ:ジャングル~ドラムンベース、UKガラージ~2ステップ、グライムなどを元に、2000年代序盤のUKクラブ・シーンで生まれたビート・ミュージック。ヘヴィーなベースとシンコペートしたキックが特徴

ポスト・ダブステップダブステップにテクノやハウス、エレクトロニカ、ジャズなどをミックスしたサウンド

 

コンピ『Future Bass』は、世界的なムーヴメントになったダブステップが多様化し、過渡期を迎えた当時のドキュメンタリー的な一枚で、いま言われるようなフューチャー・ベースとは異なりますが、ここで聴けるビートのパターンやサウンドの音色は、2017年(のフューチャー・ベース)と地続きになっています。

 

また、これに先んじて2010年4月にはサブ・フォーカスというドラムンベースのアーティストが『Future Bass!』というコンピを雑誌の付録として発表しています。あいにく現物を聴けていませんが、ポスト・ダブステップドラムンベース、エレクトロ系の選曲のようですね。

これらのコンピから察する限り、2010年頃のフューチャー・ベースは〈ベース・ミュージックの未来はここにある〉というステートメントのような使われ方だったみたいです。ソウル・ジャズのサイトにある紹介文も〈Future Music! Future Bass!〉とハイテンションでした。

 

◇Bass To The Future

2012年9月には、UKを代表するレーベルのミニストリー・オブ・サウンドからも『Future Bass』というコンピが登場します。

ここで見逃せないのが、ラスティーとハドソン・モホークがピックアップされていること。ふたりとも、スコットランド出身の若きトラックメイカー/DJ/プロデューサーです。

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彼らのサウンドレイヴ(解説ページはこちら)ダブステップ、ヒップホップ、テクノなどの影響が濃いのですが、ここでのラスティーはすでに現行のフューチャー・ベースにかなり近いサウンドですし、ハドソン・モホークが組んでいたトゥナイト(TNGHT)というユニットはその後のEDM系トラップの隆盛に繋がって、その流行りが現行のフューチャー・ベースに至ると見ています。

そういう意味だと、最初にフューチャー・ベース(と現在呼ばれるサウンド)の流れを作ったのはラスティーなんでしょうか?

 

また、同じく2012年にはザ・ポップ・グループという超重要バンドを率いるマーク・ステュワートがソロ・アルバム『The Politics Of Envy』を発表しました。彼はこの作品に関するコメント(下記リンク先)で、ブリストルの新世代が作るベース・ミュージックをフューチャー・ベースと定義しており、そのビートやシンセの音色はやはり2017年の現在に通じています。

このように2012年のUKではすでにフューチャー・ベースが生まれていたと言えそうです。その後ミニストリー・オブ・サウンド2014年2015年にも『Future Bass』を冠したコンピを出すものの、ベース・ミュージック色が後退してハウス~UKガラージ系の選曲になっていました。2012年版の方向性を続けてくれれば、非常におもしろいシリーズになった気がするのですが、どうしてそうなったのか……

 

◇#Future bass

憶測ですが、フューチャー・ベースという用語は、2013年頃からSoundCloud(音声ファイルの共有サービス)経由で広まったのではないでしょうか?

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SoundCloudのプレイリストをハッシュタグ #Future bassで検索すると、2013年の後半からこのタグが付けられた投稿が増加しています。

とはいえ、まだそこではフューチャー・ベースとEDM系トラップの差はあまりはっきりしていないようで、フューチャー・ベースが「If you wanna」で聴かれるような特徴を持つようになったのは2015年以降と見ています。派手派手なビッグルーム系が幅を利かせる状況への反動として、EDMの多様化が進み、なかでもEDM系トラップが流行する一方、ドリーミーでチルアウトでメランコリックなサウンドも増えていった時期ですね。

ちなみに、2014年のTomorrowWorldではEDM系トラップは結構流れていましたが、フューチャー・ベースのようなサウンドはついぞ耳にしませんでした。

 

EDM系トラップの人気ドリーミーなサウンド志向、このふたつの流れが合わさって生まれたのがフューチャー・ベースではないか、というのが(やや強引で安直ですが)私の推論です。

 

 

とはいえ、いまでもフューチャー・ベースとEDM系トラップの明確な違いはそこまで大きくないと感じますし、逆に〈フューチャー・ベースはこういうサウンド!〉みたいに類型化させず、いろんな要素が混ざったり、作り手の個性が出ている方が音楽としてはおもしろい部分もあるのですが……

 

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↑フルーム

 

2016年以降は、フューチャー・ベースがメインストリームにも浸透(=トレンド化)して、前述のデヴィッド・ゲッタ、ザ・チェインスモーカーズ以外にもマーティン・ギャリックス、ナーヴォ、イエロー・クルーあたりもフューチャー・ベースを採り入れた曲を発表しています。

 

そしてオーストラリア出身のフルームによる2016年作『Skin』が今年のグラミー賞で〈ベスト・ダンス/エレクトロニック・アルバム〉を獲得し、USのマーケットでも一気にフューチャー・ベースが〈グラミーのお墨付き〉として広まりそうな感もあります。

 

このような流れでいまのフューチャー・ベースがあり、そしてPerfume「If you wanna」に至るのかな、といったところです。

 

Perfumeというアイコン(そしてアイドル)を通して、日本のポップ・ミュージックのモードをアップデートしようとする、もしくはそこまで大それたものではなくても、折々の目新しいサウンドをキャッチーかつ独創的に仕立てて提案していくという、中田ヤスタカのラディカルなチャレンジ精神はますます軒昂です。

やはりPerfume最大の魅力は、新しくておもしろいことに次々挑戦して、進化を続けているところなのでは、と改めて認識した次第です。

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結論:Perfumeやっぱ最高!!!!!

 

 

◇Outro

以上、拙いフューチャー・ベース論をお届けしました。御意見・ツッコミなどお待ちしております。

 

今回、思い切ってこのテキストを書いた理由は、それこそダブステップやEDMが流行ったときに、その背景や文脈や多様性など一切頓着せず、ただただ記号的にありがたがる向きが一部メディアやユーザーから感じられたからです。

今回のフューチャー・ベースではその轍を踏まないよう、どこか音楽雑誌やWebサイトがバシッと解説しないかな、でもどうも誰もやらなさそう……という予感がして、調査を始めました。

 

そしてテキストを書き進める最中、まさにヤスタカが表紙のサウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号」フューチャー・ベースの解説がなされているのを発見いたしました笑

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https://www.rittor-music.co.jp/magazine/sound-recording/

 

あれ……てことは、私はお呼びじゃなかった?と割と悟ったのですが、解釈もちょっと違うし、もう結構書いてしまったから最後までやり切るか!と書き上げました。

 

でもこのテキストも、私なりの「覚悟」と「正しさ」とかいうもの?で作り上げたかもしれないので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます!

第88回 SONICMANIA2017

2017.8.18 SONICMANIA SETLIST

1. FLASH

2. GLITTER

3. Miracle Worker

  MC

4. MEDLEY:ポリリズム~Spring of Life(Album-mix)~Cling Cling(Album-mix)~NIGHT FLIGHT

5. SEVENTH HEAVEN

  P.T.A.のコーナー

6. FAKE IT

7. ワンルーム・ディスコ

 MC

8. If you wanna

9. TOKYO GIRL

この日は(かつて2013年のUltra Koreaでも披露していましたが)SONICMANIAでしか見られないPerfumeハイパー・ダンスモードという感じで、数ある楽曲の中からとにかくアップリフティングなビートを持つものを選りすぐって固めたようなセットリストでした。しかも、昔の人気曲に頼るのではなく、常にというのは過去のSONICMANIAも見ていますので)新しい曲で勝負をかけられる点Perfumeの他と異なる凄さでしょう。

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22時、ほぼオンタイムで場内が暗転。重いビートによるシンプルな入場SEが流れ、スポットライトがビートとシンクロするように光るなか、3人が登場。いきなり歌い出しから始まるのはFLASH! オープニングに映えますね。緩急のある構成で、一気に場内の空気が加熱していきます。

しかし一度くらいは、この曲のAlbum-mixが披露されたらなぁ……と思いつつ、続いて「GLITTER」! 近年のライヴではなかなか聴けない曲のひとつですが、前回のSONICMANIAでも披露されており、後述しますがPerfumeメンバー的には〈踊れる曲〉という位置付けでセットリストに組み込まれています(その割に、盛り上がりはそこそこといったところでしたが…私は特に好きな曲なので嬉しかった!)

続いて間髪入れず「Miracle Worker」が流れた瞬間、やはり今回もSONICMANIA(というかダンス・ミュージックのフェス)仕様のアッパーでアグレッシヴなセットリストで来ていることを確信。観客もPerfumeをよく見ている層ばかりではなく、この曲を初めて聴く人も少なくなかったと思いますが、そのあたりも巻き込んで最初のピークへと登り詰めていく、この曲の爆発力は頭一つ抜けています。

ちなみにこの日のSONICMANIAこういうちょっと前のカルヴィン・ハリスやアヴィーチー、デヴィッド・ゲッタ、ゼッドみたいなビルドアップ(徐々にアゲていくパート)からドロップ(派手なフレーズでクライマックスとなるパート)を備えたビッグルーム・ハウス(≒一時期よく言われていたEDM)系のサウンドが流れることは、私が観た限りほぼありませんでした。が、そういうサウンドも聴きたいなぁーという層も来ていたはずで、もしかしたら「Miracle Worker」はそのあたりのニーズも満たしていたのかもしれません。

 

◇Club Foot

3曲を終えるとMCへ。大型スクリーンに映るメンバーは、早くもかなりの汗をかいています。「SONICMANIAはよくお世話になっています。呼んで下さって嬉しいです。今回日本人は電気(グルーヴ)さんと私たちだけということで……」と語るあ~ちゃん。ですが、別のステージではBOOM BOOM SATELLITESの中野さん、凛として時雨のTKさんから成るユニット=PANDAS日本語ラップ・グループのKANDYTOWNなども出てます、一応……笑 まあそちらはステージも楽屋も離れていて把握できなかったのでしょう。

 

のっちの煽り(夏休みの人、仕事帰りの人を確認、日本の夏にソニマニがあって良かった!など)を経て、かしゆかが「ソニマニは2015年以来…と語るとざわめきが起きましたが、あれは2016年はソニマニが開催されなかった(ブッキングがうまく行かなかったそう)のと関係あるのかな……

 

そしてあ~ちゃん曰く「隣の楽屋がカサビアンと。UKを代表するロック・バンドのひとつですね。

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あ「でも楽屋の仕切りがパーテーション1枚しかなくて。着替え中にバランスを崩して『あーー』(目を見開いてパーテーションに倒れこむフリ)ってなったら、向こうはカサビアン」と。

現場にいた私は、これを〈ものの例え〉として笑いながら聞いていましたが、これがもし実話なら、カサビアン着替え中のPerfumeを目撃した世界で唯一のバンということになりそうですが、まあそれはどうでもいいですね!

そんなこんなでこの日のチーム分けは〈パー〉〈テー〉〈ション〉でした。 

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◇Fancy Dancer

あ~ちゃんが「今日は踊れる曲ばっかり持ってきたから!」と煽り、「それではメドレーを聞いて下さい、ポリリズムー!!」。おお、最近ワンマンではやらないことも多いこの曲ですが、やはり観客の知名度は抜群で反応も良いです。〈ポリループ〉を経て、いつも観客がハンド・クラップする間奏に差し掛かると、メンバーが観客に背を向けて少し後方へと移動。おや?と思うのと同時に、そのBPMをキープしたままシームレスに「Spring of Life(Album-mix)」へと繋がって大歓声!

Perfumeのライヴでメドレー構成はときどきありますが、DJミックスのように〈観客を踊らせること〉に特化したメドレーとは限らず、どちらかというと、セットリストから漏れた曲をまとめる意味合いも強いです。しかし完全ダンス志向のメドレーが聴けるのはいまのところSONICMANIAだけ!……になるのでしょうか(2013年の出演時も同様のミックスパートがありました)。そして「Spring of Life」も特に好きな曲のため歓喜です。

 

そしてこの曲のクライマックスとなる間奏。アンドロイドのような振り付けで、かしゆかとのっちが座った姿勢のあ~ちゃんを引き上げるのですが、ここでの2人は直接あ~ちゃんの身体には触れず、肩の上あたりの宙を引っ張ると、あ~ちゃんの身体も引き上げられるという、まるで見えない糸で引っ張られてい……と思ったその瞬間鳴り響くシンセの短いビルドアップと強烈なビートの連打、激しく明滅するフラッシュ! 「Cling Cling(Album-mix)」です。この繋ぎ、『COSMIC EXPLORER』のツアーでの「Pick Me Up~Cling Cling(Album-mix)」と同じだったように思うのですが、やはりこの不意打ちは非常に強力で、場内はクレイジーな盛り上がりです。

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こうなると私もさすがに昂揚しまくりで、次の「NIGHT FLIGHT」にはどう繋がったのか正直あまり覚えていませんが、「Cling Cling」のサビ終わりからそのまま「NF」のイントロに繋がったのかな? ここでステージ後方の高台3つを使っていたかな? 高台使ったのは「Spring of Life」だったっけ? うろ覚えで恐れ入りますが、それくらい興奮したということで……

 

見事なメドレーが終わると、熱気が充満した場内に鳴り響くメランコリックなピアノの旋律。ここでまさかのSEVENTH HEAVENとは……! この巧みな緩急の付け方、さすが手練れです。

ちなみにこの辺でようやく気がついたのですが、ソニマニは舞台奥の低めの位置に(観客から見て)逆光の照明がたくさん設置されており、その大光量が思いっきり観客の目に飛び込んでくるので、じっとPerfumeを見ていると割と目がつぶれそうになります笑 すべての曲でその照明が使われるわけではないので、その照明が全開のときはスクリーンを見るなどして防衛しましたが、あれは再考をお願いしたいですね……

 

あ、そうそう「SEVENTH HEAVEN」でしたね。冒頭こそ抑制が利いていますが、これもダンサブルなエレクトロ・ハウスですし〈踊れる曲〉というテーマとしっかり沿っています。いやはや、この流れは聞いていて幸福感溢れますね……Perfumeが凄く眩しかったです(いろんな意味で

 

◇HA!!!

恒例のP.T.A.のコーナー」。いつもどおりの流れで進んでいきます……が、ここで先日の〈Perfume FES!!〉で初披露された、チャットモンチー作の「はみがきのうた」が組み込まれていました。

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や、わかりますよ! 確かに曲も振りもかわいいですよね! 誰でもすぐに覚えられて、みんなで歌えますよね! 重低音とビートに乗せてキレの良いダンスを踊る、〈クールでカッコいいPerfumeだけじゃない面も見られますよね!

 

 

でもこの日に限っていえば、ライヴの流れがここで完全に停滞してしまったように見えました。

 

アクセル全開でアップリフティングな流れを(緩急も付けつつ)ずっと作ってきて、さらなるピークへ向けて跳躍できるタイミングで、あのチャイルディッシュな歌と振りは残念ながらあまり効果的ではなかったと思います(※個人の感想です)まあせっかく作ってもらった以上はやらないといけないとか、いろいろあるんでしょうけど……

 

◇Fake it!(by 電気グルーヴ

さておき〈パー!〉〈テー!〉〈ション!〉の連呼で場内のヴォルテージを上げていくPerfume。ここで満を持して放たれる「FAKE IT」! Perfume屈指のアッパー・チューンで、SONICMANIAにも非常に相応しい選曲です。そして怒濤のようなクライマックスへ突入する場内に鳴り響く、ワンルーム・ディスコのシンセ。「FAKE IT」の狂乱からグッとギアを落とし、ミディアム・テンポのグルーヴで繋ぐ意外性はなかなか効果的で(それこそ上手いDJっぽい)、場内の熱気もしっかりキープされていました。

そして短いMC(新曲の告知)を挟み、その新曲「If you wanna」、そしてあ~ちゃんの「この曲を最後を歌いたいです」という口上から「TOKYO GIRL」と、新曲の連発でこの日のライヴを締め括りました。

 

「If you wanna」のクールで緻密でちょっとマシーナリーな振り付けも相当カッコよかったですが、さておきこのラスト2曲のサウンド、Perfumeの新機軸といえるフューチャー・ベースを導入していますね。

Perfume常に新しくておもしろいことにチャレンジし続けるのが最大の魅力だと思っていますが、定番の人気曲ではなく新曲2つ(=最新型のPerfumeを見せることでフィナーレを飾るという、まさにチャレンジし続ける姿勢が表われた(そして奏功した!)ライヴだったと思います。

 

そういう意味でPerfumeはまだまだ進化し続けているし、この日のライヴは非常に素晴らしいものでした。

 

結論:Perfumeやっぱり最高!!!!!!

 

◇After Hours

(以下、余談です)昨今、TwitterなんかにおけるPerfumeを巡る論調は、ともすれば3人のキャラクターや関係性に耽溺したり、一方では一部メンバーや事務所に対する〈否定的な意見〉も見受けられるように思います。

何事も楽しみ方や捉え方は人それぞれですし、その何が正しい、何が間違っていると決めつけるのは傲慢でしかありませんが、ともかく少しファンの雰囲気が変わってきているのかな、と感じます。それはPerfume自身の変化もあれば、ブレイク以降の長い時間の経過に起因するもの(ファン層の固定化)なども原因なんでしょうけど……とかうだうだ考えるのがバカバカしくなるくらい、SONICMANIAPerfume圧倒的に凄かったです!

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SONICMANIAのライヴを観ながら、私はPerfumeの楽曲とライヴ・パフォーマンスが異様に好きでファンになったこと(つまり初心)を思い出しました。

もちろん3人のキャラクターや物語、関係性もPerfumeに欠かせない魅力でしょう。でも万人がフラットに受け取ることができるのは〈楽曲とライヴ・パフォーマンス〉だけだと思います(キャラクターや関係性の本質は、それこそ本人やスタッフしかわからないので)。それ以外の部分をひたすら愛でたり、または否定するつもりはありませんし、そんな時間も余力もありません。

 思い入れが強いぶん、良くも悪くもいろいろ言いたくなるタイプのファンが多いのだと思いますが(このブログもその手のものですが)、なんというか……これからもPerfumeとファンが良好な関係(※依存ではなく)を保ち、Perfumeもファンもそれぞれが長きに渡って充実した活動ができたらいいし、そしてPerfume歴史に残るアイドルになればいいな、というのが結論ですね。

 

 

……あっ、アイドルと言えば、書き忘れてた!

SEVENTH HEAVEN」で最後のサビを歌い終わり、アウトロに入っていくところで、大型スクリーンに映るかしゆかがばっちりウィンクを決めていて、いやーPerfumeは世界最高のアイドルだな! もうこれで11500円のチケット代の元が取れたな!!と思った(多分どうかしていた)のを思い出したので書いておきます(キャラクター愛でているじゃないか、というツッコミはご容赦下さい)

次回は「If you wanna」リリース記念として、「TOKYO GIRL」との共通点でもあるフューチャー・ベースについて書く予定です。

第87回 Perfume FES!! 2017 Perfume×電気グルーヴ

Perfume恒例となった対バンイベント、2017年の第1弾は電気グルーヴ

 

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今回は前置きなしでライヴの感想から。私が電気を観るのは2015年のSONICMANIA以来でしたが、今回は新作『TROPICAL LOVE』からの曲をガンガンやっていて、古い曲もアレンジや繋ぎ方を変えており、常に更新され続けるバンドである姿を見せてくれました(彼らはインタヴューで自分たちをユニットやグループではなく、〈バンド〉と名乗っています)。

電気のお客さんばかりではないイベントなので、わかりやすいおもしろ路線で来るのかなーと予想していましたがMCほとんどなし(ときどき二人が不条理なアジテーションをするくらい)、ほぼノンストップで演奏し続けるストイックでぶっ飛んだ1時間でした。中盤あたりの、強靭なビートのインストで会場を制圧していく展開がマジでカッコよかったです! そしてPerfumeが初めての東京ドームで披露した〈10人のかしゆか〉へのオマージュである〈10人の瀧〉も炸裂(アニメの瀧が例のフォーメーションで10人踊るという)! ラスト、映画「未知との遭遇」のメロディーで終わるのもイカしてました。ゲストで登場したトミタ栞ちゃんに、瀧が股間の下に通したマイクスタンドで歌わせたのは、あれ一瞬とはいえトミタちゃんの親が見たら泣くぞと思いましたが……

 

テクノだけでなく、アシッド・ハウスやエレクトロ、ブレイクビーツ、エキゾチカなどなどを混ぜながら一貫して電気印なサウンドに、ユーモラスで不条理な歌詞。いきなりですが、ここで近田春夫さんが「考えるヒット」で「Missing Beatz」(2013年)を評したものから引用します。

〈こういう音を作れる人にこういうコトバの書ける人はなかなかいない。こういうコトバを書く人にこういう音楽をきわめた人はほとんどいない。電気グルーヴの凄味とは、一種不可能とも思えることをやり抜いてきたにもかかわらず、存在を決して重くしていない。そのことに尽きるような気がするのである〉。

 

そして卓球はインタヴューで「電気ではテクノをやっているつもりはない、あくまでJ-Popの一種」のような発言をしていますが、〈世間ではテクノとイメージされがちだが、実のところは決してテクノではない〉といえば、そうです、あの3人組も……!!

 

 

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電気グルーヴPerfumeは、先述の点(というか立ち位置)で、数少ない同類だと思います。そしてPerfumeのライヴ、これがまたオープニングから「うおっ、こういうのが観たかった!」というやり方を、こちらの想像の200倍くらいは凄くやってくれるのでたまりません。詳しくはまた明日、ですかね……

 

Perfume MC

電気グルーヴがあこがれの存在だったという3人。そのきっかけは、状況直後のPerfumeについていた、頭がぶっ飛んだ当時のマネージャー(自転車で現場に来て現地解散など)が「テクノと言ったらライヴっしょ!」的な発言(with 変なハンドサイン)で連れられて行った〈WIRE04〉。そこで中学生だった3人は電気グルーヴと初遭遇しますが、当時はその音楽の良さがまったく理解できず、しかも客はステージもろくに見ず踊り狂っており、ぽかーんとしていたら、さらにステージの上ではおじさんがふざけていたのが衝撃だったと(ちなみにそのとき、瀧はスキンヘッドに白いスーツ姿でセグウェイを乗り回していました。余談ですが私も会場にいました)

それから2~3年して、ようやく良さがわかり、大ファンになったと……しかしPerfumeの周りで「電気とやるの、アツいっすね!」と言ってくるのは少し上の世代ばかり。ということで場内の年代チェックをしました。私の見たところ

10代……15%

20代……25%

30代……30%

40代……25%

50代以上……5% といったところでしょうか。そして40代以上のリアクションのイキの良さに、あ~ちゃん「おじさまステキー!おじさまステキー!

かしゆか疲れたら係の者へ!!

のっち「いや、50代以上をなめるな!って言われるよ!」(あ~ちゃんの発言だったかも?)

 

瀧もだけど、君たちも大概ふざけてるよ!(もちろんそれが魅力のひとつですが)

 

ほか、のっちが電気グルーヴ「孤高の存在」と評していて、まあそうといえばそうなのですが、その表現は初めて聴いたので何かウケました。あ~ちゃんが瀧のステップを再現したら、かしゆかが卓球のアクション(何か〈こまわりくん〉みたいなの)を真似したり、賑やかでしたね。この日のチーム分けは〈セ〉〈グ〉〈ウェイ〉でした。

 

ちなみにこの日、22:30終演予定と聞いていましたが、電気が終わった時点で21時を結構回っており、あれ?この時間配分だと、なんかおかしいぞ……と思ったのですが……

 

P.T.A.のコーナー

ひとしきりコーナーが進むと、あ~ちゃんが「いつもPerfume FES!!では、対バンの相手とコラボレーションして、お互いの歌をカヴァーしたり、いっしょに何かやったりしています……ですが、今回はできませんでした! ごめんなさい!(お辞儀)」

場内に落胆の声。私もすごく楽しみにしていました。ただ、電気が終わった時間を見て「これコラボやる時間ないんじゃ?」と危惧していたら……。

 

あ「向こうは大物だし、いろいろ難しかったのかも。連絡先知らんけえ、お互いのマネージャーを通して何度もやり取りしたんだけど〈今回はできません〉って……でもね、本人がそう言っとるとは限らんし

あ~ちゃん、さらっと言っているがそれは相当踏み込んだ発(以下略)

あ「大人の事情もあるかもしれないし、レコード会社も事務所も違うし……だけど、私たちの電気グルーヴさんへの愛は伝えたい!」

そしてあ~ちゃん、かしゆかがそれぞれいかに電気との対バンを楽しみにしていたかを語ります。のっちは「私は楽しみすぎて、昨日の夢に電気グルーヴさんが出てきました!」

客「ワーー!!

の「夢の中で、瀧さんとキスしちゃいました!!」

客「ワーーー!!(一部悲鳴)

の「そしたらね、もう興奮してきて、すごくイイ曲が思い浮かんだの! じゃあ今日はみんなでそれを歌いたいと思います

客「ワーー!!(一部戸惑い)

か「えっ、そんなにすぐ歌えるものなの?」

の「行くよー、〈♪夢でKISS KISS KISS〉

客「♪夢でKISS KISS KISS(そう来たか!!!)

あ、か「なんか聞いたことあるなー? どっかで聞いたなー?」

の「あっ、もう曲までできた! それでは聴いて下さい、Shangri-la』!!

流れ出す流麗なストリングス(念のため、あのストリングスのサンプリングソースはシルヴェッティ「Spring Rain」です)! 湧き上がる爆発的な歓声!! その中でスーッとセグウェイみたいな物体に乗ってステージ中央に滑り込んでくるあ~ちゃん!!! 電気オマージュとしての完成度が高すぎる!!! いやはや感服&脱帽&爆笑でした。

Shangri-la」の音源をほぼそのまま流しながら、あ~ちゃんはセグウェイ風の物体でステージを徘徊し、のっちはあの曲のMVを意識したのか、足を組んだりステージにしなだれかかったりと艶っぽいダンス(?)を披露。映像も電気のVJっぽい仕上がり(むしろ先方に発注した?)で、MVに出てくるような赤い花がCGでくるくる回ったりしてましたね。

〈♪夢でKISS KISS KISS〉のコール&レスポンスを経て、曲が短めの尺で終わると、のっちは「売れそう!」とコメント(もう売れている、という2人からのつっこみあり)。のっちは「あ~ちゃんが乗っていたセグウェイもどきは、2月15日のあ~ちゃんのお誕生日に私がプレゼントしたものです」とドヤ顔でした。

 

あ~ちゃん「今回はコラボできなかったけど、もしかしたら次の機会があるかもしれない。みんなが〈Perfumeはこんなにも電気グルーヴ愛を表現していた〉と呟いてくれたら、電気グルーヴさんがそれを見て、かわいそうに次はコラボしよう、と思ってくれるかもしれないから、みんなつぶやいて!」と客を扇動していました。

 

そして長いP.T.A.のコーナーを終え、その後いろいろあり、時間は22:25くらい。まもなく終演予定時刻です。

 

あ~ちゃん「あのね、最後にもしかするとご本人が出てきて何かいっしょにやってくれるかもしれないから、この時間はふわふわっとさせておいて(内容を決めずに)、ギリギリまで待ったんだけど……(電気グルーヴさんは)次の予定があるということでもう出られました

コラボの可能性がゼロになり、客にまたも落胆の声。しかしこの日、卓球は渋谷のクラブ・WOMBでレギュラーパーティーがあったんですね。

 

むしろよく電気で出てくれたなー。ありがとう!

 

◇Last Supper

あ~ちゃん「さっきの曲で終わりの予定だったけど、最後にもう1曲やろうか?」

かしゆか「自分たちの曲ならできるよね」

あ「みんな、何がいい?

いままで数多くのPerfumeライヴを見てきましたが、この展開(リクエストコーナー)は初めて観ました! お客さんはそれぞれにリクエストを叫び、「Miracle Worker」などが候補になったのですが、そこでのっちが「私、やりたい曲あります! まだ声出し足りないって人もいるだろうし、〈ディスコ!〉な曲がいいなー」

2人もそれはいいね、ということで決まりましたチョコレイト・ディスコ

あ「これ、ホント急に決まった奴だから、照明はお手柔らかに!」とのことで、確かに照明は本当にその場で対応している感じの白色中心のシンプルなものでしたが、盛り上がりには影響なく、見事なフィナーレを迎えました。

 

そんな感じでPerfume FES!! 2017初日は終了しました。これまで意外とダンス系アクトとの対バンはなかったし、そういう意味では電気グルーヴの登場は満を持してと言えるでしょう。そりゃもちろん両者のコラボは観たかった! 観たかったのですが、それを補って余りある、非常に満足度の高いイベントだったと思います。今後もダンス系アクトとの対バンはぜひやってほしいですね。

 

さあ、今日は2日目、迎えるはチャットモンチーです!

第86回 「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった8の理由

 2016年5月から11月に至るツアーで、Perfumeとそのチームは25公演を、国境を越えて駆け抜けました。彼女たちの歴史において、ここまで長期のツアーは初めて。しかも時期によって内容を大きく変化させることで進化を繰り返す、まさに〈ライヴ〉なパフォーマンスを繰り広げました。

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今回はツアーの最終形であるドーム公演の模様をお伝え……と書いたものの、レポート自体は多くのネット媒体で遥か昔にアップされましたし、そもそもWOWOWで放送済ですね!

 

ただ、ドームツアーの各会場や、ツアーごとの比較はあまりされていないと感じましたので、今回はこんな体裁でお送りします。

Perfume 6th Tour

「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった8の理由

 

どうですか? この安いキュレーションメディアみたいなタイトル!

 

◇「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった理由1〈挑戦と進化〉

「COSMIC EXPLORER」ツアー全体に通底するテーマがあったとすれば、やはり〈挑戦〉でしょう。

 

福井・徳島・和歌山など、初めて訪れるエリアも多かったアリーナツアー。

初めてのアメリカツアー。

名古屋・福岡という初めての会場も含むドームツアー。

 

いずれもPerfumeにとって〈新たな挑戦〉でしたが、さらにそれぞれのツアーならではのひねりと工夫が加えられていました。

 

国内アリーナツアーでは、2015年の〈PPPPPPPPPP〉から続くすごろくでの曲決め=〈3:5:6:9コーナー〉を導入し、日々セットリストの異なるライヴを展開。大規模会場のツアーで、こんなに手間のかかるサービスをわざわざやる人はそんなにいません。

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余談ですが、ライムスターはちょうど〈PPPPPPPPPP〉と同時期の2015年、ツアーの日替わりコーナーで候補曲20曲からダーツで3曲を選び、その場で曲順とつなぎ方を打ち合わせてメドレーを作っており、Perfumeの他にも奇特な人達がいるなと思いました

 

アメリカツアーでは不慣れな土地ながら、日本のワンマンですらまだやっていないドローン演出(曲は「COSMIC EXPLORER」)に挑み、規制でドローンを飛ばせなかったLA公演を除いて大成功。ツアーの最後を飾る〈Dome Edition〉では、わずか5公演ながらセットリストもステージも演出も一新させて臨みました。

 

ツアーのたび、そしてひとつひとつのライヴのたびに反省と工夫を重ねて、曲を繋ぐタイミングの調整からセットリスト変更、音響や照明、ダンスなどのクオリティー向上に余念のないPerfumeチームによる〈Dome Edition〉は、『COSMIC EXPLORER』ツアーの集大成であると同時に、Perfumeの進化を刻み付けた、世界に誇れるライヴだった!!と言い切りたいです(※個人の感想です)

 

PerfumeのNY公演の翌日、私がマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で観たカニエ・ウェストにも全然負けていないと思いましたし(※個人の感想です)、ドーム会場にふさわしい、こんなにスケールの大きなライヴができるなら、MSGという世界で屈指のアリーナ会場に立つことも何らおかしくない、むしろいますぐやればいいと感じました(※個人の感想です)

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◇「Dome Edition」が真に凄かった理由2〈観客の力〉

ここで正直に申し上げますと、実はちょっとPerfumeの動員を甘く見ていました。ドームツアーをやると聞いたとき、はたして埋まるのかな、アルバムのセールスも結構下がってしまったけれど(『LEVEL3』の出荷数は約23万枚、『COSMIC EXPLORER』は18万枚程度)と懸念しました……しかし、完全に杞憂でした。

 

 

……え? 「ドームの4階席や5階席は無人だったよ」「お客さん少なかったね」って、ちょっと待ってくださいよ! 例えば11月4日のナゴヤドーム2万人以上は入っていたように見えました。

名古屋市の人口:220万人、東京23区の人口:900万人と考えると、単純計算すれば名古屋で2万人を集めるのは東京でその4倍の8万人を集めるようなもの(商圏人口は考慮から外します)。しかも土日と比べて確実に動員が落ちる平日公演。これは実際、売り切れでなくとも立派な動員力です。売り切れなかっただけで安直に〈Perfume凋落!〉とか書き立てるアサ芸とかいう媒体もありましたがShame on you!!!!!

 

この動員力、もちろん各地のプロモーターやメディアの宣伝の効果もあったでしょう。特に福岡では、駅構内や電車を使った交通広告でテコ入れ……もとい力を入れていました。

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Perfumeのツアーはひとりで何会場も参加するリピーターも多いですが、そんなコアなファンだけでドームツアーができるわけもなく、この動員力はPerfumeのライヴはお金を払ってでも観たい!」と思う人の多さと言っていいでしょう。

 

これは素晴らしいことで、なぜなら〈良いものを作る=売れる〉というほど音楽産業は単純でも牧歌的な世界でもありません。いまや音楽は〈タダで楽しめるネット上の娯楽〉の筆頭。わざわざお金を払ってまで音楽なんて聞きたくない、というユーザーだって少なくないはずで、これから先もどんどん増えていくでしょう。恐ろしい未来ですが、それが時代の変化というものかもしれません。

そして〈良い音楽をしっかり作る〉という面倒でコストが掛かる割に大抵そこまでのリターンが見込めないことより、TVでの露出の量やイメージ戦略が人気を左右します。そのうえ、流行の移り変わるサイクル(=消費されるスピード)は、ネット社会における情報量の激増に伴い、加速の一途を辿っています。もういい加減、限界まで来ているかもしれませんが……

 

〈売上と人気を維持して長く活動すること〉がますます至難の業になっている芸能の世界、しかも〈若さ〉に価値を置かれがちなアイドル産業で、別にいまブームでもバブルでもない、結成から15年以上経っている女性グループが、地道に作品とライヴを作り続けてきた結果、ドーム会場をここまで埋められるとは……!!

 

 

あのお客さんの多さに、私はPerfumeの底力を見る思いでした。

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お客さんのヴァイブスも良い感じで、やたら熱かった大阪と名古屋、ほんわかと温かかった福岡。特に大阪2日目は、場内のあまりのヒートアップにあ~ちゃんも途中で感極まっていましたね。

どんなライヴも、お客さんの盛り上げあってこその成功です。そしてどのドームでも、3人はカッコつけたり気取ったりしない、ひたすら心理的にオープンなMCを通して、かなり早い段階から観客の共感を得られていたと思います。

大阪では観客の熱さへの信頼感を。名古屋では第2の故郷としての愛着を。福岡ではずっと昔から知っていたドームでライヴできる喜びを、各々が率直に語っていました。その言葉が会場の空気を作り、観客の力を引き出すことにも繋がったはずです。これもPerfumeの能力かもしれませんね。

 

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由3〈最新のセットリスト〉

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〈宇宙探索〉というコンセプトの『COSMIC EXPLORER』ですが、最初のアリーナツアーでは〈3:5:6:9コーナー〉を入れたり、要所要所でメドレーや古い曲が差し挟まれていたため、アルバムの世界観があまり判然としませんでした

初めて行く土地も多い(=初めてPerfumeを観る人も多い)分、コンセプチュアルに作り込むより、多様な要素を盛り込むことを重視したと踏んでいますが、アルバムの出来が良かった分、若干の中途半端さも感じてしまいました……

 

しかしPerfumeは続けてのアメリカツアー、そして〈Dome Edition〉で『COSMIC EXPLORER』の作品世界に大きく踏み込みます。NYのライヴが「Navigate」→「COSMIC EXPLORER」で始まったときは「アルバムのテーマを再現する、こういうライヴが観たかった!」と思ったものです。

 〈Dome Edition〉はアルバムのコンセプトを体現する選曲と、これまでのライヴで要になってきた人気曲から成るセットリストでした。これこそ〈最新かつ最高のPerfumeでしょう。

 

Perfume 6th Tour

「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」SET LIST

SE.Navigate

1. COSMIC EXPLORER

2. Pick Me Up

3. Cling Cling(Album-mix)

4. ワンルーム・ディスコ

MC

5. Next Stage with YOU

6. Perfume Medley 2016 -Dome Edition-

Relax In The City~ナチュラルに恋して~マカロニ~Twinkle Snow Powderly Snow~透明人間~セラミックガール~心のスポーツ~Sweet Refrain

7. Baby Face

8. Perfumeの掟

9. FLASH

10. Miracle Worker

P.T.A.のコーナー

11. FAKE IT

12. エレクトロ・ワールド

13. Party Maker

14. だいじょばない

15. パーフェクトスター・パーフェクトスタイル(※大阪2日目より追加)

16. チョコレイト・ディスコ

17. STAR TRAIN(Album-mix)

 

途中のメドレーについて、こんなツイートもしました。

 

ただ、正直言いますと「Hold Your Hand」でライヴを締めてほしかった……〈君と手を繋ぎたい〉という小さな曲で、〈宇宙探索者〉という壮大なテーマの作品が終わることにも意味があると思います。

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◇「Dome Edition」が真に凄かった理由4〈卓越した照明と音響技術〉

業務用のオリコンこと「コンフィデンス」の11月14日号にMIKIKO先生が登場し、リオ五輪の閉会式での引き継ぎパフォーマンスについて語っていました。

記事によると、閉会式会場の巨大さゆえに「200~300人のダンサーが必要」とリオ五輪サイドに提案されたものの、様々な制約で50人しか連れて行けなかったそうです。

その逆境に対して、MIKIKO先生は「そこはPerfumeなどでの経験が活きましたね。観る側の視点がどこに集中すれば良いのかを、演者の動きと音と映像と照明をすべてシンクロさせることで誘導すると、たとえ東京ドームにたった3人しか立っていなくても、広さを味方にして3人が空気を支配しているように見せることができるんです」。

 

おおー……つまり、ドームという巨大空間ならではのPerfumeらしい見せ方ができるとも言えそうで、実際、照明とダンスの考え抜かれたコンビネーションがPerfumeライヴの大きな魅力です。

〈Dome Edition〉の照明で思い出深いシーンは多々ありますが、ここではメドレー内の「透明人間」、〈♪同じ照明を浴びたいのに〉で3人が両手を天にかざす瞬間、スポットライトの逆光の中、3人のシルエットが浮かび上がるシーンが超カッコよかった、だけ書いておきましょう。

 

 

そして音響も特筆ものでした。

こんなツイートもしましたが、〈Dome Edition〉は想像以上に音が良かった! ドームとは思えないクリアさで、反響による遅延もほぼなく(※座席位置で異なります)、まるでクラブで聴いているような高解像度のサウンド。これはドームツアーのPAシステムで使用された〈MLA〉というスピーカーの機能によるもので、MLAは2015年の〈PPPPPPPPPP〉でも使われたそうです。

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 MSI JAPANの「CONCERT」ページより。TUBEの甲子園ライヴもMLA!

 

でもこのMLA、実際は何がどう凄いんだろう?と思った私はある催しへ赴きました。幕張メッセで開催された、音響や放送、通信、映像制作関連企業の見本市である〈InterBEE〉。ここでMLAを含む、コンサートで使われる大型スピーカーの聴き比べができたのです。

 

私はこの辺かなり疎いですが、素人ながらいくつものスピーカーの出音を聴き比べたところ、いずれも音の再現性の高さ、ハイファイさが特徴のようで、ボリュームを上げても音が歪まなかったり、耐久性に優れていたりと、いまのスピーカーは非常に高性能になっているのだと知りました。

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↑真ん中の小さなスピーカーがMLA

 

そしていよいよMLAの試聴時間がスタート。まず驚いたのが、スピーカー直近でも会場の最後方でも、音質の差異が感じられないこと。普通は距離が離れるほど音がぼやけたりしそうですが、そうではない。これ、どうやっているんだろう? 参加者の皆さんと共に会場内を回遊して、聴こえ方をチェックしている最中、MLAのエンジニアの方がマイクでこう告げました。

 

「えーそれでは今から、椅子席の後ろのゾーンだけ音をカットします

 

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ちょうど椅子席より後方にいた私が、〈え?いまなんて?〉と思っていると、みるみる音量が下がっていき、体感で最初の半分くらいになりました。えっ!?と慌てて椅子席より前に移動すると、そこではちゃんと元通りの音が鳴っています。

これには驚きましたが、どうやらMLAのキャビネット(平たく言うとスピーカーのボディ)の中に、それこそ細胞のように多数のスピーカーが配されていて、そのひとつひとつをコンピューターでシミュレーション&制御して〈どこからどこまで音を届けるか、どこに音を当てないか〉を調整できるようです。MLAの正式名称〈Multi-cellular Loudspeaker Array〉にも合点が行きました。

 

つまりMLAなら、ドームの壁際の観客まではしっかり音を届けて、それ以上の音の広がりをバシッとカットすることで、音の反響による遅延(キックやベースが遅れて聞こえる現象)を防ぐことができ、しかも会場のどこでもほぼ同じ音質で聞こえるという。最高じゃないですか。〈Dome Edition〉のクオリティーには、こんな技術も寄与していたのです。

もっとも、アリーナツアーでもMLAを使っていたようですが、ちょいちょい遅延が気になりしました。あれは何だったんだろう……

 

と、ここまででまた長くなっていますので、あとはサクッと行きます。

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由5〈ステージ構造〉

ドームツアーとはいえ、ステージの機構も含めた物量は「LEVEL3」のツアーの方が大掛かりだったように思います。

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今回はセンターステージに機構を集めた、比較的シンプルな見せ方でした。2010年の東京ドーム公演のアップデート版とも言えそうです。

ステージに関しても私は大して知らないため、「凄かった」の一言で済ませたいところですが、目を見張ったのは「Party Maker」など、メンバーがリフターで10m近く上がる演出。リフターそのもののスペースはせいぜい〈畳2畳〉程度に見えましたが、そこには転落防止の柵もベルトも何もありませんでした。普通は何か付けそうなものですし、これまでのライヴのリフターには常に柵がありましたが……いやはや、腹括ってやってるなーPerfume

カニエ・ウェストのMSG公演も、空中に浮かんだ板の上舞台でライヴをしていましたが、カニエの方がずっとスペースは広かったし、高度も低かったし、舞台の中央とカニエの背中はでしっかり結ばれていましたよ。


◇「Dome Edition」が真に凄かった理由6〈演出のバランス感覚〉

これは言うまでもありませんが、AR(拡張現実)やプロジェクション・マッピング、LED仕込みの衣装といったテクノロジー演出や、宇宙船がモチーフの機構などは、あくまでダンスや楽曲の世界観を引き立てる手段であり、決して演出で圧倒すること自体が目的になっていないのが(ドームという巨大空間でも!)徹底されているのがさすがです。

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ライヴにおける文脈や、作品のテーマとあまりリンクしない演出だろうと、それで客が盛り上がれば良かろうという考えもあるでしょうけれど、それを安易に良しとしないあたりがPerfumeらしさかもしれません。2016年末の紅白歌合戦は、珍しく演出が先走っていた感もありましたが……

 

Perfumeのライヴは、ヤスタカやMIKIKO先生、Rhizomatiksをはじめ、当代一流のクリエイターたちのコラボレーションの場としても有機的に機能しています。これは舞台監督としてのMIKIKO先生の采配の賜物で、こんなに才覚のある人が、よく偶然Perfumeの同郷で振付師をやっていたなーとつくづく思います。

 

◇「Dome Edition」が真に凄かった理由7〈進歩するダンス〉

Perfumeダンスは年々進化しており、それはMIKIKO先生の振付に依るところも大きいです。今回の〈Dome Edition〉で特に印象に残ったのが「FLASH」でした。

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武術のような振付も含む、ややエキゾティックなダンスは、いままでになく静と動のコントラストを活かしたダイナミックさもあり、まだまだPerfumeダンスには伸びしろがあると見せてくれました。

いまのPerfumeだからカッコよく踊れるダンスとも言えそうですし、新しい曲ながら早くもライヴの核になっていたのは、ダンスの力も大きいでしょう。でも、この曲は〈Album-mix〉で聞きたかった……アルバム中でも屈指の完成度の楽曲だと思います。

 

◇「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」が真に凄かった理由8〈Perfumeの掟〉

〈Dome Edition〉で特に大きな話題を呼んだのが、6年ぶりとなる「Perfumeの掟」です。

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このパフォーマンスを巡って、さまざまな論説があるようです。〈掟〉はPerfumeにとって重要な局面で披露されるもので、そこにPerfumeの本質と原点が凝縮されているとか、3人の関係性を表しているとか……

 

もっとも、Perfumeの本質や関係性と言っても、人によって見え方・捉え方は違いますし、〈物語性〉の深読みは不得手なので他の方々にお任せして……

 

 

私の「Perfumeの掟」の認識は、〈普通に歌って踊るだけではないライヴ・パフォーマンス〉の一環です。その挑戦がライヴの自由度や、表現の幅を拡げるプラスアルファになるでしょうし、インスタレーション(雑に言うと空間を用いたアート作品)的な楽しみにも繋がっていると感じます。

 

2007年の〈掟〉は一度だけ見ていますが、何しろ10年前なので細部はさっぱり覚えていません。ただ、アイドルとしてのPerfumeのあり方をメタ的に表現していた印象は残っています。〈事務所の方針なんで〜〉なんてセリフもあったような。

 

2010年の〈掟〉ではのっちが過去の曲の振付を次々繰り出したり、かしゆかが10人になったり、あ〜ちゃんがレーザー銃で風船を割ったりと、それまでの軌跡を振り返ると共に、いまに繋がるメディアアート路線の演出に挑みました。Rhizomatiksとの初コラボレーションもこのときですね。

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また『JPN』ツアーにおける「JPNスペシャル」や、〈ぐるんぐるんツアー〉の「Episode 0」も、新曲と映像を組み合わせたエクスクルーシヴなパフォーマンスという意味では「Perfumeの掟」と近い位置づけと言えるはずです。

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とはいえ、〈Perfumeそのもの〉がテーマ(というかモチーフ?)ともいえる〈掟〉はやはり特別でしょう。そして2016年の「Perfumeの掟」のために、ヤスタカはこの曲を書き下ろしました。

曲調はプログレッシヴ・ハウスで、曲名は「Atmospheric Entry」。〈大気圏突入〉ですね。ここでも『COSMIC EXPLORER』のアルバム・コンセプトとの連続性があり、ヤスタカが今回のコンセプトを気に入っている感がひしひしと伝わってきます。

 

この曲に合わせて、センターステージに360度張り巡らされた透過スクリーンに、3人の3Dモデルデータや映像が次々と映し出されます。「Spring of Life」「JPNスペシャル」「Hurly Burly」「edge」……そして2010年の「Perfumeの掟」。曲中のセリフや演出、3人のダンスにも既出の物が(おそらくはあえて)使われていました。

 

2010年の〈掟〉をアップデートして、いま使える3D映像素材を盛り込んだだけ……とも取れますが、ここまで回顧的な演出はPerfumeのライヴでは初めてで、一瞬走馬灯を見ている気になりました。つまりPerfumeの〈軌跡とその終わり〉を意識したのですが、それではなぜいま「Perfumeの掟」を披露し、こういう内容になったのかというと……皆目見当がつきません

 

その意図が公式に説明されることはきっとないでしょう(Perfumeチームは〈説明しすぎない〉ことを重んじているようですし)。観た人が感じたものが、すべてです。

 

 

もちろんいくらでも深読みはできますし、そういった議論が起きれば盛り上がりにも繋がります。

ただ、何もかもをわかりやすく説明してくれる(そして内容も単純な)、脳味噌をそんなに使わなくていいコンテンツばかりになってきたこのご時世でも、あえて説明をしないこと、考えさせることで作品の世界を拡げるアプローチは、やはり至極真っ当で普遍的な手法だと言えそうですね。

 

◇A Happy New Year!!

新年を迎え、Perfume公式サイトでは新たなアーティスト写真が公開されました。

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2017年2月15日にはニュー・シングル「TOKYO GIRL」のリリースも予定されています。新しいアルバムはまだまだ先でしょうけれど、ツアーの映像作品や、続くシングルのリリースなどもあるでしょうし、各地のフェスやイベント出演も決まっているはず。「Perfume FES!!」や海外ツアーもまた開催してほしいですし、初となる大型野外ワンマン・ライヴなんかも見てみたいですね。

メンバーは29歳になろうという2017年ですが、今年も楽しい一年になることを願っています!!

第85回 Rolling Stone 20 Best Pop Albums of 2016

いやー、これはさすがに〈マジで!?〉と思ってしまいました。Perfume『COSMIC EXPLORER』が、音楽や映画、政治などを扱うアメリカでもっとも著名なカルチャーメディア、Rolling Stoneの〈20 Best Pop Albums of 2016〉の16位と発表されています。

 

記事には見たことのないマニアックな単語が並んでいて骨が折れましたが、ひとまず訳してみました。

16. Perfume, 'Cosmic Explorer'

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15年ものキャリアを経てなお、ベストの作品が発表できるグループは決して多くない。しかしPerfumeの『COSMIC EXPLORER』――2016年でもっとも壮大で伝播力のあるJポップのアルバム――は、これまでの最高到達点だ。

かしゆか、あ~ちゃん、のっちという女性シンガーのトリオである彼女たちは、すべての作曲とプロダクションを司る電子の魔術師、ヤスタカ・ナカタそそのかされて、これまでの4枚のアルバムでは忘れがたいポップな仕掛けを、ダンス・ミュージックのドラマティックな構造と結び付けていた。轟々と回転するリズムの歯車とメロディーのミックスから生じた電子音の波が、爆発的な勢いで高みへと登り詰めていく。

確かに『COSMIC EXPLORER』は甘くて気分爽快かもしれないが、秘められた野心を見逃してはならない。6分に至らんとする「STORY」は、ダンス・ポップの小さな交響曲だ。――キース・ハリス

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ありがとう、キース!! 君のアメイジングなレヴューに感謝しているよ。『COSMIC EXPLORER』が最高傑作と言っても良い、野心的な作品であることは僕も同感だ。いまどき珍しいコンセプト・アルバムであることには一切触れられていないけど……やっぱり歌詞が日本語だからね、気にすることはない。

それと、彼女たちはシンガーでもあり、優れたダンサーでもあるんだよ。あと、君の〈4枚のアルバム〉って記述は、『GAME』『⊿』『JPN』『LEVEL3』を指すのかな? 君が『Complete Best』もエンジョイしてくれることを願っているよキース!!!!

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ああそうだ、文中に〈Electronic Dance Music〉と書かれているけど、そちらでは〈EDM=電子音によるダンス・ミュージック全般〉を指す広義の意味合いと聞いているから〈PerfumeはEDMではない!〉とか面倒くさいことは言わないよキース。

 

◇Music is everything

このランクインは日本におけるPerfumeの評価にありがちな〈謙虚で誠実な人柄〉〈努力を続ける真摯さ〉〈3人の関係性、物語性〉を完璧に度外視した、純粋に音楽面での評価ですね。これはいまのPerfume評において異例ともいえるし、非常に真っ当な評価ともいえます。

 

でも、なんで数多くのポップス作品から『COSMIC EXPLORER』が選ばれたんだろう? そもそもこのランキング自体の基準は何?と思ったらページ冒頭のテキストで解説されていました。

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「ポップ(・ミュージック)」について語ることは、えてして巨大ヒットしたシングルについて語ることと等しい。2016年、その比率はますます高まっている。しかし、フル・レングスのポップ・アルバムはこれまでどおり健在だ。リアーナやブリトニー・スピアーズのような老兵たちをもっとも魅力的に見せ、トーヴ・ローのような新たなスターを自分自身へと入り込ませる。ギター・ポップも、ザ・1975のような醒めた子供たちから、毅然とした旧世代たるザ・モンキーズまでが確固たる立ち位置にあり、ヒット曲を聴いて、ポップスターについて語り合う1年になった」。

 

なるほど、フル・アルバムというフォーマットで発表されたことに意味のある作品……つまりセールスや話題性だけではなく、1枚を通して時代を牽引したり、トレンドを象徴したり、独自の世界観や〈新しいモード〉を提示したり、個性を深掘りしたり、アーティストの新たな一面に光を当てたりすることが基準なわけですね。そういう作品の在り方は〈批評的〉とも言えると思いますし、そんな作品を作り出せる人は長く支持を得られるでしょう。

 

改めてのRolling Stoneの「20 Best Pop Albums 2016」ランキングはこちら。

20. Kristin Kontrol, 'X-Communicate'

19. JoJo, 'Mad Love'

18. M.I.A., 'AIM'

17. Kitten, 'Heaven or Somewhere In Between' EP

16. Perfume, 'Cosmic Explorer'

15. Tkay Maidza, 'Tkay'

14. Lizzo, 'Coconut Oil'

13. DNCE, 'DNCE'

12. Bruno Mars, '24k Magic'

11. Ariana Grande, 'Dangerous Woman'

10. Fifth Harmony, '7/27'

9. Tegan and Sara, 'Love You to Death'

8. Pet Shop Boys, 'Super'

7. Lady Gaga, 'Joanne'

6. Carly Rae Jepsen, 'Emotion: Side B' EP

5. Britney Spears, 'Glory'

4. The Monkees, 'Good Times!'

3. Tove Lo, 'Lady Wood'

2. Rihanna, 'Anti'

1. The 1975, 'I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It'

 

いやはや、全部はもちろん聞けておりませんし「えっこれこんなに上位なの?」という作品もありますが、ブルーノ・マーズアリアナ・グランデ、DNCE、フィフス・ハーモニーみたいな乗りに乗っている人気者から、リアーナやブリトニー、カーリーにガガ様みたいなビッグネーム、トーヴ・ローやザ・1975といった新しいスター、はたまたM.I.Aみたいにエッジーでオルタナティヴなアイコンが入り乱れる中にPerfumeの名前があるとは……

しかもPerfumeは、英語以外の言語による作品としては唯一のランクイン。これは2014年に2NE1が『CRUSH』で6位を記録した以来の事態です。

結果的に『CRUSH』は2NE1の最期の作品になってしまいました。彼女たちにはまだまだ可能性があったのに……なお私は彼女たちの最高傑作は『NOLZA』だと思います

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◇A Rolling Stone Gathers...

〈Rolling Stoneでも評価されるなんて、Perfume凄い!〉という〈世界が称賛する日本〉的な解釈もできますが、Rolling Stoneのランクインには重要な点がふたつあると思います。

 

まずひとつが、Perfumeは当代の、そしてグローバルなポップ・ミュージックのシーンで注目すべき、頭一つ抜けた存在であると改めて(初めて?)光があてられたこと。アジア的なエキゾティシズムや、キッチュで物珍しい存在としてではなく、いま聴いて普通にカッコいいものとして採り上げられています。

映画評論家の町山智浩さんが(確か文春の連載で)「最近のRolling Stoneは誤報もあったり、記事の質が下がっている」と書かれていましたが、腐っても鯛です。

 

ふたつめに、このRolling Stoneのランキングはたまたまではなく、ちゃんと届くべきところに、Perfumeの音楽が届きつつある状況の表れにも見えます。このランクインを活かして、アメリカの市場にもしっかり腰を据えて取り組めば、さらなる展望のきっかけにもなりえます。

 

ドームツアーのMCにて、あ~ちゃんは「アメリカツアーは厳しかった、打ちのめされた」とすっかり自信を無くしてしまったように映りましたが(実際、マディソン・スクエア・ガーデンのことは一言も口にしなかったPerfumeのアメリカ進出は、まだまだこれから。そういう意味では、順調と言ってもいいのかもしれません。

 

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いまだかつて、アメリカのポップ・ミュージックのメインストリーム(つまりV系やメタル、アニソンなどのニッチな文脈ではないところ)で正当に評価された日本人はほとんどいません。その数少ない例のひとつがPerfumeだと思います。

 

あの巨大なMSGに、そうそう簡単に行けるわけがありませんし、MSGでライヴをやればアメリカで成功したことになるとも思いませんが、少なくとも、いまの彼女たちの行く末には可能性があります。残り時間は限られているとしても……

 

私はNYで、Perfumeを(日本のファンと同じように)心から応援して、自分たちの街に、国に来てくれることを願っている人々と出会いました。その願いをできる限り叶えて、さらにビジネス的にも成立させて、長く活動できることが、海外進出における〈成功〉なんじゃないかな、と薄らぼんやり考えている次第です。

 

余談ですが、〈あ~ちゃん〉の英語表記はA~chanではなくAh~chanの方が、少なくとも発音の点では正しいのでは……文字面は壊滅的にアレな感じですが。

第84回 「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」MC集

Perfume 6th Tour「COSMIC EXPLORER -Dome Edition-」、遅れ馳せながらのツアーレポートの第1弾は、各地でのMC集です。1万字超えてますが、さらに第2弾に重たい奴が控えてます(なおいつアップされるかは不明です)

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◇2016年10月22日 京セラドーム大阪初日

 

<序盤MC>

のっち「昨日はオフでした! …………」

かしゆかえっ、何?笑」

の「先に自分のオフの過ごし方を言おうか、ゆかちゃんのから聞こうか迷ってた」

か「何してたの?」

の「デパ地下にステーキ丼を買いに行って」

か「凄い!ホテルから出たんじ」の「(食い気味に)出るわ!

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↑検索したらこれが出ましたが、ランチ用のワンコインのものらしく、のっちが購入した丼とは別です。ご参考までにご覧下さい

 

か「その前の日に、明日のオフはみんな何する予定?と聞いたら〈私はホテルで寝てます〉って言ってたから」

の「体力を取り戻すために何か食べようと思って、デパ地下に行ったら、ステーキ丼屋さんの店員さんが、すっごいイケメンだったの! いや、私の好きなタイプではないんだけど、〈あっ、私はこういう顔も好きなんだ?〉っていう感じ?」

か「どっちでもいいわ!!

以前どこかで、「Perfumeはメンバー3人ともカッコいい人が苦手」と語っていたことはもう皆さん忘れてあげましょう……

 

の「店員さんはイケメンなんだけど、結婚指輪してた」

か「そんなんよく見とるね。自然を装って〈ステーキ丼ひとつ下さい指輪!〉って感じ」
の「でもそのときはすっぴんで、髪もぼさぼさだったから、Perfumeののっちだって気付かれませんように!って思ったら、赤面しそうになって」

か「あーのっち赤面するよねー」

の「それでなんとかお会計が終わって、ふーって一息ついて帰ろうとしたら、店員さんが〈お客様ー!! お待ちください!〉って! ハッ!!(少女漫画のように両頬を両手で覆って振り返り)わ、私ですかぁっ!?って」

か「なんでそこでドラマ入れたん?

の「店員さんが〈お釣りを間違えてお渡ししてしまいました!〉って。あ、じゃ、じゃあこの200円もらえばいいんですね、ってお釣りもらって、帰ってお弁当食べて、爽やかな気分で寝られました!

 

かしゆかのオフは〈吉本新喜劇〉に行き、生まれて初めて漫才を生で観たそうです。「広島にいた時代はTVでよく見ていたけど、東京に行ってからは全然観られていない」とのことでした(一応MXTVという東京ローカル局で放映されているのですが……)

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のっちかあ~ちゃんが、〈芸人コンビはイメージ通り、舞台の上手下手(かみてしもて)に分かれて、それぞれ「どーもー!」とマイクに向かっていくのか?〉と訊いたところ、どうも違うようです。

(以下、再現芸)ちょうど隣にいたあ~ちゃんを引き連れ、微笑んで手を軽く振りながら、下手から悠然と舞台中央へと歩みを進めるかしゆか。マイク(エア)に向かって「(※低い良い声で)さあいよいよ始まりました」

の「えええーーー!!!!

 

他、かしゆかが客席前方にいたため、漫才の客いじりで当てられないよう全力で目をそらした話や、新喜劇の話、そしてトータルで2時間半はあるという公演を「あの人たち、1日3回回しでやっとる」と!! これには驚きましたし、あ~ちゃんも「うちらもまだまだじゃね」などと言っていたような。

 

そしてあ~ちゃんは宮藤官九郎さんの「真田十勇士……じゃなくて(普通に言い間違えて自分で大笑いしていた)中村勘九郎さんの舞台「真田十勇士」を神戸まで観に行ったそうです。

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「あんなにおもしろい舞台は初めて!」と興奮気味にまくしたて、〈岩々の上に立って開脚しながら、岩ごとガーッと動いて舞台転換する〉という離れ業の再現ポーズを取ったりしていました。それはぜひ観てみたい、と思ったのですがこの翌日が最終公演でチケットも完売とか……

このエピソードから、この日のチーム分けは〈かん〉〈く〉〈ろう〉になりました。

 

<大阪の土地柄について>

あ~ちゃん「大阪はいつも熱くて盛り上げてくれて、ツアー(のテンション)に入っていきやすいから、序盤で大阪に行くことが多かったんですけど、今回はこんなに遅くなってしまいました。それでも京セラドームに2日間も立てるなんて凄い、嬉しいです」

 

<ドームでの追加公演>

のっち曰く、ドーム公演は当初予定になく、ツアーの途中で(と言っていたと思う)「ドームで追加公演やりませんか?」という提案がスタッフさんから来たそうです。

 

余談ですが、もしこののっちの発言が事実なら、極めて異例です。大抵のマネージメントは、所属アーティストの1年先のスケジュールまで決めていると聞きます。そしてプランニングは2年先までしていると。音楽産業がコンサート重視にシフトし、全体的に公演本数が激増したことで、コンサート会場が(特に土日祝など良い日程は)全然取れなくなり、みんな1年先とか1年半先の会場を争奪している状況がその一因です。

これは日本ならではの慣例で、海外のアーティストは、大抵半年先くらいしか予定を決めていないとも聞きます。だから来日公演は急に日程が決まったり、平日の公演しかできなかったりするケースも多いのです。

 

当然Perfumeもご多分に漏れず、アリーナツアーを行っていた2016年5月~7月当時もその1年先まで(つまり10月~11月も含めて)予定がしっかり決まっていたはずです。

そこでドームツアーを追加するなら、すでに決まっていた10月~11月の予定は延期しなければなりません。そのうえ、たとえ5月の段階で追加公演が決まったとしても、アリーナツアー、さらにアメリカツアーを行いながら、半年以内(つまりすぐ)に開催されるドームツアーの準備も同時に進めなければいけないこと……

 

これは少し考えただけで、スタッフさん何人か倒れたんじゃ?と思ってしまうほどタフなスケジュールです。しかもMIKIKO先生と真鍋さんたちはリオ・オリンピック/パラリンピックの閉会式での引継ぎセレモニーも同時期に担当していたという……。

もはや〈前代未聞の挑戦〉といっても過言ではありません……が、のっちがちょっと盛ってる可能性もあるので……。

 

なお、急にドームの日程が空いた(と予測される)ことについて、さまざまな憶測が乱れ飛んでいますね。とはいえプロ野球シーズンも終わっているし、地方のドームはさすがにそこまで毎週イベントは入っていないだろう……と確認したら、どのドームも大抵土日祝日は予定が入っていましたので、うんやっぱS●●●解散が原因かもし少なくとも、誰かがドームツアーをキャンセルした可能性は高いと思います。おそらくは平日のナゴヤドームを普通に切れるくらい、物凄い動員力のある人たちが……

 

この日ではなかったと思いますが、あ~ちゃんがどこかの会場(訂正:福岡のようです)で「追加公演がドームって、普通はそこが目標だよね!」と言っていました。まさに異例です。というか余談が散々長くなったのでMCレポートに戻ります。

 

<アメリカツアー>

この話も序盤にしていました。LAでは規制でドローンが飛ばせなかったくだり、あ~ちゃんが「あれをやるために行ったのに! でもうちらにはドローンが見えてたから。飛んでるところ完全に見えてたから」と幻視していたことや、サンフランシスコ(かシカゴ?)では事前にもらった会場の図面と実際のステージのサイズが違っており、ステージの3階部分を作ることができず、あ~ちゃんは「じゃあそれ、何の図面なん?」と至極真っ当な疑問をぶつけていました。

なおこの話題は2日目にも出ました。現地でのトラブルを最初「サプライズ」と呼んでいましたが、それだと何か良いことのようにも思えるので、かしゆかが「ショッキングなハプニング」と言い換えていましたが、まさか次のナゴヤドームで〈サプライズ〉に見舞われるとは……

 

<ラストのMC>

あ~ちゃん「周りの人たちも(オリンピック閉会式とかで)凄く評価されていて、普通なのは私たちだけじゃ……って不安になったりしましたが、こんなに大きなステージで、最高の時間を過ごすことができました!」

いえ、あなた方こそ普通じゃないと思いますよ。

 

◇2016年10月23日 京セラドーム大阪2日目

 

<序盤のMC>

あ~ちゃん「ツアーを通して『COSMIC EXPLORER』の曲が成長しているのを実感します」
のっち「おうさかー! ありがとうごじゃいます!!

かしゆか「昨日の今日だけど、かなりグレードアップしています!」

このかしゆかの発言、初日中盤のMCであ〜ちゃん「ここまで失敗なく来ています!」と安堵していたのと実に対照的です。セットリストに1曲追加されたり、音響がさらに良くなったり(※個人の感想です)、ダンスのグルーヴが増していたり、あ~ちゃんのテンションがさらに上がっていたりと、ライヴを観ながら、Perfumeは一体どこまで行くんだろう?と思うほどの改善ぶりでした。

 

<グッズ紹介~リュック編>

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の「グッズのリュックは若いマネージャーの発案です」

か「もう私たちより年下がマネージャーになってるからね」

の「リュック作りませんか、と言われたので、のっちさん乗りましょう! 私たちは社会人じゃないけど(注:会社勤めではなくても立派な社会人だと思いますよ)、仕事でも使えるものにしたくて、それならパソコンが入るサイズがいいだろうし、色もカラフルだとライヴの直後は(気分が乗っているから)いいけど、また平日になって仕事が始まると合わなくなるから、白黒にしました……けど、その中には!

か「中にはー!」

の「宇宙が広がっています!!」

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か「うちら、宣伝がヘタ!!

 

<グッズ紹介~クルージャケット編>

の「クルージャケット、あれ凄く安くしてもらったのー! いま大声で言っちゃったけど」

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か「ジャストで着てもいいし、女の子だったら大きめのサイズで着てもかわいい。生地もペラペラじゃなくて、高級感のある素材です」

 

またもや余談ですが、クルージャケットはMA-1ユーザーからもかなり高評価のようです。

 これは気になる!と私も市場調査を行いました。

 

 

結論:クルージャケットはお買い得です。

 

<チーム分け>
〈何ねん〉〈どないやねん〉〈知らんがな〉(※緑の太字にイントネーションを起きます。あ~ちゃんが正しい発音を現地スタッフに教えてもらったそうです)

かしゆかなんでやねんイエーイ!

そして締めの〈それが大阪!〉は全員で言います。

 

P.T.A.のコーナー>

ちょっとドーム会場とは思えない、コール&レスポンスでの熱すぎる歓声にあ~ちゃんが感激。「いいじゃん、最高じゃん! もうなんか泣きそうだよー」と言って涙目&涙声になっていましたが、そのまま「今日は踊りを考えてきました!(腕で大きな輪を作って)たこ焼き! たこ焼き! (両掌を頭上で合わせて)通天閣! 通天閣! 太陽の塔!!(両手を左右に大きく広げ、目を見開いて真顔)」

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↑3人とも、このカイリー・ミノーグみたいな感じでした


<ラストMC>

あ~ちゃん「みんなが背負ってきた想いと愛、全部受け止めました。みんな、明日からも踏ん張れる? うちらのこと忘れないで、これからも応援して下さい」

 

◇2016年11月3日 ナゴヤドーム初日

<序盤のMC、名古屋の想い出>

かしゆか「名古屋は、私たちが石ころみたいな活動をしている頃から温かく迎え入れてくれて、それがドームでできるなんて!」

 

のっち「(MCでPerfumeと話せて泣いているファンに)涙はステージを降りてから!

 

あ~ちゃん「名古屋は第2の故郷です! うちら故郷たくさんあるよね……いや、3人で〈名古屋は第2の故郷〉という共通認識があるっていう意味だから!(名古屋以外にも第2の故郷があるとか)そういうことじゃないから!

 

あ「名古屋と言えばー! おお……おおす……

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大須

あ「おお……オアシス21

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おお、かつてPerfumeがイベントやったりしていたオアシス21ですね。

 

か「これ、知ってる人もいるかもしれませんが、あ~ちゃんずっと〈オアシス21〉が言えなかったから

あ「いつからだろう? 13年くらい言えんかった。〈オアシス〉と〈オーシャン〉が同じ引き出しに入っとるから」

 

<新舞子>

あ「ビタミンドロップ(2003年)の頃、海辺でライヴしたよね」

か「美浜?」

客「しんまいこー!

の「えっ!? 行った人いるー?」

なんと、手を挙げているお客さんがちらほらいます! 本当に初期からPerfumeを応援しているファンですね!

あ「そんな人はおらんじゃろ。あれはうちのお母さんすら来とらん」

客「」

(※かしゆかが言う通り、Perfumeは美浜で開催されたフリーイベント「美浜海遊祭り」に出ていますが、2008年7月の開催です)

 

か「しかもあのとき、珍しくテレビカメラが入ってて」

あ「そうそう。あれ誰が観とったんじゃろうね。灼熱の中、(真顔で)〈♪ビ・タ・ミ・ン・ドロップ〉って。お客さんは海でテンション上がっとるから〈フゥーッ!〉ってなってたけど、うちらは(真顔で)〈♪ビ・タ・ミ・ン・ドロップ〉って。あのときの衣装が木綿だったから、もう汗ジミがすごくて、終わったあと衣装を木の枝に干したもん。あれはずっと忘れん」

 

そしてその流れのまま、チーム分けは〈ビタ〉〈ミン〉〈ドロップ〉に決定。あ~ちゃんが高音で「ビター!! ミンー!! ドロップー!!」と叫ぶのですが、高音すぎたと気付いたのか、途中で「…聞き取れてる?」と観客に確認していました。

 

P.T.A.のコーナー>

大阪ではアメリカツアーに続けて「ポケモンGo」ネタでしたが、名古屋では一転、「ポケモン言えるかな?」が導入されました。あ~ちゃんによると、1988年~89年生まれならまず歌えるらしく、歌っているお客さんもたくさんいましたが、その世代ではなくゲームに疎い私にはさっぱりわかりません。結局2回「ポケモン言えるかな?」を歌ったあ~ちゃん、「ずっと前しか見てなかったけど、振り返ったらみんなポカーンとしてたよ?」

 

<終盤のMC>

かしゆか「初めてのナゴヤドーム、どうなるかなって思っていたけど、あっという間で。いまこんなに穏やかな気持ちでいられるのは皆さんの温かい愛のおかげです」

のっち「初めてのナゴヤドーム、あっという間でした。皆さんの優しさが伝わってきて、ずっと歌ってきた曲にも新しい一面が感じられました。皆さんの優しさに甘えた1日でした。また会いましょう!」

あ~ちゃん「アメリカで頑張ってきたから、みんなに会えた。アメリカで、私たちの夢はまだまだ遠いなぁって、打ちのめされて帰ってきたけど、日本ではこんなにたくさんの人が応援してくれる。また、頑張れます。見捨てんで、応援してね?」

 

◇2016年11月4日 ナゴヤドーム2日目

 

<序盤のMC>

のっちが「最近肌が白くなったなー」と思ったら、単に粉を吹いていただけということをスタッフさんに指摘される。それを傍で聞いていたかしゆかが〈すごくおもしろいけど、これはさすがにライヴのMCで言うのはかわいそうだし止めておこう〉と思ったら、なんと本人が最初のMCでそれを堂々と披露していた(しかもドームで)、というトークで始まりました。

 

この日はユニクロとのタイアップCMが話題に。

このグラフィック、あ~ちゃん曰く「カメラのシャッター1回切るだけで終わった!」とのことで、カメラが幅広い角度に渡り多数セットされていたようです。かしゆかのポーズが、片足で立って少し上体を反らすもので、のっち曰くかしゆか得意の奴ー!!」。確かに「GLITTER」のラストでもそんなポーズでしたし、かしゆか本人も「片足で立つのは得意」と同意。

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のっちは続けて「そうそう、〈Natural Beauty Basic〉の(タイアップCMの)時でもさ~」と、他のアパレルメーカーの話をガンガンし始めるのですが、途中で何かに気付いたらしく、「この話はやめておこう!」と止めます。あ~ちゃんが「うちらは(いまは)ユニクロさんじゃけぇね」とたしなめると、「忘れて! この話忘れて!」と必死でした。

 

<初めてのドーム>

2010年11月3日に初めて東京ドームに立ったPerfumeが、その6年後の11月3日、初めてナゴヤドームに立つという新たな挑戦ができた話から、6年前の東京ドームにも行っていたお客さんに、挙手してもらうくだりがありました。

結構たくさん手を挙げる人を見たのっち「ひっさしぶりー!」

あ〜ちゃん「いや、その間も会っとると思うよ

 

ポケモン言えるかな?>

前日の「P.T.A.のコーナー」で初披露された「ポケモン言えるかな?」ですが、あ~ちゃんが見た〈後ろ振り返ったらみんなポカーンとしていた〉という事態への対処として、この日からは字幕テロップがスクリーンに表示されるようになりました。

あ「字幕入れたから! これでみんな歌えるよね!」

(2回目を歌うときに)あ「歌えないって人も、〈♪ラ・ラ・ラ 言えるかなー、き・み・は 言えるかなー〉だけでも歌って!」

あ~ちゃんは「この曲は良い、ホントに良い」と大絶賛でした。ていうか、いま調べたらこの曲、「MOTHER」でお馴染みの田中宏和さん作曲じゃないですか!

 

<サプライズ>

この日のライヴはいろんなサプライズ、もといショッキングなハプニングに見舞われました。

・開場がかなり遅れる

・「だいじょばない」のラスト、キックの振りでのっちのヒールが飛んでいき、ダッシュで取りに行った

(※「SCHOOL OF LOCK!」によると、ヒールを取りに行きながらも曲の終わりの〈♪だいじょばないから!〉ではきっちりキメ顔で客席の方角を見据えたのっちかしゆかとばっちり目が合う→かしゆか大ウケ。のっち曰く「本当にだいじょばない」)

かしゆかとあ~ちゃんがのっちに駆け寄り、様子を確認する→次の「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」のイントロが流れ出す→誰もポジションに着いていない→しばらく曲だけ流れる

・「Party Maker」、あ~ちゃんのコールから始まるはずがPAのザキさんが先走り、いきなりドラムのフィルインが流れる→「しまった!」とばかりに、すかさずフェードアウトさせて曲を止めるザキさん→あ「Party Maker!!!」→何事もなかったかのようにもう一度始まる

 

また、メンバーがタイアップCMのライバル企業の話をいきなり始めるのもハプニングと言えるでしょう……

 

<ラストのMC>

かしゆかいろいろハプニングもありましたが、3人で向き合って、あははって笑い飛ばすことができて、チームがまた強くなったと思いました。皆さんもチームの一員です、助けてくれてありがとう。皆さんのおかげです!」

のっち「一瞬でした。楽しくて、はしゃぎ過ぎたところもありました。ドラゴンズじゃないけど、ホームだと思ってやってました!」

あ~ちゃん「6年前に初めてドームに立って、いままた新しいドームに挑戦して。6年前はハプニングなんて笑い飛ばせなかった。強くなれたのは、信じてついてきてくれる皆さんがいるからです。ナゴヤドーム、最高の時間でした、これからもよろしく!

 

◇2016年11月12日 福岡ヤフオク!ドーム

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福岡はPerfumeにとって縁の深い土地であり、序盤のMCではその思い入れが多く語られました。のっちのソロMCでは、福岡ドームに立てて感無量であることが窺えましたし、あ~ちゃんは福岡の想い出を詳しく話しています。

 

あ「福岡は高校生の頃、初めてのレギュラーラジオ番組の収録に、月2回来てました。車でクロスFMまで、ヤシの木が生えてるところを移動するんだけど、現地のスタッフさんが〈あれがマリンメッセですよ〉みたいに案内してくれて、そこで見たドームの大きさに驚きました。そうしたら福岡のイベンターさんが〈いつか立って下さいよー、出られますよ!〉と言ってくれて(ちなみにこのときの再現で、あ~ちゃんが隣に立っていたかしゆかの肩をポンッと叩いていて、割と軽い感じだった模様)。ももちで高速道路を降りて、いつも(ラジオ局に向かって)曲がっていったのとは逆の方角に初めて行って。行ったらドームがあって、そこに自分たちの名前が書いてあって……信じられなかった。こうしてここに立てたのは〈やりましょう!〉と言ってくれたスタッフさん、そしてずっと昔から背中を押してくれた、(現地スタッフの)皆さんのおかげです。こんなに最高の空間はない!今日は最高の1日にしましょう!」

 

長いツアーの最終公演に相応しいMCでしたが、あ~様はその後に「ドーム1日やるだけだと大散財、利益はありません!」と堂々と発言していました。

 

<髪切った?>

かしゆかナゴヤドーム公演後、10cmほど髪を切ったが誰にも気付かれなかった。ヘアーの担当さんも気付かなかったそう。そしてのっちがどさくさに紛れて、かしゆかの髪に頬ずりする姿がスクリーンに大写しになりました。

 

<クルージャケット>

福岡でもこの話題が出ました。メンバーもかなり気に入っているみたいですね。

のっち「クルージャケットはカッコよく作りすぎて、着ている人みんなカッコよく見える」

かしゆか「あれは盛れる! 普段使わない言葉だけど、盛れる」

あたりまえですが、Perfumeは盛れるかどうかに血道を上げなくていいんですね……

 

<あくび事件>

 

あ~ちゃん「(福岡のプロモーターの)BEAさんのおもてなしが凄くて、楽屋に大きなケーキがあって、3人の人形が乗ってるの! それだけでも凄いんだけど、ケーキのタワーもあって……(突然客席を指差し)あくびしてるー

のっちはあ~ちゃんをかばうようなポーズを取って「おいっ! いまあ~ちゃん話してんだぞっ!

あ「(真顔で歯をくいしばる)」

の「あ~ちゃんおこだよ!

あ「……いま、することか~~!?」

いままでにない展開に、会場に緊張(?)が走ります。

 

あ「……まあ、生理現象じゃし仕方ない。許す!!

ドームで客ひとりあくびしただけで何やってんですか!

 

<ケーキの人形>

あ~ちゃんが話したかったのは、ケーキに乗っていたメンバー3人の人形でした。あ~ちゃんとのっちはまあまあ似ていたけれど、あ~ちゃん人形はまつ毛がバチーン!となっていて、のっち人形はとにかく目が飛び出していると。しかしかしゆかの人形はいままででいちばんよく似ていて、のっち曰く絵本の「傘地蔵」みたいだったと。

 

 鳥人間>

<サプライズ>

最後の曲「STAR TRAIN」の終盤、観客みんなで入場時に配られた白いサイリウムを点灯させるサプライズ(※本来の意味)がありました。あ~ちゃんは感激の涙を流し、歌が終わると「……恵まれすぎてて、何て言ったらいいかわからん……しあわせ」「(サイリウムが)たくさんおる……大散財なのに……」と大喜びでした。かしゆかとのっちはずっと嬉しそうにニコニコしてましたね。

個人的にはこのサプライズ、「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」で行いたかったですね。2006年の原宿アストロホールのように。

 

<ラストのMC>

かしゆか「いままででいちばん長いツアーでしたが、こんなにずっと楽しかったのは初めてです!」

のっち「凄く得るもののあるツアーでした。それを大好きなお客さん、スタッフさん、メンバーと最後を迎えることができて、本当に嬉しいです」

あ~ちゃん「アメリカで、自分たちはまだまだだと思いました。それくらい厳しかった……でも、〈この後悔を次に活かそうよ!〉と言ってくれるスタッフさんや、隣で〈大丈夫だよ!〉って言ってくれるメンバーの励ましでがんばることができました。Perfumeは続きます。これからも進んでいきます。これからの私たちも楽しんで下さい」

 

そして「名残惜しいね~」と言いながらファンへの挨拶を終えたメンバーが、ツアー最後のステージを去ると、このメッセージが映し出されました。

Perfumeの旅はまだ続くようです。これからも見届けましょう。もちろんあなたと共に!