第77回 2009年、そして2016年のフライデー事件
2016年7月1日、とある記事が写真週刊誌「フライデー」に掲載されました。その詳細は一切省きますが、以前報じられた記事のダメ押しともいえる内容のものです。このブログでは、以前の記事に対する識者の見解(a.k.a 宇多丸さんの魂の叫び)も紹介していますが、はてさて……
しかしこの記事、どう捉えればいいのでしょうか。
信憑性のない三流記事?
今後のPerfumeの行く末を左右する大事件?
フライデー許さん?
高橋許さん?
あ~ちゃんが幸せならそれで良い?
私にはどれもそこまでしっくりきません。そもそもの因縁を辿るため、まずは2009年の話に遡りましょう。
◇Perfume VS フライデー
2009年6月、Perfumeメンバーに関する記事がフライデーに掲載されました。これもまあ詳細はぶっ飛ばします。
いまとなっては笑い話ですが、のっち→かしゆかと2週連続の記事掲載となった当時の衝撃はかなりのもの。このブログでも、識者の分析(a.k.a 宇多丸さんの心の叫び)を紹介しています。
2009年というのは、その前年に『GAME』の大ヒットを経て、かつては夢のまた夢だった日本武道館公演が大成功。Perfumeメンバー、3人をずっと支えてきたスタッフ、そしてファンすべてが、Perfumeの輝かしい未来が、すぐそこまで来ていることを確信して、喜んでいたはずです。苦労も多かったけど、ようやくここまで来られた。そしていよいよこれからだ!と。
フライデーの記事は、そんな期待に冷や水を浴びせました。
◇VOICE
フライデー事件の直後、宇多丸さんのラジオ番組に、Perfumeファンの男性からのメールが届いています。
〈このショックの理由は、自分たちの声援が、アイドルである彼女たちの幸せに繋がるものと思っていたのに、そんなの一切関係なく、彼女たちは自分で幸せを見つけていたことに、落胆したからだと思います〉という、まあ言ってしまえば当然の現実を、多くの男性ファンは目の当たりにしたわけです。
宇多丸さんが心境を語ったように、「自分は疑似恋愛をしているつもりはなかったのに、思った以上にショックを受けた」という人も多かったでしょう。私もそうです。この事件によって、疑似恋愛ファン層が相当数削られたのは、その後の支持層の若年化を考えると、結果的には良かったと言えるのかもしれませんが、それもまた皮肉ではあります。
この記事でショックを受けたのはファンだけではありません。当時の〈MEMBER BLOG〉で、あ~ちゃんの映像は化粧っ気も元気も一切なく、痛々しいものでした。しかしそれは、あくまでカメラを前にしたもの。フライデー事件以降、初めてファンの前に立った日が、『⊿』ツアー初日、2009年8月7日の埼玉・戸田市文化会館でのライヴです。
以下、当時の私の日記から抜粋します。
雨降る戸田駅の周辺には〈チケット譲って下さい〉とボードを持つファンが多数。会場に移動し、1300人規模という当時のPerfumeには小さすぎるホールに入ると、満員の場内にはいままで感じたことのないような張り詰めた空気が。
フライデー事件以降、初めてファンの前に立つ3人が何を話し、何を話さないのか。いつもより静かな客席には、かなりシリアスでナイーヴな受け止め方をする人も多かったように思います。
場内が暗転すると「Take off」のSEから、幕を丸く切り取って3人が登場。新しい、そして大胆かつ大規模な演出に挑戦するPerfumeの姿。「NIGHT FLIGHT」「エレクトロ・ワールド」「Dream Fighter」「love the world」を経て、最初のMCが始まります。
あ~ちゃん「戸田市文化会館、チケットが激戦だったそうで。ここで運を使い果たして大丈夫ですか?」
「私たちは2か月ほど前に、皆さんをお騒がせしてしまって……」
すると観客の一部から、クスクスと笑い声が。今思えば、これくらいの余裕のある受け止め方が、ちょうどいいかもしれませんね。全然気にしてないよ、って。
しかしそこでのっちが、「そこ笑うところ?」とちょっとおかんむり。あれ? 確か君の記事が先陣を切ってお騒がせていたのでは……
あ~ちゃんの話は以下のようなものでした。
「いままでライヴでは、正直な思いを伝えようとやってきたつもりだったけど、もうあの件(フライデー)で、自分たちを信じてもらえないんじゃないかと思った。皆さんを信じ切ることもできていなかった。アルバムのプロモーションをしていても、うまくいかなくて、どうすればいいのかわからなかった。
でも、アルバムが凄い数売れて、本当に嬉しかった。ライヴも、それまでは〈いやだな、やりたくないな〉って思ってたけど、やるからにはしっかり準備して、最高のライヴにしたかった。今日は特別な時間にしたいので、皆さんも心から楽しんで下さい!」
私の記録には〈あの件には触れないと思ったけど、あ~ちゃんは正直な人だ。この話の最後の方では泣きそうだった。話の間、かしゆかは神妙な表情、のっちは苦笑していた〉って書いてあるけど、確か君の記事が先陣(以下略)
フライデーの話が終わって……しかし、あ~ちゃんのMCは終わりません。
「戸田には、びっくりドンキーがたくさんあります。3つもある。でもマネージャーは1軒しかない〈安楽亭〉に反応していた」
グッズ紹介の流れでは、パンフレットやステッカーなどを見せる3人。このツアーでは〈部屋着〉もあったようです(※記憶にない)。かしゆか、部屋着を身体に当てて見せて「ワンピースにもなるよ」。あ~ちゃんは会場内に早くも部屋着を着ている客(ライヴ中なのに!?)をめざとく発見。「普通の部屋着って、コンビニには行きづらいよね? でもこのグッズの部屋着なら……まあ結局行けんのじゃけど。透けるから注意しんさいよ」
他にも延長料金ネタ、「大人が動いてくれて素晴らしいステージができた。お金すごいかかっとる」など、あ~ちゃんのなかなかの放言が記録されています。お客さんの前に立つことで、鬱屈を晴らすことができて、楽しかったんでしょうね! それと蛇足ですが、この時期からブログやってればよかったかな、と少し思わなくもないです。
◇会いたくて 会いたくて
中盤のMCも記述あります。以下、おそらくライヴを〈いやだな、やりたくないな〉って思っていた時期になされたのでは、と思われる会話です。
あ「事務所の偉い人と話してて、その人が〈コンサートに来るって、どういうことだと思う? 音楽が好きなら、CDを聴けばいい。それでもライヴにお客さんが来てくれるのは、そのアーティストの人柄に触れたいから。その人に会いたいからだよ。たとえばサザンオールスターズは何百曲もあるけど、ファンの人は桑田さんやメンバーに会いたいから行くんだ〉って。
確かに自分も、aikoさんのコンサートに行くときは、『明日』とか好きな曲やってほしいなーと思うし、やってくれたら嬉しいんだけど、それよりもaikoさんに会いたいから行ってる。それなら、Perfumeのライヴにこんなにたくさんの人が来てくれるのはどういうことだろう?って、そう考えたら心がぎゅってなって、凄く嬉しくなった。せっかく来てくれた人の為にも、最高のライヴをやりたい」。
そしてそのMCの後、「ワンルーム・ディスコ」を経て、ここでなんと、もう絶対やらないと思った「ジェニーはご機嫌ななめ」が炸裂!!! イントロで起きた爆発的な歓声、忘れがたいです。私も思わず「おおおおおおお!!!!」と叫んでしまいましたよ。のっちが元気いっぱいに歌い始めます。
〈♪君とイチャイチャしてるところを見られちゃったわ
それをペチャクチャ言いふらされて私ピンチ〉
私の記録には〈ははは!全部事実じゃん! めちゃくちゃ盛り上がったな〉って書いてありますね。この「ジェニー」こそ、フライデーの記事への鮮やかなアンサーであり、Perfumeとしてどうあろうとしているかの意思表示とも取れます。その後のPerfumeの快進撃は言うまでもありませんね。
◇Seven Years In ...
戸田市文化会館のライヴから7年後。第二次フライデー事件の翌日、札幌でのライヴが開催されました。ツアー千秋楽を飾る北海きたえーるのチケットは2日ともソールドアウト。この動員はさすがです。
最初のパートを終え、あ~ちゃんが開口一番「みんな、楽しみにしてきたーー?」
はい、いろんな意味で!!
するといきなりあ~ちゃん「皆さんを信じ切ることができなくって……」
えっ? 7年前の戸田市文化会館でも同じようなこと言ってたぞ!?と凄まじいデジャヴに襲われましたが、「皆さんを信じ切ることができなくって、2年前に札幌に来たときは、1日しかやらなかった。でもそのときに、〈次は2日間やります!〉と言いました。そして今回、2DAYSで来ることができました!! 今日は最高の時間にしましょう!!」
おおー、ヒヤッとしたよ。あ~ちゃんがいつものようにはけると、のっちのソロMCに。開口一番「えー、先日ネットで……」
えっえっもうあの件触れるの!?
「電球を6個買うつもりが、60個買いました! のっちです!!」
…………。
しかしその後、のっちは意を決したように喋りだしました。
「今回のツアー、楽しく回ってきて、ここ札幌が最終公演です。でも、愛のない横槍を入れたり、わーわー言う人達がいて、心が揺さぶられないわけではないけれど、私たちの信念や覚悟は揺るぎません。私たちには皆さんの愛があるし、私たちの作品への叱咤激励を、真摯に受け止めて進んでいきます。
そして何より、私たちがいちばん大切にしているライヴで、今日という貴重な時間を、最高のものにしましょう!」
まさかのっちが、これほど大人な対応をするとは……!!
一言でいえば、「記事は否定も肯定もしない。けれど、自分たちの作品とライヴで判断してほしい」ということですね。
んー何ですかね、別に楽しい話ではないけれど、フライデーに好き放題書かれつつもアイドルとしてしっかり機能(?)できているのがなんかおもしろいし、まあ音楽やライヴの良し悪しとは関係ないし、という感じか。
— t_kito (@t_kito) 2016年7月1日
そして宇多丸さんと同様、やけくそ気味な「お幸せに!」に至るという
↑第二次フライデー事件当日の私のツイート
かしゆかがMCに戻ってきます。「でもさっきの電球の話、あるね。ネットでパーッと買い物していると、うっかり業務用とか買いそうになる」
の「余った電球をスタッフの皆さんに配ろうか。あ、ファンクラブ会員にプレゼントしようか! あとで担当に確認する。プレゼントの意味をはき違えている気もするけど」
か「電球は一度のっちの家に行ったもの」
の「場所がなくてキッチンに置いてある」
もう完全に通常モードな二人でした。
あ~ちゃんの様子はいつものように笑顔いっぱいでしたが、これは人によって見え方は異なるでしょうね。
◇Miracle Worker
のっちの演説でフライデー事件ははいおしまい……と思いきや、まさかの展開で、戸田市文化会館で披露した「とある曲」を歌うミラクルが起きたり、それを歌うあ~ちゃんが凄く微妙な表情に見えたり、かと思えば「みんな聴きたい曲ある? 彼氏募集中?」とさらっと強烈な一発を入れてくるなど、偶然も味方して、よくわからないけどかなりおもしろいところにきっちり着地できたと思います。
もし、2009年のフライデー事件がなかったら、こんなに見事な受け身が取れたかわかりません。もちろん年齢を重ねたいまだから、そこまで動じなくてもいいこともあるでしょうけど、あの事件があって、3人やスタッフの皆さんが頭を悩ませ、どう対応すればいいか苦慮したからこそ、そこで深まったものだってあったはずです。それが今回の対応にも生きたのではないでしょうか。
もし、2009年のフライデー事件が、2016年の第二次フライデー事件を越える力になったのだとしたら、こんなに愉快なことはありませんよね!
さあ、この後はいよいよ『COSMIC EXPLORER』ツアーの国内最終公演です!! 目いっぱい楽しみましょう!!!
第76回 特にPerfumeに関心がない人の『COSMIC EXPLORER』幕張ライヴ評
このブログでは以前、Perfumeに興味のない知人女性に無理矢理映画「WE ARE Perfume」を見せたエントリーを書きましたが、ご存じでしょうか。
今回はその第2弾として、ほとんどPerfumeに関心のない友人男性をライヴに無理矢理誘いました。
◇Let Me Introduce...
友人はこんな人です。
・アーティストマネージメント、レコード会社、プロモーターなどでキャリアを重ね、音楽業界を知り抜いている
・クラブDJとしても長年活躍しており、音楽知識も幅広く豊か
・超有名どころを含めて、数多のDJやミュージシャンとも親しい
・私とは10年前に仕事で知り合った。このブログの存在も知っている
・Perfumeは、CMタイアップなど〈メディアで流れる曲〉がなんとなくわかる程度
・ライヴに向けては、一切の予習をしていない
・山中湖のフェス「SWEET LOVE SHOWER」に山下達郎さん目当てで行ったとき、Perfumeも出演していたが、Perfumeの時間は場内アトラクションの気球に乗っていた
よりによって気球って……私がいなければ、彼とPerfumeのライヴは未来永劫、接するポイントはなかったでしょう。はたしてどうなるか!
◇幕張初日 MCダイジェスト
かしゆか「幕張はワンマンでは初めて。フェスでは出たことあるけど、ああいうときは大抵、最前列には〈次のアーティスト待ちでーす〉の人がいる(※いかにもつまらなさそうな再現芸あり)。もちろん好きなアーティストを最前で観たい気持ちはわかる! でも、今日は全員がPerfumeファンなんだよね!」(※私の友人を除いて)
あ~ちゃん「ゆかちゃんは、いてくれるだけでええんよ」
か「ありがてぇ~ポジションじゃ」
あ「ライヴはね、ホントは90分くらいがちょうどいいんよ! でもファン・サーヴィス(Fan service)の女たちだから、そこはもうがんばっちゃう」
あ「この写真、寮の食堂で撮った奴」
のっち「二重跳び1回だけできるよ!(再現すると、飛んだ後身体が深く沈み込む)」
あ「(P.T.Aのコーナーにて、カメラ収録が入っていない日だけできるという)ミッキーー! ミニーー!! しまった手足がこんがらがって間違……バズ・ライトイヤァーーーッ!!! 無限の彼方へ、さあ行くぞー! 飛んでるんじゃない、落ちてるだけだ!」
か「名言出た!」
の「ゆっくり間違えた」
あ「会長に夢を託されました、マディソン・スクエア・ガーデン2DAYS」
の「じゃあ3人でワンオク風のジャンプしよう! みんなも飛んでね!」
ワンオク風ジャンプとは pic.twitter.com/XYUNklgRvw
— matome (@eight88888) 2016年6月17日
◇P.T.Aのコーナー
今回、とある曲が「P.T.Aのコーナー」で使われていますよね。誰もが耳にしたことがありそうなあの曲で、ライヴではみんな楽しそうに踊っています。
実はこの日のライヴに来てもらった友人、まさに当時あの曲に関わったスタッフなんですね。それを昔から知っていたので、このツアーは彼に観てほしかったのです。
「P.T.Aのコーナー」であの曲のコール&レスポンスが始まると、彼が「まさかこの曲とは……」と呟いて、しめしめ、してやったり!と思ったのです。
終演後、どこであの曲だと気付いたか尋ねたら、
「(あ~ちゃんの)最初のステップの取り方でもう気付いていた」とのこと……えっその時点でわかるんだ!? さすがは元スタッフ。そしてあ~ちゃんの再現度がそれなりに高かったということですね。
◇キミは何を思うの
幕張メッセ初日のライヴが終わりました。この日のライヴ、大きな会場の一発目でありながら、ダンスのグルーヴ感も、音響も、会場の一体感も申し分なかったです。長いPerfumeの歴史でも、いまが心・技・体でもっとも充実している時期なんじゃないか?と感じる程の出来でした。徳島のミラクルはまぐれでもなんでもなかったのです。
そして彼に感想を訊くと、開口一番出てきたのはなんと……
「圧倒的な多幸感」でした。
これが凄く意外で、彼のキャリアからすれば、まずは楽曲のクオリティーや音響、演出や構成といったテクニカルな部分から言及されるものと思っていました(そもそも、彼は現行アイドル・ポップスにそこまでハマるようなタイプでもありません)。
そしてこの〈多幸感〉、宇多丸さんやピエール中野さんによるPerfumeライヴ評と、まったく同じポイントです。
↑『GAME』がオリコンチャート1位を獲得したことを知り、多幸感に包まれる宇多丸さん
それぞれ異なるルートやメソッドや信念をもって、人生における音楽の在り方を突き詰めて、それを生業にしている人たちが、揃いも揃って〈Perfumeライヴの多幸感〉を大きな魅力として挙げるところに、やっぱりそこが核心なのか、と思わざるを得ません。
↑広告写真ですら〈I♥Perfume〉Tシャツを着用するピエール中野さん
友人の人生において、仕事と関係なく、アイドルのライヴに行くことはほぼないでしょう。そして彼の、音楽への並ならぬ思い入れをよく知っている(つもりの)私にとって、その賛辞は驚きでもあり、やっぱPerfumeチームすげえなって感じでもありました。
彼のライヴ評は続きます。(※曲名は出していませんが、ネタバレギリギリな表記もありますので、ライヴ未見の方はご注意下さい)
・全体的に素晴らしい
・圧倒的な多幸感を少なくとも4回感じた
・1曲目の時点では、こういうクールな演出で最後まで見せ切るのかと思ったら全然違って、人間味に溢れていた。あれは好きになる人が多そう
・ライヴ中に楽しめる部分がたくさんあって、それぞれが魅力的。生身のパフォーマンスだけでなく、ディスプレイの映像がそれを補完して完成する曲もあって、最初それに気付かなくて悔しかった
・あのディスプレイに映る映像の綺麗さは普通じゃない。4Kで撮影しているのだろうか? 普通は映像の赤みや青みが強調されてしまうので、ライヴで流す用にあのクオリティーの映像を作れと言われたら、頭が痛い
・音響は、最初かなりキツかった。全体の音が潰れているうえに高音域が耳に痛い。これは困ったなと思ったが、最初のMC以降は一気に改善されて、PAの技術に驚いた
・360度からお客さんに見られるあのステージは、メンバーにとって気が抜けないもの。負担にもなるだろうし、本当はあまりやりたくないかもしれないが、ダンスを裏側から見られるような趣向はファンには嬉しいだろう
・ステージ上での打ち合わせも、舞台裏を見せているようでファンは喜びそう
・「(曲名、ネタバレ)」が特に良かった。〈まったく踊らない〉という振付でも、それ以外の要素でもって成立させているのが凄い
・曲がどれも凄く良くできている
・ダンスでいちばん難しいのは、(動きを)止める技術だと思っている。Perfumeはそこがずば抜けている
・ライヴの見せ方として、すごく挑戦しているのが良い
・途中でダレるかな、と事前に思っていたけど、見せ場をバランス良く配していてそれは杞憂だった
・私が全国各地のライヴを観に行ったり、どうかしているブログを書いていることにも合点が行った
友人は〈良いものは良い〉というフラットなスタンスなので(その分、いい加減なものには手厳しい)ある程度おもしろがってもらえるかな?とは予期していましたが、私とは違う(=私には見えていない)見方で、ここまで高評価のポイントが出てくるとは思っていませんでした。
◇Let's Groove
時系列が前後しますが、ライヴの翌日、友人からメールが来ました。
・メンバーみんなリズムの感じ方が後ろ目、重めだから(ダンスが)しなやかに見えるのかも。意図的にそう見せているのかはわからない
・もともと個々が持っているリズム感もありながら、ドラマーが敢えてコンマ数秒後ろのところを叩くことでグルーヴを重くする、的な
・なので僕の中ではPerfumeのダンスはジャズ寄りではなくロック
もしかすると楽器の演奏やDJを経験していない方にはあまりピンと来ない表現かもしれませんが、これがつまり〈グルーヴ〉の認識です。このブログでもときどき表記していましたが、そういえば説明などは一切していませんでした。
グルーヴは、日本語では〈ノリ〉なんて訳されますね。人間が楽器を(ソロでも合奏でも)演奏すると、たとえどんなに上手い人であっても、ほんのわずかにリズムのズレや、音量の変化が生じます。人間の耳は、その揺らぎを心地良く感じるのです。その揺らぎから生まれる、演奏のダイナミクスをグルーヴと呼びます。
グルーヴの基礎は、ドラムとベースです。友人のメールにあるように、ドラマーがジャストなタイミングよりほんの僅か遅れて(これを〈溜める、タメを利かせる〉とか言いますね)ビートを刻むことで、聴いている人には重たさや迫力、引っかかりを感じさせることができます。
↑せっかくですし、もう一度貼ってみました
一方で、カラオケボックスのバックトラックを考えてみて下さい。どの楽器(というかパーツ)も、リズムはきっちり正確で、音量もすべて一定をキープしているはずです。でもそのいかにも機械的な正確さって、音楽としては味気なくありませんか?
ヤスタカのトラック……つまりPerfumeの楽曲の場合も、それぞれの要素を完全にぴったり揃えるのではなく、ほんの少しリズムをずらしたり、音量のメリハリを与えている(はずです)。ここから生まれる躍動感こそが、グルーヴです。
↑グルーヴを感じるならこれ!という曲に悩みましたが、やっぱりこれでしょう!
グルーヴィーな音楽は聴く人を楽しませて、身体を動かしたり、踊りたくなります。演奏に、そして音楽に重要なのは正確さではなく、グルーヴです。ちなみに徳島でみんなで踊った阿波踊りの魅力も、グルーヴ感にあります。
ただし難しいのは、グルーヴの認識は誰でもできるとしても、それを生み出せるかはまったく別の問題です。演奏が物凄く上手なメンバーでバンドを組めばすぐに最高のグルーヴが出るかというと、まったくそんなことはありません。
グルーヴを生むために、当然技術は不可欠ですが、それ以上に演者たちのリズム感や呼吸、相性や好みといった曖昧な要素に大きく左右されます。そのうえで地道な練習やライヴを重ねる必要もあるでしょう。えてしてグルーヴは人と人の関係や、鍛錬の中でこそ生まれます。
察しの良い方なら、僕が何を言わんとしているかお判りでしょう。
このブログで、Perfume3人の〈関係性〉の話はほとんどしていませんが(それはどうしても空想・妄想の範疇を出ないため)、この〈演者たちのリズム感や呼吸、相性や好み〉のアンサンブルが抜群だからこそ、そしてそれを小学生の頃から3人+MIKIKO先生で追求し続けてきたからこそ、Perfumeのダンスには他のどのグループとも違うグルーヴ感があります。これは断言できます。
かつてMIKIKO先生はTV番組で、「Perfumeの振付で心掛けているのは〈形の美しさ〉と、〈その中でのグルーヴ感〉」と語っていましたが、まさにいまのPerfumeは心・技・体ともにそれを最高のレベルで実現できている、充実した時期だと思います。
〈Perfumeとグルーヴ〉の話はいつか必ず書きたかったので、友人ありがとう! しかし音楽ファンがグルーヴのマジックに魅せられてしまうと、友人や僕のように何千枚もCD(友人はレコードも)を買っても止まらず、理想のグルーヴを追求し続けてしまうので、くれぐれもご注意下さい……。
◇Fan service [Bitter]
さてグルーヴ話で脱線しましたが(でもいちばん書きたかった部分)、終演後に一通り賛辞を述べてくれた友人が「でもさ、良い意見ばかりを聞きたくて呼んだ訳じゃないでしょう」と一言。待ってました。
「全体的には素晴らしいが、あえて言うなら……」ということで、以下、友人が呈した苦言です。
・生のヴォーカルを被せている曲と、そうではない曲があったが、生歌を被せている曲は歌の音量のバランスが取れておらず、正直きつかった
・特に終盤がもったいなかった。最後から2曲目(曲名は「A」とします)でも生のヴォーカルを重ねていたけど、決して揃って上手というわけでもないので音程が不安定だし、先述したヴォーカルそれぞれの音量の問題もあった。ベースの軽さも気になったし、いかにもアイドル・ポップな曲調もちょっと……これはもちろん好き嫌いの話だけど
・最後の曲も歌い上げ系を持ってきていたが、「A」と同様に音程のズレと音量のアンバランスがあった。それでも、観客が全員で大合唱していれば感動したと思うが、別にそういう雰囲気でもなかった……
・個人的に、トラックとヴォーカルの全体的なバランスは、もっと歌を前に出してもいいように思った。逆に、生の歌を重ねる時はマイクの音量は下げてほしい
・楽曲の作りがまったく同じものがふたつあった。メロディーやアレンジは変えてみせているけど、構成は完全に同じ
・セットリストの構成も難しいと思った。どれも曲は凄く良いが、ダンス・ミュージックをそれなりに聴いている人でなければ、全部の曲が同じに聞こえてしまわないか?(※これは私の認識だと、すべてを〈テクノ〉か〈テクノ・ポップ〉で括っている人も少なくないと思います。しかしこの日、いわゆるテクノは1曲もありません)
以上、私が常々思っていることもあれば、思いもよらなかった指摘もあり、やっぱりプロの意見ですね。繰り返しますが、「ライヴ全体は素晴らしいが、あえて言うなら」という指摘ですよ!
また、苦言ではありませんが「メンバーが〈歌詞を書きたい!〉とか言い出したりしないのか? そういうときはどうするのか?」という質問をされたので「あ~ちゃんが一時期そう言っていたが、ヤスタカはまったく聞き入れなかった」と伝えました。
◇Point
とまあ幕張メッセ近くのお蕎麦屋さんで散々話し合ったのですが、友人の結論として、以下の内容が述べられました。
・今日のライヴでいちばん良かったのは、〈ネタバレなので控えます〉を使って3人がポーズを取るシーン
・何より3人が可愛い。それは顔やスタイルだけの話じゃなくて、所作や愛嬌も含めて。やっぱり愛嬌が何よりも大切だと思った
友人よ……いや、もはや同志!!
彼がふたたびPerfumeのライヴを観る機会があるかはわかりませんが、そのときはこの話の続きがあるかもしれませんね。
さあ、そして今日は幕張メッセ公演の2日目です! 楽しんでいきましょう!!
第75回 Perfume 6th Tour「COSMIC EXPLORER」徳島公演
◇6月4日(土)アスティとくしま
◇Dance With...
◇Money
◇P.T.Aのコーナー
◇3人のタイプ
◇締めのMC
昨日のPerfumeのライヴも良かったなー。セットリストを変えて流れが良くなっていたし、「STAR TRAIN(Album-mix)」ではイントロのドラム部分で、さらしを巻いたのっちが和太鼓を乱打して、観客全員で夜中まで阿波踊りを踊りまくったからなー(一部ウソ)
— t_kito (@t_kito) 2016年6月5日
↑徳島公演関係の自分のツイートで、個人的にいちばん気に入っているもの
◇6月5日 アスティとくしま
◇Let's Dance!
◇チーム分け
◇Perfumeの選曲基準
◇マスカラ
◇後半戦
◇3:5:6:9コーナー
◇ザキさん
それ普通に、私と同じでPerfumeファンそのものじゃないか! とはいえ、好きな人たちとお仕事できる可能性があるのが、音楽業界のいいところですね。
↑もう会場は鳴門の渦潮みたいな盛り上がりでした(?)
◇Music is everything
第74回 宇多丸さんが「The NIGHT」で激論
宇多丸さんとPerfumeについてのブログなら任せろ!とは全然思っていませんが、こればかりは見過ごすわけに行きません。
宇多丸さんが毎週水曜日の深夜1:00~3:00にMCを務めている、AbemaTVの番組「The NIGHT」。サイドMCにサイプレス上野とバニラビーンズ(週替わり)、背景にロベルト吉野というアナーキーなメンツで放映中。
宇多丸師匠のゼイリブ評聞きたかったぜ… @AbemaTV でオンエア中! #AbemaTV https://t.co/YqIKr73M4c pic.twitter.com/lVNLJJVFVY
— ずるり【=◈︿◈=】 (@pinkertonJPN) 2016年5月25日
5月25日(水)深夜の放送も、いつもどおり好き勝手な内容に……と思ってのんびり観ていたところ、この日は様子が違いました。
番組スタートから15分足らずで、その週のニュースを3つ採り上げるコーナーが始まります。
1:何か(完全に忘れましたし、結局あまり触れられていなかった)
2:Perfumeあ~ちゃん 家族公認の交際発覚
3:LDH関連ニュース(LDHはEXILEや三代目、E-girlsなどの事務所)。何か、LDHの曲がJASRACの使用料収入でナンバーワンになったとか
おいおい、宇多丸さんの「THE NIGHT」であ~ちゃんの熱愛ネタやるのか
— t_kito (@t_kito) 2016年5月25日
マジかよ!と私も即応体制に入ります。まず1つ目のニュースを早々と片付けた宇多丸さん。ついに「2」に踏み込みます!!!
◇VOICE
まず「Perfumeあ~ちゃん 家族公認の交際発覚」と読み上げた瞬間に「いま声のトーン変わったから」と自ら認める入れ込みっぷり。以下、大意ですがニュアンスに気を付けて、思い出しながら書きます。
・(記事であ~ちゃんと家族公認の交際をしているとされる、お笑い芸人である)サバンナの高橋さんとは、実はスペースシャワーTVのマキシマムザホルモンの特番でご一緒した。そのときはお互いにPerfumeファンだと知っていて、Perfumeの話もしていた
・高橋さんは凄く良い人だった
・でも自分だって昔からPerfumeファンで、Perfumeにはウザいほどの愛情がある。でもその話は長くなるし、ここではしない。〈宇多丸 Perfume〉で検索すればいろいろ出てくるから
↑検索したら2番目が当ブログでぶっ飛びました。それにしても宇多丸さん、いまなおPerfumeに対しては〈ウザいほどの愛情がある〉って……いつも素直じゃない宇多丸さんが!!
・ずっとPerfumeを応援してきたけど、俺も所詮はBUBKA野郎だから。Perfumeに「もう俺たち、別れよう」って言ったこともある。「そもそも付き合っていない」と言われたけれど
・親心としては別にいいよ、そりゃ彼女たちの年齢だってあるし、良い人と付き合ってくれればそれでいい。お父さん、「交際するな」とは言わないよ?
・ただ……高橋さん、ファンとして見れば「自分もファンで、他のファンの気持ちがわかるから、そういうところまで踏み込まないようにしよう」とか、なかったの!?
宇多丸が一言物申すww @AbemaTV でオンエア中! #AbemaTV https://t.co/771qukbC3c pic.twitter.com/hZQ35aFcpq
— N氏 (@NC_SPBOYZ) 2016年5月25日
↑出た!宇多丸さんの偽らざる本音が!!
・俺はPerfumeとの付き合いは長いけど、メンバーの誰の連絡先も知らない。のっちのお母さんのメールアドレスしか知らないから。お母さんにはときどき「先日、娘さんとこういう共演をしましたよ。娘さん、凄いですね」って送ってる
のちママのアドレスだけ知ってる宇多丸師匠 @AbemaTV でオンエア中! #AbemaTV https://t.co/tpeG1macy7 pic.twitter.com/A0kVGt1Xym
— 流星群ティア (@ryuseiguntear) 2016年5月25日
↑宇多丸さん、その行動の動機は一体……
・自分にとって、アイドルの連絡先なんて聞くもんじゃないという矜持がある。(この日アシスタントを務めた)バニビのレナさんの連絡先も知らないし、聞く気もない(なおサ上はレナさんの連絡先は知っているそう)
宇多丸師匠のPerfumeスキャンダルのコメントを見ながらTVにサバンナ高橋さん出てるからウケるw @AbemaTV でオンエア中! #AbemaTV https://t.co/bkAWu6Nvv3 pic.twitter.com/82J7qOmByc
— ИΛО-КЭY (@70key) 2016年5月25日
・でもまぁ、高橋さんならね……これがいかにも怪しい男、例えば〈会社経営の一般男性〉とか、これあまり言いたくはないけどイケてるミュージシャンだったり、それこそラッパーとかだったりしたら、もう大暴れしている!
・この記事では「誰かのお誕生日会に参加」って書いてあるけど、俺そんな芸能界的なお誕生日会なんて一切呼ばれたことないよ。みんなあるの? → サ上も呼ばれたことはないが、バニビのレナさんは呼ばれているらしい → レナさんに、芸能界的なお誕生日会の話をかなり詳しく訊く
・そういう芸能界のお誕生日会ってどこでやってるの? 笑笑? 天狗? 海峡? 俺たちの東方見聞録?
・サ上曰く「自分はアイドルとの仕事も多いし、新潟の現場で、自分の隣でNegiccoの3人が疲れて寝ていたりしたけど、そんなの何もできるわけがない」
・俺だってPerfumeと金沢でライヴした後、打ち上げで隣でお酒飲んだり、一緒に桜を観たりしてるんだよ!!!
・でも何にもないから!!!(ライムスターなのにSOUL SCREAMと来ましたか! ← 90年代の日本語ラップを知っている人は大爆笑のギャグ)
・お幸せに!!!!(※若干投げやり気味にCMへ)
◇After The CM
そしてCMが明けても、宇多丸さんのヴォルテージはまったく衰えません。
・あ~ちゃんの交際話、いままでこの番組でいちばん真剣に語った。これで2時間行けた
・それで時間を使いすぎたから、3つ目のLDHのニュースが飛んだ。三代目J SOUL BROTHERSの曲が、昨年度のJASRACの管理曲でいちばん著作権使用料を稼いだとか。いつも番組でLDHLDH言ってるのに!(注:AbemaTVを運営しているサイバーエージェントの男性社員は全員LDH系、つまりチャラいという指摘……もとい偏見)
◇うおっマジか! やっべえ!!!(by イジリー岡田が楽屋へ突撃した時のレナさん)
それ以降は映画「WILD STYLE」と日本のヒップホップシーンの黎明期を説明したり、イジリー岡田さんがバニビのレナさんの楽屋に侵入し、レナさんの私物を舐めまくるといった驚愕の展開を経て、番組の最後にこんなサプライズが!
おめでとうございます!!!宇多丸師匠ー!!! @AbemaTV でオンエア中! #AbemaTV https://t.co/4QT9xLny3c pic.twitter.com/UXvUUPSphY
— リーノー a.k.a IRON (@rinoooIrooon) 2016年5月25日
……宇田丸って、誰だよ!!!!!
宇多丸さん、誕生日おめでとうございます!AbemaTV皆さんでパシャり! pic.twitter.com/stxUIcaOZm
— サイプレス上野とロベルト吉野 情報幕府 (@saue_to_royoshi) 2016年5月25日
ライムスター宇多丸さんのお誕生日をAbemaTVスタッフの皆様とお祝い出来て嬉しかったです♡
— バニラビーンズ レナ (@VB_Rena) 2016年5月25日
#水曜TheNIGHT #AbemaTV pic.twitter.com/7zMnDirvnS
宇多丸さん、お誕生日おめでとうございます。
◇私見
(うーん、お笑い芸人でモテる人は本当にモテてるって聞くし……まあそうなるよな……うさんくさい人でもなさそうだし、あ~ちゃんは以前「ファンの人と結婚したい」って、多分リップサービスだろうけど言っていたし、なるべくしてなった感もあるよな……)
— t_kito (@t_kito) 2016年5月25日
お幸せに!!!!!!!!!!!!!!!
第73回 Perfume 6th Tour「COSMIC EXPLORER」静岡公演
あ~ちゃん「話したことは上げていいけど……上げるって、何? 何ッターとか、何スタグラムとか?」とのことでしたので、レポートします。
5月21日(土)静岡・エコパアリーナ
まずは最初のMCから。
あ~ちゃん「静岡でのワンマンライヴは4年ぶりです!」
のっち「BBQ(アミューズ主催フェス)では毎年来ているんですけど」
あ「4年前、茶畑の話したの覚えとる? 4年前にも来ていた人ーー!」
客「(大体10~15%くらいが挙手)」
あ「えー!凄ーい!! 浮気もせずにー!?」
なお、その後かしゆかが呼びかけた「初めてPerfumeのライヴを観る人」は2割くらいでした。これは「4年前も来ていた」組とは重ならないため、観客の7割近くが「前回(JPNツアー)の静岡公演は観ていないが、Perfumeのライヴは観たことがある」人。おそらくその結構な割合が、静岡エリア外の観客だったと思われます。
あ~ちゃん「『COSMIC EXPLORER』聴いてきてくれた人ー?」
客「(大歓声!)」
あ「すごーい!ありがとう!!」
の「カッコいいアルバムだよね!」
あ「あのアルバム、本当に気に入ってて、こんなに気に入ったアルバムは久々」
えーと、ということは『LEVEL3』は……と思いましたが、かしゆかとのっちも「ア、アルバム自体久々だもんね!」と一生懸命サポート。あ~ちゃんやっぱすげえな。
その後あ~ちゃんは早々にステージ裏に姿を消して、のっちのソロMCが始まります。
「ドゥフゥッ! 静岡のみなさーん!
ど、どうした? なおその後、のっちは自分の力こぶを指して「これ何だっけ? こぶし?」とのたまっていました。
かしゆか「私、実は先月も静岡に来ました! ルーシー・リーの展示会があって……」
客「(特に女性が)キャーー!!!」
か「キャー!って人とシーンと静まり返った人で別れとる。その展示会、東京で観に行けなくて、全国巡回の最後が静岡で、それを観るために来ました」
このあと、かしゆかがルーシー・リーさんの作品の魅力を語っていたような気がしますが、すみません……一切覚えておりません……(シーンと静まり返っていただけに)
◇炭火焼き
その後はご当地トーク。静岡で有名なハンバーグレストラン=さわやかには、Perfume3人ともまだ行ったことがないとのこと。
客「えぇーー(明らかな落胆の声)」
の「タイトな予定で静岡に来ているから、行けないかな……みんなに任せた!」
か「みんな今日の夜はさわやかに行こう!」
↑さわやか名物「げんこつハンバーグ」。ミディアムレアな焼き加減が絶妙です。なお、さわやかのホームページアドレスが http://www.genkotsu-hb.com/ 、げんこつハンバーグドットコムなのがじわじわ来ます
◇恒例のチーム分け
◇中盤のある曲にて
大掛かりな機構を使う曲の途中、先頭を歩くのっちが途中でかなり慌てて前に進んでいくシーンがあって、さりげなくやっているように見えるけど、やっぱりタイミングをきっちり合わせるのは難しいんだな……と思いました。
◇P.T.Aのコーナー
◇POWPOWPOWPOW!!!!
何か(確か「P.T.Aのコーナー」?)がバシッとキマったとき、あ~ちゃんが「ポゥポゥポゥポーーゥッ!!!」と景気良く叫びながら、手でギャング・サインなポーズ(厳密にはたぶん違うと思うけど)をキメていましたが、あれ、誰か止めなくていいのかな? 日本なら大丈夫か……海外でやるとどう受け取られるかわかりませんが。
◇のっちの駆けっこ解釈
◇Too Many Gain(=音量高すぎ→爆音)
とある曲(派手で盛り上がる奴)をやる前に、PAスタッフの方に、低音の出力アップをお願いするくだりがありました。するとあ〜ちゃんがさりげなく「よろしくお願いします! 姉さんの魂継いでるから」。
「ポリリズム」前の代官山UNITから共にPerfumeのライヴを作り上げ、そして今は亡きPAエンジニアの佐々ふみさんのことに、公の場で初めて……観客も静かに拍手。そしてPAさんのおかげで、この「ノンストップ猫ちゃん」(by あ~ちゃん)パートを最高のテンションで駆け抜けました!
◇静岡初日の総括
Perfumeらしい改善っぷりがどう発揮されるか注目していましたが、上述のある曲でちょっとタイミングが合わなかったり、まだまだ発展途上の部分もあるように見えました。あ~ちゃんも「ツアー2か所目なんだけど、仙台から2週間空いてるから、あんまり入ってこないところもある」と随分思い切ったトークをしていました。
とはいえ、随所で進行の効率化が図られていると感じましたし、MCもどれくらいの尺で「これからやること」を説明するかのバランスがぐっと良くなっていたと思います。楽しい良いライヴでした!
5月22日(日)静岡・エコパアリーナ
快晴に恵まれた2日目。エコパアリーナの周りには空と山しかありません。
◇のっちのiTunesチャート監視
ソロMC。長かったので箇条書きです。
・「FLASH」がずっとiTunesチャート1位だった! 嬉しい!
・最初ずっとチャートを見ていたら「FLASH」は2位で、1位は弊社のONE OK ROCK
・ワンオク聴きたかったけど、チャートで負けてて悔しいので絶対聞かない。そして「FLASH」を自分でダウンロードした
・そうしたらそのちょっと後、「FLASH」が1位になった!
あ~ちゃん「いや、ひとりだけでそんな影響ないじゃろ」
ちなみに、初日の最初のMCではすぐにステージを離れたあ~ちゃんでしたが、この日は結構長く話してからステージを離れました。少し余裕が出てきたんですかね。
◇のっち VS おにぎり
のっちのソロMC「最近食べたいちばん美味しかったおにぎりは、あ〜ちゃんのお母さんが握ってくれたおにぎりののっちです! 最近よくあ~ちゃんのお家にメンバーで集まって、広島時代の友人のお誕生日会をやったりしているんです。あ~ちゃんのお母さんがいろんな料理を作ってくれるんですけど、そこで作ってくれたおにぎりが本当に美味しくて!」
かしゆか「お塩だけのね」
の「お米の炊き具合も、握る力も、塩加減も完璧だった」
か「のっち自身のおにぎりはどうなん? おにぎり代表じゃろ」
かしゆかには珍しい雑なフリ!
の「うーん、自分が握るおにぎりには、そこまで愛情がない」
◇人生(ZIN-SAY!)
かしゆか、「Perfumeを人生で初めて観るっていう人ー!」と聞こうとして、「Perfumeの人生で…………先走ったね」
その調査ですが、この日は見たところ〈4年前の静岡ライヴも来ていた人〉は昨日より倍増して3割くらい。初めてPerfumeのライヴを観る人は2割くらい。土曜は他エリア、日曜は地元の方々が多かったみたいです。
◇チーム分け
◇「WE ARE Perfume」でのロンドン再現
あ~ちゃんの再現芸はなかなかのものです。
◇The Choice Is Yours
ライヴの途中でのっちが、ある選択をします。お客さんは大盛り上がり!
しかしあ~ちゃん、大笑いしながら「この人ばかでしょー! だって○○○○○ ○○○(以下割愛)」
この指摘にのっちはびっくりまなこ(何も考えてなかった!!的な)。でも己の決断を変えることはありません。そしてその曲について話し合いが開かれました。
◇P.T.Aのコーナー
◇Never Too Much
◇ティー・フォー・スリー
◇ネタバレ自粛のお触れ
第72回 Perfume 6th Tour『COSMIC EXPLORER』仙台公演
2016年5月3日(火)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
ライヴの内容はレポートしづらいのですが、「MCならまあ書いていい」とのことでしたので。
◇仙台とPerfume(談:3人)
Perfumeメンバーはよく仙台を訪れているそうです。一昨日リハーサルをして、本番前日はオフだったと。メンバーは何をしていたのでしょうか。
かしゆか「仙台に友達がいて、友達に会いに時々来る。広島よりよく帰ってるかも。昨日はその友達とランチしたあと、アップルストアでiPhoneケース(※充電もできる奴らしいです)を買いました」
あ~ちゃん「私もプライヴェートで仙台には来ていて。駅前の街並みの変化とか……西口に新しいパルコを作っていて、そこにTOHOシネマズ入るんじゃね。そうなるとまた仙台に来てしまう。
昨日は高校の時以来、一人で映画を観に行った。高校時代に観たのは『踊る大捜査』のユースケ・サンタマリアさんが主役ので、朝8時40分の回から観た。昨日行ったのはチネ・ラヴィータって映画館で(地元の観客どよめく)」
あ「観たのは、『誰もいない』……は柳楽優弥くんか(※正しくは『誰も知らない』)。『僕』……」
か「『僕だけがいない街』。マンガが原作のね」
あ「藤……」
か「藤原竜也さん(主演)。全部私が言ってる(笑)」
あ「有村架純ちゃんを見たくて、上映の1時間前に予約して。そのときはガラガラだったけど、この後に続々と来るんじゃろうって思って。時間になって会場入ったらもう暗くなってて、〈すみませんすみません〉って感じで入っていったら、誰ひとりおらん。貸し切り状態。
しかも映画がまさかのミステリー!よく人が刺されたりして、途中何度も出ようと思ったけど、がんばって最後まで観た。あれね、めっちゃおもしろいよ!絶対に観た方がいい。でもゴールデンウィークなのに、あんなに人いなくて」
のっち「それはね、みんな……(目を見開きながら小声で)『ちはやふる』観てたんだよ!」
↑確かにチネ・ラヴィータでやってました
の「じゃ、そろそろ……」
あ「あんた何やっとったん」
の「いま良い流れで曲に入れたのに! 2行で言えます。牛タン食べて、寝た」
か「でも、いちばん仙台らしいかも!」
の「牛タンは、お土産屋さんなんだけど、10分くらい待てば焼いてくれるお店があって、それを部屋に持ち帰って」
あ「あんたそれ東京と何も変わっとらん」
おっと、このペースでだらだら書くとまた長くなるので簡潔に。
その後のチーム分け、最初にあ~ちゃんが〈チネ〉を指定。〈ラ〉〈ヴィータ〉と続ける予定だったと思われますが、あまりしっくりこなかったのか(お客さんのざわめきもあり)〈ちは〉〈や〉〈ふる〉に変更されました。
◇『COSMIC EXPLORER』週間1位(談:あ~ちゃん)
・やっとみんなに直接報告できた!と喜ぶ3人
・チャート発表の日はスタジオでリハーサルしていたら、スタッフの方が「『COSMIC EXPLORER』、週間1位でした!」と報告して下さって、〈1位おめでとう!〉という大きなケーキも用意してくれて、スタジオにユニバーサル・ミュージックの偉い人が次から次に来られた
・しかもBEE-HIVEの古くて小さいスタジオに
・そのとき、スタッフの方がiPhoneのスピーカーから『COSMIC EXPLORER』を流してくれていたが、大人数が喋っていると完全にかき消される。ときどき静かになると、小さな音で〈シャンシャンシャン……〉って聞こえて、あっ流してくれてたんだ、と
◇その他
ある展開があって、笑顔のあ~ちゃんが両手を大きく広げて「奇跡が! 奇跡が起きています! ああーーーーー!! あああーーーーー!」とシャウト。何かの宗教かと思いました。
◇私見
音響・照明・舞台はやっぱり凄かったし、3人も初日の緊張に負けじと奮闘していましたが、ライヴの構成や流れが何だかちぐはぐなように感じました。
僕が期待していたような内容とはかなり異なっていたこともあって(まあそれは当たり前としても)、ちょっとがっかりしたのが本音です。でも、きっとPerfumeチームはここから改善してくるだろうとも思いながら。
5月4日(水)宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
↑会場の裏手は、小鳥たちのさえずりに包まれる高原
この日もライヴの内容は触れずにMCだけ。
◇プロモーター(談:あ~ちゃん、かしゆか)
あ「仙台のプロモーターで、インディーズ時代から担当して下さった方が外れてしまった。新しい担当のIさんは、普段は何もしゃべらない。クール。でも(自分たちが喋っていると)笑ってくれて、優しい。
仙台に、のっちとかしゆかを連れて行きたいお茶屋さんがあって。あと、美味しいお餅屋さんもある。なんか、養老乃瀧、みたいな名前の(注:延命餅)。そんな話を、昨日の車の中でギャーギャー言っていた(※補足すると、ライヴ初日の帰り、22時ころのお話)。
今日会場に入ったら、私が言っていたお茶屋さんのお茶と、お餅が届いとった。昨日の夜言ったばかりなのに。以前の担当さんに、ずっとお世話になったことへの想いは凄くある。でも、それだけじゃないなって思った」
か「会場のケータリングも、仙台は美味しいものがたくさんあるけど、それが毎日変わるの」
↑イメージ画像。名店「司」にて
あ「ケータリング部屋も、〈2年ぶりのライヴ、おめでとうございます!〉ってメッセージとか、紙で作ったお花とか、手作りの飾り付け……幼稚園児が〈ゥワァァァッ!!!〉ってなる奴もあって、しかもそれも毎日変わるの。
その歓迎してくれる気持ちが本当に嬉しくて、しかもプロモーターの人は誰もそのことを言わんのよ……だから、今日は熱い良い時間にしたい! 会場の皆さんもきっと私たちに想いを持って、時間を費やして下さっているはずだし。皆で最高の時間にしましょう!」
◇ライヴの長さ(談:あ~ちゃん)
・でもライヴは3時間も4時間もやれない。皆さんが立ってライヴを観て下さっているのは、誠実さ! 〈誠〉!!
◇チーム分け(談:あ~ちゃん)
・今日はこれしかないでしょう。〈養〉!〈老〉!!〈乃瀧〉!!!
・「延命餅」でも良かったんだけど、それは〈養老乃瀧〉の引き出しに入っとる
◇グッズ小芝居(談:3人)
の「皆さん、グッズ買ってくれてありがとう!」
か「今回は宇宙っぽい名前をたくさん付けました。アースグレイ、コスモピンク、スペースブルー……あとブラックホールとか」
の「今回も可愛いグッズがたくさん、おしゃれ靴下とか」
(ステージに不在だったあ~ちゃんが帰ってくる)
の「あっ、おしゃれ靴下のプロデューサー!」
あ「(ゆったり歩きながら手を振って)どうも……おしゃ下の……プロデューサーです(以下大意。ちゃあぽんがいつも地方に行くと派手な靴下をお土産にくれる。それを気に入って履いていたが、2人の靴下はシンプル。でも自分のタンスの靴下ゾーンはカラフル。シンプルだけどカラフルな靴下が欲しい……)今回、それを…………実現しました」
か「パシャー! パシャー!(エアカメラ)」
の「こっちも目線下さーい!(エアカメラ)」
あ「(アルカイックスマイルで悠然と手を振る)」
◇引っ込んでいくマイクスタンドあれを見て(談:のっち)
の「収納の儀も済んだところで」
◇若さ(談:3人)
あ「行ける?」
か「(精いっぱいの若くてカワイイ声で)行ける!」(客大喝采)
あ「行ける?」
の「(少し喉を鳴らしてから精いっぱいの若さで)行ける!」(あ~ちゃん大爆笑)
あ「なんか〈んんっ〉って言っとった! それも込みで、あんたおもしろいねえ!大好きよ!」
◇起こせミラクル?(談:あ~ちゃん)
仙台、ミラクル起きるねぇ! ♪起こるミラクル~、起こせ想い~(いきなり「Sweet Refrain」アカペラ歌唱)
あといろいろあったんですが、ライヴの内容に関わるものはバッサリ割愛するとして、差し支えないところで「これもあったよー」など、コメントでご教示ください。
◇私見
現在の仙台駅は、石を投げればPerfumeファンに当たりそうな状況ですが、僕のように何のグッズも一切身につけていないマニア(往々にして最もやばいタイプ)も潜んでいると思われます pic.twitter.com/TOkF8bHxcQ
— t_kito (@t_kito) 2016年5月4日
初日のライヴにはちょっとがっかりしましたが(ちなみにアリーナの結構良い席)、この日はスタンドの最上段。つまりいちばん後ろの席でしたが……このライヴはとても楽しかった! 3人のダンスのグルーヴ感も良好でした。
音響は、場所が違うので単純に比較できませんが、初日は腕の体毛がチリチリ震えるようなド迫力の鳴りをクリアに堪能できて、2日目はちょっと遅延はありながらも、あまり気にならなかったです。
何より、今回のステージセットは大規模な仕掛けがあり、それはスタンド席がいちばん見やすいのですが、それをごく自然に成功させていることにつくづく感服しました。
ただ観ている分には、わぁー凄いなーで済ませられますが、もしあれが急に動かなくなったら?スピードやタイミングがずれてしまったら? 決して簡単なものではなく、毎回確実に成功するものでもありません。
その精度と正確性をどこまで高められるか?しかも効率的に。それがメンバーとスタッフの皆さまの命題であり、それを実現するための膨大な労力と工夫(K.U.F.U)がライヴの成功を支えていることを、まざまざと目のあたりにしたライヴでした。
まあね、「この曲なんでまだやるの?」とか、「なんでこの構成なの?」という思いはそれでもありますけど、構成については2日目、メンバーの説明で腑に落ちました。ライヴ全体の流れ的にどうなんだろう……とは思いつつ、でもある意味凄くライヴらしいとも言えるし……という歯切れの悪さでもってレポート終了です! 次回は僕の生まれ故郷、静岡です。
↑仙台駅の「北辰鮨」。これは1階のお店ですが、3階の立ち食いも極めて美味しいです
↑ありがとう、仙台ワシントンホテル
第71回 『COSMIC EXPLORER』
前置きは不要ですね。『COSMIC EXPLORER』は、Perfumeと中田ヤスタカの新たな挑戦と工夫、独創性と意外性が存分に発揮された、2016年を代表するアルバムです。
どんなアイドルグループもDJ/トラックメイカーも、いまだかつてこのような作品は作っていないでしょう。その理由のひとつに、中田ヤスタカが特に『JPN』以降注力している、アルバムを1枚通して(つまりじっくり時間をかけて)聴くことに意味を持たせるサウンド・デザインが、『COSMIC EXPLORER』においては徹底的に突き詰められていることが挙げられます。
いきなりですが、あなたは普段音楽を、いつ・どこで・どうやって聴いていますか?
おそらくは移動中などの隙間時間に、iTunesのようなアプリに曲をインポートしたり、YouTubeや音楽配信サービスで好きな曲を選んだりして、スマートフォンのようなデジタル・デバイスで聴いている方が多いでしょう。
えっ? CDを買って、家でじっくり聴いているって? うん、僕もそうですけど、それかなりのマイノリティーですよ!
でもそんなご時世だからこそ、ヤスタカは〈時間の芸術〉である音楽を、時間を掛けてじっくり聴く楽しさを提案しています。いまの時代ならではの批評性ですね。
◇2016 : A SPACE ODYSSEY(2016年宇宙の旅)
アルバムの序盤は、聴き手を作品の世界に導入する序曲「Navigate」から5曲目の「STORY」まで、初めて音源化される曲で固めてきました。
壮大なスケール感とマニアックに入り組んだアレンジを両立させたエレクトロ「COSMIC EXPLORER」、HardwellやCalvin Harris、Aviciiあたりが速攻で思い浮かぶプログレッシヴ・ハウス「Miracle Worker」、ディスコ・ブギーなイントロのエレクトロ・ハウス「Next Stage with YOU」、ヘヴィーでブリーピーなエレクトロ組曲「STORY」と畳み掛けます。
ここには現行ダンス・ミュージックのトレンドもあれば、他に誰もやっていなさそうな路線もある。重要なのは、ヤスタカとPerfumeというフィルターを通して、よくある〈流行ってるらしいから(or 誰もやってないから)やってみました〉的な出オチに陥らない、独自性と高い完成度を……といっても、そこはいつも大抵クリアしていますね。それも実に凄いことですが。
◇Next Stage
アルバムの序盤は『LEVEL3』以降の、それこそPerfumeの〈Next Stage〉を提示する役割も果たしています。中盤以降はほとんど既発曲ですが、ヤスタカは単なるシングル曲の寄せ集めに陥らないよう、シングル曲をアルバムの一部として新たに機能させるための〈Album-mix〉を、多く混ぜる戦略を取りました。
「FLASH(Album-mix)」では、初出ヴァージョンでのよくあるビッグルーム・ハウスに和風のメロディーを載せたという印象が一転。プログレッシヴ・ハウスからユーロ・ダンス、テクノ・ポップにテック・ハウスなどを行き来し、ビートを抜き差ししながら次々とサウンドを変貌させていきます(最初のサビがまさかのビートレスで、これが物凄く利いています! あえて音を抑えることも、一種の演奏なんです)。
へー、こう展開するんだ!じゃあ次はどうなるんだろう?……うわ!こう来るか!!というワクワクがずっと続く、これこそ〈時間の芸術〉たる音楽の醍醐味です。
不遇の名曲「Sweet Refrain」のAlbum-mixでは、ブロステップ色が後退し、エレクトロ・ハウス寄りに。原曲はポップな甘いメロディーとゴリゴリのウォブル・ベース(強烈に歪んだ、不規則なリズムのシンセ・ベース)のマリアージュがちょっと歪ながら、それゆえクセになる魅力があった(そして他に誰もやってなかった)ので、そのまま入れても面白かったかもしれませんが、ヤスタカのバランス感覚による変更なのでしょう。ちなみに2番でヤスタカがノリノリで弾いているギターは……まあご愛敬ということで。
アルバム中では最後となる新曲「Baby Face」は、一転して音数をそぎ落としたアレンジで、3人の歌と〈Wow...〉というコーラスを立てています。こういう曲をここに挟んでくる緩急の付け方も流石です。お姉さん目線の詞もいままでなかったタイプですね。間奏のシンセが、Yellow Magic Orchestraの「1000 Knives」ほとんどそのままなのは……まあご愛敬ということで。なおこちらのBabyfaceも最高なのですが、たぶん一切関係ないですね。
◇銀河を超えて 星屑たちの川上り
王道のPerfume節と言えるエレクトロ・ハウス「TOKIMEKI LIGHTS(Album-mix)」を挟んで、ついに出ました! YouTubeで16億回再生された、世界的超絶ヒット・ナンバー!! 急逝した俳優のポール・ウォーカーに捧げ……
えっ? この曲、Wiz Khalifaの「See You Again」のリメイクでしょ? ピアノのリフもコード進行も〈Wow...〉のコーラスも、激似ですよ?
お時間のある方は、下の曲に合わせて「STAR TRAIN」を歌ってみて下さい。〈手探りで夢を見る/何もない ただ信じて/空までが遠いほど/片道切符を求めて〉。
……という意地悪はさておき、でもこれは決してパクリじゃないですよ。パクるなら普通、もっとバレないようにやります。ですのでこれは「See You Again」に対する、日本からのアンサー・ソングなのだと思います。なぜよりによってヤスタカがアンサーしたのかはよくわかりませんが。
◇輝く星空のような
続いて「Relax In The City」「Pick Me Up」が、それぞれシングル盤と変わらないヴァージョンで登場。
「Relax In The City」はPerfume史において、傑出した完成度を誇る楽曲でしょう(宇多丸さんも「マブ論」で、「2015年の彼女たちのリリースではこれがベスト!」と太鼓判)。私見ですが、この曲はシングルの時点で、これ以上変えようがないくらい完成していたと推察しています。
Perfume初の歌い上げ系ビッグルーム・ハウス「Pick Me Up」もシングル版のままですが、アルバムを通して聴くと、いかにもEDMです!なビルドアップ(この曲の10秒~15秒みたいな、強引にアゲていくブレイク部分)を含むのはこの曲だけですね。これこそAlbum-mixで聴いてみたかったけれど、手を入れなかったのには、何か意図があるのでしょうか……
「Cling Cling(Album-mix)」。
変わりすぎだろ、シングルと……!! 原曲のエキゾ感をそぎ落とし、テクノやブロステップ、ハウス、エレクトロなどを盛り込んだ、ダンス・ミュージック幕の内なアレンジ。「FLASH(Album-mix)」ともやや被るので、思いっきりミニマルとかにしてもおもしろかったような。ハウスやテクノの前時代の、シンセサイザー・ミュージックを思わせる音色も気になりました。メロディーに対するコードの当て方も相当ひねっていて、CAPSULE「Transparent」を彷彿とさせます。この曲はアルバム中で唯一、初期のようなチューン・ヴォイスを使っていますね(※他にもあったらすみません)。
◇Hey Baby(I wanna hold your hand)
アルバムの最後を飾るのは「Hold Your Hand」。
「Relax In The City」と双璧を成す、傑出した楽曲だと思います。そして〈宇宙探索〉という壮大なテーマで始まるアルバムが、〈キミと手を繋ぎたいんだ〉という、恐ろしくスケールの小さい、プライヴェートなコミュニケーションの歌で終わること。この流れはいろいろな解釈できますね。
僕がいちばん感じたのは、〈宇宙探索〉と〈キミと手を繋ぎたい〉を並列に、しかも短い時間で豊かに表現できるのって、やっぱり音楽ならではだよなーと。音楽を聴くのって、やっぱり音楽でしか味わえない体験だし、何よりめちゃくちゃおもしろいな!ってことでした。
そう思わせてくれる音楽は少ないです(Perfumeファンだからそう思うのかもしれないけれど)。そして今回も、期待を上回る素晴らしい作品が届いたことを、心から嬉しく思っています。
そして最後になってしまいましたが、3人のヴォーカルはその肉体性や存在感を、より豊かに感じられました。歌声のアンサンブルとハーモニーが醸す美しさこそ、やっぱりPerfume最大の魅力かもしれませんね。
ちなみに「Hold Your Hand」で締める意味は、〈人間の心は宇宙よりも……〉とかの解釈もできそうですけど、まあそれは誰かに任せますんでよろしく!